無人島での激闘から数時間後。
「偉大なる航路(グランドライン)」を進むオーロ・ジャクソン号は、異様な活気に満ち溢れていた。
「わっはっはっは! 新しい仲間の誕生だ! 宴だァ――!!」
ロジャーの豪快な号令とともに、甲板には無数の酒樽が運び込まれ、巨大な海王類の肉がローストされ、音楽が奏でられる。
ロジャー海賊団の恒例行事、歓迎の宴が幕を開けた。
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宴の中心には、ロジャーの隣に腰掛けた、黒髪の青年・**ミラ**の姿があった。
背負っていた極太刀『政宗』は近くに立てかけられ、彼は酒杯を傾けながら、賑やかな船内の様子を眺めていた。
「いやぁ、まさか本物の『龍』の能力者とはな」
ミラの隣に座ったシルバーズ・レイリーが、笑いながら酒を注ぐ。
「しかも、バレットを巨大化の上からねじ伏せるほどの力。わが船長が一目惚れするのも無理はない」
「……俺自身、まだこの力を完全に制御できているわけじゃない」
ミラは自身の右手に視線を落とし、静かに言った。
「俺は、リュウリュウの実 幻獣種 モデル『黒龍古の伝説に語られる、世界の終焉をもたらす龍の力だ」
その言葉に、少し離れた場所で斧を研いでいたスコッパー・ギャバンが、ニヤリと笑って近づいてきた。
「終焉の龍、か。恐ろしい能力だな」
ギャバンは隣に座ると、自身の酒杯をミラに向けた。
「だが、お前さんの覇気は、その力に飲まれることなく、自身のものとして扱えているように見える。……その『政宗』の剣筋も、ただの能力者じゃねぇことを物語ってた」
「そうでありたいと思っている。……この船に乗ったのも、この力が進化していく先にある『世界の果て』を、この目で見届けるためだ」
ミラは立ち上がり、酒杯を掲げた。
「俺はミラ。背の長刀『政宗』とともに、この船の航路を切り拓く力となる。……ゴール・D・ロジャー、お前が見る世界の果てまで、付き合わせてもらう」
「わっはっはっは! 頼もしいなぁミラ! 俺の目に狂いはねぇ! お前となら、必ずそこに到達できる!」
ロジャーがミラの酒杯に自身の杯をぶつけ、二人は一気に飲み干した。
船員たちから、割れんばかりの歓声と拍歩が巻き起こる。
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宴が大盛り上がりを見せる中、甲板の隅で、二人の少年がヒソヒソと話し合っていた。
麦わら帽子を被った赤髪の少年、**シャンクス**と、赤い鼻が特徴的な少年、**バギー**だ。
「おい、シャンクス……」
バギーが、宴の中心にいるミラを指差しながら、声を震わせる。
「あのミラって奴……本当に人間か? 俺、見たんだぞ……バレットが巨大化した時、あの奴……もっとデカい、真っ黒な、悪魔みたいな龍になったんだぞ!」
「ああ……俺も見たよ。あのブレス、島を半分溶かしてた……」
シャンクスも、いつもの明るさはなく、少し顔を引きつらせている。
「あの時、あの奴の覇気……本当に死ぬかと思った……。ロジャー船長は楽しそうだったけど、俺……あの龍の姿、夢に出そうだ……」
バギーは、自身の腕を抱え込み、ガタガタと震えている。
「大丈夫だよ、バギー。ミラはもう、俺たちの『仲間』だ」
シャンクスは、バギーの肩をポンと叩いた。
「それに、あの強い力が仲間なら、これからの航海、もっともっと面白くなるはずだ!」
「面白い……? 面白いどころじゃねぇよ! あの龍が暴れ出したら、俺たち全員、一瞬で灰だぞ!」
バギーが絶叫する。その声は、音楽と歓声に消されていった。
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宴の喧騒から少し離れた場所で、全身に包帯を巻いたダグラス・バレットが、酒杯を片手にミラを睨みつけていた。
「……リュウリュウの実、幻獣種……黒龍……」
バレットは、己の敗北を噛み締めるように、苦渋の表情を浮かべる。
「今回は、俺の負けだ。だが、次こそは……!」
彼は酒を一気に飲み干すと、空になった杯を地面に叩きつけた。
「俺が世界最強になる男だ。……ミラ、お前を倒して、俺が最強であることを証明してやる!」
バレットの瞳には、敗北の悔しさではなく、ミラをライバルと認め、次は必ず勝つという強い決意が宿っていた。
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一方、宴の中心でロジャーと笑い合っていたミラは、ふと、甲板の隅で震えているシャンクスとバギーに気づいた。
「(……まだ、あの時の恐怖が残っているのか)」
ミラは酒杯を置き、二人に近づいていった。
「……何か、困ったことでも?」
ミラの静かな声に、二人はびくりとして、同時に後ろへ下がった。
「う、うわぁぁぁッ! 龍だぁぁぁッ!」
バギーが悲鳴を上げ、シャンクスの後ろに隠れる。シャンクスも、顔を青くしながらも、バギーを守るように前に立った。
「……龍の姿に、驚かせてしまったな」
ミラは、少し申し訳なさそうに、笑みを浮かべた。
「俺は、黒龍の能力を持っている。……だが、俺は俺だ。お前たちの仲間だ。……恐怖心を、無理に拭い去る必要はない。……だが、俺は俺だということは、忘れないでほしい」
ミラの言葉に、二人は顔を見合わせ、少しだけ安心したような表情を浮かべた。
「……う、うん! 分かったよ、ミラさん!」
シャンクスが、明るく答えた。バギーも、シャンクスの後ろから、恐る恐る頷いた。
「(……少しずつ、慣れていけばいい)」
ミラは、二人の頭を撫でると、再びロジャーの元へと戻っていった。
宴は、深夜まで続いた。
新しい仲間、そして伝説の「黒龍」の力。
オーロ・ジャクソン号は、恐怖と期待、そして、新たな絆を乗せ、未知なる冒険へと向かって、荒れ狂う海を突き進んでいく。