担いだ神輿が重すぎる!   作:Ωが来た!

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 この作品ぽっと出の女が多いので定期的に過去回想をしないと行けません。
 なのでアクロの因縁話です。


二つ目の名前

 

 

 夕暮れ時、ビル群の向こう側に太陽が沈んで行く。

 それを私は抱える程の塊を抱いて一際高い建物から…直視はしないけど良い感じに観察する。

 

『目が焼けちゃうからね。』

 

 そして訪れる夜空を眺めて一日を終わるんだ。

 

『あの人と一緒にね。』

 

 うん、あの時はボロい一軒家の屋根で一緒に寝そべって…。

 

『突然大きな音が鳴ったかと思ったら屋根が抜けてあの人落ちちゃって…。ぷぷっ!』

 

 んふっ…あの人聞いたことない言葉で叫び散らかしてたけど、絶対いい意味じゃないって事は覚えてるよ。

 

『【ファイッキライダ!】とか【バーカ!】…あと【チクショウメー!】とか他にも長々とね!』

 

 まだまだ覚えてるよ。でもね…あの人は覚えてるかな…?

 

『生きてたら覚えてるよ!ま、殺しちゃったんだけどね。』

 

 死んだら最後の記憶。生きてたら…消えない傷。…でも…もし、生きてて忘れられる事があったら?

 

『……。』

 

 記憶に残らないって、寂しいね。

 

『そう…悲しいの…。』

 

 だからね、君の傷になれたらなら、それでよかったんだよ。

 

『だって君の深い所に刻めるから。』

 

 生きてたなら、私は君の心に住める。

 

『そしたら心配要らないね!』

 

 死んでたなら…私は君の最後に成れるから。

 

『ずっと一緒だよ!』

 

 ……けれど…だからこそもし生きてて…忘れてたなら…?

 

 

 その時は…やり直せるかな…?あの時理解できなかった事も、今なら分かる。

 あの時の行動を後悔した事はない。寧ろとても満足して…あれはあれで最高の瞬間だった。

 

『それならもっと別の事もしたいよねー。』

 

 だから…『ビスクル』には生きてて(忘れて)欲しいかな。

 

 

……

 

 

 …記憶の始まりは…何処かの町から。

 私は左手でココナッツくらいの大きさの黒い塊(私だね!)を抱え、右手でボロボロの袋を握って彷徨っていた。

 彷徨ってるって言っても別に当てが無かった訳じゃない。…常に誰かの後ろをついて行ってた。

 

 丁度、鴨の雛が親の後に続くみたいに。老若男女大人子供関係なく、ただ何となく続いてた。

 

『何故?って言われると困るんだけど…でも…。』

 

 勿論いい顔はされなかった。逃げられたり、追い払われたり…殴られたり蹴られたり、物を投げられたり。でも…辞められなかった。

 

『…“前”はそうしてたから?』

 

 うん、そうしてた気がするから、そしてそれしか出来なかったから。

 栄養不足とか、疲労とかもあるかな?殆ど意識も朧げで考える事もできなかったし。だからどんな目に遭っても繰り返した。

 

 

……

 

 

「………?」

 

 

 目が覚めたとき、路地裏にいた。体には布が掛けられてて、側にはパンが置いてあった。そして何より…。

 

『…温もりがあった。』

 

 パンを齧る毎に思考が明瞭なにる。して気付いた、気を失った私を助けた人がいる。その事実を受け入れた途端、立ち上がって探した。

 

『ま、見つかるわけ無いけど…。』

 

 うん、けど時に殴られて気絶したり、力尽きて気絶したり…その度に安全な場所に置かれて、何か食べ物が置かれてた。

 そこで私はかしこいから気付いたの。

 

『気絶した振りをすればいいって…!』

 

 

……

 

 

「うわ、まただ…。…たく…よっこらせ。」

 

「見つけた。」

 

「…なッ!?」

 

 

 後は早かった。胴体に腕を回して黒い塊を変形、両手を癒着させて輪っかにして…そして全力でしがみついて離さない。

 ついでに温もりを確かめて匂いを胸いっぱいに嗅いで…遂に根負けした君は、私を家に持って帰った。

 

『きゃ!今思えばこれお持ち帰りじゃん!」

 

 背中に揺られ行き着いた、外れのボロ屋。

 私を下して初めて見つめ合った…そんな家主たる君は…多分私に負けず劣らずのボロ人間で、けれど…うっとりする程“活きて”いた。

 

『今思えば一目惚れかもねー!私には凄く眩しく見えたもん!』

 

「……あー何?そんな見られても何もやらんぞ?……す〜…ん〜〜。…分かった分かった!何が欲しいの!?取り敢えずその無言で見つめてくるのやめて!それにその黒い塊…なんか変形してたし何…?怖いよ!?」

 

「……ん!(指を指す)」

 

 …がさっ

 

「なんか落としたぞ…。…お…おれ?」

 

「…!ん!ん!(頷きながら何度も指を指す)」

 

「分かった!分かった…はぁ…取り敢えず中入れ、この袋は回収するぞ。…お前名前は?」

 

「……ん?」

 

「…そこからか…あ、袋。………なんかよく分からない物ばかりだな…あ紙発見…『ア…ク…ロ…』?……アクロ?…瞳が赤くて髪が黒いから赤と黒でアクロなんて言わないよな…?」

 

「あくろ…。」

 

 

 私の名前はアクロ、由来は黒い髪と赤い瞳。じゃあ君は?

 

 

「俺?俺は霧し…。…んー『ビスクル』…ビスクルだ。ピクルスでもピラルクでも無いからな?」

 

「ピクルス…?」

 

「ごめん余計な事言ったなこれは俺が悪い。『ビスクル』だ。…あーこれもしかしてこれから宜しくするのか?」

 

「……よろしく…?」

 

「……oh…。」

 

「おう。」

 

「…。」

 

 

……

 

 

「洗濯くらいしてくれよな?働かざる者食うべからず、俺も余裕ないし。」

 

「……!」

 

 

 そう言うと汚れた衣類を投げられた。私は左手に黒い塊を抱えてるから必然的に右腕で受け止める事になるんだけど。

 

『まぁ洗えないよね。』

 

「一応先に断っとくが『臭いし汚いから嫌』は無しだからな?」

 

「…?臭く無いよ、ずっと嗅ぎたい。」

 

「…悪かった忘れてくれ。…んで、それって結局なんだよ?」

 

「わたし。産まれたときからそこにあるわたし。さわる?」

 

「…気持ちだけ受け取っておく。」

 

 

 当時の薄い情緒な私でもこれはちょっと傷付いた。

 

『酷いよね、踏み込んで欲しかったなぁ…。』

 

 

「ただそれで片手が塞がるのも何だかなぁ…。なんかもっと手の塞がらない形にならないのか?」

 

「………?」

 

「…ほら、服とか…肩に担いだりとか…腕に纏わせるとか!」

 

 

 色々言ってくれてたけど当時の私には伝わらなかった。

 そこで持ってきてくれたのが…。

 

『ガントレットだね、昔のちょー技術が使われてる。ま、私の方が凄いけど?』

 

 とにかくそれが『私』の次の形、持ち抱える塊から、腕を纏う形に。

 

 

……

 

 

「俺は仕事に出かける、取り敢えず外には出るなよ?お前は良く無い方面で覚えられてるからな。友人に迷惑もかけたくは無い、ここで村八分はごめん被る…。」

 

 

 初めは“仕事”が何か理解出来なかったからついて行こうとしてたっけ?

 

『そうそう!それを見かねて私に色々教えてくれたの!』

 

 今思えばあんな所で暮らしてて、それもまだ子供のビスクルが何でそんな事知ってるの?って感じの知識ばかりだね。

 

『そこは不思議〜。』

 

 

「次に計算だが…。」

 

「…ん…つ…かれた…。」

 

「ん?あーもうこんな時間か…お前覚えるのが早いからな、多分いい所で勉強できたらきっと注目の的だ。」

 

「…い…いと…ころ?」

 

「あぁ、所謂『学園』…こんなボロい一軒家じゃ無くて、しっかりとした巨大な建築物、あらゆる学びの機会を提供して、同年代の子達と切磋琢磨する青春のひと時…!」

 

「……ビスクル…いった…ことある?」

 

「んー…ねぃ。正しく雲の上の存在だな。ま、特別行きたいとは思わんが。」

 

「………わた…しは…ここ…がいい…。」

 

「お、早速お世辞を言えるようになったか!」

 

「お世辞ちがう!…わたしは…ここで…!」

 

「おうおう、ありがとうな!」

 

「むー…わっ!」

 

 

 この時初めて撫でられたんだっけ。

 

『そう!びっくりしたけど…心地よかったなぁ…。』

 

 …うん…よく分かるよ…。凄く…暖かくて安心できて、何より…。

 

『初めて君から歩み寄ってくれた気がしたんだ…。』

 

 

……

 

 

 

「仕事についてくる?やめとけやめとけ、ゴミ拾いだなんてやらないに越して事はないぞ?」

 

「それでも手伝う〜!ほら、あれ!恩返し!」

 

「…それならこき使うからな?」

 

「やった!」

 

「では注意点!一つ!俺の『友人』以外とは話すな!…あとで紹介するが俺の友人はいい人達だ。が、それ以外の人にその保証はない。」

 

「うん!」

 

「そして二つ!ゴミ拾いは使えるスクラップを掻き集める仕事だ、やってそこには“競争”が生まれる。これまで教えたことを元にすると…?」

 

「奪い合いが起こる!大丈夫全部奪うから!」

 

「略奪者になれなんて言ってないぞ!俺はそんな子に育てた記憶はありません!」

 

「ぶー。でも奪えばタダだよ?」

 

「思考が蛮族過ぎる…。いいか?アクロ、社会に生きるには協調性が必要だ。…細かく突き詰めたら抜け道だらけの言葉だが…『秩序なき者に明日は無い』…覚えておけ、これを忘れたらお前は1人だ。」

 

「…?私にはビスクルが居るよ!」

 

「それでもだ!いいか?心に刻めよ?」

 

「…うー、分かったんよー。」

 

「変な言葉は覚えるな。」

 

 

……

 

 

「あ、やっほ!ビスクル!…その子が話に聞く?」

 

「すっげぇ…その籠手カッコ良すぎる…。」

 

「それは同感だな。」

 

「ま、お前の“とっておき”には敵わねーけどな!」

 

「それも同感だ。」

 

 

 ビスクルと同じ年代の男女がビスクルと親しげに話している。

 …表情だって違う、私には見せなかった顔だ。

 

『…気に入らないね。』

 

 ただこれは“信頼”の話、ビスクルは私の仕事ぶり自体には期待してないからこうなっているだけ、私が凄いことを証明できたら…あの表情は私のものになる筈。

 

 

「おー、その子…アクロちゃんだっけ?凄く気合入ってるねー。」

 

「一応言うべき事は言ってるよな?俺たちの仕事はこの『跡形』で有用な物を見つける事って話。」

 

「もちろん、道すがら話すべきこと話した。さ、みんな仕事に掛かろう。」

 

 

 『跡形』…ビスクル曰く、この辺りは昔物凄い戦争があって、さらにそこから遡るとおっきな都市があったらしい。

 その名残りで色んな昔の物が埋まってて、ビスクルはそれを拾って、売ってお金を稼いでいる。

 

『例は家で見せてもらったから、それっぽいのを拾う!』

 

 良し悪しが分からないから片端から詰め込む、するとすぐカゴはパンパンになった。

 

『そこで賢い私は閃いたの、籠になればいいって!』

 

 

「すごーい!何その…籠…?」

 

「籠手どこ行ったの?」

 

「…割と融通効くんだなその黒いの…。」

 

 

 とは言え結局七割ゴミだったけどね。

 

『しょうがない!初めてだからこんなものよ!その証拠に次はゴミ率六割だったしその次は…!』

 

 はいはい。でも嬉しかったね。段々と見る目が変わって、私を頼ってくれて、沢山撫でてくれて…前よりも沢山私を見てくれる様になって…。

 

『うん!…だからかな〜?…もっと目を向けて欲しくなっちゃった。なのに…。』

 

 それ以上は来なかった。踏み込んで欲しいところで来なかった。だからもっといろんな事を1人でできる様になったのに…。

 出来る事が増える程、君との距離も増えて行った。

 

『分からなかったし怖かった。…忘れられるんじゃ無いかって、興味を無くされたんじゃないかって…。私はただ欲しかっただけなのに…。』

 

 だって…もう止められなかったから…。

 

 余計に安心できる温もりと…。

 

『眼差しが欲しくて欲しくて…。』

 

堪らなくなっちゃった(堪らなくなっちゃった)。」

 

 

……

 

 

「ねぇ、どうすればビスクルを独り占めできるの?」

 

「はっ、何言ってるんだ仕事しろ仕事。」

 

「ねぇビスクル。何で私を見てくれないの?」

 

「何言ってる?見てるだろ、ほら、ん?」

 

 

 ……そうじゃない。

 

『どうして踏み込んでくれなかったの…?』

 

 私はこんなに君を愛してるのに。

 

『君は私をそっちのけ。』

 

 

「……どうしたら見てくれるの?何で私から離れるの?」

 

「…んん??話が見えないぞ…。」

 

「…ずっと…誰かと居たかったんだって…私を見て欲しくて…忘れて欲しくなくて…。だから君が受け入れてくれた時は…うん、嬉しかったなぁ…。」

 

「……。」

 

「一緒にいてくれて、でもいてくれるだけ。気に掛けて、お話しして、けどそれだけ。私君のためにたくさん頑張ったんだよ?なのに君はどんどんよそよそしくなる、他人になる。私の、その向こう側には踏み込んでくれない。わたしをぶら下げてそのまんま。それとも振り払おうとしているの?」

 

「…それは…。」

 

「でもね、それでも良かった。それで良かったから、それだけで満たされてたから。…けど…。」

 

 

 私の細い手が頬を撫で、首を固定する。目を離さない、離させない。

 

「こんなに君を見てるのに、君は見てくれない。こうしても…どうしてもわたしを見てくれないの…?」

 

「……。」

 

「いじわる。…なら…私にも考え、あるんだよ?」

 

「………。…?」

 

「ずっと、ずっとずっと…君の視線を釘付けにする方法…知りたい?」

 

「そりゃまぁ。」

 

「ふふ、内緒。」

 

「そうかい。楽しみにしとく。」

 

「…そう?……。…それなら楽しみにしててね!」

 

 

 ふふ…楽しかったなぁ…。

 

 君の困惑も、混乱も、覚悟も、全部壊した私のせい。君をそうしたのは私、刻みつけたのは私、私が君を殺して、そして君が私を殺す…そう言う関係、そう言う決意。

 …いつ思い返しても…ゾクゾクする程いい思い出だね。

 

 

 キュウ?

 

「…?どうしたのフィク。…あ、もうこんな時間…。」

 

 キュウ!

 

「……ねぇフィク。」

 

 キュ?

 

「私は永遠に別れた、会いたい人がいる。けど別れた事に後悔は無い。けれど…会いたいとも思う。」

 

 キュウゥ…

 

「…そんな難しい顔しないで。話は簡単。会いたい人に会いたくなった。それだけ。」

 

 

 膝に乗ってきたフィクを撫でる。

 多分君もこんな気分だったでしょ?守る事を知ったから分かるんだ。

 

 

「…ふっ。」

 

 

 私も随分物事を知ったの。人と出会って、別れて、過去と向き合って、未来を向いて…()()()()()立てる様になった。

 君が何を考えて私と接していたのか今なら分かる。

 

 …だからかな、前はあの終わりにとっても満足してたから、会いたいなんて思わなかったのに…。今は会いたいの。

 

 会って…話したいなぁ…。

 

 

「立派になったよ…って。」

 

 

 今までも、これからも、複雑な事も全部終わった事。

 だからただ単純に、君に会いたいよ…ビスクル…。





 単純な理由だからこそスイッチも入りやすいし、アクセルは軽いしブレーキも効かない物だと思ってます。
 …ダブル主人公の片割れ面してる?この子の周りだけ第二章開始してる?それはそう。
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