担いだ神輿が重すぎる! 作:ノコギリヘッド
これも所謂貢ぎになるのかな
龍にも、魔族にも、そして王にもなれない。
暗い底で得た結論は、とても残酷で…けれど納得できるものでした。
何より…既にその結果に絶望する程、私の心はもうまともではありませんでしたし。
「私のお母様はなぜ私に会いに来ないのですか?…絵本では家族は一緒に居るものと…。」
そう尋ねた私に帰ってきたのは…何もなかった。否定も、説明すらもなくただただ無視。
「私の……お父様はな、…なぜ私に会いに来ないの…ですか?…その…絵本では…。」
尋ねる切る前に返事は来た。忙しいからと、興味なさげに私を見下ろしそして去って行った。お前は龍だから独りで何とかなると、そう言われて。
「龍は独りで大丈夫。」
私はその言葉を胸に生きた。私は龍だから、独りで何とかするものだから。独りで、独りで、独りで…。
この日々で私の何かが、多分壊れた。
そして…他の龍と出会う機会があった。私は胸を躍らせた。本では同族とは仲良く出来る相手と書いてあったからだ。
私にも『ともだち』が出来るかもしれない。お話しして、遊んで、兎に角沢山何か出来るかもしれない。
「お前は龍では無い。」
……また、何かが壊れた音がした。
……
…
自身が龍では無いのなら、では何なのだろうか?
…龍では無い、つまりお母様では無い?と言う事は私は魔族…?
天啓だった。私は急いで本を読んで魔族になる術を得た。
そこからは…楽しかった…。
遊べた。話せた。一緒に何かを食べて寝て過ごして…。
…けど、相手はそうでは無かった。
『我が儘で自分勝手、力の加減も出来ずに暴れ回る生きる害悪。』
それが私の最終評価。
私は反省した。次が欲しいと、また仲良くなる機会が欲しいと懇願した。…けど…。
『そもそも仲が良かった事なんて一度もない。』
…私は…災いをもたらす暴れ龍として、王城の地下深くに幽閉された。
誰も…助けてはくれなかった。…母も、そして父も…。誰も…。
……
…
龍でも、魔族でもない。ならば私は何なのか?
…母は高名な龍、父は魔王…古い記憶、生まれた瞬間に聞いた私は『統べる龍』の素質があると言う会話…。
私は王になるべきなの?誰かと並び立つのではなく、誰かを支配する?
「………。」
私は勉強をする事にした。少なくとも今のままでは王にはなれないから。
時間はあった。本を欲しいと言えばくれた。だからずっと読み続け考え続けて……理解し、同時に後悔した。
「付いてくるものの居ない王など、何が王なのでしょう?」
私には誰も居ない。何もない。そんな存在が王?
…現実逃避も答えを得てしまった事により遂に尽きた。私は誰にもなれない。
不思議と絶望はしなかった。…或いは感じ取るための何かが…既に壊れてしまったのかもしれない。
狂いたかった。何も考えずに済みたかった。けれどそれも出来ない。
誰も何もしない。会いに来ない。私を覚えている存在なんて誰居ない。どこにも居ない。いる訳がない。
あぁ…何故私は生きているの…?なぜ…この世に産まれてきたの…?
私に…意味はあったの…?
………
……
…
「あのクソ淫魔ッ!普通人をパンイチでダンジョンに放り込むか?絶対にいつかぶっ殺す…ッ。」
…?
「いやぁ、ランタン拾えて良かった…。だが食糧…さっき食べてたジャーキーしかない。水もない。…おれ…しぬのか?」
……!?だれ!?
「デンッ!(発覚)…って女の子…あっ(察し)…済みません許してもらう事は可能でしょうか?」
私を見た瞬間、一瞬灯る恐れの色。今の私は龍の姿ではありませんが…はやり…私は…。
「……許すとは一体?…貴方は誰ですか?」
「お…わたしですか?…ヒュームです。魔王の息子、末っ子六男…らしいですね。貴女は?」
「私は……。」
名前が出てこない。忘れた訳じゃない。けど…出てこない。
魔王の息子?と言う事はお父様の…?ならば彼も龍?でもそんな気配はしないし…それにあり得ないくらい脆弱過ぎます。
いえ…あった事はありませんが私には天使の長女が居ます。六男ともなれば…成る程、アレはかなりのゴミですわね。
何故ここに?私に?そんな筈がない…けど…これを逃したら私は…。
「……どうかされましたか?…無理にしなくても。」
「いや!待って…待ってください…置いて行かないで……。」
「………待ちますよ。無理せず、落ち着いてからで結構です。」
「〜〜〜〜ッ!?」
い、今私に気を遣ってくれた…?
「……私は…ドラグニカ…。魔王の娘で…次女…です。」
「…まじか…。」
……
…
「本当に…?本当また会いに来て下さいますよね?ね?ね?ね?」
「勿論です。男に二言はありません。」
そこからヒュームは定期的に来てくれました。本当はずっと居て欲しくて、出入り口を壊してしまおうかと何度も思ったけれど、我慢しました偉いでしょう?
「そ…そうか…。ありがとうございます…。」
そして何度目かの邂逅…私は意を決してとある提案をした。
「…貴女の鱗を私に…?」
龍は信頼を置く相手に自身の一部を与えます。私は…貴方ならばと。
そう思って鱗を剥ぎ、それを渡そうと取り出した瞬間…それは起きました。
「なぜ…?なぜ霞んでしまうのです!?あぁダメ辞めて…消えないで…。」
私にも自慢があります。彼は丁度、月光を蒼い水晶で透かした様な美しい色彩と、そう表現して褒めてくれた美しい鱗が…。
けれど…私から離した側からそれは霞み褪せてしまいます。
強度は劣化し、性質はまるで変化し、輝きは失われる。それはまるで、龍にもなれない私が龍の真似事など烏滸がましいと言われた様で…。
それは鱗に限らず、甲殻、角に至るまで。
私は概念的に無意味などころか、物理的な価値すらも無価値で示す事が出来ないの?私は…誰かを想う事も許されないの…?
…私は……。
……私は…ッ。
「私はそればかりが価値だとは思いません。」
……?
「現物の良し悪しではありません。それに込められた意思にこそ、本当の価値があると、私はそう考えます。」
……あぁ、やっぱり貴方は優しいお方…。
けど、ダメなのです。正しい価値を届けなければ、美しい私だけを見てほしいから、綺麗な私を止めてほしいから。
だって私は…。
「貴方に全て捧げると、そう心に決めましたから…。」
壁を飾る鱗が色褪せるならば、何度だって貼り替えます。
角も、甲殻も、何度だって。
そして私は知見を得ました!血肉骨臓ならば…!褪せないと!
だから、貴方の喉を潤すのは私の血、貴方のお腹を満たすのは私の肉、貴方の周りを構成するのは全て私、それが真理。
私の持つ愛を証明する私の方法。そう、つまりこれは真理なのです!私の愛は鱗などでは収まらないというこの世の道理!
ならば私は証明し続けなければならないのです。私の全てを持ってこの愛を、この価値を…ッ!
でなければ…見合いません…。例え私を百殺したって、貴方の一にも満ち足りない…それが私の愛ですから…。
「……ですので…。」
逃げられるなどと思わないで下さいね?
貴方と一緒に居るためならば、私は何だって捧げますし…どんな手段だって使えます。
それこそが私に意味を与えるのです。貴方こそが…私を何者かにしてくれるのですから…。
あの日暗い底で貴方に出会ったあの時から、何者でも無い無価値な私は意味を…待てたのですから…。
「えぇ、決して…何があろうとも…。」
嗚呼…罪なき罪の子ドラグニカ、我等成れない宿命に狂う運命に狂えなかった哀れな次女…。
常に彼に酔いながら、けれど現実を見続けている。極めて龍に近い分類不明の混ざり物…ドラグニカ。
心の移り変わりは龍らしく、自己中で我が儘だからこそある時は丁寧に、ある時は雑に扱える。その時々で正当性を自分で決めてしまう。
どんな矛盾も貴方の前では道理になる…。
貴女は何も変わってはいない。かつて失敗した時からなにも。
だから…貴女はきっと…。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「……(えーと、食糧供給日程を334年遅らせて、物資運搬に纏わる書類を全てうんちの絵に載せ替えると…。)」
いやー、ルーファスに悪いんだけど他所の国でめちゃくちゃするの正直面白い。だってこんな重要書類にバカ出来るなんて楽しいに決まってる!なんなら楽しすぎてやる予定のない計画も変えちゃった(クソ害悪)
「……(潮時か?いくらルーファス不在とは言え長居は厳禁)」
城の内部を回ってる時、意外にみんなオープンに話してるなとは思っていたが、普通にルーファスが居ないから好き勝手言ってるだけだった。
…別にルーファスの人望がないからって訳ではないと想う。多分誰がなっても同じ事になるし、寧ろもっと酷いだろう。一番マシなルーファスでコレなだけだ。
「……(さて、とりあえず下水行くか。)」
ここまでずっと偽装を張り続けていたわけだが流石に限界が近い。ルーファスが居ないことをいい事に、完全ステルスで徘徊してた訳だがこれ普通にエネルギー食うからキツい…。
それになんか城の内部が騒がしくなって来た。もうバレたのか、或いは別の問題か…。
巻き込まれるのはごめんなので退散するに限る。多分最高機密文書だと思われる城の内部情報の写によると…おおここに隠し通路でそこから地上に上がれると…。
「……(ここかな。……気が重い…。)」
…嫌な景色を思い出すな。魔王城の下には地下迷宮…つまりダンジョンがある訳だが、あー今でも腹が立つ…ッ。淫魔兄妹にパンイチでダンジョンに放り込まれたあの日…ッ!思い出しただけでもムカムカする…ッ。
「…それでドラグニカと出会ったんだったな。」
脱出を手伝ってもらった対価は高く付いた。それこそ、今に続くまで払い続けているし、なんなら増えたし。
安いもんだ…腕の一本くらい。なんて言えねーよ?俺。
………
「……ん?なんか…音が…。」
・・・・・
「……騒がしいな…ここに来て崩落とか洒落にならん、勘弁だぞ…?」
水の音以外聞こえない筈の、静まり返った地下空間に響く何かしらの音。しかしそれも辛うじて届いているだけでありどの程度でどんな音なのかは分からない。
…しかし、それはどうやら壁の向こうのようで……。
「……この向こう側か?…白ワニとか辞めてくれよ…。」
壁から急にモンスター白ワニが飛び出して来たりしてなw…とか考えながら耳を澄まして…。
ズドォォオオン!
白光混じりの爆発に吹き飛ばされる。
辛うじて展開した防御壁も一瞬で消えたが無いよりはマシ、痛む体に鞭を打ち、瓦礫をどけ状況を確認する。…白ワニの方がマシだったな。
「……戦闘は無しと言っただろう…。」
本来ならば光源なき地下、暗闇の中で土煙など見えるはずも無いが…淡く閃く白光がそれを照らす。
塵舞う最中に靡くは天の羽衣か?厳かに煌びやか…なれどもそれと共に揺れる鎖が、まるで冷や水を浴びせられたかのような現実味を持たせる。
「……シルバ…。」
体の節々から展開された白光する羽衣…いや、『白膜』か…。
「…これは…御見苦しい所をお見せ致しましたヒューム様。…ですが…。」
どろぉ・・・
「
極めて平坦な声と、はしゃぐ様な声が同居する…ありたいていに言えば聴いてるだけで混乱するそんな声。
粘り気のある重厚な闇を引き連れてやって来たのは…あのフードマントだった。
「ったくアクロ!戻って来い!!」
「あの魔族絶対喧嘩売っちゃ行けないタイプよ!あんなの見た事も聞いた事も…っ。」
「ある。新めの古い記録って所だがな、丁度ああ言うのが短期間ながら暴れ回ってたんだよ。…ある日を境にパッタリと姿を消したがな…。【凶兆の白呪い】…。」
アクロ、そう呼ばれた少女の後を追って姿を現したのは…あの2人。
方や燃える様な赤髪赤目の女、多分火属性、てか火の玉浮かばせてるし絶対そうだ。
そして方や無精髭を生やした…普段無気力そうで適当な事言ってるけどいざとなったらカッコいいタイプのオジサンな。
「
そう言うとアクロはずっと付けていた意味のない眼帯を外し…俺に手渡した。
…久しぶりに見るな。本来の輝きを取り戻した片目とは違い、隠れていた瞳は相変わらず濁っている。これで見えてるらしいから魔族って頑丈だな…。
「預か…いえ、お返しします。…ですので、ここより独断をお許しください。」
「
「
「
「…何を言っているんだ…?」
本気で分からん、ただそれよりも…グ…ッ頭が…割れそうだ…ッ。
「…私が殺します。」
「
頭は痛いし体も痛いし、精神も落ち着かないし情報の嵐を処理出来ないし…が、これだけは分かる。
俺に全てを叩き潰す筋肉的な俺にチート能力をくれ!…でなきゃ…この状況面倒臭過ぎるだろ…ッ!
ドラグニカ捕捉
寂しがり屋な異端の龍、その時々で認識が都合よく変わる為話し合いは基本不可能。また力も強大な為強引な手立ても意味を成さず正しく暴れ龍。
…ただ、一つ道があるとすれば…やはり彼女は龍とは言えず、何かきっかけがあれば…彼女の心の所在を龍から引き離せれば…。
……これ後書きじゃなくて設定ページ作った方がいい奴やん。