担いだ神輿が重すぎる! 作:ノコギリヘッド
「……あの…。」
「言葉を発する事を許可してはいません。今貴方に許した単語は『お姉様愛しています』『わたしはお姉様のモノでございます』『将来わたしはお姉様と結ばれるのです』の4点です。はいリピートアフターミー。」
「それよりも今この状況と今後について…。(鋼の意志)」
「………何故ですか…?」
「…はい?」
「何故ルーファスに付いて行ったのですか?」
何故?おめーが直帰しようとして俺を置いて行ったからだろうがぁぁあ!!!!
「これには訳が…。」
「良いでしょう、弁明の機会をあげます。さぁ答えなさい、ルーファスの何が良いのですか?早く答えて見なさい。一つ答えるごとに罪の重さを加算します。大体一つで足が折れ二つで腰を砕き三つで中身を出します。」
「“罪の重さ”を物理的な重さで表現してくるとは思いませんでした。」
それって弁明すればする程死に近づくって事?…いや足が折れた時点で色々ともうダメなんだが?
…いや、此処でルーファスを罵倒すれば…?
「ボス「姉様」……。……わたしは…。「因みに。」…?」
「貴方を潰す重りは私の“愛”です。それと此処で私にとって耳障りの良い事を喋るなら嬉しくなって更に重さを加算します。この重さは弁明の有無内容に関わらず執行されます、安心して下さい私の弟?私は貴方をしっかり愛します。」
「重りの中身は想いでしたか…。」
何このクソゲー。つまり此処で変に褒めたりルーファス貶して有耶無耶にしようとすれば潰すって言ってるようなものじゃん。ルーファス褒めるしかないじゃん。ルーファス褒めたら愛の名の下に殺されるじゃん。何このクソゲー。
…ぐぬぬ…第一コイツは何をそんなに嫉妬している?
俺の経験と予想によればこれは多分コイツなりの嫉妬表現、その上でわからん。俺はお前のもんだろ?それは常日頃からお前がそう喋ってるじゃないか。………。
「……別に何処にも着きませんよ。ルーファスなど論外です。自分から食べられに行く程の愚者ではありません。此度も…。」
「ちょっと待ちなさい貴方まだその話をされていたの?」
「ずっとされてますよ。“今回も”そういう話です。…もしかして気付いていなかったので?」
「い、いえ気づいて来ました。貴方の主人たる私が、他の王達から貴方がどう見られているかを把握する事は当然の義務ですので。ですの早めに退席し声をかける間も無くしたのです。」
「でしたら事前にお声がけをお願いします。この会議が終われば即お開き…となる様な席ではない事は、ご自身が一番分かっている筈です。」
声震えてますよ。
コイツ知らなかったな?そんで今回の事態も自分が場を読めず部下を置き去りにしたから起こったと気付いたな?そんで気付いた上で小賢しくも予定通りで押し倒そうとしたな?刺すぞ?
まぁ物理的には無理なんで言葉で釘を刺しておきました。
「え、えぇ…ですが…そうね…。ではこの件は不問とします。」
「そうですか、ご理解頂き感謝いたします。」
「………。」
「………。」
「…あの、許したのならそろそろ離してくれません?そろそろ苦しいですし何より…。」
「いやです、もう少しこのままを命じます。」
「いやあのだから…ここ、“大廊下のど真ん中”なんですが。」
……道行く人々(人に在らず)からイロモノを見られる視線。
認識阻害によって会話の内容や俺達だと言う特定はされていない。せいぜい大廊下のど真ん中で抱き合うカップル程度に見られてるが、それはそれとしてここでこんな事してるとかやばい奴だと見られることに変わりはない。
「…はぁ…。」
帰りてぇ…。…あ、実家にな。……あいつら元気にしてるかなぁ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「それでは聞かせてもらいましょう。私の弟が考える最強無敵の秘策とやらを。」
ネーミングセンスと言うかその…感性というか、そこら辺やっぱり家族だよな。あの魔王もクソガキみたいな感性してたもん。なんか感心した。
「やる事は単純です。探りを入れます。」
「此処まで聞いたところではふざけて居るのでしょうか?…と言いたいところですが続けなさい。」
言ってるんだよなぁ。
「勿論、我らが誇る暗部と言えど、探る対象は王、まず無理でしょう。そして…シルバでも無理でしょう。彼女の能力は飛び抜けていますが、それだけでは一つ足りない。」
「所で弟、シルバはいつ解雇するのかしら?」
「解雇ではありません。社会復帰です。」
「変わりません。身の回りのお世話などとほざきながら貴方にべったりでしょう。不埒極まる淫行、許されざる…。」
「話がズレましたね、そこで私が出張ります。」
「は?」
ガゴンッ!
おい今どっからかすごい音が…。
「どうやら私としたことが聞き間違えたようです。ではもう一度、聞かせなさい。」
「ですから、私が直接懐に潜り込みま…。」
ガゴンッ!
「……は?」
再放送やん。あとやっぱり音鳴ってるよね?大丈夫?これ盗聴とかされてないよね?
「あの、何処からか音…「いけません…。」…ボ…姉様?」
その震えた声を聞いた瞬間、俺はすぐさま地雷を踏んだと認識し、ボス呼びを直ちに封印、耳障りの良い姉様呼びをすることに成功した。
「私が私の弟を手放すと?なりませんなりませんそんな事は世界が滅びようとあり得ません。或いは世界を滅ぼしてでも断固私の側に居るべき存在でありそれ以外などあり得ません。」
「いや、そう言う体で…。」
「…この時が来ると、しかしそれは考え過ぎだと思考を廃して来ました。私の愛しくか弱く愚かな弟、けれども優秀で賢く、そしてそうでなくともただ隣に居るだけで満たされる…そんな
一見すると良いこと言われてる様だけど違う。
『人として貴方が好き』とは言われてない。じゃあ何が一番合ってるかって言ったら『貴方は私の中で一番お気に入りの置物』って言われた気分だな。
ただ…この感じ、ただの置物呼ばわりされてるようにも聞こえない。なんなんだこれ?でもそれ良いかも?
「姉様それは素晴らしい案かも知れません。」
「…?」
「此処は一つ案として私を置物として贈呈し懐に潜り込む作戦も一考に入れるべきでしょう。」
「ひゅ…ヒューム…?急にな、何を言って居るの…?」
「今の所、私の草案ではまず姉様を裏切り…。」
「カヒュ…っ。」
ドガンッ!
「の体で取り立ててもらい、懐に潜入する腹積りでしたが…。」
「ゴフッ…(吐血)」
「これで姉様を裏切る必要がなくなりましたね。」
「………(致命傷)」
「しかし壁も多い話です。ここは一旦別の計画を…。」
バタン
「またですね、やはり何者が…でもそれにしては近い…あ。」
『失神』と言う表現がこれ以上に合う状況もそう無い。
自分の世界に入り込んだとは言えほんの一瞬、しかし再び見た我らがボスは白目を剥き、口から泡を吹いて卒倒していた。見方によっては魂が出てるように見える。
「これどうしようか…。」
立場が立場、ここで下手に誰か呼ぶと要らない問題が噴き出て来る事は容易に想像出来た。
……握り潰すか。
………
……
…
「ヒューム様、お帰りのところ申し訳ありませんが私は冷静さを欠こうとしています。置物に浮気されて他所の王へ亡命するとお聞きしました、ぜひ私もご一緒させて…。」
「待て待て…。はぁ…で、なんですと?」
「失礼しました、浮気されたのは私でしたね。」
「????」
凄い。口調はいつも通りの冷静な感じなのに内容が発狂してる。
言葉のパーツだけ抜き取れば『なんでお前その事知ってるの?』って情報ばかりだが、それを文章として吐き出す際に致命的なバグを起こしているようだ。
…いやなんで俺が置物に浮気されないといけないの?なんでお前と俺が付き合ってるの?なんでお前が被害者で着地してるの?
「まず落ち着け、お前らしく無い。」
「そうですね、私らしくありません。ひっひっふぅ…ひっひっふぅ…。」
「多分それ違う気がするな。ほらちゃんと落ち着け。俺は此処に居る。」
「………。」
これ以上SAN値チェックに失敗されたら大暴れするのは目に見えてるので、取り敢えず手を握ってみる。
いやー懐かしい。昔は落ち着かせる為によく繋いでたな…。今ではこうして成長して流石にそんな事は辞めたけど。
あ、握り返した。
「手…手…久しぶりの手です… うへ…じゅるっ…。」
「………。」
「あぁ…そんな殺生な…。」
そんなまるでヤク中の禁断症状みたいな反応されたらさ、誰だって文字通り手を引くでしょ。比喩とかじゃなくて、普通に。
「…ごほん、お前には話しておこう。これから俺は他所の王へ赴き探りを入れる。それは潜入かもしれないし正面からかも知れない。ただ…。」
「ひとつ、何故貴方様が態々体を張る必要がございましょうか?暗部隊を使うなり、それこそ私に命ずるなり…他に道はあるはずですが?」
俺はその口振りに違和感を感じた。ただ聞いているのでは無い、何処か念押しと言うか確認の語気を含んでいる。
別に俺は鈍感系でも難聴系でも無いから流石にわかってる。あの時の異音お前だな?お前盗み聞きしてたな?
はぁ…お前でよかったって気持ちといや何してるんだよって、気持ちが混ざり合ってメレンゲできそう。
「…そうか、お前には“これ”しか見せてないんだったな。一度しかしないからよく見ておけ。」
前も言った…てか思った通り、“偽装”において俺の右に出るものはいない。勿論左にも。なんせ日々休む事もなく命を賭けて偽装魔法を寝てる間も掛け続けてるんだぞ?それも偽装魔法を展開している事を、それこそ王達ですらわからない程高度なやつを。
自分で言ってなんだけどはっきり言って頭がおかしいと思う。
てことでせーの、ドロン。
「……ッ!?!?!?こ、こここコクヨウ様!?」
「お分かりいただけましたか?シルバ。貴女の憂う気持ちは嬉しく頂きますが、それはそれです。」
「……わかっているのですがその姿で感謝を伝えられるのは複雑です。しかし途轍もない精度…私の目には本物に思えて仕方ありません。あー貴方様をそう見えてしまうこの目を穿り出したい…ッ。」
言葉の節々から感じるボスとの軋轢笑えないよ。お前らほんと仲悪いんだな。
本来なら立場的にボス一強でシルバなんて逆らえないはずなんだが、ボス肝入りの参謀が目に掛かる召使いと言う立場がかなり手厚い。
コクヨウ上位は変わらないが、シルバの実力も合わさるとその差がかなり埋まるのだ。
…勘弁してくれ。女同士のドロドロなんて見たく無いから見てないけどそれも考えものだな…。最近はそのドロドロが目の前に飛散し始めたし。
…これ俺が掃除しないといけないの?嫌だよこの絶対火傷するじゃん、このドロドロ実質マグマだからね?
あ、そろそろ変身解くか。
それにしても…何気にちゃんと披露したのは初めてだな。勿論ボスにも見せた事はない。理由はそこを起点に俺が人間だと暴かれる危険があるから。
…いやよく考えたら軽率か?いくらシルバとて…もういいややっちゃったし。
「……よく分かりました。」
「とは言えどばれた時の保険は欲しい。そこでシルバ、お前には俺の回収役を担って欲しい。バレない距離感で潜伏し、必要な時に俺を迅速に回収して離脱する。厳しい役回りだが…「かしこまりました。」…。相当危険だ。本当にか?」
「任せてくださいませ。ヒューム様のご活躍を間近で見届けられるポジション、貴方様を合法的に監視できるこの機会、放してはなりません。」
「監視…?」
「あいえ、こほん。私の命に変えてでも見守らせて頂きます。」
「いや普通に待機を…いや、もういい…。」
何故だろう。監視者が増えた。
まぁいい、そうと決まればだ。最初のターゲットは…実質的な長男、『ギラード』!
「ギラード様ですか…そう言えば潜入方法や作戦等は既に決まっているのでしょうか?」
「決まっている。期間は出来るだけ短時間に抑えたい所だが…ふむ…近々パーティーが開催されると聞く、その気に乗じて…。」
「衛兵に扮して侵入するので「いや、女装してさらに懐に潜り込む。」…はへ?」
「まずは女装、そこから適宜形態を変えて…どうした?」
「ひゅ、ヒューム様が女装して…ぎ、ぎぎラードと…?ひとばん?…はへ?」
「おい、大丈夫か?」
「は…はは…ふふふふ…私ですらそんなことした事ないのに野朗ぶっ殺してやりましょうか…ッ?」
「落ち着けお前なにを勘違いしてる!?あくまでも警戒を解く為に…。」
「心配なさらないでくださいヒューム様。貴方様の純潔、私が絶対に守り抜いて見せます。」
「ちょまて一体どこまで行ったんだ?その意味深な笑みはなんだ?…おい何処へ行く!?」
「では、失礼します。」
「おい!?…消えた…。」
またしても辺な勘違いをされてしまった。
段々とネタ化していく彼女達に涙が隠せません