もうちょっとだけサイドストーリーです、次回から視点が戻ります。
「喰魔が侵攻の兆しを見せているから、助けてくれー…って境界沿いの諸国から救難信号だとよ。たく、上の人間は俺達があのガーバクを片手間に処理したとでも思ってるのか?相変わらず人使いが荒いねぇ。」
会議室…と言うには私物に溢れた一室にて、机に足を置き座る椅子を傾げ嫌味風に悪態を吐く。
「全くよ…!『レイダー』結成以来ずっとこんなのばかり…。」
「結成って…そんな大した部隊でもないでしょレスカちゃんや。」
そんな声に同調する燃える様な赤髪が目立つ…レスカと呼ばれた彼女は場も気にせず脱力のままにドカンと椅子に座る。
「そもそも、構成メンバー三人と一匹だぞ。」
「今更よ、だって初めはあんたと私だけだったじゃない。」
「それもそうか、何ならもう一人は元々敵だった訳だし。」
「……ごめん。」
「「あ。」」
「「ごめんごめん!そんなつもりじゃ無かった!!」」
「息ぴったり、私達みたい。」
慌てふためく二人は椅子から飛び降り土下座までする勢い、しかし彼女の生い立ち、その苦難さを目の当たりにした以上、こうなるのも無理はない。
が、…肝心の『アクロ』は気にした様子はなく寧ろ、その阿吽の謝罪連携に目がいったらしく、感心した様な声を上げると話しかける様に背負う黒いブレード状の塊を軽く撫でた。
「……なぁ、その…えー…。」
「『胎盤』…でしょ?どうして言いにくそうにしてるの?」
「そりゃお前、胎盤なんて「ジン!殺すわよ!?」こっわ。」
「たく、自分の
「成る程な、『本人に向けて言う』事はアウトだが、『本人の目の前で漏らす』ならセーフか、ほー賢いなぁ。」
「〜〜〜〜ッ!アクロ…私を殺しなさい…ッ!」
「気にして無いから。…そのナイフどこから出したの?」
「レスカそれは洒落にならんぞ!?生きろお前はまだ若い…ッ!」
「殺しなさいよぉぉおお!」
髪や瞳だけでなく顔まで赤く染め、目を回しながら錯乱するレスカを必死に止めるジン。本人達は真剣だがそれを側から見るアクロからして見れば…。
「……ふふっ。」
「「……?」」
面白い…。
このドタバタも前だったら考えられなかった。だからこそ…此処に君が居たらどうなっているのだろう…?
「…ん"…あーそれでだ、その胎盤ちゃんがガーバクを取り込んだ訳だが何か異常は無いのか?検査しようにも、分析不明だからなぁ。」
「少なくとも今の解析技術じゃ、生体由来の何かとしか言えないのよね…。」
「平気。」
私はどうやら胎盤らしいけど、言われて見ればずっとそばにあったとも思える。
「既に絶滅したとある魔族と、昔失われた技術の結晶、それを使う為に
「話の七割重かったのに最後急に軽く締めるの落差で風邪引きそう。」
態とらしく肩を摩るジン。
「私は凄くて賢い、これが現実。ね、フィク。」
キュウ!
近くで寝てたフィクを持ち上げてそう問いかける。
フィクは期待通りの返事をし、私は二人に再び向き合ってこう言った。
「ほらね。」
………
……
…
「はぁ…はぁ…流石に下水までは追って来なかったか…。」
「はぁ〜〜…もう!どうすんのよこれ!しっかり目立っちゃったじゃない!」
「………。」
キュウ…
「しかし…まさか匂いバレされるとは…。」
「あんたがこの装置を過信して、『近づかれなけりゃバレねーよ』とか言ってこのザマじゃないのよ!やっぱり私の提案通り遠回りするべきだったじゃない…!」
「…ごめん。」
「アクロは悪くないわよ、悪いのはこのジジイよ。」
「ジジイ!?まだ40前半なんだぞ!?」
「何よ、おじさんじゃない。」
「このガキ…!」
「きゃーアクロ助けて〜!冴えないおっさんが幼気な美少女を襲おうとしてる〜。」
「幼気な美少女…?」
「よし、このジジイ地上に叩き出しましょう。」
「………。」
…此処が喰魔の領域、私達の目的はここの王様『ルーファス』の撃破、或いは相手の行動力を削る破壊工作。
レスカの遠回り案よりジンの装置を使って近道案を選んだけど、私が粗相をしちゃったから今はこうして逃げ込んだ下水を登って王城を目指してる。
普段なら、私の完璧な話術でもっと上手くいなせる予定だったんだけど…
「…本当に近付いてるのかしら…。」
「近付いてるぞ、そして朗報だ、この手持ちレーダーによると…何と王城にルーファスはいらっしゃらないらしい。こりゃ楽な仕事になりそうだ。」
「フラグね。」
「フラグだ。」
キュキュウ!
「フィク!お前も敵なのかよ!?」
キュキュッ!
「可哀想なフィク…悪辣なおじさんに叱られて怖がってるじゃない!」
キュッ!キュッ!
「フィク?」
壁に向かって仕切りに鳴くフィク。なんなら目配せや前足を突き出してすらいる。
壁…の向こう側?
「「「………。」」」
何の変哲もない下水道の壁、なのに…何故こんなにも騒つく…ッ!?
ズドォーーーーーーン
「……あら、これはこれは
「何言ってるのよこの女!?てか何処から湧いてきてるのよ!?…ジン?何その顔あんた何か知ってるの?」
「そりゃ…俺的に会いたく無いネームドランキング上位だからな。…まさかこんなところでお会い出来るとは…本当付いてるよ…。」
淡く漂う様な白光を放出する謎の魔族は、何処から出したのか無数の鎖をジャラつかせ、行きなりそんな事を言い出した。
如何やら流してはくれないらしいけど…。
『丁度いいね!』
うん、とっても。
……
…
「ぶぅ。」
「機嫌なおしてくれよ、な?」
「ならパイルバンカー頂戴。」
「あれ、まだ欲しがってたの?製造不可能整備不可能、見つかる事自体稀な癖に使い勝手最悪…何がいいのやら…。」
下水をひたすらに走る。途中後から続いてきた…『シルバ』と名乗る魔族も含めて。作戦は…多分失敗だ。
…随分と変わっちゃってたけど私は見抜いた、だから…抑えられなくなっちゃった。こんな筈じゃなかったんだけどなぁ…。
『嫌なところ見られちゃったね。』
うん、見られちゃった。忘れてたなら好都合だったのに…君には『良い私』しか見て欲しくなかったのになぁ…。
『……もう一度消しちゃえば?』
……いいねそれ、採用。それに今はヒュームって名前らしいし、ついでにそれも『ビスクル』に直せばいいや。これで元通りだね。
「………。」
「ん?何で止まるんだ…あー…シルバ…さん?」
「魔族にさん呼びなんて変な気分…。」
「………人間、貴方方に折行って…頼み事が……ございます…。」
「……(げっ)」
「……(嘘でしょ?)」
「……ヒューム様を…どうかヒューム様を助け出して頂きたいのです…。」
顔は俯いててよく見えないけど、落ち着きを装いきれ無い振り絞る様な声には色んな感情が聞いて取れる。
屈辱、忌避、後悔、無力…心配。
「…必要とあらば…頭を付ける事も厭わ無い所存です。…ヒューム様は魔族と人間との衝突を止めたがっています。今回もその為に…暗躍している道中でした。…ルーファスは…ヒューム様に決して良い印象を持っている訳ではありません。……。」
「……なるほどな。……まさか人間の事を考えて行動している魔族が居るだなんてなぁ。」
「勘違いしないでください。あくまでも意味の無い不利益を被ら無い為の処置です。」
「貴女が助けに行かなくて良いの?見た感じとーっても大事なお方なんでしょ?」
「……私には果たすべき命令があります。ヒューム様を差し置いて人間の為に行動するなど身が弾け飛ぶ思いですが…他でも無いヒューム様のご命令です。蔑ろにする事など出来ません。」
「……俺らの為か…。」
「どうすんの?聞いた限りだと…私達が何かするまでもなく魔族側で勝手に収まる事情だったみたいだけど?」
「……助けたい。」
「「アクロ…?」」
「私達のために動いてるのに、何もし無いのは…不義理。」
「…変な気分だな、魔族に義理持ち出すなんてな。…ま、良いだろ、倒す訳じゃ無い、良い感じに助け出せば…クリアだ。」
「簡単に言うけど、見つかったらそれこそ大問題よ?」
「それにフィクも見つけたい。」
「「あっ。」」
アクロが現れてからフィクが見当たら無い。死んだなんて無いと思うけど置いていくわけにも行か無い。と言うか…。
「忘れてたの?」
「い、いやぁ…?」
「ま、まさかぁ…。」
「「はははは…。」」
「……。」
「とにかく、引き受けて頂ける…と?」
「…まぁそうだな、あんたも不本意とは言え俺たちの為に動いてくれるって話だ、そこまで聞いちゃぁ、黙ってもいられん。」
「…私はまだ懐疑的だけど…。……でも、此処であの魔族を失うのは今後にすっごく響きそうなのも確かなのよねぇ…。」
「じゃあ、行こう。」
こうして私達はルーファスの下へ蜻蛉返りした。
城を散策する中でフィクと合流した。…何故か城の勝手を知ってるみたいで、さっきまで迷走してたのが嘘みたいにすんなり目的の部屋に着いた。
…のは良いんだけど…。
「……此方も“技”を振るうとしよう。」
どちゃりと“ブツ”が床に垂れ…やがて象っていく。まるで私の様に、骨と肉と臓がブレードを形作る。
様子を伺ってた最中に突然龍が乱入、ビスクルを食べて直様消えた。
そして私達は見つかって…戦う流れになった。
『心の何処かでは結局こうなる気はしてたのよー。…それにしても親近感が湧くね。』
んね、多分偶然じゃ無いんじゃ無いかな。赤の他人…とは思え無い。
「…道具使うより拳使った方が強いお前らに言われても舐めプ宣言にしかならん…って言いたいんだが…あ〜。…それマジかよ…。」
「私にも人間に通ずる品性はある。…それに、“使える武器”があるなら使いたいだろう?」
「…イカれめ…。」
「〜ッ"(嗚咽)…はぁ…はぁ…どうなってんのよ…。」
「………。」
…とは言え…今回はかなり
………
……
…
「『フィルター』『フィルター』『フィルター』『フィルターァァァア』私空気洗浄機になる為にこんな勉強したんじゃないのにぃぃい!!」
「仕方ねーだろ!この血霧…ッ…鉄を錆び崩すだけじゃなく人体に普通に有害らしいからな…ッ。」
「…それにレスカに炎技使われると事態が悪化する。」
「わかってるわよぉぉおおお!『フィルター』!」
…チッ…分かっちゃ居たがやべー相手だ。今となっちゃ受け入れて事を後悔する話だが…ま、この性分は変えられん。でなきゃレスカとアクロとこんな仕事してねーよ。
…レスカは類い稀なる魔術の使い手…取り分け炎に関する取扱いは目を見張る訳だが…。
ルーファス…その血は僅かでも鉄を錆び崩壊させる…だけでなく、吸い込んだ人間に著しい害を与える。
…あーつまり、焼いたら煙が出る訳だが、その煙にもその効果は乗っちまう訳で、まずメイン火力が封印されちまった。それに血霧を吸わない様浄化魔法を常時貼らせてるせいでかなりの制限を喰らってる。
「おいアクロ!火力足りて無いぞッ!」
「…ッ…ジンも…ッ!」
「…わーってる!…お前もだよ!ルーファス!切っても切ってもそばから再生しやがって…ッ、大体お前の猛攻凌ぎながら一撃入れるのどれだけ大変だと思ってるんだよ!えぇえ!?」
それに切り付けるたびに原液に晒されるし、大体あいつの武器、振るうたびに血が噴き出るからそこでも原液生浴び、レスカが居なけりゃ此処まで100は死んでたなこりゃ。
不幸中の幸い、俺の武器は錆びない素材を用いてる。…ただ軽いせいで本調子じゃねーがな。
「それは面白い視点だな?人間…ジンと言ったか?お前の軽口には感謝している。…でなければ此処まで単調で面白みのない戦闘、すぐに終わらせている所だった。」
「腹立つなコイツ。」
「ジンに並んで。…ッ!?」
「アクロ危ない!…ッ複合!『
まるで気まぐれ、唐突に俺から目を離しアクロを狙った一撃に空かさずレスカが守りを入れる。
使ったのは…爆発反応障壁。『障壁』と『爆発』の複合魔術。やってる事は…まぁ爆発で相殺ってところか?それに不意のカウンターにもなる。
「ほう…面白い事をする。」
今みたいにな?
「畳み掛けるぞ!」
「あいあいさー。」
相手の武器は大きく損傷、ルーファス自身も不意の爆発をモロに受けてダメージが発生している、攻めるなら今だ…ッ!?
「…こんな感じか?」
「離れろッ!」
「……ッ!?」
「…なんだ?せっかく試してみようとしてたのだがな。」
展開された紅い障壁。そしてこの場全員がその正体を看破した。
「嘘でしょ…あんた初見よね…ッ?!なんで真似出来てるのよ!?」
…これだから魔族ってのは全く嫌になる。人間がコツコツ積み上げた技術を「こんな感じ?」で身一つで再現してくるんだからな。
「見れば分かる。ただ…私達魔族にはない発想というだけだ。
「「「………。」」」
「私が障壁を展開しよう物なら、ただ分厚く正面に構える…が、お前達は違う。傾斜を掛け見掛けの厚みを増やし、様々な種類の魔法を組み合わせ強化する。…成る程、ヒュームの言う通りだ。人間は常に魔族の先を行く、だから強いのだと。」
ヒューム…人間である俺たちにまともな“交渉”を持ち掛け、そして助けようとまでした…異端。離したのは少しだけだがまるで人間と話しているかの様だった感触だったのが印象的だった。
「興が乗った、少し私からも話をしてやろう。」
「…戦いながらか?」
「……。」
機嫌が良さそうにニヤリと笑う。…俺の解釈だが…『当然』…だろうなぁ。
主人公が人間なのでやっぱり人と魔族のぶつかり合い、その代表が欲しかった訳なんですね。あと別に人間サイドが別に安置って訳でもないことを薄々感じさせる意味もあります。逃げ場なんてないんだよ^^
だから自分で作らなきゃ。