担いだ神輿が重すぎる! 作:ノコギリヘッド
何だかんだで上手く手綱を握れていると、そう手応えを感じていた相手が普通にブッチしてきて絶望する展開好き
「はい、では本題ですが、私、この度夢に向かって駆け出したいと決断致しました。よって、過去お世話になった場所へ赴き挨拶回りをしています。」
「………そうかァ…夢…か…。」
「はい。貴方があなたの道を行くのなら、私も私の道があります。そしてそれは交わる事のない道です。私は心残りでした…仮にも職場で何だかんだで交流があった貴方に、何も言えずに別れた事を。」
「なんだかんだで纏められるのは癪だが…あの時の俺を考えれば仕方ねぇな。………それならァ…俺から一つ、“送りの言葉”を送らせてくれ。」
「えぇ、どうぞ。」
「………お前に俺の弱点を教える。」
「………は?」
クハハッ、何だその表情は…お前らしくもねぇ。
「俺が絶対に守り通すべき秘密、それをお前に教える。」
「それは強引が過ぎる話で…ッ。」
「お前だ。」
「巻き込むのは…え?」
「お前こそが俺の弱点だ。俺が守るべき、な。」
「……何ですかそれ、もっと具体的な弱点を持って下さい。」
「それなら俺の力は俺の肉体以上だから、余り全力を出し過ぎると自壊する。」
「えぇ……。」
「どうだ?少しは俺の事を見直したか?」
「これのどこがお別れなんでしょうか?」
「お前の夢とのお別れだ。俺はお前を引き止めてェ…ただそう言う目的の言葉だ。」
「何ですかそれ、まるで私に惚れた見たいな…。」
「そうだ、俺はお前に惚れてる。それ以上もそれ以下も無い。お前はYESと言うだけで俺は全てを用意しよう。お前の夢とやらもだ。」
「…………言いたい事は言えましたか?」
「……あぁ、言ったな。…そうかァ…俺、振られたのかァ…。」
「さ、未練垂れ流しのダサい男はここまで、此処からはキッパリ送り出すカッコいい男になって下さい。」
「……だな、ありがとうよ…ヒース。俺はお前のおかげで踏み外しかけた道に戻ることが出来た。本当、勿体ねぇ女だってことがよーく理解できたぜ。」
「……買い被りですよ。」
「おぉ!?今デレたか!?デレたのか!?」
「……ではさようなら。」
「ちょちょ…冗談じゃねーかヒースちゃんよ…ッ?」
「何ですかその体たらくは…。……では、お元気で…“ギラード”。」
「……だな、ヒース。」
それ以上は無い。後は黙って部屋から出て行くヒースを見届ける。
……あれ?…少なくとも俺の事を考えていたから今日ここに来てたんだよな?でなきゃ態々この催しに参加するか?しかも滑り込みという事はかなりの葛藤があった筈だ。…アイツ、あの雰囲気で俺に相当な未練を…?
「クゥ〜〜ッ!じゃあ俺にもワンチャンあったのか…ッ!?」
追いかけるべきかッ!?………。
「……いや、それこそアイツが一番嫌う事か。俺も嫌いだ。」
かーッ!どうにもならねぇーな!
…取り敢えずヒュームの野郎に話してみるか、アイツはヒース程じゃねーが小生意気で話して中々面白い。それにアイツ、全くその気が無さそうな面してる癖に、男同士だからこそ話せる事にも全然食いついてくるからおもしれー。
「ヒースは手に入れられなかったが、お前は参謀として必ず横に置く。その為には…。」
取り敢えずそれらしい名前を考えねーとな…やっぱ此処はシンプルさを求めて力自慢決定戦にするか?…それとも盛りに盛って…。
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「ギラードの肉体は、言わば魔王の血と言う器の中に巨人の力を押し込めている状態です。勿論、ギラードの力量を考えれば幾ら器を持っていようと、相当な無理が掛かると考えるのが常識ですが…では実際どうなのかと聞かれればそれは否定寄りの不明。事実ギラードは力を暴走させた事はありません。」
絶賛報告中、机を挟んだ目の前にはやたらと貧乏ゆすりというか、全然落ち着きのない我らがあn…じゃなくてボスが、まるでヤクを切らした末期患者みたいな窶れた表情で、俺の話に“耳”を向けていた。
…これ本当に話聞いてる?…聞くのが怖いから続けます…。
「今回の調査により普通に限界が存在することがわかりました。よって勝機は如何にギラード様の力を引き出すか、長期戦にもつれ込み、相手の自壊を誘うかです。」
「わかりました我が弟。貴方の尽力により大きな手がかりを得られた事は喜ばしい事です。が…
「………。(あっ。)」
「聞こえませんでしたか?我が弟。では、もう一度… その傷は、何でしょうか?」
「えぁ…その…運転を…。」
「なるほど、続けなさい。」
此処に来て気づいた。これ窶れてない、ただ猛烈に不機嫌なだけだ。体の震えも怒りを抑えてるだけ。今、俺の前には噴火直前の火山が居る。
……ど…どうする…ッ?…いや、これは俺の失態だし正直に言うべきだな。ただ女装してた事は絶対に隠し通すッ!
「事故を起こしてしまいました申し訳ありません。」
「………そうですか。…本当に危なっかしい弟です…。貴方はいつも我が身を顧みない…魔族にあるまじき…場合によっては奉仕種族寄りも尚高い献身性と自己犠牲の精神を持ち、であれどもそれに見合わない脆弱な身にも関わらず危険に飛び込む…。」
先程の活火激火一歩手前とは打って変わって落ち着きを取り戻した我らがボス、コクヨウはゆったりと立ち上がるとコツリ、コツリと俺の側へ歩みを進める。
「ヒューム、私の好きな物を答えなさい。」
「……乾燥クギの実を一掴みで…。」
「ちょっ!?そ、それは…ッ……そうですが…。」
クギの実は釘みたいな形をしたナッツ的な実。庶民的な味だが上流下流問わずに愛されてる。コクヨウが食べてることも問題ないが、問題があるとすれば食べ方だな。
流石に王が豆手掴みで頬張ってたらダメでしょ?そう言う事。だが、今回は違ったらしい…。
「………では、質問を変えましょう。私の愛している物は何でしょうか?答えなさい。」
「……クギの木畑…。」
「ヒューム!ふざけているのですか!?」
「愛していないので?」
「………愛していますが!今ではありませんッ!!」
普通にマジ回答だぞ。127本のクギの木全てに苗字と名前を付けて個人管理してるとかはっきり言って頭おかしい。
「………。」
「……?どうかされましたか?」
唐突に視線を外し、もじもじし始めるコクヨウ。何事かと聞けば今度はこちらに向き直り、そして両腕を広げる。
「……此処には凡ゆる視線は届きません。つまり、私達のみです。」
マジかよ俺死んだじゃん。
「さぁ、私は酷く心配したのです。心を痛め、血と涙が流れる程に、悠久すら感じる時間を、貴方を待つその時を。…抱きなさい、ヒューム。私からではなく、貴方から。…貴方の忠誠を、愛を示しなさい。」
マジかよ俺死んだじゃん…。
てかギラードと抱く抱く話してたせいで完全にそっちの意味にしか変換出来ない。いいか落ち着けヒューム、これは言葉そのまんま、やる事は簡単、コクヨウに近づき、優しくハグ、オーケー?出来るわけねぇだろッ!!!
「………分かりました。そうおっしゃるのなら…。」
「………ッ。」
あー何でそんな覚悟決めたみたいな表情するかな?覚悟決めたいのはこっち!お分かり?俺お前よりも背低いんだぞ?何だよこの劣等感…。
そして俺は…ハグをし
「〜〜〜ッ!ン〜〜ッ!!?!?(ギブギブギブ!)」
「…………ッ。」
丁度待ち伏せ型の捕食者のそれ。俺が触れるか触れないかその瞬間、視界の端から迫り来る黒い影!認識した瞬間胴体を襲う絶望的な衝撃、俺は捕まった。
「愛しています、ヒューム。貴方を深く、深く深く。」
「〜〜ッ…ッ…ッ…はぁぁぉぁぁッ!ゲホゲホ…こ…殺され…っ。」
「これは“一つ目の”罰です。私に心労かけた罰…。」
未だホールドは続いている。渋々上を見上げれば、いつもならあり得ない、まるで女神の微笑みを浮かべるコクヨウが。
「……あの…これは…。」
「私が嫌いな物を答えなさい。」
「……ルーファふグゥ!?」
「この際よーく教育を施さなければなりませんね。いいですかヒューム、私の嫌いな物…それは…。」
「…嫌な予感が…。」
「『嘘』です。二つ目の罰、私に事故を隠した事…ですがこれはちゃんと自白したので無罪とします。」
「あ…ありがとうございます…。」
「そして………まだ、あるでしょう?」
「…………ないでふギュゥッ!?」
「私はまだ聞いていません。貴方がどうやって、事故を起こしたのにも関わらず王宮に忍び込み、ギラードの秘密を知り得たのか。…私は非常に気になります。その方法は?教えなさいヒューム。それはどう言う方法で行ったの?」
「…………………………。」
い…言えない…言えるわけがないっ!
『貴女に隠して使っている魔法をふんだんに使って女装し、催しで即興アドリブダンス踊って一位とって、そしたらギラードの寝室にお呼ばれして過去の女演じて縁切りついでに情報抜いた。』
…なんて言えるわけ無い…。
「何故、何も語らないのでしょうか?」
「…語ることも憚れる事柄だからです…。」
い、生き残る糸を!最早此処を黙って切り抜けるのは不可能!
並ばせめて!俺の名誉を最低限守りつつ簡潔で誤解なく、そして穏便に済ませられる様なカバーストーリーを!
「成る程…では、私の寝室に…「女装しました。」………???」
「女装して内部に潜り込みました。そしたらどうやらギラード好みだったらしく気に入られ、ギラードが酔っていた事もありそのままいい感じに情報を抜けました。」
この際女装は暴露、撤退だ。絶対防衛ラインをギラードとの過去に定め死守する!
「………まさかギラードに…ッ。」
「捧げていません。開発されていませんのでどうか力を緩めて下さい死んでしまいます…ッ。」
「そうですか…?…念の為調べて…。」
「面白い冗談ですはははは。」
「そうでしょうか?“物”の管理を徹底するのは持ち主として当然の行動の筈ですが。」
「ナチュラルに道具扱いしてきますね。」
「貴方を知的生命体として権利を与えて先に動かすとどうなるのか、よく分かりましたのでこの度その権利を剥奪する事にいたしました。」
物凄い言われ様だな…。
「あんまりでは?」
「妥当です。」
「講義は。」
「却下です。」
「どうすれば許されますか。」
「私のペットに…。」
「物から動物への格上げは嬉しいですがもう少しどうにかなりません?」
「……では…。」
少し、考える様な仕草を挟むと…微笑み、言葉を紡いだ。
「シルバを、解雇しなさい。」
嗜虐と愉悦に濡れた、悪どい笑み。それでも心底大切な物を見るかの様な慈愛に満ちた黒曜色の瞳が瞬きする事なく俺を見つめる。
本心から来る深い愛情と正直な好意を持ちながら、簡単に平然と…何なら嬉しそうに容赦ない悪意を向けられる。
俺は、いつだってこの化け物が怖かった。ただなんだかんだな部分があったのは事実だ。それは…過去の、無害な少女を知っているから。
だが、もう違う。あの少女ではない。
俺はどうやらとんでもない怪物に手をつけてしまっていたらしい。
だからこそ今一度胸に刻む。俺は彼女が恐ろしい…と。
キュートアグレッションを罪悪感なく実行可能な女、コクヨウ!