ハードな世界で俺だけイージーモード   作:ゆらゆら

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003:抗えない王命

 第一階層の中央部に存在する宮殿。

 コロニーの中でも、王族と呼ばれる存在たちのみが住む事を許された場所。

 その他は世話係であるアンドロイドしか存在せず。

 唯一、王命によって入城を許された者のみが王や王族への謁見を許される。

 

 そんな場所に呼ばれて、持っている限り一番上等なスーツを着込んで。

 “カゴ”を呼んですぐに乗り込みものの五分で第一階層に上がる為のリフト前までやって来た。

 本来であれば、高い通行料を払ったり許可証のようなものが必要だが。

 立っている番人に王命の紙を見せれば秒で、待っている人間たちを飛ばしてリフトへと乗せてくれた。

 

 カゴと一緒にリフトへと乗り込み。

 そのまま三分ほどで第一階層へと到達。

 そのままダッシュで向かってもらって、すぐに宮殿が見えた。

 

 黄金の鳥やら銀の虎など。

 ごてごてとして装飾の数々に、無駄に多く配置された防衛装置であったり戦闘用アンドロイドなど。

 白亜の宮殿の門番に王命を見せれば警戒を解いてすぐに先へ通してくれた。

 ここまででおおよそ20分ほどであり、まだ余裕はあった。

 

 カゴを持つアンドロイドたちは、宮殿前で俺を下ろし。

 俺は電子クレジットで彼らへと金を多めに振り込んでおいた。

 そうして、礼を伝える事もせず、そのまま宮殿へと入っていった。

 

 宮殿内に足を踏み入れれば、白を基調としたスーツを着たアンドロイドが立っていた。

 アレとは別の機体であり、奴は俺をスキャンしてから問題なしと判断し案内を開始する。

 そっからはあっという間であり、謁見する為の広い部屋に通されて。

 俺は椅子に座って、此方をジッと見つめる存在に対して……頭を下げ続けた。

 

「……っ」

「……ふぅん」

 

 額を床に当てて、声も殺して待つ。

 どれだけ時間が経ったか分からない。

 が、お上が発言するまでは何も出来ない。

 俺は早く終わってくれと願って――

 

「面を上げよ」

「は、ハハァ!」

 

 俺はゆっくりと顔を上げる。

 すると、ようやくお上の顔を拝む事が出来た。

 

 先ず人ではない。

 部分的ではなく、完全に体を機械化していた。

 鋼のボディーであり、機能性とは関係ない金の細工なども施されていた。

 三つのトライアングル上のセンサーがゆっくりと青く点滅している。

 口も耳も無い。恐らくは、呼吸自体していないだろう。

 赤を基調とした上等な着物を着ていて、最高級の木材で作ったであろう椅子に座っていた。

 その手にはキセルのようなものを持っているが煙は出ていない。

 

「……これが、気になるか?」

「……! も、申し訳ございません! わ、私が取り扱った事がないもので遂!」

「はは、構わんぞ……これは我らの中で肉体を機械化した者の中で流行っている煙草のようなものだ……口をつけずとも掴んでいるだけで吸ったり吐いたりの感覚が味わえてな。会話をしながら、煙草の成分を好きなだけ味わえる優れものだ」

「お、おぉ、それは何とも、素晴らしい発明でございますね! は、はは」

「……まぁ結局は味と香りのデータでしかない。本物には敵わんよ……さて、雑談はここまでにしようか。貴様、名は確かオコノミ・ギンジといったか?」

「さ、左様でございます。お国の許しを頂き、第二階層にて店を開かせて頂いております」

 

 俺は汗を流しながら笑みを浮かべて感謝を述べる。

 すると、お上は顎の部分を空いた手で摩る。

 

「ふむ、そうだったな……因みに、何故、私がお前を呼んだか分かるか?」

「え、えぇっと、その……申し訳ありませんが、無知で愚かな私如きの頭では、陛下のお考えをくみ取る事は難しく」

「ははは、堅いな。そう畏まらんでも良い……まぁ、そう言っても無理な話か」

「……は、ははは」

 

 陛下は俺の事を揶揄っている。

 謁見室には、合計で七体のアンドロイドが立っていた。

 そのどれもが白を基調としたスーツを身に纏う特別製で。

 もしも、俺が不審な行為をしたり、愚かな発言をすれば秒で始末されるだろう。

 王族が使うアンドロイドは家事は勿論、戦闘においても優れている。

 例え、闇の眷属から襲撃を受けても王族が逃げれるだけの時間を稼げるほどには強いと聞く。

 そんな存在が合計で七体であり、間違っても俺が五体満足で逃げおおせられる可能性はない。

 

 心の中で、早く用件を言ってくれと願う。

 すると、陛下は俺の方に指を向けて――

 

「お前は――他のコロニーに行った事はあるか?」

「……あ、ありません」

「…………嘘ではない、か……だとすれば、お前は本当に自分の力だけで今まであれだけの物資を集めて来たということか。ふむ」

 

 陛下は何かを考えていた。

 すると、後ろの方で扉が開いた音が聞こえた。

 ちらりと見れば、別のアンドロイドたちが何かを抱えていて……え、あれは?

 

「……それらの品はお前から買ったものだ。その服についても、私が今朝、買わせに行かせたものだが……教えてくれないか? お前の秘密とやらを」

 

 陛下は俺の店で買ったものを近くに置く。

 復元された漫画本に、修復した電化製品の数々。

 そして、アレンが言っていた高い服の数々など。

 

 俺はだらだらと汗を流す。

 秘密はあるが、言って良い事ではない。

 もしも、俺だけが闇の眷属に襲われないなんて言えばどう思われるか。

 

 奴らの仲間か。或いは、特別な存在か。

 将又、今まで甘い汁を啜って来た大罪人か。

 何方にせよ、良い未来は見えてこない。

 

 言うべきじゃない。

 言う必要はない。

 此処は適当にはぐらかして――陛下のセンサーが赤く光る。

 

「今、私を――たばかろうとしたか?」

「ひぃ! いいいいえ!? そんな滅相もございません!!」

「そうか? なら良いが。もし、虚言を吐くなら……死罪は免れんぞ?」

「……っ!」

 

 俺はガチガチと歯を鳴らす。

 非常にまずい。

 危険な状況であり、何故か、陛下は嘘を見抜く術を持っている。

 どう言おうとも絶対にバレる状況で…………もう、いいやぁ!

 

 俺は涙を流し鼻水を垂らす。

 そうして、笑みを浮かべながら口を動かす。

 

「じ、実は、わ、私……闇の眷属に襲われないんですよ! へ、へは!」

「………………襲われない、とは?」

「い、いや、その……殺されないというか、戦う状況にならないというか……そ、そんな感じなんですよぉ。へ、へへ」

「……………………それは、本当にか?」

「は、はいぃ」

 

 俺は何度も首を縦に振る。

 陛下は目を真っ赤に光らせていた。

 これで俺のイージー生活も終わった。

 そう確信し、明日からのハードな生活を考えて――笑い声が響いた。

 

「ハハハハハハハハハ!!」

「へ? え、え、え?」

 

 陛下が笑っている。

 大きな声で愉快だと言わんばかりに笑っていた。

 何故、どうして、何が……陛下が掌を見せて来た。

 

「わ、分かった。分かったぞ……どうやら、お前は相当に――やり手のようだな」

「え、あ、な、何が?」

「ふふ、まさか、この私を前にしてよくもまぁ荒唐無稽な事を言えたものよ。それでいて、まるで嘘と思えない口調……天晴だ。ギンジよ」

「え、い、いや、本当に私はぁ」

「ふ、ふふ、止めよ。その顔で言われれば本当に信じてしまいそうだ……だが、そんな意味不明な現象など起こりえない。お前はこのコロニーで生まれて、市民たちとずっと生活を共にしてきた。であれば、お前だけが特別な存在になれる訳が無い……が、お前はたった一人でコロニーの外でも生きていられたのも事実……その秘密を明かしてくれれば良かったが……まぁ致し方ない」

「……へ、へへ」

 

 どうやら、陛下は俺がかなり肝が据わった男に見えたのか。

 たった一人で外で生き抜く術を他人に簡単に明かさない玄人。

 客観的に見ればかなりのやり手だが、実際はまるで違う。

 

 本当に襲われないから、呑気に物を集めてキャンプしているだけだ。

 確かめようにも、俺と一緒に行動すればそいつらだけは確実に襲われる。

 俺の知らないところで勝手に死んでいるのだ。

 だからこそ、陛下もその他大勢も、俺が高い知識と技術によって生きていると勘違いしている――ま、いっか!

 

 陛下は膝に手を置き、顎を撫でる。

 

「お前の秘密を明かすのは時間を掛けて、な……今は、火急の要件を伝えねばな」

「か、火急ですか。そ、それは一体」

「――第肆コロニーの事は知っているか?」

「……確か、此処より西に存在しているとされている……そこが何か?」

 

 急に別のコロニーの事を話すとは何か。

 そう思っていれば陛下は俺の方に指を向けてきて――

 

 

「王命を下す――第肆コロニーへと行って来てくれ」

「…………へ?」

 

 

 陛下は俺への遠征を命じて来た。

 必要な物資の手配や人材など。

 一方的に説明されながら俺は思った――面倒事が増えちまったと。

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