例の菌でアレやコレやが筒抜けだったらしい。
涅マユリ
以前開発局で会った際に、悟に後に石田にも植え付けるあの菌を仕込んでいた。つまりルキアの裸を見ているということになるが、突っ込んではいけない。
「 さて、この道すがら、お前が気になっているだろうことから説明してやるかネ。 」
施設内の通路の中、副官であるネムを連れたマユリは、その後ろを歩いている悟と話しながら、脚を進めた。
「 まず、お前は京楽隊長の口から、ウチとの練習試合を通達された時に、困惑を覚えただろう?
てっきり十一番隊辺りが席官になったお前に挑みたがると。 」
「 そう、ですね。練習試合をすると聞いたときに、真っ先に浮かんだ顔の一つが、更木隊長でした。 」
「 一つ。ということは、ほかにも誰か身に覚えがあるわけだネ? 」
「 ・・・ 」
「 無駄な詮索はよすとしよう。ほかに誰が思い浮かんでいたかなどに、ワタシは微塵も興味はない。それよりも今回の趣旨ダ。 」
「 それですね。なにゆえ、吾輩を指名されたのですか? 」
「 それはもちろん檜佐木四席、キミが興味深い存在だからだヨ。 」
「 吾輩が、ですか? 」
「 そうだとモ。檜佐木悟。九番隊副隊長檜佐木修兵の弟。入隊後に下級大虚一体並びに数百体もの虚の群れを殲滅し、それから間を空かずに現世での巡回任務において、担当した管轄の虚のほとんどを駆逐、結果的に八番隊の管轄は他隊以上に功を挙げることとなり、そして先日には潤林安を襲った中級大虚の討伐すら成し遂げた。
・・・殆ど文献が残ってない裏破道なる鬼道すらも、行使して。 」
「 ・・・! 」
悟はプレッシャーを感じずにいられなかった。個人的に裏鬼道は表立って使わない。あまり悪目立ちしたくないからだ。隊長にも七緒にもルキアにも、あの場で使ったことはあまり言わないでほしいと頼みこんでいる。
彼らが約束を違えるとは思えないが、この怪人涅マユリは、あの潤林安で悟が裏破道十の道を使ったことを知っている。
何故だ?何故そのことを知っている?
まるで己の内まで見透かされているような感覚を覚えるが、その疑問はすぐに晴れることとなった。
「 どうしてそのことをワタシが知ってるか気になるかネ?
ワタシはね、ある菌を持っていてね。 」
「 菌? 」
「 そう。植え付けた相手を監視する菌だヨ。
対象の居場所、状態、行動をモニタリングし、観測できル。つまり今、ワタシはお前のこの頃の動向をよく知っているということになる。
お前があの朽木ルキアに修行をつけたことも、彼女とあられもない姿で夜を共にしていることも、すべてだヨ。 」
「 なっ!? 」
「 安心したまえ。他者に口外するつもりはないヨ。
お前次第だけれどもネ。 」
「 ・・・ 」
「 それで、話を戻すとするヨ。お前のその実力を踏まえて霊術院での成績を調べると、お前のそれはちょっとした優等生の域をでない。
筆記は優秀だが、実技は並。今のお前のそれといまいち噛み合わない。つまるところ、お前、霊術院では意図して手を抜いていたんだろう? 」
「 まさかそんな。 」
「 しらばっくれない方がいい。前にお前のサンプルを取った時に、身体を調べさせてもらったからネ。
あれは、正真正銘お前自身の実力。何故、それを隠すかネ?霊圧も大分制御しているようだが。 」
「 何故、分かったのです? 」
「 なにかね?キミは技術の畑の死神だからと感知できないものだと思っていたかのかネ?仮にも隊長であるこのワタシに。 」
「 ・・・ 」
「 ズバリ当ててやるヨ。お前、他人から賞賛されるのが嫌なんだろう? 」
「 ・・・ 」
「 図星だネ。何故それが分かったかも教えてやるヨ・・・おっと。その前に着いたみたいだネ。さぁ、ココだヨ。 」
マユリとネムがその堅牢そうなドアの前に立つと、ひとりでにそれがガラガラガラと開かれていく。
俗に言う、自動ドアというものらしい。
「 ここが、兵装開発科だ。ここでは、斬魄刀を除いた戦闘技術の科学的研究が行われている。
最もその多くがしょうもないガラクタだがネ。 」
「 ガラクタ。これらがですか? 」
悟は目を疑った。通路の横に置かれた、機械仕掛けのカラクリ。俗に言うロボットという奴の試作品であるが、それを指してガラクタとマユリは一脚した。とうていその一言で片付けられる者には見えなかったのだ。
かなりの完成度を誇るそれは、見るもの、少なくとも悟には威圧感と、高揚感に近い物を抱かせた。戦闘ともなれば、副隊長よりも頼りになりそう、そう思わせるほどだ。この鋼の巨人は虚から死神を護る動く要塞ともなってくれるやもしれない。
「 最近現世で流行ってる、アニメとやらに影響を受けて開発されたものだが、お前はこう思ったろう?すごく頼りになりそうだ。一般の隊士よりも戦力になる。量産などしようものならば尚更だ。 」
「 ・・・お恥ずかしいながら、そうですね。 」
「 確かにそうかもしれんが、この巨躯に見合った様々な問題にも直面していル。スペースの圧迫はもちろん、開発コストの高騰もさることながら、なにより・・・ 」
「 思想、ですか。 」
「 基本的に死神は死神の力だけで戦いたがル。斬拳走鬼で、ダ。どんな落ちこぼれであろうと、基本的には死神は誇りを重んじル。仮に現世任務中に虚の集団、或いは前のように大虚にでくわしたとしても、これを使いたがらないだろウ。
"こんなものに頼るくらいならば、死んだほうがマシだ"、とネ。 」
「 隊長は、どうなのですか? 」
「 ワタシかネ?愚問だよ。 」
マユリは振り向いて悟に顔を向ける。やはりこの化粧には、彼という死神がこれでもかと前面にでていた。
そして、この十二番隊長の返答も、他とはまるで違うであろうものであった。
「 そんなもの、俄然興味が湧かないヨ。 」
「 と、言いますと? 」
「 ワタシは死神の在り方とやらはそそらなイ。ワタシは科学技術に身を捧げた死神だからダ。興味があるのは、研究対象と、発明だけダ。科学者とは、そういう知見進展に快楽を覚える生き物ダ。ワタシは六番隊隊長の言うような誇りがどうのより、そういったものの方が好きダ。 」
「 ・・・ 」
「 アレを作った連中も、同じだヨ。絡繰仕掛けに脳を焼かれたもの。火薬に脳を焼かれたもの。いずれも基を突き詰めれば科学技術への関心に行き着く。アレだってそうした関心、欲求から出来たものダ。そのうち彼らの発明が、陽の目を浴びることになるかもしれないが、少なくとも、今はそうではなイ。鋼材から離れられぬ彼らの心など、余人には理解し難くて当然なのだヨ。しかしいつかは、と望みは幾らでも持てる。科学とは、探求の道なのだからネ。 」
「 ・・・ 」
悟は、それを聞いてマユリの評判を思い出した。恐ろしい人物。マッドサイエンティスト。確かにそうなのかもしれないが、同時に科学というものに対してこの上なく純粋な人物でもあるのだろうとも感じ取れた。
「 さぁ、ココだヨ。 」
マユリはまた別の扉のロックをカードキーを読み込ませて解除した。
「 王途川晴彦。あの女、お前と並んで中々やるものだヨ。隊士が弱いのなら、手を加えてでもでも強くすれば良い。その為の科学技術ダ。そう言ってたった三月でカタチにしてみせた。 」
「 これは・・・ 」
「 そう。これが、彼女の研究、であるらしイ。 」
3人の入ったその部屋のなかの怪しい装置、その緑色の液体で満たされた槽の中には、見目麗しい女が一人。
あられもない姿で、槽の中にプカプカと浮いている。その全身には、チューブが数本繋がれていた。
明らかに、なにかされている。
これからみたい要素は?
-
悟の同級生
-
裏破道
-
その他