月が完全に覆い隠され、月光の届かぬ深き闇に包まれた森を、ひとつの小さな火の灯りが突き進んでいた。その火に照らされ進むものは、皮できたフードを深く被り顔がみえない。だが、まるで何かを探すように左右を見渡しながら歩いていた。
やがてその人物は何かをみつけ、灯りを地面に置き、それを拾い上げた。
「おぉ…。ついにみつけた。これが、予言の…」
まるで、この世で一番大切なものをみつけたように拾い上げたものを、ゆっくりと覆うように抱きしめていた人物は、すぐにハッと左右を見渡し素早く懐にしまい込むと、地面の灯りを拾い上げ、逃げるようにその場を立ち去っていった。その様子を闇の中で木々の枝に止まり見ていたカラスは羽を広げ、一鳴きするとその場から飛び去っていった。
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「セイッ‼」「ヤァッ‼」と威勢のある声が、森の中に連続して響いていた。声の響く森の中に、ぽっかりと空いた少し広めの空間に、木々で頑丈に作られた小屋が一軒あった。その小屋のそばに丸太に布を被せただけの人形に対し、両手で剣を振るう一人の人物があった。
その人物は普通の容姿とは違い、かなり小さい。まるで童のような見た目であり、人の身体の腰ぐらいまでの身長しかなかった。布で縫われた上が白で下が黒の服を着ており、上半身の首回りを覆うように革で作られた外套を身につけていた。髪は白髪で長く、それを後ろで一つに纏めているだけの簡単なもので、激しく動いても問題ないようにしているようだ。
やがて、ひと段落したのか、剣を振るうのを止めた人物に対し、後ろから声を掛けるものがいた。
「そろそろよかろう。それまでにしたら良いのではないか。」
その声に反応して、剣を振るっていた人物は、声の方向に振り返った。
「おはようございます、長老。」
そう長老と呼ばれた人物は苦笑交じりの声で、
「長老と呼ばれるようなものではない。確かに、この森の直ぐそばに住んでいる村の者の中では一番老いているが、ただ老いてしまっただけの老人よ。」
そう言いながら老人は白いひげを撫でながら続けて、
「それにしても、だいぶ様になってきたではないか。ユール。もう一人前の戦士となってきたか」
ユールはその声に首を横に振る。
「まだまだ未熟です。それに、一番軽いショートソードだけでは魔獣を全然倒せません。魔獣を倒すためにも、もっと力をつけて重い武器を持てるようにならなくては。それに…」
そう言ったあと、ユールは下を向きながら
「私は周りの人よりも小さいニスです。ヒューマンやドワーフのように力が強いわけでもなく、エルフィンのようにルーンに強い適性があるわけではない。森の奥深くで暮らすのが普通のニスなのです。ですので…」
そう言うと伏せていた顔を、老人に向け、手に持っていた剣を強く握りしめて。
「普通の人よりもより多く、しっかりとした鍛錬が必要なのです。」
まるで鍛冶台のように、重く堅い決意の表情を浮かべながら老人に対し、ユールは話した。その後、何かに気づいたようにユールは老人に話した。
「ところで長老。なにか用があってここにいらしたのでは」
そうユールが老人に尋ねると、老人は思い出したような表情をして、ユールに話し出した。
「うむ。これから村の動ける衆で、村のそばに新たに現れた魔獣を撃退することになっての。ユールもどうかと思ってな。参加するかの有無の確認に来たのだよ。どうかね」
そう言った老人に対しユールは、
「はい、喜んで。参加させていただきます。今から支度をして村の方に向かいますね。しかし、」
と、返事を返すと続けて疑問を言うように老人に対し
「また新たな魔獣ですか。つい先日も撃退したはずですが。同じ個体ですか」
と質問を投げかけた。それに対し老人は首を振り、
「いや、先日の魔獣とは別の個体だと発見したものは報告してきておる。だが油断はできん。いつ手出しできんような強大な魔獣が襲い来てもよいように、準備はしておかねば。」
そう老人は答えると、森の外にある村の方に身体を向け、
「ではな、ユール。先に村に戻って村の衆にユールも来ることを伝えておく。村の広場で集合でよいな」
と、言い終わると村に向けて歩き出した。ユールはそれを見ながら、
「わかりました。長老。」
と返事をし、ユールも自分の小屋へ戻っていった。