時は流れ、俺は一時的とは言え
勝利の翼号に乗船し続ける事となった
理由は単純、レッドフードが居なくなってしまった穴
そこを埋めるには量産型のニケでは足りないからだ
コレはリリーバイス本人からの要請であり
人類の為と考えれば動かない理由なんぞ無い
という流れになり、俺は入り口の防衛を任されたが
案の定、秘密裏の準備もラプチャー達に見つかり
入り口への襲撃は止まる気配がない。
かと言って、ここで人類の希望であるゴッデス
そして彼女らを支援する役目を持つ量産型
どちらも欠けてはならない存在であり疲弊させては
これからの作戦に支障をきたすと考えられた
だからこそ、食事も睡眠も休憩も必要は無い
俺が戦場を支配し続ける事が優先された
魔力による炎変換で発生したビームを
縦横無尽に発射し続け、階級で言うならば
下の二階級は、その一撃のみで灰塵と化す
それでも此方に到達可能なマスター級以上は
己が極めし雷槍を宝具へと昇華させた技法
そこまで良好と言えない霊脈でしか無い場で
多量の魔力を消費する梵天よ、地を覆え等は
多用する事が推奨されない、範囲も大き過ぎるのでな
その様な時間を過ごし続け、既に2ヶ月以上は過ぎ去った
リリーバイスは万全の状態で指揮官と共に
上層部の命令…つまり緊急の呼び出しに応答した
現在のゴッデス部隊のリーダーはドロシーとなり
彼女の采配によって、この部隊は何とか稼働している
だが、俺は行き着く先の結末を知ってしまっている
リリーバイスは、ここで退場となる、幾ら彼女が強く
最強の名を欲しいままにしたニケであろうと
大勢を護りながら戦うには戦闘時間が遥かに短いのだ
短期決戦用に生み出されたリリーバイスが勝てる訳が無い
…俯瞰して見れば見る程、俺という存在に疑問が付く
俺は何故、こうして生きているのだろうか?
誰かを依代とした影法師でしかない男が何故生きている?
全てを物語の一幕としか見てしまう男がなぜだ?
あぁ、俺は本当に塵芥と同然の価値しかない…
"奴"をこの手で葬り去る方が早く終わるだろうにしない
こうして彼女の犠牲の元、物語を進行させようとする
俺自身を見る度に、憎悪と憤怒が溜まり続ける
だが彼女らが行く事に反対したところで何が変わる?
俺はリリーバイスとは関わりがあるが信頼関係は無い
全員とはほぼ初顔合わせしただけの男なのだ
そんな男が意見を無碍にし、自身の意見に従わせる?
そんな事を誰が聞く耳を持つと言うのだろうか
持たないだろう、だから助言だけはし続けた
悔いの残らぬよう、遺言の様な音声録音だけでも
この艦内に残しておけば何か有れば皆が聞けると
それは指揮官にも言っておいた、短い付き合いだが
悪くはない男なのだ、俺の見ていた物の通りに
世界が動くとは限らない、もしかしたら死ぬかもしれん
そう考えるならば、遺言を残させるのは妥当な判断だろう
100年後の未来まで残される4人に向けて遺す言葉
そうなるとは限らない、だが保険は大切だ
4人の精神が原作よりマシになれば変わる未来もある
それ程までにリリーバイスと指揮官、この両名は
彼女らにとっての支えとなり得る存在なのだ
リリーバイスは、俺に言葉を残そうとしたが
その様な言葉は不要と返した、俺は彼女らより
遥か先まで生きる事が分かっているのだ
死ぬ事も許されない身体であるならば
誰かが遺した言葉に縋り付き、それを糧にし歩く等
この肉体に更なる不敬となり申し訳が経たなくなる
誰かの指標になるならば本望だが誰かに縋る事は
戦士として恥なのだ、そんな事、出来るわけが無い
今も後方ではドロシーらゴッデス部隊が補給部隊と
量産型ニケの護衛を勤めながら、補給と休息を受けている
俺も魔力供給を受けたいが、そうも言っていられない
『皆さん!急いでください!カルナさん1人に任せていては彼の負担が増え、この後に控えるアナキオールとの戦いに支障をきたしてしまいます!』
『各部隊はカルナが見られない方向の警備と防衛を!補給部隊はゴッデスから援護を受けつつ各部隊に補給を!それ以外はトラップを使って後退して殲滅をお願いします!』
無線から届く声は酷く焦っている状況
そう、アナキオールが此方に接近していると
広域索敵を行える部隊から報告を受けたのだ
アナキオールには俺を筆頭としゴッデス部隊が
主戦力として真っ向から受け持つ形になる筈が
まさか、アナキオールとラプチャーの大群が
同時に来るとは思っていなかった…誤算が生まれた
四方攻撃であった戦場は一方通行状態となり
俺の力を削ぎ続ける形状へと変化していた
ここでゴッデスを矢面に立たせ戦わせるのは
愚策と提案し、俺が出続ける事にした訳だが
こうされるとなると魔力が厳しいものとなる
大規模襲撃をゴッデス部隊と共に駆けた事は有れど
こうした雪崩の様な、空と地上の境界線を無くす程
多量のラプチャー相手はゴッデスは初だった為
全員が酷く混乱する事は無理もない事だろう
だからこそ護らなければ俺が居る意味が無い
「宝具解放、貴様らなぞに武具など無粋…真なる強者は目で射殺す、
右目に魔力が大きく募り、蓄えられ
赤く輝く、その熱は…ビームとなり敵を裂く!
戦場の地を一撃によって火の海と化すのだ
空の敵に向け、左手を掲げる
「宝具解放、見よ、これこそ我が肉体に宿りし源の流れの煌めき、
自身を中心点とし多数の雷槍が敵に向かい
着弾と同時に連鎖的に巨大な爆発を魅せる
対軍宝具に分類されるだろう物なのだ
ラプチャーには効果的と言っても過言では無い
宝具の真名解放は威力を増加させる
この世界では技の名を口に出したとて
俺と敵対する英霊は居ないのだ好きに使える
「…来たか、やはり、このタイミングだったか」
予めゴッデス部隊に通達していた動作を
無線機に送る、1回目が殲滅完了の合図
2回目が撃ち漏らしが出てしまった合図
そして3回目が…アナキオール出現の合図
無線機からは、まだ防衛構築すら出来ず
補給すら終わっていない事が分かりやすく聞こえる
つまり、直ぐに出られるのは俺だけということ
委細承知
「ゴッデス部隊に通達、補給が終わり次第、戦闘音が1番巨音な場に来い」
『待ってください!カルナ!貴方一人で…』
俺は無線を投げ捨て地平線の先から此方に
向かってくるアナキオールの元まで魔力放出によって
超高速で接近する、槍を前に構えながらのチャージだ
アナキオールは薄らと微笑みながらビーム攻撃をしてくる
だが、その程度で俺の鎧に傷1つ付ける事すら不可能
全て相殺し、ガラスの靴に向けて黄金の槍を突き刺す
その衝突で発生したエネルギーにアナキオールは
何とか耐えるが盾は1枚台無しにさせてもらったぞ
「頭上注意だ、悪く思え」
直ぐさま俺が方向を変えながら彼女の上部に移動し
左手に出現させた赤い雷撃で形成された複数の槍を投下
その衝撃でアナキオールを地上に墜落させる奇しくも
最初と同じ様な墜落だった為か、上手くダメージコントロール
つまり受身を取った様だな、まだ立ち上がり俺を殺さんと
明確なる殺意の籠った目を向けてくる
だが、俺の役目はここまでの様だ、地面に降り立った
俺の隣を赤い閃光が通り抜けアナキオールの盾を射抜いた
だから俺は声を大にして叫ぶように通達する
「ゴッデス部隊に通達する!俺はコレよりアナキオールが引き連れて居たラプチャーの第二波を相手取る!お前達はアナキオールの対処をしろ!」
その言葉を最後に、俺はその場を飛び立つ
その姿をアナキオールは追おうとしたが
赤い閃光を撃ち込んだ本人が、それを阻止する
その光景を流し目ではあるが確認できた為
俺が成すべき事を、成しに行こう
第二波は思いの外多かった
質で言えば第一波を遥かに超えている
ウルトラなぞ、6体は居るぞ
ストームブリンガーは4は飛んでいる
他は分からんが大きさからしてタイラント級
ロード級は数えたくもない数がわらわら居る
「開幕から本気で行かせてもらう我が身を呪え…
引き絞った右腕によって本気で投げられた
黄金の槍は劫火を纏い地に向けて発射された
その規模は正に小隕石と同程度だろうか
やはり及ばないが、だが十分だろう
空を飛ぶラプチャーは回避運動を取るが
既に遅い、ストームブリンガー諸共
全てを燃やし尽くした、地上のラプチャーは
それぞれの防御手段や回避手段で逃れる
が、その程度で宝具を耐えられる訳が無く
瞬く間に灰と化していくが何匹かは残った
やはりタイラント級でもウルトラは
感染型である為、硬い物だ…だが
地面が融解し溶岩や硝子化している状態なのだ
既に装甲は融解し、武装の大半は壊れ
体当たり程度の火力しかあるまい
「ならば、貴様らに最終宝具を使用する意味すら無し…だが全力を持って葬らせてもらう」
魔力で突き刺さったままの黄金の槍を引き戻す
そして槍、本来の力、雷の力を存分に纏わせる
原典では雷神から賜りし槍、本来の姿ではなく
仮初であろうと、神器であるのは変わりなし
で、あるならば、かの雷の力を扱えん訳が無い
「擬似魔術領域充填、空間圧縮、処刑執行権限、承諾、擬似領域展開。神々の王の慈悲を受け取れ、雷霆を仰ぎ見よ…贋技法:
俺が位置する上空に向けて体当たりをせんと
跳躍したウルトラは届く事なく地に這いずる
大いなる神雷を再現した儀式による偽の宝具
だが、雷神の槍を触媒とした魔術は凄まじい
轟音と共に雨雲も無い場から出現した
特殊な赤雷が標的であるウルトラ数体を回路事
焼き付くし、コアすら再利用不可にさせた
「…是非も無し」
地形は完全に荒れ果て、今後数百年は跡が残る
そう感じさせてしまう光景に手を添え神に祈る
我が身の父よ、どうか、どうか、この地を治したまへ
コレが何も効果なぞ無い事なんて分かっている
だが、それでも、祈らせてくれ…
第二波は予想以上であり、タイラント級が25体
ロード級が数え切れん数と確実に人類を殺さんとする
殺意を感じた量ではあったが、魔力放出を抑え
第一波とアナキオールを抑え込んだ俺には
お釣りが多量にあったのでな惜しげも無く使用し
魔力切れ寸前まで全員を塵芥へと変化させてきた。
結果として地形すら変化させてしまったがな
最終宝具すら切ってしまうかと考えた所で
止めた俺は、まだ理性的だったかもしれん
そして今、霊脈に干渉出来ず魔力が足りない為
それだけの為に魔力を費やし続け
完全徒歩でアークが存在する地点まで歩いていた
既にレッドフードは旅立っただろうか?
そう思いながら、帰路を辿っていれば
遠くから数人規模の足跡が響いてきた
見上げていた視線を下に向けてやると
退役した筈のレッドフードを含んだ
ゴッデス部隊が此方に向かって走ってきていた
俺は彼女らが目視できる距離まで歩いて行く
「あっ!皆さん居ましたよ!おーい!カルナさぁぁぁぁん!!!」
此方を発見できたスノーホワイトがいち早く
俺に向かって手を振りながら近付いてくる
既にレッドフードとの別れ話はしたのだろう
目には泣いた跡が残っている。
「カルナ!お怪我は有りませんか!?大丈夫ですか!」
ドロシーも急いで此方に向かってくる
彼女らしくもなく泥に塗れていたが
それでも風格を失わず、リーダーらしく
強かに戦ったのだろう、直ぐに心配へと
向かう程度には責任感があるのだろう
こんな単独行動を強行した奴に向けて
心配をしてしまう優しき心を失わず居てくれ
「ほぉ…やはり、無傷か、私達とは真逆であるな」
紅蓮は俺の被害状況に怪しい笑みを浮かべながら
安心感を覚えた様な様子で俺を見ていた
まだまだ余裕がある様に見えるが傷だらけだ
やはり矢面に立つ事が多い彼女だからこそ
余裕を常に持ち続けているのだろう
それが痩せ我慢としても美徳ではある
「あぁ…良かった…ふぅ、やはり伝説通り、掠り傷一つ有りませんね。」
ラプンツェルは安心した様に
ホッと息を吐いて微笑んでいた
恐らく俺の生きていた記録が残っており
俺が不死の存在という事が広まっていたのだろう
「な〜んか、あたしらが盾を1枚持ってかれてたシンデレラ…じゃなくてアナキオール単体に命賭けてる横でシレッと更に凄い事されてると差を感じるよなぁ…」
此方もボロボロになったレッドフードが
自身らの戦果がアナキオール単体に比べ
俺の戦果が突出していると言っているが
お前達の方が遥かに偉業を成し遂げているぞ
「ゴッデス部隊臨時隊員、カルナ、帰投した、そしてお前達、良くアナキオールを鎮圧してくれた、本来ならば俺が対処に当たるべき相手を俺の独断によりお前達に向かわせてしまった事に非礼を述べる、すまない」
俺は素直に全員の前で非礼を述べた
本来ならば俺単独でアナキオールを対処
そして準備を終えたゴッデス部隊と共に
第二波を止めるという計画ではあった
勿論、俺による独断の計画であったが
それすら変更する理由となったのは
レッドフードの早期到着であった
アレが無ければアナキオールを殺し切り
第二波に向けて最終宝具を使用していた所だ
だが結局は使う事なく終えれた事に
感謝してもし切れん、何せ"奴"に見られれば
対処法を模索し始めていたかもしれんからな
「…分かりました、確かに独断先攻をした事には言いたい事こそ有りましたが、貴方が第二波を対処していなければ私達は壊滅していました、だから、此方からも礼を…軍に属しておらず戦う理由も無い中、私達に力を貸して頂き、本当にありがとうございます。」
「私からも礼を、お主が居なければアナキオール単体に全戦力を投じれなかった、過酷な戦場を選び抜き、その場で出来る最大限の戦果を上げ続け、皆を守り抜いてくれ、ありがとう。」
「ですが、あまり無理をしてはいけませんよ?カルナ、貴方は私たちゴッデス部隊以上に人類が生存出来るという希望を抱ける象徴なのです、もし何かあれば皆が希望を失ってしまうのです。だから、無理は禁物ですよ?ですが、本当に生きてて良かった…!」
「そうだな、あんたにはアナキオールと初めて戦った時から助けられてばっかだ、だけど、それすらあんたには礼には及ばないって範囲なんだろ?だけど、言わせてくれ、あたし達の面子って奴が潰れちまうからな…ずっと人類の希望として戦い、戦場の士気を上げ続けてくれて助かった、あんたが居なかったら私が着く前に量産型の大半が居なかったって思えば、そういうしか無いからさ…本当に、ありがとうな」
「あの、その…カルナさん!みんなを助けてくださって本当にありがとうございます!だけど…カルナさんまで居なくなってしまうと考えた時、嫌な気配が感じてしまって…だから!これからは私達を頼ってください!私達に貴方の背中を預けさせてください!」
…そうか、俺は仲間だと思われていたのか…
ありがとう、俺はその言葉だけで
その心だけで満たされてしまった
だから、頼む、俺の足りない口よ
今回は流石に空気を読んでくれ
「…ありがとう、お前達…その言葉と心だけで俺は満たされた、そしてスノーホワイト、謝罪させてくれ、俺は誰かに心から背中を預ける経験が無い…だから、これからはお前達の元で学ばさせてもらおう」
笑ったのは何年前だろうか思い出せないが
今、俺は笑えているのだろうか
だが…心は確かに満たされきった
それから他愛の無い会話を続けて行く内に
レッドフードが、旅に出る事を教えられた為
全員で見送る事になった既にゴッデスメンバーは
話し終わっていた為に俺と話す機会が設けられた
だから俺は、何故か自身に備わっていた魔術
虚数魔術によって貯蔵し託された遺品達の中から
彼女が好きそうな音楽カセットとペンダントを渡した
「えっと、カルナ?これって何のペンダントなんだ…?すっげぇ輝いている純金で高そうなんだが…?」
「あぁ、俺の耳飾りが割れた時に作ったペンダントだ…確か48年前だった筈だ」
「ものすげぇけど豪華過ぎて逆に付けれねぇよ!」
「だが、付けておけ、長く存在している物だ良いことがあるだろう…そして、生きる希望を失わず、明日への未来を想い続けろ、俺達はお前の帰還の為、準備を進めるだろう、未来での再会を期待しておけ」
「…分かったよ、未来の事を考えて、再会する事に期待しながら気長に待ってるさ、それじゃあ、皆、あたし行くわ、もう1回、旅をしてくる」
そう言ったレッドフードを全員で見送った
スノーホワイトは彼女が見えなくなり
声も届かなくなる場所まで泣かなかった
俺が初めて見た時より遥かに強くなったな
全員で見送った時
彼女は人生で1番満足したというような
その様に此方が感じる微笑みを浮かべていた。
ああ、故郷は遠い所
青い空が眩しい場所
甘いパン屋の香りが漂い
友の笑い声が響く場所
強い風が吹いている
我が友に教えて
この魂がまた
故郷の空に戻るのだと
白い雲が見える
我が友に伝えて
この体があなたと同じように
故郷の土に埋められるのだと
「んぅ…くぁぁぁぁァァ…あぁ〜"ひっっっさびさにぐっすりと良く寝たなぁ…っと、ここから3時間くらい歩いたら目的地か、途中で倒れたりしないと良いんだが…にしても、アレから早いもんだな」
レッドフードは古めかしい民家の中で目覚めた。
そして、何かがおかしい事に気づいた。
彼女の記憶ではココに入った時はここまで酷くなく
なんなら、埃はこんなに溜まってないし
ボロボロと老朽化している程、酷くなかった筈なのだ
「…ここ、こんなにボロボロだったか?まあ、ヘロヘロでよく見ずに入ったからな…あんまり記憶に無い…」
レッドフードは立ち上がった。
大量の埃が舞い散り彼女に積もっていた
埃も見事に落ちていく
「…こんな酷い所でよく寝てたな。んじゃ、行くか、相棒?」
レッドフードは傍らに置いていた
カセットテープのボタンを軽快にカチッと押す
すると音楽がキチンと鳴っていた、"昨日のように"
「あれぇ?あたしのカセットテープって昨日まで老朽化しきってぶっ壊れ間際だったよな?なんで鳴ってんだ?…てか、なんか綺麗だな」
カセットテープの状態に対して
少し疑問を持っていたが
その疑問はすぐ別の箇所に移る。
「…何か変だな、外の景色って、こんなんだったか?」
全てに違和感を感じる。
においも、風も、土の感触も、身体の状態でさえ
何より、肌身離さず付けているペンダントが
自身の杜撰な手入れでも綻びすら見せなかった
ペンダントから光沢が薄らだが、抜けているのだ
もしかして、あたしの身体が自然治癒したのか?
そんな希望的観測の中、突如として銃声が響いた。
その場所へと急行するが既に戦闘の痕跡があった。
ニケが大勢倒れており、その反対側でラプチャーの
殆どが破壊されていた。その中に一人のニケと
一匹のラプチャーを見つけ、射撃姿勢を取ろうと
杜撰だが手入れを欠かさなかったウルブズベインを
取り出し、引鉄に指をかけ動かそうとする
「ッ!完全に錆びてる…!?なっ、何で急に……!」
引き金は既に錆び付いており
まるで何年も使っていないような状態へと
見事に変わり果てていた。
その状況に最優先で排除しようとラプチャーが
レッドフードにビームを放つが軽く身で躱す
その隙を隠れていた量産型ニケがコアに
センターホールドを合わせ銃弾を叩き込んだ
見事、ラプチャーは沈黙と共に崩れ落ちた
「まさか…」
レッドフードは悪い予感を打ち払うように
ラプチャーを撃ち抜いた、そのニケに近づく。
「お前、ニケか?」
問いに対して、量産型のニケは頷く。
「その、さ…頭のおかしな奴に見えるのは分かってんだけどさ」
レッドフードは嫌な予感を確信に変える為
量産型ニケに対して質問を重ねた
「今、何年か分かるか?」
量産型のニケは不思議そうな顔のまま
言われた通り何年か分かる携帯端末の画面を見せた。
レッドフードはしばらくの間、画面に表示された
彼女にとって信じられない数字を見つめていた。
「…はぁ。気長に待つと言っちまったけど、これじゃ再会どころじゃねぇな」
端末に表示されていた年は
レッドフードが最後に確認し生きていた年から
未来の年代、そう既に30年が経過していた。
「なぁ、ちょっと話さないか?その…何て呼んだらいい?お前のこと…… 認識証…量産型ニケ…RR-15436?これが名前だって?」
量産型ニケは頷いた。
が、レッドフードは怪訝な顔をする。
「こんなのが名前な訳がないだろ、実名は?」
「量産型ニケに名前はありません。」
「嘘つくなよ、それでも何か1つは名前あんだろ?先に言っとく、あたしの名前はレッドフード、よろしくな」
「それは実名ですか?」
「ん…あぁ、そうだな、お前の名前は?」
「…ラピ、ラピと言います」
こうして、赤と赤は邂逅を果たした。
だが、レッドフードは忘れていた。
どうして銃は錆び付いていたというのに
彼女のカセットテープだけはあれ程
綺麗だったのかを。そんな彼女らの傍ら
廃屋の先にある林の影には
くすんだ灰色の外套に身を包んだ"者"が居た
「…動き出す」
灰色の影は、彼女らとは反対方向へと
歩き出した…コレは、少し未来の話である
【RED ASH : END】
装飾:大英雄のペンダント
大英雄が身に付けていた耳飾り
その半分に金属のチェーンを繋いだだけの
素朴な物、だが想いは必ず力となる
大英雄と呼ばれる者は、そういう物だ