機動戦士ガンダム---ジオンの軍師---   作:ジョミニ

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ルウム戦役---3

「獲物を奪ってしまって申し訳ありません。タンネンベルク准将」

 

赤いザクのパイロットが話しかけてくる。

 

「敵の手早い殲滅と勝利が第一だ。構わないさ。しかし、赤いザクとは」

 

「ドズル閣下は私を買い被っておられるのです」

 

「買い被り」と彼は言うが、エースにしか許されないはずの専用塗装を、それもこのようにひときわ目立つ赤色を認められるということは結果に裏打ちされた実力があるということに他ならない。

 

「第六MS大隊所属、シャア・アズナブル中尉です。閣下より伝令の任を仰せつかりました。『予備戦力の全てを敵左翼に投入した。そこが終わったらレビルの首を持ってこい』だそうです」

 

「閣下も無茶を仰るな。了解した」

 

この戦場に予備のMS部隊を集中投入したということは、右翼での勝利はほぼ確定したといっていい。

 

グスタフは戦場の指揮をアルベルトに任せ、『ロート・シュヴァルト』へと帰投することを決めた。

 

「これは准将、ご無事で何よりです。指揮に専念して頂ければ、私の気苦労も少しは減るのですが」

 

「人が足りていない状況です。やむを得ませんよ」

 

ボトルのドリンクで水分を補給しつつ、グスタフはマイヤーに戦況を訊ねる。

 

「我が軍の圧倒的優勢ですな。敵は左翼をほぼ失いました。また突撃機動軍MS部隊が敵の右翼に攻撃をかけ壊滅に追い込んだようです」

 

モニターの戦況図では連邦の六個艦隊のうち両翼の三個に×印が付いている。

 

「我が軍はレビルの中央艦隊を半包囲下に置きつつあります。ドズル閣下よりも、全軍前進との命が出ております」

 

「わかりました。戦闘団前進。レビルを捕らえます」

 

「残存部隊はよろしいので?」

 

「組織的な抵抗は終了したとみていいでしょう。無視しても問題ありません」

 

「左様で。全MS隊に帰投と核融合炉の冷却を命じます」

 

「頼みます」

 

両軍中央艦隊同士の決戦は、完全に混戦となっていた。

 

連邦軍は相互防御戦術によってかろうじてMSの攻撃を防ぎ、ジオン軍も優勢ではあるものの攻めきれぬままでいる。

 

しかし、連邦右翼第四艦隊がキシリア・ザビ配下のMS部隊により、左翼の第一、第五艦隊が予備戦力の集中投入により相次いで壊滅し、レビル直属の中央三個艦隊に左右から攻撃を仕掛けたことで、遂に抵抗も終わりを迎えようとしていた。

 

数多のザクや戦艦が乱舞する戦場で、一際目立っていたのは先ほどグスタフと言葉を交わした赤いザクだった。

 

通常の機体どころか、ジルのカスタムタイプでさえあり得ないような速度で戦場を駆け回り、次々と敵艦を沈めていく。

 

「おい、なんだあの赤い奴は!」

 

「ああ。速すぎる。通常の三倍は出ているな。だがそれよりも、あの速度で全くぶれない機体制御。我々より上かもしれんな」

 

自らの十八番を奪われたように感じているのか苛立った様子のジルと、淡々と赤いザクのパイロットを評価する第四中隊隊長、アンドレ・ソシュール。

 

赤いザクは全くスピードを落とさずに戦艦を撃破し、そのまま撃墜した戦艦の残骸を蹴ることで性能以上の速度を出しているようだ。

 

パイロットにかかるG、僅かなミスも許されない姿勢の制御、それらをものともしないその操縦技術はまさしく神業。

 

エース揃いの教導大隊の面々でさえ脱帽の思いを禁じ得ない。

 

「くそっ!負けていられるか!」

 

ジルも後を追うように機体のアクセルを踏み込んで加速したようだ。

 

やがて連邦艦隊は反転して敗走を始め、戦場が個々のパイロットの腕の競いあいの場になるのに、さほどの時間はかからなかった。

 

u .c 0079 1月16日。

 

連邦軍を率いるレビル将軍は全部隊に退却を命じた。

 

ジオン軍は追撃に移ったが、連邦艦隊の副将、カニンガン提督率いる第三艦隊第一戦隊の自らの命を犠牲にした妨害によって全滅には至らなかった。

 

しかし、この戦いで連邦宇宙軍は動員した戦力の八割近くを失ったばかりか、総大将のレビル将軍までもが突撃機動軍所属のMS小隊、『黒い三連星』によって虜囚の憂き目を見ることとなる。

 

それは開戦から僅か二週間で連邦宇宙軍が戦闘力の過半を失い、宇宙でジオンに対抗する術を失ったことを意味していた。

 

後に『ルウム戦役』と呼ばれる戦いである。

 

 

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