するするなコメディに時折混じるネットリ重感情…難しい…。
「な…んで…。」
ドサリ、芯を失ったように倒れ込むエルネス。ドラグニカとルーファスはこれ以上の戦闘を切り上げた。
…ふたりとも万全では無いとは言え押し切れないってどういう事?
「理由は何度も言っている筈だエルネス、いい加減聞く耳を持て。……何故だろう?自分で言って何だが少し何かが刺さった気がする。」
「奇遇ですねルーファス、私もそれを聞いて安心しました。」
「………。」
何も言わないけどコクヨウにもしっかり刺さったらしい。
「…でだ、漸くお目覚めの様だな?我が妹よ?」
「あ、ずるいですよ!私の方が上なので私が先に妹呼びしたかったのに!」
「………。」
こじゃれつく二人を目の前に一切の不動を貫くコクヨウ。
俺を後ろから抱いている体制は変わらず、表情ばかりも変わりやしない。
いきなり姉だ妹だと言われても、彼女生い立ちが、歩んできた道が今更家族の存在を許容できないのだろう。
とかおもうじゃん?
「………。(グルグル)」
ものの見事な目を回して震えている。
そう、彼女の本質はかなりの人見知り。今までどうしてきたか?どうもならなかったから俺がいるんだよなぁ。初めは格下相手にも怖気付いてた筋金入り、今では慣れもあって何とかなってきたが、同格…下手すれば格上とも言える兄姉には依然としてまともなコミュニケーションは期待出来ない。
「……やはり…受け入れられませんか…。」
「…………。」
いや、人見してるだけです。何で返答すればいいのかすら思い浮かばずにテンパってるだけです。
「……はぁ、取り敢えず離してください。」
「………。(そ…そんな…)」
「………そろそろ視線が強くなってきましたので。」
「………。(…え?)」
俺が目配せをした方向を釣られるように見る。
「………。(私は姉私は姉…我慢我慢…出来るわけないでしょ羨ましすぎます早く変われ早く変われ早く変われ早く変われ早く変われ早く変われ早く変わってぇぇえ!!!)」
「………。(マジマジと見せつけられると…。……しかし私の方が
言葉には出てないが雰囲気でもう分かる。何なら雰囲気が言語化して伝わってくるくらいにはな。
「……わかりました…。」
ほっ。取り敢えず解放された。
…改めてエルネスに視線を向ける。
俺たちを見る目は…絶望と羨望の眼差し。
最善と信じて家族の為にやっていた事を、寄りにもよってその家族に否定されたから。
…或いは今俺たちがいるこの空間に、自分が爪弾きにされていることに対する…不条理さか?
…直視に耐えかねたのか顔を手で覆い…俯き…そして一つ。
解釈違いです
…顔を覆う手、指の狭間から除いた瞳には…もはや絶望も羨望も何も無い。先程までコクヨウを慈しんでいた…あの瞳だった。
「そうですその筈がございません、そんな筈ないのです…!ヒューム
…待て、『様』ってなんだ?
「ヒューム様は私の救世主…!崩れた家族を紡ぎ、そして私と共に楽園へ世を発つ為の導き手!」
「その為なら何度でも…!決して曲げずどんな逆境に立とうと使命を全うする光の正義…ッ!
「私とは目的も運命も共有する一心同体で!私は貴方の為に祈りを捧げます!だからこそどんなに傷付こうと歩み止まることなく光の導き手儚い夢を繋ぎ止め動き続ける♡」
「………。(うわぁ。)」
「……。(これは…ダメか…。)」
「……。(これ何とかなります?)」
「………。()」
『……。(ホンモノは格が違いましたね)」
言ってる事がもう滅茶苦茶。錯乱しながらも恍惚で、俺的にはもうなんか手遅れな気がしてならない。
「またいずれ、御迎えに上がります♪家族とは、共に有るべきなのですから…♡」
そう言い残すと、突如として天から降り注いだ一筋の光に包まれ、そして消えた。
「……一件落着…でいいのか?」
「お前がいうのならそうなのだろう。」
「えぇ。…ですがまさかエルネスがあそこまで重症だったとは…。救済が一番必要なのは…エルネス自身なのでしょうね…。」
ドラグニカの言う通りだな。……。
貰った羽はまだ持っている。正直見られてる様な…彼女に近づいている様な感覚がして落ち着かないが、けれどこれを離して仕舞えば本当にエルネスが遠い所に行ってしまう気がする。
だから…これはまだ持っておこう。少なくとも…今は特に害はない。
…筈。
………
……
…
「コーヒーでございます、ヒューム様…。」
「ありがとうシルバ。……。」
「……お仕事の方は如何ですか?」
「…ん?…あぁ…何とかなりそうだ。くぅ〜ッ…落ち着くまで数ヶ月を要するとは…。」
「…それでは、ヒューム様宛の手紙でございます。」
「…ん?手紙?……なるほど、ルーファスか。」
しまった、そう言えば文通でもするかと言ってたな。時間が取れなかったとは言え言い出しっぺの俺が初めに出すべきなんだが…。
あれからはほんと酷い物だった。先ずコクヨウが駆け付けた件についてだが、あれ、全然無事じゃ済んでません。
当たり前だよなぁ?一国の王が職務ブッチして失踪してるんだぞ?混乱は避けられない。…まぁ、俺の道徳教育の賜物か、王座簒奪を狙ったりする輩は居るには居たが、自浄作用が働き抑制に成功。外部にこの混乱を持ち出さない様皆頑張ってくれたらしい。
「ひとりひとりの功労者を労う…必要だが大変だった…。」
まず大々的に労うのはダメだからな、本末転倒だ。だからそれらしい理由を付けて給与や地位を上げたり、出来る限り承認欲求を満たせる様尽力した、これが先ず一つ。
「コクヨウノックアウト、これもキツかった…。」
コクヨウがいくら強いとは言え、日常的に荒事をこなしているわけでもない。戦い慣れてもない実は繊細な彼女にとって、今回の行動はあまりにも無茶が過ぎた。
例えるなら内職デスクワーカーがいきなりノルマンディー(1944)にぶち込まれた様な物だ、死んでもおかしくない。
「実際、あの後もいきなり崩れ落ちたしな。」
何度でも言うが魔族は弱みを見せない、基本強がる生き物だ。今回は隠し切れない程に弱ったのか…もしくは、コクヨウの中では俺や或いは自分のために動いてくれた姉達にならば、別に見せても良いと判断したのかもしれない。
…ん?…シルバ?……み、見えてなかったから(震え声)
そ、そうだ一旦休憩も兼ねて手紙でも読むか…。
…
……
拝啓ヒュームへ…と初めて何百枚目か。私は開き直って今思う気持ちをそのまま綴る事にした。読みにくいとは言わせない。
ドラグニカの誤魔化しだが、結局のところ権力のごり押しが一番有効だな。それに皆龍についての理解も浅い、『龍なりの挨拶であり私は龍と交友関係を持っている』…お前の言った言葉をそのままだが皆疑う事なく引いた。感謝する。
カゲロウの解体も進んでいる、周辺施設が消し飛んだがそれ以外の被害はなく誰の命も失われて居ない。…問題はアレが我々の手には余るという事だろうか。有効な活用方法があれば知恵を貸してほしい。
さて、他にもあるがこれは愚痴の範囲、長々と続けるつもりも無い、こんなところか。
(やけにインクが濃い点や線がある。ペンを長時間つけて居たのか?)
私も他者を言えた口では無いが、ヒューム、お前も中々不器用な者だ。
…もし、もし何か…相談事があるならばその時は乗ろう。一国の王では無く、ただルーファスとして。…そして出来れば…。
…いや、私も本格的に自立する時が来た様だ。…だが…やはり出来ればこれからも…向き合ってくれると助かる……。
………以上だ(ギリギリ読める程度に乱れてる)
どちらも忙しいく特にお前はコクヨウの面倒も見なければならないからな。だが…お前からの返事、待っているぞ。
あぁそうだ、最後にあの人間達だが、奴ら我が王城に入り込み書類を滅茶苦茶にして行った様だ、馬鹿げた数字、果てには……果てには…ッ。
やはりお礼参りくらいはするべきか?お前はどう考える?
……
…
「………。」
「ヒューム様?どうかされましたか?…中々…その…厳しい?表情をしていますが…。」
「いや、そんな事はない。近いうちに返事をしないとな。」
ルーファスが殴り込み掛ける前に諌めないと。
「……そう言えば、近頃城下でパン屋が開店するらしいですよ?」
「…?そうなのか?」
「それで何ですが…。……。」
「……どうした?」
「……っ!…私と…っ…パン屋に…「私の愛しい弟、今からパン屋に行きますよ。」………ッ!」
「はいはい落ち着いてね〜。ほらアンガーマネージメント、アンガーマネージメントだぞー。」
「……ふぅ…。…やっぱりこr「アンガーマネージメント!」…分かりました。」
あの一件以来俺も押す事を覚えたからな、みんなには悪いが今までの流される俺はもう居ないんだ。
「さぁ執務を取りやめなさい。」
「失礼ですが、未だ大量の仕事が残って居ますので…。」
「私の言う事が聞けませんか?その体に中身が出る程教え込む必要がありそうですねこれは。」
「行きましょう、ちょうど小腹がすいた所でしたので。」
臨機応変な対応の変化こそこの世の真理、型に拘っては死ぬぞ?
よって断じて折れたわけではない。
「そうでしょうそうでしょう、ではすぐに私の部屋に来る様に。」
ガチャン
「…つい先日までノックアウトしてたとは思えんな。」
「…ヒューム様。」
「ん?あぁ中断されてしまったな、なんだ?」
「ヒューム様は何故…コクヨウ…様を下さなかったのですか?…コクヨウ様だけではありません。ドラグニカ様も、ルーファス様もです。…なぜ?」
「……なぜ、か。」
シルバは心底不思議そうにそう口を開いた。その出だしには戸惑いや遠慮もあるが…やはり純粋な疑問、或いは好奇心か?
ただこう言う質問自体は何もおかしくない、なんせシルバの壮絶な幼少期や今までの歩みを考えれば、強者弱者に格上格下の思想はそりゃ付くでしょうよ。
「責任ってあるだろ?上に行けば行くほど積み上がる対価だ。勿論、無視する事だって出来るが、その果てに何が待つかは…考えるまでも無い。」
「………。」
「俺としては誰かが上にいてもらった方が“楽”なんだよ。誰かを支配するってのは…俺からしてみれば然程魅力的には映らない。」
「……それは…。」
「ま!だからと言って束縛キツいのも嫌だけどな!要は俺の独断と偏見に塗れた価値観によって決めらる、コストバランスを鑑みた結果だ。お前が考えたところで何の参考にもならないから忘れろ。さ、行くぞ。」
「……え?何処へ…?」
「パン屋、行くんだろ?なに、コクヨウには話を付ける。」
「…ッ!ヒューム様…!」
「なんせ、もしアイツが暴れたら俺じゃもうどうしようもできないからな。その時のお前だ、そんじゃ準備しとけよ。」
ガチャン
「………。」
…ふふっ、訳を聞いた時は説明を聞いても余り理解出来ず、これまでの傾向からもしや、ヒューム様の精神構造は魔族というよりも人間に寄っているでは?とすら考えて居ましたが…。
「…やっぱり貴方は…魔族ですね…♡」
雑な都合の良い道具扱い、そうですその調子です、やれば出来るじゃないですか♡
…最近はあの身も心も貧相な癖に下心だけは一丁前な淫乱クイーンのお世話などと言う、何とも悼ましい苦行に従事なされて…このシルバ身が張り裂ける思いで…。
「えぇ、えぇえぇ…これはこれも全て
よく私を使い、そして私がより愛する程に…!
徹底的な上下関係の元にいざその地位を挫き、屈服させ、私の前に無様を曝け出させるその背徳とカタルシスや否や…!それがよりにもよって敬愛する貴方と言う禁忌!…考えただけで下着三杯はイけます♡
私はその時を、じっくり、ゆっくり待っています。
暗闇に閉じ込め、散々にいじめ物音ひとつで恐怖する様な体にしたい。
あらゆる抵抗の意識を挫く程に、見るも無惨に犯し尽くしたい。
私の体を見ただけで全自動で腰を
貴方になら優しくされるのも悪くありませんが、やはり身勝手にこき使い捨てられる方が良いのです。
なので、その調子でしっかり私を
何もしない→不抵抗と認識されて捕食
何かする→抵抗の意識ありと見做され後々になって捕食