機動戦士ガンダム---ジオンの軍師---   作:ジョミニ

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地球降下作戦---3

ディエンビエンフー。

 

ハノイ北西に存在する都市である。

 

周囲は盆地地形であり、連邦の航空基地が存在する交通上の要地であるにもかかわらず十分な軌道上からの攻撃を行えなかったため、降下部隊の中でもザクを含むかなり有力な一隊が送り込まれていた。

 

それが壊滅したという。

 

グスタフ以下、師団司令部はこの報を重視。

 

ハノイの守備をグレーナー准将に任せ、翌日には既に到着していた部隊から一個連隊を編成しグスタフ自ら指揮してこの都市の攻略に向かうことを決定した。

 

 

 

「少将、正面に敵を発見したとのことです」

 

斥候が敵を発見したらしい。

 

偵察機『ルッグン』による航空偵察の結果によると、連邦軍は正面の開けた丘陵地帯に何層かの陣地を形成、ジオン軍を防ぐべく構えを取っている。

 

「まさか出撃してくるとはな。アルベルト、どう思う?」

 

グスタフは接収した村落の一つに設置した急ごしらえの司令部で各指揮官を集め、作戦会議を行っていた。

 

「MS相手に野戦を挑もうという気のようですね。よほど大きな戦力を持っているのでしょうか」

 

「いや、その可能性は小さい。あそこに大兵力を配置するくらいならば、ハノイの守備にもっと力を入れてくるだろう」

 

「無視し、迂回して都市を制圧する手もあるかと思われますが」

 

「下手に迂回して側面を衝かれてはたまらん。それに、我々は敵の戦力を叩かなくてはならない」

 

敵の規模がどの程度かは分からないが、降下部隊を壊滅させるほどの戦力を持つ敵を放置しておいては、分散してハノイへ向かっている部隊が襲撃を受ける可能性がある。

 

「この地図を見てくれ。まず、敵陣の最前方がここだ」

 

机に広げた地図上、部隊の現在地から左前方にある丘を指差す。

 

「となると、第二線がこの丘陵。そして、この辺りに司令部、砲兵陣地が配置されていると見ていいだろう」

 

「この布陣、なかなか上手くできていますな」

 

左前方の丘陵と、その右奥に存在する二つの陣地は、間をぬって突破しようとすれば射線が集中するだろう。

 

さらにその最後方の丘陵には支援用の砲兵陣地が置かれ、前線陣地からの要請に応じて砲撃が行えるようになっている。

 

「ガウがあれば、空挺降下で敵司令部を狙えるのですが」

 

「無い物ねだりをしても仕方がないさ。我々にはMSがある。それで十分としよう」

 

ザクの運動性と装甲ならば、陣地からの射撃を受けつつの突破も十分に可能な上、最後方の陣地からの砲撃の的を絞らせないことも可能なはずだ。

 

「歩兵及び戦車部隊は左前方、及び右前方の敵陣地に牽制攻撃をかける。MS部隊は陣地の間を突破、最後方の敵司令部を狙う。司令部を落とせれば敵の抵抗も止むだろう」

 

グスタフの上げた作戦は、MSの性能を活かしたオーソドックスなものと言える。

 

そのため、各部隊の指揮官にも特に反対なく受け入れられたようだ。

 

作戦開始の時刻は1時間後とされ、それぞれの部隊は配置転換を開始した。

 

 

 

 

 

「各部隊、準備はいいな。それでは、作戦を開始せよ」

 

敵陣地の正面に配置したマゼラ・アタックが丘上の敵陣地に向かって砲撃を開始する。

 

175mm無反動砲の威力は絶大で、腹に響く砲声の止まぬうちに、すさまじい爆風が土砂と樹木を空へ舞い上げた。

 

当然のように行われる連邦軍からの応射に備えて、マゼラ・アタック隊は砲撃後素早く移動を行う。

 

幾度かの砲撃の後、歩兵が前進を開始。

 

小銃による射撃を行いながら少しずつ丘を登っていき、敵の目を引き付ける。

 

「歩兵部隊、順調に進んでいます。損害も想定より少なくすんでいる模様」

 

「よし。もう十分だろう。MS部隊に指示を出せ!」

 

グスタフの命令一下、ザクが出撃する。

 

これを指揮するのはグスタフの右腕であり自らもシップエースの称号を持つベテランパイロット、アルベルト・バルボーサ少佐だ。

 

陣地を守る連邦軍は、ザクの前進を食い止めようと交差点で十字射撃を行ってくる。

 

しかし、連邦軍の用いてくる対戦車砲や61式戦車の砲では、間接部などの装甲の弱い部分に上手く当たらない限りザクにダメージを与えることは難しい。

 

そして、正面からの攻撃ならば余裕をもって回避するだけの機動性も持っているのだ。

 

一方、ザクの装備するザク・バズーカの火力は圧倒的だ。

 

一機のザクが行き掛けの駄賃とばかりにバズーカを丘の頂上に撃ち込む。

 

ザク・バズーカの口径は240mm、マゼラ・アタックの口径よりも遥かに巨大だ。

 

それだけの火力を受け、砲撃を行っていた連邦軍の一部隊は一たまりもなく粉砕されると、丘を攻め上る歩兵から歓声が上がった。

 

バズーカを発車したザクは彼らに向かって手を振り、再び前進を再開する。

 

 

 

 

 

「MS部隊、敵陣地の射線交差部を突破しました」

 

戦況は、ジオン軍の圧倒的優勢のもとに進んでいる。

 

机上の戦況図では、ほぼ全線にわたってジオン軍が前進を続けていた。

 

「左側陣地の歩兵部隊より通信。『敵の抵抗、極めて微弱。山頂の奪取のため、前進を開始する』とのことです」

 

「おお、なんと頼もしい」

 

左右の両陣地の牽制攻撃を行っている歩兵部隊は、当初の予定を大分越えて前進している。

 

敵の反撃が思いの外弱かったための結果だ。

 

「どうやら、降下部隊はよほど油断していたようですね。敵の戦力は弱体です」

 

いや、何かがおかしい。

 

戦況が上手くいきすぎているのだ。

 

降下部隊が敵の戦力にダメージを与えていたということも考えられる。

 

しかし、それならば出撃せず、市街戦を行って戦力差を補おうとするはずだ。

 

それを選ばなかったということは、当然何らかの手を用意しているはずだが。

 

まさか、これは。

 

「……誘い込まれているのか?」

 

仮に、敵が主力を山頂ではなく反対側の斜面に配置しているとすれば。

 

また、MSに対抗するための仕掛けが最奥の陣地に仕掛けられているとすれば。

 

「歩兵部隊に指示。『事前の指示通りの位置まで後退せよ』と」

 

「後退、ですか?」

 

「ああ。必要ない賭けは止めておこう」

 

考えすぎならば、それで構わない。

 

MS部隊が司令部を叩いた後で攻撃に移ればいいだけだ。

 

そう思って、グスタフは歩兵部隊に後退を命じるよう、通信手に伝える。

 

「『司令部の再考を請う。正面の敵は弱体である』と言ってきていますが」

 

前に進める状況であれば、前進を望むのが軍人の本能のようなものだ。

 

そこでチャンスを捨てることを命じられれば、当然前線の指揮官は不満だろう。

 

「後退を厳命しろ。都合のよすぎる状況は敵の罠かもしれん」

 

「はっ」

 

命令に渋々と従ったのだろう、歩兵は後退し、計画通りのラインを築く。

 

それでも、一個だけ後退を行わない部隊があった。

 

「第十二中隊、通信途絶。前進を続けている模様です」

 

戦闘で無線を失ったか、あるいは敢えて通信を断ち切ったか。

 

指示が伝わっていない部隊が一つ、頂上を目指して進み続けているらしい。

 

「なんとかして呼び出せ。万が一の事があってからでは……」

 

「少将!バルボーサ少佐より通信!も、MS部隊、敵の反撃を受け、攻撃続行不可能!救援を願うとのことです!」

 

「なっ……!」

 

その報告とほぼ同時に、凄まじい爆発音が轟く。

 

「さ、左側陣地にて爆発が発生!十二中隊も巻き込まれた模様です!また、斜面の反対側より敵戦力出現!十二中隊残存兵力を包囲下に置きつつあります!」

 

やはりか。

 

グスタフは唇を噛む。

 

状況はかなり深刻だ。

 

アルベルトが救援を求めて来ている以上、本当に必要としているのだろう。

 

だが、十二中隊が敵陣で包囲されつつあり、迷っていてはその両方を犠牲にすることになる。

 

そこからの決断は早かった。

 

「左側陣地各部隊に通信。『何があっても現在の持ち場を離れず、守備に当たれ』」

 

「十二中隊を見捨てるのですか!?」

 

「あれは恐らく餌だ。わざわざ半包囲体勢に持ち込んだのがその証拠だ」

 

それだけ命じ、グスタフは司令部から出て、幕僚の制止を振り切って自らのザクに乗り込む。

 

「予備のMS隊に通達!アルベルト隊を救援に向かうぞ!」

 

 

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