<南の果て>河の乱痴気騒ぎ ハイエナ退治! 作:WAST0101
コンスタンティアは、側頭部の同心円状に巻いた角と、紫色の肌、ありていに言えば魔族そのものの容貌をしている。その異相を、魔術師ギルドで中立を示す灰色のローブの中に収めていた。
そして、最近街に出回り始めたばかりの漆黒の飲み物――コーヒーをクィっと飲み干すと、ぽつりと呟いた。
「悪魔のように黒く、地獄のように熱く……ふむ、続きが考えつかないな」 肩をすくめる秘術使いの横顔は、不敵でありながらどこか浮世離れしている。
カウンター越しのジェナとセネンの不毛なゴタゴタを余所に、ンディヤ――バードにしてドルイドの才女――。 自然の摂理を重んじるドルイドの多くは、「金属製の防具を身に着けてはならない」という厳しい戒律に従い、野暮ったい分厚い革鎧(ハイドアーマー)を余儀なくされる。
だが、ンディヤのそれは違った。ここ南方で狩られたクロコダイルやジャイアント・リザードの革を巧みに使い、洗練されたデザインに仕立て上げている。数多の有為転変を経て有名無実となったドルイドの武器への戒律など“しっかり”無視し、腰には貝殻のような護拳のついたレイピアを佩き、バードの美意識も満たしていた。
彼女が視線を送っている三人組の鎧は安価なレザーアーマーだった。貧乏パーティのユニフォームのような代物だが、椅子や壁に立て掛けられた武器は違う。使い込まれたスピアやトライデントで、陸でも水中でも暴れてきたことを無言に示していた。男たちの肌は普通の冒険者よりも深く陽に焼けている。 毎年、乾季が訪れて河や淵が狭まると、仕事を失った漁師や渡し守たちがこうして一時的な冒険者となってギルドに流れ込んでくる。
ンディヤにとって、それはセクメトの街に季節の変わり目を告げる風物詩だった。(皆さん、波や強い流れに揉まれてる分、陸(おか)のゴロツキよりずっと鍛えられてるのよね。人気のない渡し場じゃ野盗やモンスターの襲撃なんて日常茶飯事だし、実戦慣れもしてる。……渡し守が追い剥ぎに早変わりしてないかって? それはノーコメントだけど!)
三人組が持ち込みの茹でたザリガニをムシャムシャ、どぶろくをゴクゴク、水鳥の卵の燻製をゴクリとやりながら交わしている会話に、ンディヤの耳がぴくりと動いた。
「今年は川の本流を下って、群島との交易船に乗るつもりだ。……この前の北東の戦いじゃ、下はゴブリンから上はデーモンまで暴れてたらしいからな。この辺も近いうちに大荒れになるぞ」
それはンディヤ達が聞き捨てにするには惜しい言葉だった。
『<南の果て>河の乱痴気騒ぎ』は、ファン・コンテンツ・ポリシーの許可を受けた非公式のファンコンテンツです。ウィザーズ社の認可/許諾は得ていません。使用されている素材の一部は、ウィザーズ・オブ・ザ・コーストの財産です。©Wizards of the Coast LLC.