担いだ神輿が重すぎる! 作:ノコギリヘッド
あと前話で人間に付いて持ち上げましたが、あくまでも“かつて”なので悪しからず…。
「は?ルーファスの所に潜入する?死にたいのですか?」
「確かに彼の国は血の気が多いですが流石に言い過ぎでは?」
まるでレベル5、渡航禁止、命の保証はできない紛争地帯見たいな言い方するじゃん。
……その通りか。
「よく聞きなさい私の愛しく愚かな弟、あの国はどこよりも弱肉強食の理を引き摺る蛮族国家、か弱く脆弱な貴方など話をするまでもなく粉砕されてしまいます。」
「粉砕ですか…。」
どうやらただ殺されるとかの次元じゃ無いらしい。コクヨウ的には形すら残らない想定と…こっわ。
実を言うと俺、行ったことがない。そしてコクヨウは何度かあるからこそ憂いているのだろう。
…しかしなぁ…。
「ですが、彼の国が本当に人間と一戦交えるつもりならば、それは何としてでも阻止しなければなりません。はぁ…ルーファスも無謀な事を…。勝てた所でその様な余力が一体何処にあると言うのですか…。」
勝てる見込み一割、しかしこれは『完勝』する見込みの話だ。
内訳としてはこうなる。
人間側の完勝ニ割、人間側の勝利三割。
痛み分け二割。
喰魔側の完勝一割、喰魔側の勝利二割。
…言う割に意外に勝てる?そりゃ喰魔は根っからの捕食者、戦闘力は上澄の上澄み、対して人間側は全盛期程の力はもうないからな。…無いのに勝率高いってどうなってるの?
…かつて、多種族連合を凌ぎ切った人間はその後乗りに乗り遂に絶頂期を謳歌した。栄華を極め最早敵無しとまで言われ…しかし、色々あって内ゲバで崩壊して今に落ち着くって感じだな。何やら裏では魔族側の工作(ハニトラとか)があったとか言われてるけど…解りかねる話だ。
だって俺生まれてない。
「わたしならば…何とかして見せます。」
この際だが、何度だって湧いてくる問題だが、俺が直に行くってのは相当キマってる、頭おかしい。立場的にも力量的にも本来なら顎で他者を扱き使い物事を動かす事が俺の仕事、間違っても現地凸じゃない。
…が、俺以外にできるとも思えないんだよなぁ…。喰魔に潜入しながら龍を操作するの。
それに運良くこの地位にいるがそとそも俺に采配する能力は無い。寧ろ俺は采配される側、だから本気で何かを大事を成したいなら…俺が動かなきゃならない。
「…コ「姉様です。」……姉様、お願いです。」
一応どうすればいいか、その道筋はある。
大元の問題として何故ルーファスは人間と戦うつもりなのか。
…食糧危機だ。では何故そんなことが起きているのか?…ここで“化け物”が出てくる。
ファンタジーに漏れずモンスターが居る訳なんだが、強い奴は本当にとことん強い。それこそ王片の所有者で絶対的実力者のルーファスですら攻めあぐねる程に。ま、今回は相性もあるが。
して、ルーファスも手を焼く化け物…【カゲロウ】
吸血鬼は太陽に弱い、この特性はこの世界でも健在だ。ドスケベもとい精魔種とかもそうだが、夜に生きる種族は夜に特化する代わりに昼を捨ててる。つまりああ言う手合いは太陽が本当に無理らしい。
そして【カゲロウ】…別名『太陽の蝋燭』…成虫になるとメスは体内で核融合を起こし発光、半日程の期間自分自身が太陽となりオスを呼び寄せ、産卵、最後に全力燃焼して超広範囲を焼き尽くし、そして燃え尽きる。
卵は地中深くに産み落とされこれを耐え、また天敵となりうる生物は文字通り消し炭にする事で子孫の安全を確保。
…これがベルカ式国防戦術ですか?まぁ自爆して放射能撒き散らさないだけ温情か?あくまでも放出するのは光と熱だけ、変な所で優しい。
とは言えその熱と…そして特に光が弱点にぶっ刺さってるからダメなんだが。
因みに幼生も地中深くにいるから手が出せない。クソゲー、だから攻撃の機会は羽化の瞬間になる。
して、最悪な事に食糧生産地にてメスのカゲロウの幼生が発見されたらしく、羽化が近くなり活動が活発化、局所的な地震や地表の変動が多発し生産に打撃…それに加えて各地のオスが呼応し同様の被害を各所に出している。
「カゲロウが羽化する瞬間こそ最初で最後の機会、しかし羽化の準備が整った瞬間から融合は始まり光が放たれます。如何に強力な喰魔と言えど本領を発揮出来ずに火力不足に陥り…やがて手遅れになります。」
そして更に追い討ち、カゲロウが羽化するまで微妙に長い。悠長に待っていると国内が干上がり、カゲロウ退治どころの話じゃなくなる。
だから…緊急の供給として人間襲撃戦だ。まぁ、つまり拉致だな。人を糧に食い繋ぎ、人を糧にカゲロウを何とかする。
「貴方は、これを打開しうる策があるのでしょうか?」
「あります。……【龍】です。」
「…龍を……ぶつけるのですか…。」
ルーファスだってやりたい訳じゃ無い。がもう道が無い。
だって味方が居ないから。他国は敵国、借りを付けるとか言う特大の漬け入る隙を晒す事もまた、カゲロウと人間並に彼等彼女等にとっては致命傷なんだろうな。
ま、そもそも人間相手になら別に何してもいいってのは共通認識だ、ただその後は自己責任だが。
「龍ならば叩けます。それに国を持たず所属の概念が希薄な龍ならば極めて中立な立場から助太刀を行えます。」
龍の気まぐれ、これに勝る中立など無い。気まぐれだから、勝手にやった事だから、やってる事は個人…個龍の範囲を出ないから、だから何も考えなくてもいい。
うん、楽だね。それに龍からして見ればちゃんと大義名分というか導火線だってある。
ただこうやってまとめるとなんか詰み過ぎて可哀想すぎる。俺の境遇が可愛く思えてくるレベルで。
「嗾ける事自体は簡単です。龍は虫が嫌いですから。」
「…確かに、龍の虫嫌いは理解の及ばない領域…場合によっては徒党を組む事も視野に入る程に…。」
龍は虫が大っっっっ嫌いだ。何故かってのは歴史の授業が始まるから辞めとくが。
因みに『龍が徒党を組む』という諺がある。『あり得ない』って意味だ。そして龍は虫の事になれば徒党を組む事だってある。そんなあり得ない事が起き得るほど、龍は虫が嫌いだ。
ま、俺が用意する龍はただの龍じゃ無いから徒党は組まないが。
「…悔しいですが龍と喰魔、二つの種族の間で暗躍できるとなれば貴方くらいしか出来ませんね…。」
「でしたら。」
「許可できません。」
「…何故でしょうか?」
「いつの日か…貴方が受けた襲撃、その影に喰魔の痕跡を見たからです。」
「……そうでしたか。」
「程度は低い物でした。『利用できそうだから手を付けた』…末端も末端で碌な指示も受けては居ません。アレも言ってしまえばきっかけをもらったゴミが勝手に暴走しただけです。が、何であれこの国に外患を齎そうとした事は確か…。」
「……。」
そんな国を助けようとと言うのだ、確かに“違う”話だろう。だが、俺は感情論で助けたいと言っているんじゃ無い。そしてそれはコクヨウだって分かっている。
「とは言え、私としてもあの国が潰れる事は良しとしません。それに飛び火するのも面倒です。私達からすれば喰魔単体の暴走でも、人間からすれば魔族全体の宣戦布告とも捉えられかねません。よって………。」
「……。」
「………………………っ。」
め、めっちゃ葛藤してる…。
「あの…。」
「…許可とします。」
さっすが、分かってる。
それにさっき『人間相手になら別に何してもいいってのは共通認識』と言ったが、それは人間側からでもそうだ。だから、毒ガス散布とか都市無差別爆撃とかナパームファイアーとか遠慮なしにやってくる。
絶対相手したく無い。
「ありがとうございま…「ですが。」……。」
「隣にシルバを付けて行動しなさい。」
「わかりま…え?シルバを?」
「はい、なにか問題でも?」
「いや問題と言いますか…その言葉が出てきたと言う事が大問題…。」
「………。」
「いえ、なにも…分かりました、仰せのままに…では、準備を進めてまいります…。」
まじか…どう言う風の吹き回しだ?
ただこれは渡りに船、今回の立ち回りはかなりハード。シルバが居ればかなり安心できる!
ガチャン…
「……また、寂しくなってしまいますね…。」
ですが私も“慣れ”ました。これも一種のプレイ…そう、つまり『放置プレイ』と言う発見、悟りを…!
「抑圧無くして解放の快楽はあり得ません…ッ!先日の攻めで私は天啓を得ました。…求める物を長く欲し、我慢する程にいざ与えられた時の快楽は想像を絶すると…ッ♡」
あぁこの感覚、私の中身が、精神が貴方色で染め上げられていく感覚!*1
あぁ早く…早く早く早く…私を壊して欲しい…♡
「でなければ…私が先に貴方を壊してしまうかも…しれません♡」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「〜〜ッ!?」
「どうかされましたかヒューム様?」
「悪寒が…。」
「可哀想に…今すぐに私がこの肌で温めて差し上げて…。」
「お前は前見て運転しろ!出来なきゃ変われ!」
「それは無理です、この様な事は言いたくありませんがヒューム様、貴方様は一度事故った身、
「……っ。」
「〜〜ッ♡♡」
「おい急にッ!ハンドルハンドルッ!死ぬ!死ぬ!」
マジで人選ミスったか!?でもコイツしか居ないし…ッ!やだ、俺の手札なさ過ぎ!?
「……。」
やる事のおさらいだ。
諸悪の根源『カゲロウ』をぶっ潰す。喰魔だけではこれを達成出来ず更に様々な不幸が祟り、奴らは破滅への道を歩んでいる。
龍ならばカゲロウを潰せる。…いやまぁ実際かなり苦しいが、今回ぶつける龍は文字通り最高クラス、これは何とかなるだろ。それに…龍が近づけばカゲロウも動かざる負えない…つまり無理してでも早めに羽化しようとする筈だ。
…問題はどう嗾けるか…。
そして喰魔潜入、恐らく人間襲撃戦は近い…龍とカゲロウを同じリングに上がらせるまで、そこまで何とかしてこれを遅延させなければならない。
「んんっ、しかしヒューム様が龍のねぐらをご存知だったとは…。中々姿を見せず交流も無いと言うのに…流石でございます!」
「……黙って運転しろ。」
龍に対する他種族の印象とはずばり、『未開の地に住む馬鹿みたいに強い原始人』だ。
しかしやっぱり遠いなぁアイツのねぐら…って言うと怒るんだったな…。え〜『愛の龍城』だったか?…本当に悍ましい…できれば一生行きたくなかった。呪われそうだもん。
でも進むしか無い。道路交通法なんて知らん、フルスロットルで道を駆け抜け…。途中で道すら途切れれば必要な荷物…“お土産”をシルバに持たせてまた駆け抜ける。
いやーシルバがいて良かった!自分の倍ある荷物を鎖で縛って背負い、その上に俺を座らせてもスイスイ歩いて行くんだから楽なもんだ!
「はぁ♡はぁ♡」
「どうした?息荒いが休むか?」
「いえっ!寧ろこのまま指示を飛ばして下さい!出来ればより強い言葉でお願いします!」
鼓舞しろって言ってるのか?顔色が窺えないからわからないが…まぁそれくらいならいいだろう。
そこから3日掛けて秘境を貫き…いよいよ見えて来た。
「ヒューム様…こ…これは…?」
「…ようこそシルバ、住人曰く『愛の龍城』と謳う…その実態は見るも悍ましい呪いの館へ。」
チラ見えしてた時から何とも言えない表情をしていたが、いざその全貌を捉えたその時、明らかに顔が引き攣った。
それは煌めく装飾の施された岩壁。よく見ればその装飾の正体は『鱗』であり、しかもかなり乱雑に貼り付けられている様で向きや形大きさはバラバラ…何より、あたりに立ち込める猛烈な『生臭い臭い』…重苦しい血肉の臭いが鼻に付く。
「……覚悟は出来たか。」
「無論で御座います。貴方様の為ならば何処へでも。」
「………ありがとうな、ほんと。」
「はい。…え?」
「行くぞ……ッ!開くの手伝え!」
岩壁に雑に取り付けられた巨大な扉、その片方をシルバと共に押す。
建て付けの精度が劣悪なのか酷い音を響かせ…そしてその中に僅かながらに混じる…“生”の音。
“肋骨”で象られた扉を開き、生暖かい風を浴び…う"っ…危ない…昼飯抜いて正解だったな。出来るだけ奥を見よう、外壁は…うん…。
SAN値を削りながら俺たちは中に進む。あぁ…そう言えば思い出した、確かここのコンセプトは『私に包まれて』だったか?……本当に嫌だ…。
匂わせ過ぎて臭過ぎる…。