「 あれは総隊長か!? 」
「 屁で空を飛んでんのか!? 」
「 流石だぁ・・・! 」
「 はぁ・・・ 」
いつも以上に騒がしい瀞霊廷の街中を、悟は憂鬱そうに歩いている。いつもならば人並みくらいには元気な彼であるが、この日はどうも調子がでなかった。ただ、友人のいる技術開発局に早く着きたいだけなのだが、道行く者はどいつもこいつも馬鹿なことで騒いでばかりである。
これでは護廷の明日など知れたものじゃない。
「 予想以上だな、こりゃ。 」
先生方は、ここ九百と五十年強で護廷十三隊は見るに堪えないほどに衰えたと寂しげでいた。
年々世代を経るごとに隊士の質が落ちていっていると。
その弊害の一端とは、これなのだろう。総隊長の奇行、誰もがそれになんの危機感も抱かず、ただすごいすごいとなんの理解もなくうわべだけの称賛。
霊術院の頃もそうだったと思い返す。皆が赤火砲を撃つのが精々な中、それでは足りんと天嵐を撃ったことがある。
そうしたらどうなったか。
皆まるでバカになったように騒ぎ出し、天才だのなんだのと口々に言い始めた。
将来有望だとか。隊長になる逸材だ、とか。
モノを知らない連中が、モノを知ったように語っている。
それが許せなかった。
だからこその、頭面だ。そんな愚図共と同じ空気を吸いたくない。顔など覚えられたくもない。名だけで十分だ。
ある意味で悟は、人付き合いが苦手であった。
勿論、こういうわちゃわちゃしたモノは尚更だ。
人と話すことはできるが、人間、いやこの場合死神か。
なぜ、ああも騒げるのだろう。
そういう観点で見れば、兄とは対照的でもあった。
しかし、悟にとって、兄のことなどどうでも良かった。
大事ではないわけではない。しかし、兄よりも、優先すべきものが多いのだ。
それにしても、護廷は衰退したばかりでなく、奇人の類も増えているようでもある。
焼き芋を食べながら薄汚い黄色のガスを放出し、尸魂界の空を飛んでいる総隊長がそれだ。
この離れた位置から感じる霊圧を見るに卍解を発動した卯ノ花隊長、或いはそれで盛り始めた更木剣八を止めようとしているのだろうが、それでも放屁で飛行するのはどうかと思わんでもない。
こんな汚い移動方法を、それも組織のトップが取るとあらば、護廷十三隊の沽券にも関わりかねない気もせんでもないが、このような行動にでるということは、問題はないのだろう。
長きに渡る太平の世とやらを築いた"実績"によるものだろうか。
いずれにせよ、護廷の、引いては三界の将来が危うくならぬことを祈るばかりであろうが、そんな保証はどこにもないことも、悟は理解していた。
平和とは、崩れるべくして崩れるのだ。例え千年保ったとしても、どこかで均衡は崩れる。
この世に絶対はなく、変わらぬ物など、無きに等しいのだから。いつまたあの大虚やら、霊術院の頃のドラゴンやらのような類の輩と戦う事になるか分からない。
だから自分たちがやらねばならないのは、そのいつか来るであろう危機に備えることであるはずなのだ。
だが、この現状においては、そんな目に見えぬ脅威への備えがあるように見えなかった。
「 早く着かないかね。 」
こんなことがいつも続いていたのなら、うんざりするのは自明の理。悟は本当に、自分たちに未来があるものなのかと心配になりながら、足早に街道を進んでいった。
「 今回ばかりは、この外観を拝めたことに感謝せねば。霊王に乾杯だ。酒は持ち合わせてないけど。 」
そうして一心不乱に足を進めることばかり考えていると、いつの間にやら目的地に着いていた。
あの街中において、彼の想像はよい意味で外れてくれた。
少し前にしょっちゅう喧嘩を仕掛けてきた吉良イヅルのような暇人に出くわすことがなかったのだ。
技術開発局。ここに来るのはこれで二度目だ。
以前は生体サンプルとやらを採られてしまったが、今度はああいうことがないのを個人的に祈り、玄関に向かって歩いていく。
この施設の連中は、おおよそ凡人には理解に苦しむような実験ばかりをやっている。それを踏まえてこそ気になるのが、あの時採られた悟のサンプル、即ち――――は一体ナニに使われる、或いは使われたのだろうか。
この3ヶ月間、技術開発局の動向についてはあまり聞き及んではいないが、おそらく連中がやっていることは変わらない。奇天烈な実験だ。自分の――――が左様なコトに使われているであろうことを考えればゾッとする。
知らないうちに、血縁上の息子なんてのができてたりするかも・・・いや、それは考えすぎか。
などと思考が過った後に、へんなことを考えるのを一旦辞めて、悟は今回の練習試合とやらの大まかな概要をおさらいした。
今回の練習試合は、十二番隊からの申し出である。曰く霊術院時代の学友が席官への昇進を聞いて顔を合わせたくなったと京楽より伝えられた。
が、その後に地獄蝶にて少し変更が加えられたらしいことも伝達される。
急遽十二番隊隊長、涅マユリからの指示で、また別の学友の研究成果の実証という側面を持ったものになった。
当初涅隊長はこの試合に承認はすれど表立って口出しはしない方針だったそうだが、何を思ったか、その学友こと、王途川晴彦に対戦相手を変えた。
あの奇人のことだから何をどう考えているのかは悟にはわからなかったが、少なくとも何かしらの思惑があってのことだというのは理解できた。
前来た時くらいしか面識はないが、聞くところによればマユリは科学者の鏡のような死神だからだ。
変な感情やらなにやらで動くことなどそうはない。
ただ、そんなことをするとき、動機や内容は碌でもないという確信も自然と得られてしまう。
十二番隊の隊長とは、そんなある種の安定感のある人物というのが、今のところの悟の見解である。
そして、噂をすればなんとやらであるらしい。
「 やぁ、3ヶ月ぶりだネ、檜佐木悟。 」
その独特な化粧は変わらず、そして傍らの副官も相変わらず平然とした面持ちを崩していなかった。
「 兵装開発科が何処か知らないだろう?
ワタシが直々に案内してやるヨ。感謝したまえ。 」
檜佐木悟
護廷、というか一部の特殊な方々にうんざりして憂鬱になりながら、技術開発局まで歩く。
山本元柳斎重國
屁で空を飛んだ人。燃料は焼き芋。
涅マユリ
悟と十二番隊の練習試合に、突然変更を加えた。それには個人的な思惑があるようだが―――?
これからみたい要素は?
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悟の同級生
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裏破道
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その他