獣人アパートの綺麗好き   作:猫パンチDX

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遅くなってすんません。
恥ずかしながら、上手くかけてる自信がないので感想で色々と教えてくださると嬉しいです。



10mg

 

 

「「「いただきます(にゃ)(っス)!!」」」

 

 

 とある日曜日の昼下がり、窓から差し込む穏やかな陽光がちゃぶ台の上を照らす中、俺たちは揃って手を合わせた。

 

 食卓を囲んでいるのはいつもの顔ぶれ──ヤニ子とヤクの二人だ。

 

 ヤクに至っては、当初は食べに来たい時は事前に連絡する感じであったのだが、近頃からは毎日顔を出すようになっているため、ほぼ形骸化してしまっている。まあ、俺としては特に問題はないのだが。

 

 

 今日の昼食に並んだのは至って健康的な魚料理の数々だった。

 

 こんがりと焼き上がった塩サバに、しっかりと出汁を取った豆腐とワカメの味噌汁、そして小松菜のおひたし。日頃から俺がいないと偏ったものを胃に放り込みがちなこいつらの内臓を少しでも労わるため、俺が腕を振るった特製の和定食だ。

 

「上善さんのご飯ってほんと美味しいっスよね〜。最近はこの味無しじゃもう生きていけない気がするくらいハマってるっス」

 

「にゃあ。よくわかんないけど上善のご飯食べると胸の辺りがこう…ホワァってするにゃ」

 

「わかるっス! こうなんか、身体を包み込むような温かさを感じるって言うか…」

 

「なんだそりゃ…別に変なものは入れてないんだが……」

 

「ほんとなんスよ! 作った本人はわかんないかもしれないスけど最近は特に感じてるんスから!」

 

 そう言ってヤクはご飯と味噌汁を口にかきこんだ。

 

「あ〜〜〜(カクン)…………」

 

「!? お、おいヤク…なに意識飛びかけてんだよ…起きろ、起きろって!」

 

「……ハッ。あれ? 今なんか、心地よい暖かさの空間に包まれたような気が…」

 

「ほんとに何言ってんだよ…ただの飯だぞ?」

 

 なんというか、この前の俺のTシャツの件といい、俺の出すものをこいつの薬物代わりにされがちな気がする。

 モノホンの薬物よりかはマシなのかもしれないが、大元の原因である身としてはなかなかに複雑な気持ちだ。

 

「ま、とにかく! こんな感じで上善さんのご飯は、不思議な力を持ってるような気がするくらい美味しいってことっス!」

 

「………大げさだっつーの」

 

 そうは言うものの、褒められると悪い気はしない。それどころか、心がムズムズしてくるのを感じた俺は、勘付かれまいと先ほどのヤクのようにご飯を口に書き込む。

 

「そんなことないっス! ただで食べさせてもらってるからってお世辞は言わないっス! 上善さんのご飯のおかげで最近はバ先でも結構調子がいいって言われるくらいなんスから! ほんと感謝してるっス」

 

「…そうかよ」

 

「そうにゃ。ニャーは上善のご飯食べるようになってからタバコ吸いながらじゃなくてもウ◯コ出るようになったにゃ。ありがとうにゃ」

 

「お、おう。感謝は受け取るが食事中にウ◯コの話をするのはやめろよな」

 

 食ってるのがカレーだったらマジで終わってたからな。

 

 ついこの間、薫子が市の放送車使って下品な放送をしたのは記憶に新しい。

 

 俺はその時寝ていたのだが、案の定ヤニ子が金縛りにあって動けずにいる俺の顔にウ◯コをするという最悪な夢を見させられた。そのせいで起きた後は一日一杯機嫌が悪く、夕方に飯を食いに帰ってきたヤニ子に八つ当たりで拳骨を喰らわせてしまったほどだ。

 

 ちなみに大家はちょうどカレーを食べていたらしく、食えなくなってカップ麺に変えたらしい。

 

 食事中はウ◯コの話はダメ、ゼッタイ。

 

*

 

「そういえばヤク、さっき言ってた新しいバ先はもう慣れたのか?」

 

 俺はヤクに近況を聞いてみる。

 

 少し前にようやくバイト先が決まったと、喜んでいたのを思い出したのだ。それも花屋さんだという。

 

 ちなみに、ヤクが今の花屋で働き始めたのは、「ケモの手」から紹介されたわけではない。

 

 あの会社について俺なりに調べてみたところ、どうにも会社としての実態が掴みにくく、仕事の内容も妙に曖昧だった。ネットには不穏な噂まで転がっていたので、さすがにヤクをそんなところに預けるわけにもいかない。

 

 そこで俺は、ヤクにハ(・)ロ(・)ー(・)ワ(・)ー(・)ク(・)を勧めた。

 

 ……しかし、そこでも色々あった。

 

 ヤクに前科があることを知った職員が、本人に対して随分と失礼なことを言ったらしく、それを「せっかく勧めてもらったのに」と、泣きそうな顔で謝ってきたヤクから何があったのかを聞いた俺が乗り込んで一悶着。

 

 最終的には法的措置も辞さない旨を伝えたところ、向こうから謝罪があったため、ヤクがそれを受け入れてひとまずその時は収まったのだった。

 

 そんなこんなで紆余曲折はあったものの、結果としてヤクはハローワークから紹介された駅前の花屋で働くことになった。

 

 ちなみにこの話を聞いたヤニ子にも、ケモの手は使わずにハローワークを使うよう勧めておいた。

 

「はいっス! 店長はちょっとコワモテの人なんスけど、仕事自体は結構やりがいがあって楽しいっス!」

 

「そうか、そいつは良かった。場所は確か駅前のとこだったか?」

 

「そうっス。駅からちょっと行ったとこのお花屋さんなんスけど人通りはそこそこあるんでお客さんも結構多いんスよね。ちなみに今度先輩に手伝ってもらう予定です」

 

「そうかそうか。楽しくやってるようで何よりだ。…ところでヤニ子は」

 

「働いてるにゃ! ちゃんと働いてるにゃ! 明日もマンカスのアシスタントのバイトが入ってるにゃ!」

 

「ほーん。…今日は?」

 

「今日はおやすみにゃ」

 

「今日はニートってことじゃねーか! ……ってか、お前今何つった? マンカス?」

 

「マンカスはマンカスにゃ」

 

 

「………お前なぁ、ウ◯コじゃなきゃいいってもんじゃ──」

 

「上善さん、"マンカス"は決して下ネタとかじゃないんで、勘違いしないであげてほしいっス」

 

 ヤクに割と真剣な顔で見つめられ、思わずたじろぐ。

 

「え、いやでも」

 

「マンカスはマンカスにゃ。それ以上でもそれ以下でもないにゃ」

 

「……こう言ってるが?」

 

「いやほんとに! ガチのガチで下ネタじゃないんスよ! てか先輩も! 下ネタじゃないって言わないとタツロー先生に悪いっスよ! 上善さんはまだ会ってないんスから!」

 

「あいつは存在自体が下ネタみたいなもんにゃ。ニャーは何も間違ってないにゃ」

 

「ひどい言われようだな…」

 

*

 

「なるほどな、俺の隣の部屋の人は漫画家だったのか」

 

 食事を終え、食器を片付けると、居間で煙草を吸いながらヤクから「マンカス」について聞くことにした。

 

「はいっス。あたしや先輩はたまにタツロー先生のところでアシスタントのバイトをしてるっス」

 

「へぇ……漫画家ってことは、やっぱり普段からずっと漫画描いてるのか?」

 

「そうっスね。あたしらはいつも締切前に呼ばれるんスけどそん時の先生はほんと大変そうで────」

 

 それからしばらく、俺はヤクからタツロー先生やアシスタントの仕事について話を聞いていた。

 

 "漫画家のヤニカス"──略してマンカス。

 

 ヤニ子らしいひどいあだ名だ。

 

 ともあれ、まさか自分の隣の部屋に連載を抱えたプロの漫画家が住んでいるとは思わず、俺は内心で結構驚いた。

 

「ところでヤニ子はタツロー先生のこと何か知らないのか?」

 

 座椅子に座る俺の身体に、我が物顔でもたれかかっているヤニ子に聞いてみる。最近は食べ終わるとすぐこれだ。もはや慣れつつあるが。

 

「マンカスは乳輪がデケーにゃ」

 

「「………」」

 

((数ある中からなぜその情報を選んだ…))

 

 まあヤニ子だしな。うん。考えるだけ無駄だ。

 

「それとたまに金払われて犯されるにゃ」

 

「言い方ぁ!! 違うんスよ上善さん! タツロー先生は成人向けのやつも描くんでそれの資料用で擬(・)似(・)的(・)に(・)! 擬(・)似(・)的(・)に(・)らしいですから!」

 

「お、おう…(存在が下ネタってそういうことか)」

 

 つーか、擬似的ってなんだよ…ほぼってことで合ってるのか?

 

 もはや違いがわからん。

 

「絶対引いちゃってる反応じゃないスか…」

 

「いや、まあ……世の中にはいろんな仕事があるんだなって思っただけだ」

 

「マンカスは公園でハ◯撮りもしてくるにゃ」

 

「ほら〜!! 先輩! そ〜いうのっスよ! また上善さんが勘違いしちゃうっスから!」

 

 ヤクはそう言うが、聞いてる限りだとなぜかヤニ子の言ってることがあながち嘘とは思えない。

 あのヤ(・)ニ(・)子(・)でそんな気がしてくるんだから不思議だ。獣人と触れ合いすぎて野生の勘とやらでも身についたのだろうか。

 

 そんなこんなで話を続けていると、気づけば食後の時間もすっかり過ぎていた。

 

ピンポーン

 

 ふと、呼び鈴がなったかと思うと、間髪入れずに玄関のドアがガチャリと開いた。

 

「上善く〜ん」

 

 どうやらアル子が来たようだった。

 

 俺はなおもくっつこうとするヤニ子を引き剥がして玄関の方へ向かう。

 

「おい、アル子。呼び鈴ってのは返事を待ってからドアを開けるんだぜ? 前も言っただろう」

 

「ごめんごめん。つい癖でさ〜。けど上善くんの部屋ならいいかな〜って」

 

「ったく……ほれ、今日の弁当だ」

 

 呆れつつも俺が台所に用意していた弁当を手渡すと、見るからに嬉しそうに顔を綻ばせて受け取る。

 

「ありがとう〜。今日の講義はお昼跨いですぐだから助かったよ〜」

 

「そいつはいいけどよ、どうなんだ授業は。二年分のブランクとか大丈夫なのか?」

 

「うん〜あれ以来お酒抜いてるから問題なくついて行けてるよ〜」

 

 アル子の言うあ(・)れ(・)以(・)来(・)とは、アル子が病院に入院してからを指す。あの日からずっと、退院してからもアル子は酒を断ち続けている。

 

 「とりあえず一ヶ月やってみようかな〜」とのことで、「じゃあ一ヶ月経ったら俺の店で酒を奢る」と約束してやったのだ。それ以来、ずっと禁酒状態だ。

 

 薫子曰く、大学にちゃんと行くようになってからも、周りからの飲み会を全て断り続けているという。件の酒飲みサークルから再び誘われた時でさえ断ったというのだから驚きだ。薫子から聞いた時は感嘆したほどである。

 

「禁酒生活ももうすぐ四週間目に突入か…お前すげェな」

 

「うん〜なんか意外とできちゃった〜」

 

「クククッ、そいつは何よりだ。そろそろお前に酒奢る日、決めないとだな。禁酒からちょうど一ヶ月後になる日にちの夕方からの予定、空けとけよ」

 

 そう言いながら無意識にアル子の頭を撫でていると、またもやアル子の顔が綻ぶ。

 

「うん、わかった〜。えへへ〜上善くんのお酒楽しみ〜」

 

「おう、存分に期待してくれていいぜ」

 

「そうする〜。んじゃあ、そろそろ行くね〜。また夜に〜」

 

 そう言ってアル子は玄関を出て行った。

 

 アル子を見送った俺は、そのまま居間に戻った。

 

「アル子さんでした?」

 

「ああ、講義が昼跨いですぐだったらしくてな。今日は弁当がいいって言われてたんだ」

 

「そうだったんスね」

 

 ふと、見回すと、この部屋に二つしかない座椅子は片方がヤク、もう片方──俺がさっき座っていた方のをヤニ子が煙草をふかして陣取っていた。

 

「……おい」

 

「にゃ〜?」

 

「なんで俺の座椅子に座ってんだよ、ヤニ子」

 

「空いてたからにゃ」

 

「俺がついさっきまで座ってただろうが」

 

「でも今は空いてるにゃ」

 

「……」

 

(こ、こいつ…屁理屈だとわかった上で言ってやがる……)

 

 俺がムカつきつつも呆れていると、ヤニ子は座椅子に深々ともたれかかりながら、煙をふぅーっと吐き出し、ニヤリとやけに癪に触る笑みを浮かべた。

 

「上善、そこの床が空いてるにゃ。今から床が上善の特等席にゃ」

 

プツンッ

 

 俺の中で何かが切れる音がした。

 

「…………おーし分かった。お前がその気なら…いいぜ。全面戦争だ。手始めに、今日の夕飯は俺とヤクの分だけ作ることにしよう。おめーの分は無しだ。部屋に来ても食わせてやらねぇからな」

 

「にゃ!? なんでにゃ! ひどい横暴だにゃ!」

 

 喚き始めるヤニ子を無視して、俺は苦笑いをするヤクに言って座椅子の半分を貸してもらう。

 

 一応言っておこう。

 

 大前提としてここは俺(・)の(・)家(・)である。

 

 それを踏まえた上でヤニ子の振る舞いを見てほしい。

 

 さて、どっちが悪いのだろうか?

 

 しかしもし…万が一……いや億が一にも………俺が 酷(こく)なことを言っているように聞こえる可能性があるかもしれないので、この際だ。何度でも言おう。

 

 ここは俺(・)の(・)家(・)である。

 

 主導権は常に俺の手になくてはならない。そうでなければ、いつかテレビで見た獣人による地球の侵略とかいう陰謀が俺の部屋を皮切りに全世界へと広まってしまうかもしれない。

 

 ……まあ流石にそれは言い過ぎかもしれないがともかく。

 

 俺の部屋であるからには、こいつから命令されるようなことはあってはならないのである。

 

 故に俺は、ヤニ子に対して徹底抗戦を宣言する。

 

「ま、待つにゃ。いつもの軽いジョークにゃ。本当に座らせる気はなかったにゃ」

 

「なぁヤク。やっぱ半分だときついから俺の身体に寄りかかる感じでもいいか?」

 

「えっ……それって、ヤニねこ先輩にいつもやってるやつってことっスか?」

 

「ああ」

 

「い、いいんスか? ほんとに?」

 

「おう…って、いいも何も俺が頼んでるんだが」

 

「い、いや、それはそうなんスけど……あ! あたしは全然問題ないっス。むしろありがたいくらいっス!」

 

「そ、そうか」

 

 ヤニ子は一瞬ガーン、とした様子で硬直するもすぐに抗議を再開したが、俺は精一杯無視する。

 

 そして、ヤクが座椅子から退くのを待って俺が代わりに座り、ヤクがその上に座った。

 

「……これやばぁ」

 

「おいヤク、流石にそのまま寝られると困るんだが」

 

「いや、だって上善さんの体温がちょうどよくて、それに加えていい匂いもするんで……」

 

「またそれか……さっき着たばっかだから普通の洗剤の匂いしかしないはずなんだがな……」

 

 俺が本気で不思議に思っている間も、ヤクは背を向けてもたれかかっていた体勢を変え、Tシャツに顔を向けると、ついには本格的に顔を埋めてしまう。

 

 この前のようにスーハーされてはいるものの、別に特段嫌な気もしないので、そのままにしておくことにした。

 

 

 その一方で、さっきから妙に静かな奴が一人いる。

 

「…………」

 

 視線を向けると、ヤニ子が座椅子の上で体育座りをしながら、こちらを文字通りじーっと獲物を狙うように見つめていた。

 さらには、さっきまで吸っていた煙草をまだ吸い残しがあるにもかかわらず、灰皿に戻していた。

 

「……なんだよ」

 

「……返せにゃ」

 

「何をだよ」

 

「…そこ」

 

「そこってどこだよ」

 

「そこはそこにゃ!」

 

「だからどこだって!」

 

「そこはニャーの定位置にゃ」

 

 俺はヤニ子がビシッ、と指差す場所を見つめる。

 

「…ああ、そ(・)こ(・)って俺の膝(・)上(・)のことか」

 

「そこはヤクの場所じゃないにゃ。ニャーの場所にゃ」

 

「そうか。だが今はあいにくと空いてないな」

 

「…………」

 

 ヤニ子はムッとした顔でしばらく黙っていたが、やがて小さく鼻をすすった。

 

「……上善のケチ」

 

「なんとでも言え」

 

「極悪人にゃ……」

 

「そこまで言われる筋合いはないな」

 

「この童貞キング。おめーはイ◯ポにゃ」

 

「悪口で逆上させようって魂胆か? だが俺はあいにくと経験者でな。おめーの魂胆にはのってやれねーよ」

 

「(ガーン)……」

 

 ヤニ子は一瞬あからさまに落ち込んだ顔を見せるが、すぐさま睨み返す。

 

 そしてそのまま、ヤニ子は睨むばかりで動こうとしなかった。

 

 俺も意地になって、しばらく知らん顔をしていた。

 

そして時間の経つこと数十分──

 

「……うぅ……」

 

「…………」

 

「……ごめんなさいにゃ」

 

「…………」

 

「もう勝手に座椅子取らないにゃ……」

 

「…………」

 

「だから……ニャーの場所返してほしいにゃ……」

 

 ちらりと見ると、どうやら折れたらしく、ヤニ子は本当に泣いていた。

 

 そこまでされると、こちらとしても下がらざるを得ないが、ヤニ子がきちんと謝っていること自体が大切だ。

 

「……ったく、泣くくらいなら最初からするなよ」

 

「にゃぁ……」

 

「……にしてもよ、お前、本当にそこまでして俺の座椅子が欲しかったのか?」

 

「違うにゃ……本当は、さっき上善がニャーのこと無理やり引き剥がしてアル子のところに行ったのが気に入らなかっただけにゃ……別に座椅子はいらなかったにゃ」

 

「…………」

 

 よほど応えたのか、あのヤニ子が自ら正直に話してくれた。さすがにこれ以上粘るのも酷な気がしてきたので、俺は謝罪を受け入れることにする。

 

「……はぁ」

 

「……!」

 

「もういいよ。俺はもう怒ってないから、お前ももう機嫌直せよ」

 

「にゃ!」

 

 ヤニ子がぱっと顔を上げる。

 

「俺も無視して悪かったな」

 

「ニャーは気にしてないにゃ!

 

「……そうかよ」

 

 そう言って俺が立ち上がると、ヤニ子は勢いよく座椅子から飛び降りた。

 

そして次の瞬間──

 

「上善〜〜!!」

 

「ん? うおっ……!?」

 

 ヤニ子がいきなり顔面に飛びついてきた。

 

「ありがとにゃ!」

 

「はいはい…」

 

 頬擦りしてくるヤニ子。

 

 俺はその頭を撫でる。

 

 (全く、これじゃ、猫と変わらねーな)

 

 ……まあともあれ、これで一件落着だ。

 

 俺は立ち上がるためにヤクを引き剥がそうとする。

しかし───

 

「……ん?」

 

 なかなかヤクが身体から離れない。

 

「こいつ、こんなに力強かったんだな…」

 

 ヤクはそのまま寝てしまったらしく、引き剥がそうと思えば引き剥がせると思っていたのだが、思ったよりヤクの服を掴む力が強すぎて離れない。

 

 そういえば、昔は柔道をやっていたと、この前ヤクから直接聞いたんだった。

 

「はぁ……しょうがねぇなぁ」

 

 とにかく、このまま無理に引き剥がそうとすると服ごと破きかねないこと、ヤクの寝顔が安らかであったことなどから、俺はしばらくそのままの態勢でいることにした。

 

 気づけばヤニ子も俺の身体にもたれかかろうとしている。

 口にはいつのまにか煙草が咥えられ、ニヤリと口角が上がっている。

 

「………」

 

 完全に諦めた俺は、座椅子を後ろに倒して両手を広げ、大の字でそのまま昼寝をすることにした。

 

 すると、するりとヤニ子が俺の腕を枕にし、あっという間に寝息を立てて寝入ってしまった。

 煙草をヤニ子の口から外し、傍の灰皿に突っ込むと、俺はようやく睡眠の姿勢に入る。

 

(十五時くらいに起きるか…)

 

 次の瞬間、視界は暗転した。

 

 

 

 

 

 

 

 この時、上善に誤算があったとすれば、日頃の疲れを舐めて、アラームをかけずに寝入ってしまったことと、安易に腕を枕にするのを許してしまったことだろう。

 

 日もすっかり暮れた頃に、寝ぼけたヤニ子に耳をガジガジと噛まれて目が覚めた上善が、日曜日なのに寝坊したと勘違いして飛び起きた途端、右腕がとんでもなく痺れているのに気づき、悶絶するのはまた別のお話。

 

 

 

 






え?乳輪に伏せ字が入ってないって?
気のせいじゃないですかね? いや気のせいです。
そもそも、おちんぽ達郎先生のアイデンティティに伏せ字だなんて失礼にも程があるってもんですよ(本音

ところで、皆さんは乳輪は大きい方と小さい方、どちらが好みですか?
自分は大きい方が好みなのですが、他の人はどうなんでしょうか?
今度アンケートでも出そうかと思うので、興がのったら回答してみてください。



…と、思ったら小説に関係のないアンケートは禁止されてました...とほほ

みなさん、『ヤニねこ』はどっちで見てますか?

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