檜佐木悟。八番隊新人隊士。その初の仕事が舞い込んだのは、
唐突なことだった。
そう、決闘と呼ぶには些か抵抗がある決闘で円乗寺を下してすぐのことだ。
「 隊長!隊長! 」
享楽と七緒のもとに、鬼気迫る勢いで、隊士が駆け込んでくる。なにかあったのだろうか。この様子をみるに、只事では無さそうだが。
「 あれ?どうしたの? 」
「 申し上げます!流魂街西一区潤林安に、
「 ええ!? 」
享楽はつい耳を疑ってしまった。
「 何かの見間違いじゃないのかい?メノスが
「 いえ、あれは巨大虚にしては大きすぎます。霊圧も体格も、すべてが規格外です!間違いなく
「 参ったねぇ。でもどうして尸魂界に? 」
死神の宿敵である、悪霊
大虚はその上位の存在だ。普段の彼らは
「 南の心臓 北の瞳 西の指先 東の踵 風持ちて集い 雨払いて散れ 」
「 縛道の五十八 掴趾追雀。 」
側にいた悟が咄嗟に縛道でその位置を割り当てるのを見て、七緒は驚いた。
「 貴方、高等鬼道まで・・・ 」
「 ええ。吾輩こっちの方もそれなりに鍛えてましてね。
流石に副隊長には劣りますが。
・・・いた。区画内を暴れ回ってる。
この霊圧、
ここは吾輩が参ります。 」
「 え、ちょ、ちょっと!? 」
七緒の静止も聞かずに、悟は瞬歩でその場から消えた。
「 で、潤林安ってどっからどう行くんだっけ? 」
はいいが、早速道に迷ってしまう。
無理もない。瀞霊廷は日本列島と同じくらいの面積があるのだ。
丸々数年霊術院で過ごした彼が、土地勘を把握しきれているはずもない。
「 西一区って言ってたよな?んなら西にひたすら進んでいけばいいのか?
そうすれば、いずれ門に行き当たりそうだし・・・ん?あれは! 」
悟は空を飛んでいる巨躯をみて、思いついてしまう。
そうだ、あの緑色のでっけぇエイの尻尾に引っ付けば・・・
「 メノスはでかい。例えあのエイが潤林安行きじゃなくても、上からなら位置を確認できる。
吾輩天才!
よし、そうと決まれば善は急げよ。
カツラから貰ったアレがあった筈!
顕れよ、空即是式。 」
相棒の斬魄刀で空を斬り、顕れた隙間から奇妙なソレを取り出した。
「 あの辺りがいいな! 」
持っているのが、銃型であるのを確認すると、刀をしまって即座に建物の屋根に飛び乗りながら、超スピードで疾走する。一際デカい建物の屋根に乗ると、そのまま巨大エイめがけて跳躍、銃型のそれを突出して引金を引く。
それは俗に言う、ワイヤーガンであるらしく、銃口から、長い線が伸びて、エイの長い尾に巻き付かれる。
「 イヤッホォォォオオウ!! 」
こうして悟は現場に急行することとなったのだ。
「 どうしました?
自身の斬魄刀に乗った、四番隊隊長の存在に気付かずに。
流魂街。西一区潤林安。後の十番隊隊長日番谷冬獅郎や、五番隊副隊長雛森桃の出身地であるこの区画は、普段ならば平和そのものであった。
この流魂街は、数字が老いるほどに治安が悪くなる。それを踏まえれば、この潤林安が、どれほど恵まれた街であるかは歴然であった。
そう、この日を除いては。
「 ――――――――――! 」
それは多くの隊士たちが、教本でしか目にしたことがないような恐怖であった。まるで簡単なオバケの仮装を黒くして、白い面を被らせたようなそれは、時代劇然とした死神たちよりも、よっぽど"死神"という言葉のイメージに沿った姿である。シンプルながらも、分かりやすい、恐るべき脅威。
「 く、クソ・・・なんて力だ。 」
「 怯むなぁ!戦え!命を賭してでも、護廷を貫けぇ!! 」
死神たちは傷つき、仲間が倒れて尚も立ち上がる。如何に自身の剣が通じずとも、必ず助けがくる。そんなヤワな希望を抱いて、今にも折れそうな我が身を鼓舞した。
しかし目の前では、下級大虚が大口を開いて、その中で赤白い霊力が収束していく。
彼らの攻撃方法、"
これより放たれる霊子霊圧の本流は、流魂街諸共彼らを焼き払うだろう。
もはや、これまでか。死神たちは成す術がない。
といっても、これは何時ものことだ。
現世に出向いた死神が、虚に返り討ちに遭う。そんなことも珍しくはない、
これも同じだ。死神が虚に殺される。それもメノスに。
自分たちの死など、そんな日常のよくあることの一つでしかない。その事実が、恐ろしいほどに実感させられる瞬間だ。
死神たちは絶望した。その顔からは生気が消えていく。
生きたい。しかしこの分では生き残れそうにもない。
ある隊士は死んだ仲間の顔を、ある隊士は家族の顔を思い浮かべ、もはやどうにもならないという現実に打ちひしがれるまま、その瞬間を待つばかりだ。
だが、
「 斬ッッッッッ!!! 」
その一言とともに、なにかがギリアンの顔を一閃し、上顎がボトルと落ちる。
そのまま、その150mの塔の如き巨躯が、塵になって消えていった。
「 ふぅ~っ、初仕事がジャイアントキリングとは。やり甲斐を感じるなぁ、護廷十三隊。 」
そういって空から地面の砂塵を撒き散らしてまるで飛行機が不時着するかのように着地した人影を、死神たちは見た。
白いマント。その下には自分たちと同じ死覇装らしき黒い着物。
片手には斬魄刀。もう片手には、銃に似た見慣れぬ道具。
そして、頭には、髑髏を象ったマスクをしていた。
「 おい、大丈夫か? 」
「 え? 」
「 吾輩が大丈夫かと聞いてるんだ。YesかNoで答えるんだ。 」
「 い、イエ・・・? 」
「 あぁ、はいかいいえだ。これならわかるな? 」
「 は、はい。なんとか。おかげさまで。 」
「 あぁ、そうか。それは良かった。吾輩が来た甲斐があったもんだ。
もう大丈夫だ、といいたいところだが、どうやら、安心はしていられないらしい。 」
「 敵増援だ。 」
髑髏の隊士、つまり悟の視線を向ける先、
その数、三十。
「 さっきのギリアンに惹かれて来たか。まぁ、問題ない。全部吾輩が蹴散らしてやろう。 」
瞬時に瞬時によって、虚の群れに肉発、さらにそこから、
「 破道の七十八 斬華輪。 」
七十番台鬼道。円状に並べられた霊圧の刃によって、虚十数体あまりが斬り裂かれ、消し飛ぶ。
残りの個体も、次々に斬り捨てていく。
見ている隊士たちは、その刃の軌道を読むことができなかった。
ただ、目の前に起きていることに驚愕しながら、四番隊の救護を受けるしかなかった。
「 すごい。あんな数の虚を、それも高等鬼道まで・・・ 」
「 さる御人の教えを受けたのでしょうね。 」
そう言って、隊長、卯ノ花烈は、まじまじとこの新人の隊士の戦いぶりを見ていた。
その目は、いつもの慈愛に満ちた瞳には見えなかった。
気づけば手には、浅打に戻った斬魄刀が握られていた。
知らず知らずのうちに、卯ノ花のうちに修羅が目覚めかけているのを、この時の悟は知る由もない。
「 うっうぅ・・・ 」
あれからどれほどの時間が経ったのであろう、まるで消すと増えるとばかりにでてくる虚の群々を、悟はひたすらに斬り続け、鬼道にて滅し続け、いつの間にか意識を失っていた。今も何処か、夢見心地のようである。
寝ぼけていて、目がおぼつかない。
幸い虚はもう出てきていないらしく、襲われる心配もなさそうだ。
「 どれだけ殺った・・・?メノス一体と最初の三十頭、その次の八頭から先は数えてねぇな。初日にしちゃ頑張ったほうだろ、これ・・・それにしても。 」
「 なんだ、この柔けぇの。吾輩の斬魄刀ってこんなんだったっけ。まぁいっか。ぷにぷにしてて気持ちいいしさ。 」
「 空即是式〜。お前こんな触り心地良かったっけぇ?
モミモミモミモミ・・・ 」
ひたすら、それを揉みしだいていた。すると・・・
「 ハァ・・・ハァ・・・ 」
なにかの声。よく聞くと、女の喘ぎ声だ。
「 ん、今度はなんだ・・・ファッ!? 」
目が完全に覚めた悟は驚愕した。自分の斬魄刀は、知らないうちにやはり腰の鞘に収まっていた。
では、それまで、彼が斬魄刀だと思っていたあの柔らかい物はなんだったのか。
その正体は・・・
「 ハァ・・・あ、あの・・・ハァ、ハァ、ハァ・・・ 」
意識が飛ぶ寸前に張っ倒してしまって、そのまま仰向けになって動けなくなってしまっていた、長身に銀髪の頬を赤らめた死神。
四番隊副隊長、虎徹勇音。
悟の手が置かれていたのはその豊満な・・・
「 オッパァァァァァァァァァアアアアアアアア!?
し、失礼しましたぁぁぁぁぁあああああああああ!!! 」
凄まじい羞恥心と申し訳なさにより、悟は凄まじいスピードで、その場を逃げるように後にした。
というか逃げて、彼の初任務は終了と相成った。
その後、それを何処かから聞いた七緒にこっぴどく叱られたのは、言うまでもない。
檜佐木悟
今回はギリアンを一撃でのめしたり、破道の七十番台を詠唱破棄で使用して、虚複数体撃破したりした。
その後、いつの間にか疲れてぶっ倒れた末にラッキースケベを起こしてしまい、ウブなところを見せる。
虎徹勇音
四番隊副隊長。卯ノ花の付き添いで現場に行ったところ、OPPAIを揉まれてナニカに目覚めてしまう。
悟には、本能的に惹かれるなにかがあるらしい。
卯ノ花烈
四番隊隊長。悟の暴れっぷりを見て、かつての戦友を思い出し、昔の気が自然と表に出てきかかってしまう。
ギリアン
死神より死神してるやつ。悟のカマセ。
虚のみなさん
やられ役。以上。千年血戦篇だと影が薄い。