ロジャーとミラの「合体技実験」で湧き立った翌日。
オーロ・ジャクソン号を密かに尾行する、不気味な漆黒の軍艦が姿を現した。
船首に掲げられているのは、世界政府の紋章――だが、通常の海軍とは異なり、聖地マリージョアの最高戦力「神の騎士団」直属の特別追撃部隊だった。
「……ん? なんだあの妙な船は。海軍の軍艦とも違うようだが……」
甲板で腕を組み、怪訝そうに視線を送るミラ。
「ミラ、あいつらは『神の騎士団』の追っ手だ。聖地マリージョアの刺客だよ」
レイリーが煙草の煙を吐きながら教えてやる。
「かみ……のきしだん? 天竜人の手先か? 天竜人なら街で見かけるあのお気楽で豚のような奴らのことなら知っているが……神の騎士団? あいつらは普通の天竜人とは何が違うんだ?」
ミラが首をひねると、レイリーは苦笑いを浮かべた。
「あの肥え太った普通の天竜人どもとは別種さ。天竜人の中でも武闘派の精鋭、いわば『天竜人の警察・処刑人』みたいな連中だな。世界の法も海軍の指示も聞かない、マリージョアの特権階級の軍事力だ」
「ほう……なら少しは骨がありそうだな」
ミラが納得したように頷く横で、レイリーは言葉を続けた。
「あいつらの狙いは俺たちの首や宝じゃねぇ。シャンクスだ」
「なに? シャンクスだと?」
「ひ……! またあの気味が悪い仮面の奴らだ……!」
バギーがシャンクスの前に立ち、震えながらもナイフを構える。シャンクスは唇を噛み締め、ロジャーたちの背中を見つめた。
「俺は……マリージョアなんか行かない! 俺はロジャー船長たちの船員だ!」
ゴッドバレー事件以来、彼らはシャンクスという最高位の血筋(フィガーランド家)を取り戻すため、度々こうして密かに刺客を差し向けてきていたのだった。
「なるほど……よく分かった。天竜人の中でも戦える連中が、俺の弟子を無理やり奪いに来たということだな」
ミラの中で状況が整理された瞬間、その黄金の瞳に冷徹な威光が宿った。
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漆黒の軍艦の甲板から、神の騎士団の一角である**ソマーズ聖**率いる精鋭たちが、拡声器越しに横柄な声を張り上げる。
『ロジャー海賊団……! 俺が狙うはそこの赤髪だけだ! フィガーランド家の血を引く者を、下界の海賊ごときが連れ回すな! おとなしく引き渡せ』
向こうがこちらの船に乗り込んでくる様子もなく、遠巻きから高圧的に警告を発していたその瞬間――。
シュンッ!!
「な……ッ!?」
音すら置き去りにする超絶的な跳躍。
こちらの船の甲板から一瞬で姿を消したミラが、海を飛び越え、すでに神の騎士団の軍艦の甲板へと躍り出ていた。
「な……なに!? いつの間に」
「お喋りが長い」
至近距離で鋭く光る黄金の瞳。
慌てたソマーズ聖が、その全身から超人系悪魔の実――**『イバイバの実』**の能力を発動!
「荊ァ〜〜ッ狩」
ソマーズ聖の肉体から黒々とした無数の巨大なイバラが爆発的に噴き出し、武装色の覇気を纏った鋭い棘の津波となって、至近距離からミラを丸呑みにせんと襲い掛かった!
――だが。
「――**『八刀一閃』**――」
カチリ……。
ミラは背の名刀『政宗』の柄に手を掛け、認識すら不可能な超高速の居合いを放つ。
空間に浮き上がる無数の斬撃の軌跡。ミラの刀が鞘へと完全に納められたその一瞬――!
ズババババババババッ!!!
「ぬあぁぁぁぁッ!?」
押し寄せていた巨大なイバラの大群が、ソマーズ聖の肉体もろとも瞬時に幾十ものミジン切りとなって甲板へ崩れ落ちた! 鮮血が舞い、イバラごと切り刻まれたソマーズ聖が絶叫する。
「ソマーズ聖……ッ!? 馬鹿な、一瞬で……!?」
「危険だ、お助けしろッ!!」
護衛として影のように控えていたCP0の仮面の男たちが、動揺と焦燥に表情を強張らせ、即座に「剃(ソル)」でソマーズ聖の助けに入ろうと躍り出た!
――だが!
ドドンッ!!
「わははは! 邪魔をするなよ、白い仮面ども!」
飛来したロジャーが、その巨躯でCP0の立ち塞がる軌道へ豪快に割り込んだ! 愛刀『エース』から解き放たれる覇王色の威圧だけで、突進してきたCP0たちの足を強引に止めさせる。
「ろ、ロジャー……ッ! クソッ、退け……!」
「いいや、退かん! ミラの邪魔はさせんぞ!」
CP0がロジャーの圧倒的な覇気に阻まれ、手も足も出せず立ち尽くす目の前で、ミラは倒れたソマーズ聖を見下ろした。
「な……ッ!?再生している?そのイバラの能力とも違うどうなってやがる?」
ミラの瞳が驚愕から冷徹な色へと変わる。
細切れに切り刻まれたはずの傷口から黒い煙のような異様な気が立ち上ると、肉体が蠢き、傷痕ひとつ残さず完全に「再生」したのだ。
「ギハハハ……無駄だ、俺は、聖地の加護を受けた……その程度の剣撃では滅ばん!」
ソマーズ聖が冷酷な笑みを浮かべ、再びイバラを蠢かせる。
「……そうか。ならば、これならどうだ?」
ミラの瞳が冷たく光り、今度は『政宗』に黒紫の**『覇王色の覇気』**を激しく纏わせた!
バリバリバリッ――ッ!!
「ぐあぁぁぁッ!?」
二太刀目の覇王色を乗せた一撃が、再生しかけたソマーズ聖の胴体をイバラごと深々と斜めに両断する。
「な……なに!? 傷が……再生が重い……!? ぐ、あああッ!?」
先ほどとは打って変わり、黒紫の電撃が傷口を苛み、黒い煙の蠢きが極端に鈍化した。切り口がジクジクと熱を帯び、ソマーズ聖の顔が苦痛で歪む。
「ほう……『覇王色』を纏わせれば、その異質な再生とやらも著しく遅れるようだな」
ミラが不敵な笑みを浮かべて刃を返した。
「な、なぜだ……下界の海賊ごときが、神の加護を弱めるほどの王の資質をこれほどまでに……ッ!」
ソマーズ聖が動揺と痛みに顔を青ざめさせ、足止めされていたCP0たちも絶望に息を呑む中、ロジャーがニカッと笑ってミラの隣へと並び立った。
「わはははは! 流石だミラ、仕事が早い! そうなんだよ、あいつら覇王色を叩き込んでやると再生がガタガタに遅くなりやがるんだ!」
「なら、話は早い」
オーロ・ジャクソン号の先端に戻りミラとロジャーが並び立ち、ふたり同時に極限の覇王色を刃に滾らせる。
ふたりの規格外の怪物が放つ凄まじい威圧感に、ソマーズ聖もCP0たちも完全に死を覚悟し、今のロジャー海賊団に無闇に手を出してはいけなかったと心底後悔し震え上がった。
「や……やめろ! 待て、待ってくれッ! もう引き上げる! 赤髪の子のことも諦める! だから、その攻撃をやめろぉぉッ!!」
先ほどまでの傲慢さは欠片もなく、ソマーズ聖は床に這いつくばり、鼻水と涙を撒き散らしながら必死に命乞いの叫びを上げた。
だが、その見苦しい叫びすら、ふたりの放つ覇気の咆哮にかき消される。
「「――『神避・黒龍波(かむさり・こくりゅうは)』――ッ!!!」」
ズドォォォォォォォンッ!!!
真っ赤な黒炎と赤黒の覇王色の斬撃が重なり合い、超巨大な龍の形を成して放たれた。
覇王色の超火力と黒炎に呑まれたソマーズ聖とCP0たちは、そのまま乗っていた漆黒の軍艦ごと、爆散させた。
ドバァァァァァンッ!!
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落ち着きを取り戻した甲板で、ミラは『政宗』を鞘にカチリと納め、瓦礫と泡が漂う遠くの海面を見つめた。
「……なぁロジャー。あいつら、流石に今の攻撃で死んだか?」
「ん〜〜? いやぁ……あの仮面の連中は再生能力なんて持っちゃいねぇ。直撃を喰らって死んだか、良くても重傷……だが、あの神の騎士団の奴だけは別だな」
ロジャーが目を細めて煙の立つ海原を見つめた。
「あの気味の悪い再生力だ。身体を黒炎で焼かれながらも、海のどこかでしぶとく肉体を繋ぎ合わせているはずさ。まあ、当分は立ち上がれないだろうがね」
「へっ、気味の悪いゴキブリどもめ……!」
バギーが毒づく横で、ミラは溜息をつきながらも、不器用な手つきでシャンクスの頭を優しく撫でた。
「ふん……まあいい。何度生きて戻ってこようが、また来たらその次は、劫火で骨の髄から燃やし尽くてやろう」
「うんっ! 俺も強くなって、次は自分で追い返してみせるよ!」
シャンクスが元気に頷く。
「神の騎士団」という不死身の脅威を退け、絆をより深めたロジャー海賊団。オーロ・ジャクソン号は、嵐も追っ手も退けながら、秘境目指して力強く航海を続けるのだった。
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数日後――聖地マリージョア。
「ひぃ……ッ! ぐ……あぁぁぁぁぁぁッ!!」
薄暗い治療室にて、ソマーズ聖は全身に包帯を巻きつけ、未だに解けない激痛に身を悶えさせていた。
「神」の加護により肉体そのものは繋がり、命こそ繋ぎ止めたものの、ミラの覇王色と黒炎の呪縛は肉体の深部まで焼き焦がしていた。
なお、同行していたCP0たちはミラとロジャーの最後に放った神威·黒龍波の直撃により、再生する術もなくその場で全滅。引き揚げられた者も虫の息の重体であり、世界政府の上層部に凄まじい衝撃を与えていた。
(何なんだあの怪物は……! CP0が一瞬で消し飛び……『神』の再生すら打ち消すあの覇王色と漆黒の炎……!)
一瞬でイバラごと八つ裂きにされた『八刀一閃』の恐怖。
そして、眼前に迫った黄金の瞳の冷酷な眼差し。
「ソマーズ聖、次の追撃部隊の編制ですが――」
部下からの報告に、ソマーズ聖の肩がギクリと大きく跳ね上がる。
青ざめた顔で額からダラダラと冷や汗を流し、血走った眼でガタガタと震え出した。
「や、やめろ……! 奴らに近づくな……! あいつは人間じゃねぇ……! 龍だ……黒き災厄そのものだ……ッ!!」
「行くなら、軍子でも誰でもいい、てかガーリング自分の子なら自分で行け!俺はもう行かん」
「ソ、ソマーズ聖……!?」
『神の騎士団』としてのプライドすら粉々に砕かれ、ただの黒い外套や黄金の光を見るだけで過呼吸を起こすほどの重度のトラウマを刻み込まれたソマーズ聖。
もはや彼が二度とシャンクス奪還の指揮を執ることは不可能なのだった。
ギャバンが度々シャンクスを狙いに神の騎士団が来ていたと言っていたので登場させてみました。
そのためソマーズには犠牲(トラウマ)になってもらいました。