「あの、本当に、僕って死んじゃったんです⋯か?」
「せやで。いやホンマすまんな。おっちゃんがもっと早く地球に来てれば良かったんやけど、遅れてしまったばっかりに君が瓦礫の下敷きになってしもたんや」
「⋯⋯あの、女の子は⋯どうなったんですか?」
「君があのとき助けた子か?」
「はい⋯⋯」
巨大化するヴィランが町で暴れ回っていた。ヒーローが何人もやってきて対応をしていた。にも関わらず、ヴィランを取り押さえるのに手間取っていた。しかもその中心地の避難は完了していない。倒壊した建物の瓦礫に押し潰されそうになる女の子を見て、緑谷は走った。ヒーローに憧れながらも、個性を持てなかったただの子供が、子供を助けたいと言う一心で走り出し、瓦礫の雨から女の子を救った。
「安心し。あの子なら無事やで。君のお陰で助かったんや」
「そうですか⋯⋯良かったです!あの子が助かったなら、あの行動にも意味があったのかなって⋯」
「⋯⋯君、後悔とかないんか?」
「⋯⋯⋯⋯」
「君まだ中学生やんな?1年?2年?まだやりたい事とかあったんちゃうん?」
「⋯⋯⋯⋯僕、ヒーローになりたかったんです。平和の象徴と呼ばれる、オールマイトのようなカッコいいヒーローに。でも、僕には個性がなかった。無個性じゃヒーローになれない。でも憧れだけはなくならなくて⋯⋯無個性でもヒーローになろうって足掻いて⋯⋯でも現実は厳しくて⋯⋯だから、最後にヒーローみたいな事ができて、死ぬって言うのに、ちょっと満足しちゃってるんです。酷い話ですよね」
諦めたように、悲しそうに笑う緑谷の隣に、巨人は人間サイズに縮んで腰を下ろした。
「自己紹介しとらんかったな。おっちゃんはウルトラマン。M78星雲の光の国っちゅうところで、宇宙警備隊やっとるんや。まぁ君に分かりやすく言うなら、ヒーローみたいな仕事や」
「宇宙にもヒーローっているんですね」
「君はさ、ヒーローに1番大事なもんってなんやと思う?」
「え?⋯⋯えっと、誰にも負けない強さ?いや⋯⋯優しさ⋯⋯周りを見る能力?」
その後も、ウルトラマンの問に緑谷は自分が思うヒーローに大切なことを口に出していく。だがそのどれにもウルトラマンは正解とは言わなかった。
「君が言ったのは全部大切な事やで。強い力があれば被害が少ない内に敵を倒せるし、周りが見れれば今回みたいな逃げ遅れた人がいる中の戦闘は起こらない。優しさが無ければ強い力なんて兵器以外のなんでもない。でもな、おっちゃんな、一番大切なのは絶対に助けるって気持ちやと思うねん」
「絶対に助ける⋯⋯気持ち?」
「せや。だからあのとき君は飛び出したんやろ?どんなに訓練積んでも、覚悟決めてても、実際目の前に死っちゅうもんが迫ると誰でも躊躇したり後悔するんや。助けるんじゃなかった、出るんじゃなかったって」
「ウルトラマンさんでも、そう言うのあるんですか?」
「あるで。それはもう沢山あるで。だからな、おっちゃん君が飛び出したの見めスゴいって思ったんや。必ず助ける。その一心で走り出した君が、おっちゃんにはスゴく輝いて見えたんや」
1つの行動で様々な結果を生むことをウルトラマンは理解している。今回の1件で言えば、救えず現場の被害を広げる可能性があった。救えてもヒーローの活動妨害で世間からバッシングを受ける可能性かあった。救えなければ一生のトラウマになる可能性があった。そして、両方死んでしまう可能性があった。
それでも飛び出して救い出した少年、緑谷出久の姿に、かつて自身と同化して共に戦った青年の姿をウルトラマンら重ねていた。
「おっちゃんな、初めて地球に来たとき、人を1人死なせてしまってん」
「え?そうなんですか?」
「せや。怪獣墓場ってところにとある怪獣を運んどったんやけど、逃げ出してもうてな。それを追いかけてるときに科学特捜隊って言う組織の隊員が乗ってる飛行機と衝突しちゃったんよ」
「そ、それでどうなったんですか?」
「その人とおっちゃんが同化して、命をなんとか取り留めたんよ。でもな、おっちゃんな、助けたいって気持ちと別に、地球で活動するための依代が欲しかったんよ。どう思う?」
「ど、どうとは?」
「すっごく後悔したんや。ハヤタを救うため、地球を守るため、いろんな理由つけても、1人の若者の身体使うて罪滅ぼししとったんや。そんで最後は敵に負けて2人でまた命の危機に⋯⋯ホンマ上司のゾフィーが来てくれんかったらおっちゃんまたその人のこと死なせてしまうとこやってん」
「⋯⋯⋯⋯」
「でも、君は見返りを求めんかった。おっちゃん感動したわ。で相談なんやけど」
「え?」
「君が良かったらなんやけど、君がヒーローになるのをおっちゃんに手伝わせてくれへん?」
「なれるんですか?!僕がヒーローに!?」
「なれるで。君、正確にはまだ死んどらんのよ。おっちゃんと同化したら多分身体がちょっと強化されるから、君の努力次第なところもあるけど、あのときの気持ち忘れんかったら、君は必ずヒーローになれるで。勿論、君が良かったらやけど」
「⋯もし⋯⋯もし本当に、まだヒーローを目指せるなら、目指して良いのなら!僕はなりたい!憧れのオールマイトのような!そこにいるだけで皆を安心させられるような!そんな光のようなヒーローに!僕はなりたいです!!」
「ほな、おっちゃんの命君に預けるで!ほんじゃ、まずはアイツ倒しに行くか。これを使うとおっちゃんの力を使えるで」
「はい!」
「あ、そう言えば君の名前聞いとらんかったな」
「すみません。名乗るのが遅れちゃって⋯⋯緑谷出久です。よろしくお願いします!」
「おう!んじゃ一緒に行こか!出久くん!!」
ベータカプセルのボタンを押し、緑谷は光の巨人、ウルトラマンへと姿を変えた。
「シュワッ!!」
俺は何がしたかっんだろう⋯⋯