<南の果て>河の乱痴気騒ぎ ハイエナ退治! 作:WAST0101
新興交易都市セクメトの熱気と喧騒を押し込めたような冒険者ギルド――<曲芸するジン>
冒険者が丁度いなくなる夕食前の時間、薄暗い受付カウンターで、焦燥感を露わにした受付嬢のジェナは、羊皮紙の報告書を叩きつけんばかりの勢いで言葉を吐き捨てた。
「ハイエナ頭の殺人狂ども――ノールの群れがこの街へ向かってるわ。今は乾季、干上がった河は私たちを守ってくれない。このままじゃ大虐殺(カーネイジ)になる」
乾いた風が開け放たれた扉から吹き込み、ギルド内の灯りを微かに揺らす。街の存亡がかかった絶望的な報せだというのに、カウンターの向こう側で手すりにもたれかかる5人の冒険者たちに、動揺のの色は一切なかった。
真っ先に声を上げたのは、コンスタンティア(ティーフリング《魔族の血を引く種族》のソーサラー《生まれ持つ才能を魔力の源とする魔術師》/ウィザード《学問として秘術を修めた魔術師》)だ。
天性の魔導センスと緻密な学術を兼ね備えた、世にも珍しい《究極の魔法使い》。彼は額から伸びる朱色の捻れた角の端を優雅にいじりながら、嘲笑を浮かべて鼻で笑う。
「カーネイジ? 奴らの頭じゃ、せいぜい大暴れ(ランページ)止まりさ。無秩序な殺戮など、真の大虐殺とは呼ばないね」
「そうね。真の大虐殺には、ただ暴れるだけじゃなくて、頭も技術もいるのよ」
リュートの調律が今日はうまくいかない、とでも言いたげな軽薄な口調で同意したのは、ンディヤ(人間のバード《吟遊詩人》/ドルイド《自然を崇拝する信仰魔法使い》)だ。
彼女はドルイド古来の「金属製の防具を身に着けない」という魔術の根幹に関わる戒律こそ守っているものの、最近崩れ始めている武器の制限は”しっかり”破っている。腰には細身のレイピアを佩き、背にはしなやかな弓を背負う。数々の実戦で培われた技能と魔術を容赦なく振るう気なのは明らかだ。
「……オツムと腕がそろった冒険者だからこそ、あたしたちを指名したんだろ?」
スケイル(シフター《獣人族》のソーサラー)が、口元を獰猛に歪めた。
毛深いが手入れの行き届いた手を両腰のダガーの柄へと滑らせる。野性と魔導が同居するその瞳には、すでに狩りの歓喜が宿っていた。
その横で静かに背のロングボウを引き抜いたのは、イミエル(ウッドエルフのファイター《戦士》)だ。
パーティ唯一の純粋な物理前衛である彼は、飾り気のない無飾のアダマンティン胸甲と鉢金タイプの兜で身を固めている。首元を覆う錣(シコロ)は黒布で作られており、極限まで実戦と長距離行軍を意識した武者仕様だ。
赤銅色の肌と深い緑色の瞳からは、溢れ出んばかりの冷徹な殺気が立ち上っている。その気配は、エルフという種族に付き纏う特有の優雅さを完全に打ち消し、一撃必殺の処刑人そのものだった。
「私の弓と剣――」
「――僕の“火球”でね。残さず焼き払ってやるよ」
セネン(ハーフダークエルフのウォーロック《異界の実力者と契約を交わした魔術師》)が、イミエルの言葉を引き継ぐ。
古の『残穢』を宿した短杖の先端に黒い羽の幻影を揺らめかせると、彼は日頃ギルドの受付嬢を苛立たせている――だが抗いがたく人を魅了する――微笑みを浮かべた。
5人から解き放たれた禍々しいまでの威圧感と、圧倒的な戦術的自負。ギルドの空気すら重く沈み込むほどの迫力に、ジェナは呆れたように大きなため息をついた。
「……ハッ、そういう時は頼もしいわね」
5人全員が、それぞれに不敵な笑みを深く刻み込む。
「「「「「困りごとなら――“カーネイジ・カンパニー”を呼べってね」」」」」
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