獣人アパートの綺麗好き   作:猫パンチDX

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ヤニねこ11話ガチおもろかった。
京都は修学旅行で行って以来だから久しぶりに行きたいな〜。

感想ありがとうございます。
いつも読ませてもらってて大変励みになってます!




11mg

 

 人は、いや、動物というものは、衣食住の心配がなくなると驚くほどあっという間に骨抜きになり、元の野生を忘れていく生き物だ。

 

 

 例えばこれは、俺の経験だが、野生の猫を保護して温かい部屋と美味いメシを与えてみるといい。

 

 

 最初のうちは警戒してシャーシャー威張っているくせに、一ヶ月も経てば『おい人間、もっとモフれよ』と言わんばかりに腹を出して寝そべるようになる。

 

 

 俺の時はまるで、拾った時の弱々しい様子が全て演技であったかのような変わりようだった。

 

 

 

 別に俺が経験したから全部の例がそうだ、なんていうつもりはない。

 

 

 ただ、確かに俺は目の当たりにしたのだ。

 

 

 我が子を取り返さんと暴れる白虎の存在を。

 

 

 保護した子猫にすっかり懐かれしばらく経った後、我が子を取り返さんとばかりに凄まじい勢いで我が家に隙を見て潜り込み、俺の腕に爪を引っ立てると、子猫の首を咥え出て行った──

 

 『親猫』という存在を。

 

…思い出したが、親猫が暴れる中も、あの子猫はいびきをかいて寝たままだったな。

 

 親猫に咥えられても起きる様子はなかったのには当時の俺も流石に呆れたものだ。

 

 その点で言えば、最近は特に我が家に居座るようになった某ヤニカス獣人などは、親猫が生態の最たる例と言えるだろう。

 

 今思えば、あの子猫、なんか振る舞いが妙にあいつと似てたし。

 

 まったく…俺がいつも掃除してやっているのに、自部屋より俺の部屋にいる時間の方が長いのだから困ったものだ。

 

 最近はそれ関連の小言を言うと、"じゃあニャーは上善の部屋に引っ越すにゃ"…と、のたまう始末で、完全に参ってしまっている。

 

 いや、そう言う問題じゃねーんだよ……って、なんか思い出したら心の底がムカムカしてきた。

 あいつ、今度俺の部屋でクソ漏らしたらゆるさねぇ。

 

──とまあ、ここまで色々言ったわけだが……

 

 結局何が言いたいのかと言うと、自然界に限らず人間界にも、そんな親猫のような行動をとる人間がいるらしいということだ。

 

 

 

 

 飼い慣らされた哀れな『姉』を取り戻さんと行動する、『妹』という存在が。

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────

 

 みなさん、こんにちは。飯酒盃上善です。

 

 私は今、アパートの廊下にて絶賛正座中です。

 

 目の前には、腕を組んだ薄いグレーの髪色の獣人のお客様が仁王立ちでこちらを睨みつけておられます。

 

 (バーテンモード解除。)

 

 ……いや、なんでだよ。

 

 

 

 遡ること三十分ほど前───

 

 俺は、花屋のバイトがクビになって傷心中のヤクを誘って虫取りに行く予定だった。

 

 準備を整え、アパートの敷地の入り口で待ち合わせているヤクの元へ行こうと玄関を出たところ、一人の獣人がヤニ子の部屋の前にいるのに気づいた。

 

 声をかけようとしたところ、突然こちらを向いたと思うと、目にも止まらぬ速さで接近し、目と目が触れ合うくらいの至近距離で顔を近づけてきた。

 

 いきなりの奇行に驚いたものの、ひとまず俺の方から名乗った。

 

 しかし、名乗りに応えないどころか、"あなたが…誑かして…"、などと、なおも顔を近づけながらボソボソ呟いていたため、とりあえず離れてもらおうとしたのだが……

 

 次の瞬間、彼女は正座を強要してきたのだ。

 

 拒否しようにも、話を聞いてくれなかったため、俺は仕方なく正座をすることにした。

 

 

──そして今に至る

 

 

「なぁ…そろそろ立って」

 

「ダメです」

 

「……そうかよ」

 

 俺はいつになったらヤクの元に行けるのだろう。 誘った側として待ち合わせに遅れるのは忍びない。

 

 なんとかしてこの場は勘弁してもらおうと再度口を開こうとしたところ、目の前の獣人が口を開いた。

 

「あなた、私のお姉ちゃんのなんなんですか」

 

 お姉ちゃん?

 

 一体誰の話をしているのだろうか。

 

「しらねぇよ。ていうか、お姉ちゃんって誰だ」

 

「お姉ちゃんはお姉ちゃんです! しらばっくれても無駄ですから!」

 

「だから誰だって言ってんだろ! 名前を言え名前を! あとついでにアンタも名を名乗れ! 俺は先に名乗ったぞ!」

 

「っ……! …わかりました」

 

 不服に顔を歪ませつつも、目の前の獣人は組んだ腕を下ろし、ヤニ子の部屋を指差しながら言った。

 

「私は"佐藤いもこ"と言います。あなたが誑かしたこの部屋の佐藤ヤニ子とは私の姉に当たる間柄です」  

 

「誰が誰を誑かしてるんだよ、って………は?」

 

 言い切る間もなく、俺の思考は完全にフリーズした。

 

 こいつ、今なんて言った?

 

 ヤニ子が"姉"だと?

 

「…どうしたんですか? 急に黙って。ようやく自分の犯した罪を目の当たりにしました?」

 

 この、いかにもまともそうで、純粋そうで、今は怒っているようだが本当は優しくて、根も真面目でいい子そうで、その明るさは学校ではクラスの人気者なんだろうなって確信しちゃうほどで…etc...

 

 天は二物を与えないどころか、与えまくりな存在じゃねぇか。

 

 なんで会ってすぐなのにわかるのかって? そんなのバーテンの勘だ。

 

 細かいことはどうでもいいだろう?

 

 というか、そんなことよりもだ。

 

 こんな、こんな子が、あいつの妹だと?

 

 俺にとってそれが一番の異常だ。

 

 にわかには、いや、全くもって信じ難い。

 

 しかもヤニ子の妹に。

 

 いや、まだだ。まだ確かめる余地はある。

 

「……一つ聞かせろ」

 

「? なんですか?」

 

「…"いもこ"と言ったが、漢字はどう書く?」

 

「…? なんでそんなこと聞くんですか?」

 

「いいから! それを聞くだけで俺の中の確信が決まるんだ!」

 

「はぁ、まあ、いいですけど。いもこの"いも"はいもうとの"妹"で、"こ"はこどもの"子"です」

 

「………」

 

 名前の漢字を聞いて確信した。

 

 自ら妹だと言い、名前が生まれた順が二番目で妹だから妹子………

 

 間違いない。

 

 未だ会ったことはないが、ヤニ子の母親のセンスだ。

 

 認めたくはない。認めたくはないが……

 

「?」

 

 目の前で首を傾げているこの獣人は…

 

 ヤニ子の妹…なのだろう。

 

 心底混乱する。

 

 高校の時に生物で軽く学んだ遺伝子についての記憶が思い起こされる。

 このヤニ子の妹は一体どちらの親の血を引いているのだろうか。

 

「はぁ〜〜〜………」

 

 思わずクソでかいため息が出る。

 

「っ、なんなんですか…さっきから。あなた、自分のやったことを自覚して──」

 

「頼む。整理する時間をくれ」

 

 俺は正座から立ち上がると、ヤニ子の妹の口に手を当てて塞ぐ。

 

「っ!?!?」

 

 全く…この世界はどうなってんだ? 何がどうなったらあのヤニカスの妹がこんな真人間になるんだよ。

 見た目からしてあんま似てないし、義理の妹とかか?

 

 ていうか、一番気になるのはヤニ子の母親だ。

 

 未だ会ったことはないが、アンタは色々と適当すぎる。

 

 ヤニ子の名前も含めて絶対適当につけたとしか思えない。

 

 その名の通り、ヤニ子は立派なヤニカスに、妹子はあんなのでも姉として気遣う妹に育ってしまっているのだが、マジでアンタは何を思ってあんな名前をつけたんだ……

 

 …いや、待てよ。

 

 

 ズボラでクズな姉と真面目で面倒見の良い妹…

 

 なるほど見事に調和が取れている。

 

 もしや狙って……

 

「…まさかな」

 

 俺は首を振って心の疑念を振り払う。

 

 「ヤニ子」なんて名前をつける母親だ。

 

 計算づくで名前をつける姿がまるで想像できない。

 

 ヤニ子からはヘビースモーカーだと聞いていたし、大方出産前で禁煙してたせいで気でも狂ってそう名付けたってところか。

 

「っ! っ!」

 

「ん? おっと、わ、悪い。のめり込み過ぎちまった」

 

 ふと、口元を押さえていたヤニ子の妹が視線で訴えかけてきているのに気づいたため、口元から手を離すと、ぷはぁっ、と言いながら、頬を染めてこちらを睨んできた。

 

「き、急に、な、何するんですか!」

 

「いや、すまん。あんたの言う通りだ。あまりの事実に混乱してつい取り乱しちまった。悪かったよ」

 

「ほ、ほんとですよ! 急に口を塞ぐなんて、何考えてるんですか、全く…わ、私じゃなかったら即警察呼ばれてたんじゃないですか?」

 

「いや、ほんと、マジで申し訳ない」

 

「あ、あやまればいいって問題じゃ、ないんですよ?」

 

「わかってる…俺にできることがあればなんでも言ってくれ。償いがしたい」

 

「……っ!!(ゾクゾクゾクッ)」

 

 平謝りの末、土下座までしたところ、なぜか体を押さえて身を震えさせながら俺の申し出を受け入れてくれた。

 

 

 

 その後、償いとしてその日のヤクとの虫取りに、ヤニ子の妹が同行することになった。

 

 なんでも、"お姉ちゃんがどのようにして誑かされたのか確かめる"のだそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いや、誑かしてるというよりあいつが勝手に誑かされてるだけなんだが。






あれ?これで終わり?って思いました?

安心してください。次回の12mgに続きます。

妹子ちゃんはふとした拍子に優越感感じるとそのまま悦に浸りそうな一面がありそうだなって内心思ってたりします。

みなさん、『ヤニねこ』はどっちで見てますか?

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