東方欲罪録 第二話   作:OROGUDO

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第1話

店を出た後、私は人里を歩いていた。

霊夢から聞いた話は、予想外もいいところだ。

 

「矢上が賢者会議に介入し始めた」

 

私にとって、それは一番避けたい想定だった。

矢上家は、戦前からの名家である

希少な魔道鉱物の採掘から加工までを一手に担っている。

妖怪相手だろうと神相手だろうと、魔道鉱物が必要なら最後には矢上へ金が落ちる。採掘から加工まで握っているのだから当然だ。

……まったく、羨ましい商売である。

 

確かに今までは、鉱物採掘などの賢者会議では、介入をしてきた。

 

しかし、今になって自警団にも絡み始めただと?

 

もしそうなら、厄介極まりない。

 

矢上家は、戦前からの八雲家や紅魔館など、名家との結びつきが強い。

その影響力は、もちろん自警団にも及んでいる。

そんな矢上家が、持ち前の資金力を武器に賢者会議に介入するだと?

 

「冗談ではない」

 

霊夢によれば、最初の賢者会議まで後2週間しかない。

それまでに、矢上家の思惑と狙いを探り、賢者会議での票を読み切らないといけない。

 

評議が可決されてからでは遅いのだ。

 

(どうするべきだ…? 今のうちに票を確保するか? しかし今から八雲や紅魔館に接触しても、金だけ搾り取られるのがオチだ)

 

そうしているうちに、一つの考えに至った。

 

「…矢上に会うしかない」

 

二週間では、地道な調査や各票への接触だけでは到底時間が足りない。

 

かと言って、このまま好き勝手にさせればこちらが損をする。

 

ならいっそのこと、割り切って矢上と接触するしか、方法がない。

そうして、矢上家まで足を運ぶことに決めた。

 

矢上家は、商店と本家を分離させている

当代はいつも本家にいて、商店の方は番頭に任せきりらしい。

 

「…潔いのだか、それともただ面倒なのか」

矢上家の門の前に立ちながら、そんなことを呟く。

 

矢上家本家は、幻想郷には珍しい洋館である。

 

白い漆喰で塗り固められ、中央には4階建ての中央棟があり、その両側にはそれぞれ西棟と東棟がある。

 

そうしてしばらく見上げていたら、門番が話しかけてきた

 

「…当家に、なにかご用ですか?」

 

「いや失礼、見事な作りだったので見上げてしまったもので

…当代に用があってきた」

 

「わかりました、お名前は?」

 

「榊原樂だ」

 

門番が私の名前を聞いた途端、急いで中へ入っていった。

 

そうしてニ分とたたないうちに中へと招かれ、貴賓室へ通された。

 

「ここでお待ちください」

 

この洋館は、矢上家の当代が就任してすぐに新しく作らせたものらしい。

なんとも、落ち着かない。

 

「…この部屋は気に入られましたかな?」

 

そう言って、微笑みながら部屋に一人で入ってきた。

彼女こそが、矢上家八代目当代である矢上七美(やがみ ななみ)である。

 

「ええ、この家は見事な洋風の作りで驚きましたよ 幻想郷には紅魔館くらいしか洋館がないものですから」

 

「そう言っていただければ幸いです どうぞ、お座りください」

 

豪腕で版図を広げた先代とは違い、この女は数字と計算で家を大きくした。

私としては、先代よりよほど相手にしたくない。

「ところで… 本日はどう言ったご用件でしょう?」

 

「いやぁ、本日は突然押しかけて申し訳ない 今日は、たまたま近くを通りかかったので、ご挨拶にと」

 

「ああ、そうでしたか」

 

見え透いている、向こうもそう思っているに違いない。

挨拶だけなはずがないと、そうわかっているのにああも表情を崩さないのは、こちらとしても気分の良いものではない。

 

「…矢上家は、最近新しい鉱脈を3つ同時に見つけられたとか、羨ましい限りだ」

 

「いやぁ、あれは幸運でしたよ

榊原家も、両替がうまくいっているとか」

 

「いえそんな、矢上家には遠く及びませんよ」

 

なるほど、相手の方も今回の私の暴挙を利用したいらしい。

 

確実に探られている。

 

「そんなご謙遜なさらなくても…」

 

もちろん、謙遜である。

 

商人である私が自分を過小評価など、するわけがない。

 

少なくとも私はそうである。

 

そうなんてことない話をしていると、

ふと、あるものが目に止まった。

 

「…ところで当代 そちらにある石細工、見事なものですな」

 

「…ああ、あれですか いえ、なんてことない品ですよ」

 

一瞬、彼女が言葉に詰まった。

…なぜだ、あの石細工には何かがあるのか?

 

「あのような品をなんてことないとは…

羨ましい限りです。あれはどちらで手に入れられたのですか?」

 

「…あれはとある方からの貰い物でしてね、

いい品をいただきました。」

 

…貰い物?

 

あの石細工にはよく見ると魔石も埋め込まれている…

しかも、妖怪の山でしか取れない希少なものだ

 

通常あのような魔石は、採れた日から徐々に色を変えていくものだが、あの色はまだ採ってから1ヶ月しか経っていない…

 

つまり遅くとも1ヶ月以内にあれを受け取った…?

 

問題は、魔石ではない。

石細工自体が見事なものだ。

通常あのようなものを買おうとすると、20両どころでは収まらない。

それを、貰っただと?

 

…いや、これ以上あれこれ以上聞くのはやめよう。

こちらが探っていると勘付かれる。

 

そうなればおしまいだ。

 

「…それは羨ましい限りだ」

 

「…お褒めに預かり、恐縮です」

 

そうして、その後も20分ほど会話を交わした後、

向こうが急用だということで、私は矢上家を後にした…




※本作品は東方Projectの二次創作作品です。
※独自設定・オリジナルキャラクターを含みます。
※pixivにも同作品を投稿しています。作者本人によるマルチ投稿です。
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