他者には言えない秘密がある。
それは弱み、願望、知られれば貫かれる露骨な弱点。
重い、重い、隠すべき、秘すべき事柄。
「……ふっ…“こんなところ”を見られれば、私とて一巻の終わりだろう。」
目隠しにより視界は暗転する。するとどうだろうか?体は震え、縮こまる。夜の王者たる血族が、目隠しし一つでこのザマだ。
…暗闇が怖い。長く長く、この世に産まれたその瞬間から付き合わされ続けた…飢えと孤独の象徴だからだ。
……。
『親』が欲しかった。
私を抱いて欲しかった。
私を愛して欲しかった。
私を守って欲しかった。
私を理解して欲しかった。
限りなく母に近いのに、何かが違う、孤独で異物な私を慰めて、受け入れて、そして…褒めて欲しかった…。
「…ぉ…おなかすい…。」
…た。
長い長い時間の中、周りから聞こえる微かな声を下に学び、そしてようやく話せた…これが私の初めての言葉だ。
そう、これがだ。母の名でも父の名でもない。怒りでも嘆きでも、助けを呼ぶ事でもない。ただひたすらな空腹と、どうしようも無いに対する諦観の呟き…にすらなれないような、譫言だ。
……
…
母は私を産むと疲れたと言い、直ぐに眠りに着いた。…言葉そのままの意味だ。
父は…。……。
生まれた瞬間から放置を喰らった訳だ。
母は真祖、故に孤高。周りの従者も身籠っている事すら知らない程に。
そんな最中子供を産んだなど知るはずも無く、ただ気まぐれに寝ただけだろうと流される。
母の館は常に暗い。
そんな最中、冷たい床に赤子が一つ捨て置かれたのだ。
だが、死ななかった、死ねなかった。私の大部分を占める真祖の血筋がそう簡単には死なせなかった。
非力且つ動く事もままならず、微かな水と埃を食べ、眠る母から染み漏れた魔力を取り込み、そして眠り続けた。それは見つかるまで…あれは恐らくだが数十年の月日を、その場で過ごした。
まず、目は光を見なくなった。
「畏れられなければ…。」
次に学んだ事だ。
私の血筋はそれは豪華だ。が、その血脈は私を保護する事はなった。
喰魔は弱肉強食の理を引き摺る、外では文化種面をしておきながらそのじつ蛮族と変わりなく、加えて陰湿なのが呆れものだ。
「出来るだけ弱らせろ…。」
「こっちからアレは殺せず、アレからこっちを殺して来ない程度にな。」
数十年の物理的孤独の次に私を待ち構えたのは、阻害と敵意から来る孤立。私など、その程度だった。
だからこそ、学んだのだ。如何すればこのクズ共を黙らせ、従わせるのか、その方法を。
『力』だ。敵を潰せる力。
だが…難しい物だった。
食事を与えられなかった私の栄養状態は最悪を超えた最悪、生きてる事があり得ない程。当然成長速度も遅く体の出来も悪かった。
この体に流れる高貴な血とやらも、惨めな事に力を振うためではなく生きる事にのみに心血を注いでいる。
私は弱い、弱すぎる。この館の従者達、その食事を掠め取る事すら難しい程に。
絶食、生まれてこの方常に飢餓状態。普通なら理性を失って誰から構わず捕食に走ると言うが、生憎、初めからこれが常だった私はある種それが普通になっていた。
…奴等にとってはいい捌け口だったろう。本来ならば手も足も、指先一つとて敵わない相手が、こんなにも弱く見窄らしく、全てが己達の手に委ねられている…さぞ愉悦だっただろう。
…そして…そんな最中、逆転の芽を探し、どうにか食事を奪えないかと画策し観察する毎日に、転機が訪れた。
私は魔王…父の城に送られ、他の兄弟姉妹と暮らす事になった。
…丁度、その日からだろうか…?
純血に在らずとは言え吸血鬼、真祖を色濃く継ぐ存在と言えど血を啜らねば死ぬと言うのに、生まれてこの方まともな血を飲んでいないからだろうか?更なる限界が訪れた。
…鼻が効かなくなり、耳すら聞こえなくなった。
……
…
魔王の城、その主は実の子供に対して部屋は与えたがそれ以上の事はせず顔を見せる事もなかった。…実際来られても見れないのだが。
…私には従者も、ツテもない。血を取り寄せるなど出来る筈もなく、寧ろ勝手の知らない空間に放り込まれ、世話役はおらず、部屋に閉じ篭もることしか出来ず…。
結局何処へ行っても何も改善などありはしなかった。常に空腹を抱え、代わりにあやふやな矜持を詰め込んで、虚勢で常に周囲を威嚇する毎日。
…だが…そうでもしなければ私など簡単に潰される。此処には私の兄や姉と呼べる存在が居る。…いつ、いつ潰されるか…ッ。
不安、不信、怒り、苦しみ…しかしそれを上塗る飢え。
魔王の城、その従者は母の館の従者達よりも平均弱い、しかしそんな弱者達よりも私は弱い、いつ潰されてもおかしく無い恐怖を抱え、誰も寄せ付けまいと虚勢を張る。
…詰んでいたのだ。初めから。誰かの保護を必要とした時期に、放置され、その時点で誰かを襲うと言う選択肢は消えた。そんな力は、はなから貰っていない。
ならば落ちてる食べ物を拾うしか無いのだが、室内に血肉が落ちてるなどあり得るはずがないのだ。
では外は?…尚更生き残れるはずが無く…。
・・・
…この振動、何者かが侵入した。
魔力量は…大した事はない。従者か?…大方立場の弱い雑魚が私を使って程のいい鬱憤晴らしに使おうとしてるのだろう。
…もう、どうでもいい。抵抗するのは…疲れた……。
必死に生きる事に齧り付いて来たが、今になって思えば何故そこまでして生きていたのだろうか…?
何故…そこまでこの憎たらしい世界にしがみ付いていた?
……。
………嫌だ…。
……嫌だ…。
…ただ漠然と…それを示す手段を知らないから分からないけど…いやだ…。
……。
………。
…………助けて…。
「たす…て…。」
死にたくない…お願い見逃して…。
「しにたく…い…たすけ……おねがい…。」
もし、もし私を見逃してくれるのなら…わがままも聞いて欲しい…。
「……お願い…貴方を…たべさせて…。」
「〜〜〜〜〜〜。」
立ち止まっては近づいて来る。直進はしない、時折り寄り道する様に脇に逸れ、そしてまた近づく。
不思議だった。何故かよくわからないけど…敵意のある動きではない事は分かった。
誰かは少し時間をかけて近づいて来た。
私はその間も命乞いと物乞いを続けた。
色んな不安があった。けれどもう限界だった。それが全てだった。
「え……!?」
誰かは…私の横たわるベッドに腰掛け…私をゆっくり持ち上げた。
…割れ物を触る様に、弱い者を労る様に…優しく…ゆっくり…抱き抱えた…。
心音が
私に伝わる熱が私を
色々と限界だ、私はその誰かに向けて懇願した。兎に角、必死に、慣れない言葉で、既に上手く呂律も回らなくとも、その誰かが機嫌を損ねない様必死に頑張りながら…。
そして…。
口に垂らされた粘性のある液体…。目も耳も鼻も分からないけど、辛うじて残った味覚がその全てを肩代わりして訴えかける。
日々遠巻きで匂いを感じることしか出来なかった、それを飲むことを夢に見続けたその味は…多分、この世界で一番美味しい食べ物の味。
「も…もっとぉ…。」
誰かがこうやって甘えていたのを思い出し、出来るだけ甘ったるい声色で懇願する。
一滴、一滴…その度に何かが埋まっていく…けれど一滴一滴じゃ物足りない。その程度ではこの渇きは潤せない。
恐らくは、腕から血を垂らしている。つまり私の真上には…この血を垂らしている源泉が存在する。
……飲みたい…もっともっと…。その腕から直接啜りたい。そして出来るなら…この…今まであるだけで意味もなかったこの牙を突き立てて…。
「〜〜〜〜ッ!?」
「ごめんなさいっ!」
がぶっ
なんて…なんという快感…。私の全てが満たされる…♡
…誰かは驚いた様だけど、私を突き放す気配は無く…寧ろ…。
「…………。」
…私の頭を…撫でてくれてる…。
それなら…それなら…もっと甘えても…許されるよね…?許してくれるよね…?…なら…。
……く……首に………。
「ぷはぁ……はぁ……。」
口の周りの血を念入りに舐め取り、そして息の方向から恐らく顔があるであろう位置を割り出す。
相手を油断させるために甘い声を出し、頭をこすりつけ、そして少しずつ上へ上へと向かう。
…抵抗はなし。……行ける…ッ。
この時、確かに私は成功していた。相手は油断してたし、大体の見立ても合っていた。が、残念ながら文字通りあと一歩届かなかった。
……私は確かに首に噛みついた。…問題といえば…それは首は首でも…『乳首』だったと言う事だ。
…ただまぁ、当時の凡ゆるに飢えた私にとっては些事、流石に誰かも堪え私を引き剥がしに掛かったが最早そんな力では動じない。
……だってそうだろう?誰が離すものか。
最終的に、相手は振り解くことを諦め、座り込むとまた私の頭を撫でた。
……丁度…幼子に乳を与える母の様に…。
…………まぁ…もう一つ訂正があるとすれば、これは目も耳も鼻も機能せず、感触における私の感覚にはなるのだが…。
胸は無く、感触は筋肉質、届いた振動はかなり低め…この情報から導き出されれ結論は…その誰かは恐らく……男性だと言うことか?
……些事だな。
寧ろ…その事実はいい意味で私を破壊した。
だってそうだろう?これこそが役得だ。
抱擁から溢れでる母性と、頑強に頼れる父性を両立し、こうして抱きながら与えてくれた…そう…言わば『
私は毎晩、こうして意図的に視界を塞ぎ、恐怖を呼び起こし、そしてあの包帯にしゃぶり付き夢想している…。
また…あの腕が私をあやし、そしてお父血を飲ませてくれるその時を…♡
なぁ?…
………
……
…
「それで、何故地下に居た?共に居たであろう者達とはどう言う関係だ?」
「実はわたしは貴女を助けようとしていたのですよ。ですが表立って助け様とすれば各方面から面倒な事になるのは目に見えている事実…ですので、こうして密かに、動いていたわけです。」
「ほう…。」
「あの場から逃げた者達、あれは貴女の動き、脅威を察知した人間側が送り込んだ工作員。わたしはその邪魔をするべく潜り込んでいた訳です。」
「…そうか、そうかそうか…。」
コツ、コツ、コツ…。
「で、真実は?」
「……ご冗談を、これが真実、全てですよ。」
「……くくっ…どうだか。」
…これバレてる?それともカマかけられただけ?
わかんねー!ただな?どちらにせよ相手のペースに乗るのは悪手。いついかなる場合も自分を崩さずにいればいつか突破口が広がる筈だ。
たぶんな。きっと…。
「いいだろう、一先ず聞き入れよう。その働きに一定の感謝しよう。が、それとこれとは話は別だ、そうだろう?我等の為と言え此処まで騒ぎを起こしてしまわれては…示しがつかない。」
「つまり?」
「対価の話だ。…ヒューム、貴様は己自身を差し出す用意があると、そう言うのだろう?」
「…そうなりますね。」
「素晴らしい…。殊勝な心掛け、余りある価値だ。お前をただの手駒に納めるなどなり得ない。お前には相応しい地位がある…それこそ、何処ぞの引きこもりの様に飼い殺しにするなどもっての外。」
「……つまり?」
「察しが悪いな。それとも私の口から言わせたいのか?…いいだろう、ヒューム、私の夫となれ。お前の身を張る誠意に対し、こちらもこの体を張ろう。……私を、お前の妻としろ…!」
ずいっ
「………。」
別に何がとは言わないけど迫る。ありがとうございます。
これ悲報なの?なんか朗報にも聞こえるんだけど。
…あの、俺の周りにいる女性ってみんなスレンダーで慎ましいの。そんな最中、ルーファスみたいな出るところ出てる魅惑の激エロ女体に迫られたらね、ヤバかった、危うく首を縦に振るところだった。
別にコク⚫︎ウとかシ⚫︎バとかドラ⚫︎ニカに魅力を感じないって訳じゃないよ?しっかり普通に興奮できるし?ちなドラ娘見かけロリだが合法。
あーつまり、俺があの環境で盛らないのは慣れがあるから、そして目の前の存在には耐性がない、あとはわかるな?
てかさ、銀髪碧眼のおぱでかムチムチ美女に迫られて嬉しくない男とかいなくね?だから俺セーフだよね?
はい、この間煩悩並べて僅か0.5秒、時間と気力を無駄にした。
「いきなり進展しすぎ…!?」
「焦ったいぞ…ッ!」
…押し倒された。
ルーファスは俺よりでかい。つまり覆い被される。目の前には…。
ギラファノコギリクワガタのグラビア雑誌!ヘラクレスオオカブトのアダルトビデオ!あっぶねー理性吹き飛ぶところだった。
「はぁー♡はぁ♡…初夜は今日でいいな?さぁ、今夜は私が貴様を快楽に導いてやろう…果ててくれるなよ?旦那様♡」
ルーファスの瞳は吸血鬼の癖に紅では無く碧色だ。…だからだろうか、こうやって甘い興奮に包まれている状況だと、碧に露骨な赤が発現し彼女の興奮具合がこれみようがしにわかる。
…つまり?もうなんか目にハート浮かんでるのよ、終わったなこれ。
さすが捕食者の距離詰め、これは足抜けか?