ハードな世界で俺だけイージーモード   作:ゆらゆら

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005:第肆コロニーによる手厚い歓迎

 第参を出発してから――三日目。

 

「……わぁお、ショッキング」

「「「……」」」

 

 時刻は夜の11時。

 途中途中で、大木の撤去やら瓦礫の撤去作業に時間を取られて。

 結局、予定を詰める為に頑張ってトラックを走らせたが……思った通りになっちまった。

 

 周りを見れば、暗闇の中から赤い眼光がぎらぎらと見える。

 全ての視線が俺へと向けられていた。

 ゴーストタウンとなった街の中心地。

 そこはお上が忠告してくれた通り――闇の眷属の巣になっていた。

 

 見ている。めっちゃ見ている。

 ガン見であり、めっちゃだるい。

 数は目算で……千か二千かぁ?

 

 鼻歌でも歌ってやろうかよ思ったが、そういう空気でもない。

 俺はため息を零しながら、ボトルを傾けてニュールを飲む……ぬる。

 

「……あぁ? 何だありゃ……はぁ、マジかぁ」

 

 視線を前に向ける。

 すると、ライトに照らされてハッキリと見えた。

 障害物であり、岩でも大木でもない――腐った肉の塊だ。

 

 蠅がたかっていて、窓を開けていないのに臭って来る。

 ぐちゃぐちゃであり、骨やら臓物やらが飛び出していやがった。

 塊というよりは旧時代の書物で見た煮凝りのようにも見えるそれ。

 何の肉かは想像もしたくはないが、恐らくは人……いや、ほとんどアイツらか?

 

 共食いなのか。それとも、数の調整でもしていたのか。

 何方にせよ、腐った肉の塊が道を塞いでいやがった。

 おまけに、その前では同族の肉残飯を貪り食っているキメラ型がわんざかいやがる。

 

 俺は取り敢えず、ガスマスクを装着。

 そうして、窓を開けてから奴らに対して言葉を発した。

 

「おーい! 聞こえてっかぁ! どいてくれー! 邪魔だよー! 出来たらその残飯もどっかやってくれー!」

「「「……?」」」

「いやぁそんな見つめられても困るからさぁ! 兎に角、どけって! ほら、そっち! そっちにな!? わっかんねぇかなぁ!?」

 

 クラクションを連続で鳴らしながら奴らに叫ぶ。

 すると、奴らは此方に振り返って来た。

 血でべったりの口からは涎がだらだらと流れていて……はぁ、たくよぉ。

 

 俺はトラックを停車させて降りる。

 頭を掻きながら近寄っていき、ガン見してくる間抜け共にジェスチャーで説明した。

 

「これ! 邪魔! どっか持って、行け! お前らも、散れ! な!?」

「「「……」」」

「だめぇ? いやマジで頼むよぉ。あんま遅れてっと上からどやされちまうってぇ。なぁ? ほら、干し肉やっからさぁ」

「「「……」」」

「いやなんか言えよ!!」

 

 奴らは俺をジッと見つめて来る。

 腹が立って一体の頭を叩いてやれば、奴らは首を傾げて涎を垂らすだけだった。

 そうして、俺への興味が無くなったのか再び残飯に目を向け直し黙々と食い始めた……ダメかぁ。

 

 俺は参ったと思いながら、天を仰ぎ見て……ん?

 

 視線をトラックの後ろに向ける。

 すると、闇の中から別の間抜け共が這い出してきていた。

 奴らはロボットの方ににじり寄っている。

 破壊するつもりであり、俺はダッシュで間抜け共を止めに行く。

 

「あぁヤメロヤメロ! 壊すんじゃねぇよ! 折角、此処まで来たんだ! ぶっ殺すぞ!?」

「「「……チッ」」」

「え、また舌打ち?」

 

 今度こそハッキリと聞こえた気がした。

 舌を打った音であり、俺の心はまた傷ついた。

 奴らはロボから興味を失くして残飯の方へと行く。

 見れば、隠れていたアホ共も姿を見せていて、あの残飯を食っていやがった。

 

 これはイケるかと見ていれば――地面が揺れ始める。

 

「な、何だ? 地震か……! おぉ、久しぶりに見たなぁ」

「――」

 

 倒壊した瓦礫の山から姿を現した――巨人。

 

 キラキラと光る鋼鉄のような皮膚を持ち。

 眼球は存在せず、指を突っ込んだ彼のような穴が四つ空いている。

 肩や手から筒のようなものを伸ばしていて。

 体長は……恐らくは13メートルほどか?

 

 “戦車型”と呼ばれる闇の眷属の一種で。

 通常の個体とは違って体が大きく。

 あの筒のようなものから砲弾のようなものを発射して遠距離から攻撃してくるらしい。

 実際に撃っているところを見た事はないが、調査隊の知り合いが語ってくれたのを覚えている。

 

 戦車型は一体だけで、奴は残飯へと近づき。

 その手の筒をずぼりと差し込んだ。

 すると、ずぞぞぞと音がして……吸ってる?

 

「……ストローみてぇに使えるのか……今度、教えてやろ」

 

 貴重な情報だと思いながら、俺はマジマジと奴らの食事の光景を眺める。

 

 

 

 暫く眺めていれば、奴らの食事が終わった。

 時間にすれば……10分ってとこか?

 

 山盛りだった残飯が綺麗に片付いている。

 地面は血でべとべとだが、掘ったりする分には問題ないだろう。

 

 奴らはゲップをしてのそのそと道の端にのく。

 もしかして、俺の為に片付けてくれたのか。

 そんな事を思いつつも、さっさと通って行こうとトラックに乗り込む。

 

 俺は窓を開けた状態で、ガスマスク越しに投げキッスをする。

 

「どうも、あんがとよー! べりべりさんきゅー! んまぁ!」

「「「……」」」

 

 返事は無い。

 ただじっと見るだけだ……愛想がねぇなぁ。

 

 もっと可愛らしかったら多少は……いや、無理だな。

 

 どんなに愛想がよくなろうともアイツらは人類にとっての敵だ。

 人間を殺して回る敵対種族であり、相容れない存在たちだ。

 唯一、俺だけが襲われないだけで……ま、どうでもいいや。

 

 難しい事は分からない。

 襲われないのならそれでいいじゃねぇか。

 そう思いながら、俺は大きく欠伸をする……ねむ。

 

 

 ・・・

 

 

 第参を出発し――九日目。

 

「……あれ、か? ……あれ、だよな……は、はは、マジであったよ」

 

 寝ぼけ眼で前を見る。

 途中で舗装された形跡がある道が見えたので通ってみたが。

 その先で本当に――コロニーが存在していた。

 

 白く巨大な壁には大きく黒い塗料で“第肆”と書かれていた。

 間違いなくコロニーであり、遂に到着したんだと実感した。

 

「敷設工事もギリで行けたな。全く、どうなる事かと思ったぜ」

 

 途中途中でロボが止まったりエラーが出たり。

 直すのにも苦労したが、何とか此処まで辿り着いた。

 俺は涙を流しながら、感動し――鐘の音が聞こえて来た。

 

「……え、何だ? 緊急事態か?」

 

 コロニーに近づけば、確かに鐘を叩く音が聞こえる。

 警鐘であり、敵の襲撃を知らせるものだが……俺?

 

 まさか、敵だと誤解されたのか。

 内心でびびりながらも、俺は門の前までトラックを走らせる。

 第参とほぼ変わらない見かけであり、門の近くにはカメラが置かれていた。

 俺は少し緊張しながらも、窓を開けて笑みを浮かべる。

 

「あのー、すみません……だ、第参から食料の支援に来ましたぁ……あ、これ、証明の王印です」

 

 俺はお上から預かった王印を見せる。

 黄金で出来た特別な四角形に複雑な文様を描いたもので。

 中には王しか見る事が出来ない特別なデータも入っているものらしい。

 管理者しか持ちえないもので、無くせば死罪だと言われたもので……ノイズが走る。

 

《……よ、ようこそ。た、直ちに、門を、開けます……あ、あの、お一人、で?》

「え? あ、はい! 私一人で来ました!」

《そ、そう、ですか。本当に、何とお礼を……申し訳、ありません》

「……?」

 

 何か凄く悲しそうな声がした。

 気のせいかと思っていれば、橋がゆっくりと下ろされて行く。

 まぁ何はともあれ、これで重要な任務は果たせる。

 後は、此処まで繋いできた電線の事を説明しコロニー内での敷設工事を任せればいいだけだ。

 物資の運搬もトラック事渡しておけば、勝手にやってくれるだろう。

 

「はぁ、取り敢えず。シャワーは無理でも、寝るとこさえありゃ……ん?」

 

 橋が完全に掛る。

 すると、完全武装の兵士や作業服の男たちがわらわらと出て来た。

 何だと思っていれば、黒いスーツの坊主頭の男が近寄って来た。

 窓を開けて挨拶をすれば、すごいクマがあるのが分かった。

 

「よ、ようこそ第肆コロニーへ! すぐにお食事と宿の手配を致します……そ、その前に、あちらはもしや、つ、通信を行う為の?」

「あ、はい。第参から引いてあるので、そちらの通信装置と繋いでくれればすぐにでも第参と連絡が出来るので!」

「お、おぉ!! 何と!! そ、そんな奇跡が……あ、ありがとうございます! 本当に、本当に!!」

「あ、それと……このトラックの荷台に食料とか水とか積んでるので、どうぞ好きに」

「ほぉぉぉぉぉ!! やったぁぁぁぁ!!!!」

「「「おおおぉぉぉぉぉぉ!!!」」」

「……そんなに?」

 

 食料と水と聞いて歓喜の声を上げる人たち。

 よほど食うものに困っていたんだろうが……虫肉とか雑草豆で申し訳ねぇな。

 

 もしも、機会があれば色々と店から運んできてあげようかと思いながら。

 俺は盛大に歓迎されて、第肆コロニーの門を潜っていった。

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