熱力学とたくあん   作:カルボナーラに牛乳はいらない

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一話から読んでくれた諸兄らには申し訳ないんだけどもこういう話も投下します


二つの感染

蓮見悠人が違和感を覚えたのは、隕石落下から十七日目のことだった。深夜、警備日誌に目を通していると、隅に素っ気ない一行が残されているのに気づいた。

 

「北側フェンス、望遠レンズらしき機材を確認。距離があり脅威度低と判断、通報せず」

 

国立特殊病原体研究所――通称NIPI――の鴉ヶ森臨時拠点は、本州中部の山中に急遽設営された仮設研究棟だった。隕石が落下したのは十七日前の未明。破片から検出された微生物は、既知のどの病原体とも一致せず、増殖速度は培養液中で観測史上例のない速さを示していた。危険度分類は暫定でレベル4。以来、蓮見はほとんど寝る間も惜しんで、培養データと向き合い続けている。

 

「蓮見さん、また徹夜ですか」

 

同僚の声に顔を上げると、壁の時計は午前二時を回っていた。彼は曖昧に笑って、また画面に向き直った。フェンスの外にいる人間のことなど、考える余裕はなかった。彼にとって現実は、常に顕微鏡の向こう側にあった。

 

同じ頃、東京の新聞社では、桐山玲奈が編集長室に呼び出されていた。

 

「NIPIの取材、お前が行け」

 

編集長の寺尾は、書類にも目を落とさずそう言った。桐山は一瞬、聞き間違いかと思った。隕石由来の未知病原体を研究する国の施設への取材といえば、本来なら社会部のエースが競って取りに行くようなネタのはずだった。

 

「……なんで私なんですか」

 

「危険地帯だし、広報がガチガチで大した絵も取れないだろうって、みんな尻込みしてる。お前なら、まあ、暇だろ」

 

暇、という言葉に滲んだ別の意味を、桐山は正確に聞き取った。二年前のあの一件以来、彼女に回ってくるのは決まってこの手の仕事だった。当たっても外れても、社にとって痛くも痒くもない案件。

 

「どうせなら、"何か隠してそう"みたいな絵を撮ってこいよ。国民は不安なんだ、それに応える記事を書けばそれでいい」

 

桐山は頷く代わりに、取材資料を鞄に押し込んだ。取材というより、体のいい厄介払いだということは分かっていた。それでも構わない、と彼女は思った。当たり障りのない記事を一本仕上げて、さっさと次の案件に移ればいい。あの施設に、大したものがあるとは、微塵も思っていなかった。

 

+++

 

NIPI鴉ヶ森臨時拠点の正門で、桐山は二時間近く待たされた挙句、対応に現れたのは広報担当者ではなく、白衣を着たままの若い研究員だった。

 

「広報が出払っていて……とりあえず、私が」

 

蓮見悠人と名乗ったその男は、明らかにメディア対応に慣れていなかった。姿勢はどこか硬く、視線はカメラよりも桐山の背後にある山の稜線に向きがちだった。桐山が用意していた質問――「住民への説明は十分だったか」「隠蔽体質があるのでは」――に、彼はいちいち生真面目に、そして心なしか不機嫌そうに答えた。

 

「隠す理由がないんです。情報を出すタイミングを誤ると、かえって混乱を招く。だから慎重になっているだけで」

 

「それを"隠蔽"って呼ぶんですよ、世間では」

 

「呼び方は好きにしてもらって構いません。ただ、事実とは違います」

 

素っ気ない返答だった。テレビ映えする謝罪の言葉も、感情に訴えるパフォーマンスもない。桐山は正直、拍子抜けした。用意していた見出しは「隕石病原体、国民に隠された恐怖の全貌」というようなものだったが、目の前の男からは、何かを隠している人間特有の後ろめたさが、まるで感じ取れなかった。

 

「あなた、取材慣れしてないでしょう」

 

「初めてです。できれば二度とやりたくない」

 

思わず桐山は笑いそうになった。腹の底で何かが小さく引っかかったが、それが何なのか、その時の彼女にはまだ言葉にできなかった。

 

「一つだけ、教えてください」桐山は最後に尋ねた。「もし本当に何か起きたら――手に負えなくなったら、あなたたちはどうするんですか」

 

蓮見は、少し考えてから答えた。

 

「止めます。それが仕事なので」

 

質問の答えとしては、あまりに単純すぎた。だが、その単純さが、桐山の中に小さな棘のように残った。

 

+++

 

甲斐純一がNIPI鴉ヶ森臨時拠点のフェンスを越えたのは、桐山の取材から四日後、深夜二時のことだった。

 

登録者四十二万人を抱える暴露系配信者として、彼にはある確信があった――国はまた何かを隠している。政府や大企業の"隠蔽"を暴くことが、彼のチャンネル「真相チャンネル」の看板であり、収益の柱でもあった。取材を断られたという桐山の記事の下書きを、彼はSNSで見かけていた。「メディアにすら本当のことを言わない施設」――そのフレーズだけで、彼の中では十分な"証拠"になっていた。

 

胸に括りつけたカメラが、リアルタイムで映像を配信していた。コメント欄には「頑張れ」「証拠掴んでこい」という文字が絶え間なく流れていく。彼は暗視カメラの緑がかった視界の中、警備の隙をついて職員用通用口から侵入した。

 

「見てくださいこれ、鍵かかってないですよ。これで厳重に管理されてるって言えますか?」

 

実際には電子錠がかかっていたが、彼は壁に埋め込まれた非常用マニュアル解除レバーを見つけていた。それが火災時に扉を強制開放するための、生命維持よりも避難を優先する緊急装置だとは、彼は知る由もなかった。

 

隔離区画三号室の重い扉の向こうに、彼は目当てのものを見つけた気がした。密閉容器が整然と並ぶ棚。彼はその一つを手に取り、カメラに向けた。

 

「これですよ、これが噂の――」

 

容器のロックが外れた瞬間、けたたましいアラームが施設中に鳴り響いた。

 

蓮見が異常を検知したのは、その三分後だった。モニターに表示された「区画三号、陽圧異常」の赤い文字を見て、彼は椅子を蹴倒して駆け出していた。防護スーツに袖を通す時間さえ惜しかった。

 

区画に到着した時、甲斐はすでに床に座り込んでいた。カメラは倒れたまま、なおも配信を続けていた。彼の顔には、隠しきれない怯えが浮かんでいた。

 

「あの……これ、まずいやつですか」

 

蓮見は答えられなかった。緊急隔離プロトコルのボタンに手を伸ばしながら、頭の中では別のことを考えていた。――止めます、それが仕事なので。四日前、自分が口にした言葉が、こんな形で試されるとは思っていなかった。

 

配信は、その後三十七分間、途切れることなく続いた。

 

+++

 

甲斐純一が搬送先の病院で息を引き取ったのは、それから六日後のことだった。彼が最後に見せた症状――高熱、内出血、意識障害――は、彼の視聴者たちの手によって、瞬く間に拡散されていった。

 

配信のアーカイブは、公式に削除される前に無数に複製され、「NIPI、隔離失敗の瞬間」というタイトルで拡散した。誰も、あのレバーの意味を知らなかった。誰も、彼が何を壊したのかを知らなかった。ただ、隔離区画の中で人が倒れる映像だけが、事実として一人歩きを始めた。

 

感染は、甲斐が訪れた都市部を中心に、二週間で三県に拡大した。病院は溢れ、学校は閉鎖され、火葬場には順番待ちの列ができた。

 

そしてそのほぼ全ての報道の見出しに、判で押したように同じ単語が躍った。

 

「NIPI、隠蔽か」

 

誰かがそう言い出すと、次の日には検証されないまま"事実"になっていた。甲斐のファンたちは、彼を殉教者に仕立て上げた。彼の死を悼む言葉と、NIPIへの憎悪は、同じ投稿の中で分かちがたく結びついていった。

 

桐山の元にも、連日SNSのスクリーンショットが転送されてきた。

 

「これ、記事にしないんですか」

 

後輩からそう聞かれるたび、桐山は曖昧に頷くだけだった。彼女の中でまだ、あの夜の研究員の、素っ気ない声が引っかかっていた。――止めます、それが仕事なので。あの言葉を口にした人間が、本当に隠蔽などするだろうか。だが記者としての勘と、証拠がないという事実は、また別の話だった。

 

+++

 

桐山のもとに「証拠」が届いたのは、それから十日後の夜だった。差出人不明のメールに、NIPIの内部文書とされるPDFが添付されていた。そこには、隕石落下の三日前――つまり公式発表よりずっと前――にNIPIが未知の生体反応をすでに検知していた、という記述があった。

 

「これがあれば、お前の記事、一面いけるぞ」

 

寺尾は珍しく上機嫌だった。「国立研究所、隠蔽の決定的証拠」――見出しは、すでに彼の頭の中で組み上がっているようだった。

 

桐山は文書を読み込みながら、記者としての勘が小さく警報を鳴らすのを感じた。日付の書式が、NIPIが過去に公開してきた資料と微妙に異なる。フォントのカーニングも、心なしか不自然だった。何より、送り主が誰なのか、メールヘッダーを何度辿っても、影も形も掴めなかった。

 

「裏、取らせてください」

 

「時間がない。今日中に出す」

 

「でも、この文書――」

 

「桐山」

 

寺尾の声が低くなった。

 

「お前がまた"確認不足でした"はもう聞き飽きてるんだよ。今度は逆だ。石橋を叩きすぎて、特ダネを逃すつもりか」

 

その一言が、桐山の中の何かに火をつけた。彼女は結局、その夜、記事を落とすことも鵜呑みにすることもせず、ただ一人でNIPIの公開資料と、送られてきた"内部文書"を並べて夜を明かした。

 

朝には、確信していた。この文書は、偽物だ。

 

+++

 

NIPI本部は、既に要塞のようになっていた。正門前には連日、抗議のプラカードを持った人々が集まり、夜になるとペンキや卵が投げつけられた。職員用の通用口からしか、誰も出入りできなくなって久しい。

 

蓮見は、血清候補物質の治験データを確認していて、あるグラフの不自然さに気づいた。第二相試験の被験者のうち、三名分のデータが、最終報告書から静かに消えていた。生データのログには残っているのに、集計にだけ含まれていない。

 

彼はその晩、上司である黒沢悟の部屋を訪ねた。黒沢は、この一か月でひと回り痩せていた。

 

「三号、五号、十一号の被験者データが、最終報告から抜けています」

 

黒沢は、しばらく黙っていた。それから、疲れきった声で言った。

 

「重篤な副作用が出た。因果関係はまだ断定できない。だが、今それを公表したら」

 

「したら、何です」

 

「治験全体が止まる。承認が半年遅れる。半年あれば、何人死ぬと思う」

 

蓮見には、その計算が分からないわけではなかった。だが。

 

「隠すことと、慎重に扱うことは、違います」

 

「分かってる。分かってるさ、そんなことは」

 

黒沢は、初めて蓮見の目を正面から見た。

 

「だが今のNIPIに、"研究所がまた何か隠していた"という記事に耐える余力があると思うか。世間はもう、我々の言葉を一言も信じちゃいない。事実を出しても、"また嘘だ"としか受け取られない。それなら――」

 

「それなら、隠したままの方がマシだと?」

 

黒沢は答えなかった。その沈黙が、答えだった。

 

蓮見は、何も言い返せなかった。廊下に出て、遠くから抗議の声が微かに響いてくるのを聞きながら、彼は初めて、正しさが必ずしも組織を救わないという事実を、体の芯で理解した。

 

+++

 

「この文書、偽物です」

 

桐山が寺尾のデスクに調査結果を並べても、彼の表情は動かなかった。

 

「証拠は?」

 

「メタデータの矛盾、フォントの違い、そして何より、送り主が一切辿れないことです。誰かが意図的に――」

 

「憶測だろ、それ」

 

寺尾はファイルを閉じた。

 

「お前の"確信"は、二年前も同じ顔してたよな」

 

その一言で、編集部の空気が凍りついた。桐山の同期が、気まずそうに視線を逸らすのが見えた。

 

二年前――桐山は、匿名の投稿者から寄せられた情報を基に、ある企業の社員を"パワハラ加害者"として実名で報じたことがあった。裏取りは、投稿者の主張と、周辺の又聞き証言だけだった。記事は炎上し、社員は一週間と経たずに職を追われた。三か月後、投稿そのものが私怨による捏造だったことが判明した。桐山は謝罪記事を書いたが、活字の量でいえば、最初の記事の十分の一にも満たなかった。

 

桐山にとって、あの記事は"誤報"という言葉では済まされない傷だった。事実でないことを、事実として世に放ってしまった感触は、指先に張り付いたまま、今も消えない。

 

「今回は違います」

 

「同じだよ。お前は"事実"じゃなくて、"自分が正しいと思いたいこと"を追いかけてるだけだ」

 

「それなら、なぜ検証もせずにこの偽文書を一面に載せようとしたんですか」

 

寺尾は答えなかった。彼が本当は、送り主の怪しさにうっすらと気づいていたことを、桐山はこの時まだ知らなかった。ただ「この件からは外れろ」という言葉だけが、部屋に落とされた。

 

その日を境に、桐山のデスクの周りから、人が少しずつ減っていった。

 

+++

 

蓮見のもとに一本の電話がかかってきたのは、それから三日後だった。

 

「桐山です。前に取材に伺った者ですが」

 

「覚えています」

 

「今度は、記事を書くためじゃなく、話を聞きたくて」

 

二人は、NIPIから離れた町の、古い喫茶店で落ち合った。桐山は、偽文書の分析結果を蓮見の前に広げた。日付の矛盾、メタデータの痕跡、そして――寺尾がその出所の怪しさにうっすら気づきながらも記事化しようとしていたこと。

 

「これを最初に流したのが誰かは、まだ確信が持てません。でも、NIPIの設備入札で競合していた企業の周辺から、過去にも似た文体の文書が出回っていたことが分かりました」

 

蓮見は、しばらく黙って聞いていた。それから、自分の側の事実も話した。三名の被験者データ、黒沢の判断、そして自分がまだそれを誰にも告げていないこと。

 

「なぜ、私にそこまで話すんですか」桐山が聞いた。「私はあなたたちを叩くために来た人間ですよ、最初は」

 

蓮見は少し考えてから答えた。

 

「あの夜、あなたは"止めます、それが仕事なので"って言った僕に、鼻で笑うでも、疑うでもなく、ただ黙って頷いた。あれが演技だとは、今でも思えません」

 

「知ってます。だから信じられたんです、あなたのことを」

 

二人はそれから、何時間も話し合った。真実を出せば、NIPIはさらに叩かれるかもしれない。黒沢の一件が公になれば、組織そのものが崩壊しかねない。それでも――と桐山は言った。

 

「事実を隠したまま今回だけ乗り切っても、次に本当に隠蔽が起きた時、誰も"今度は違う"って信じてくれません。信用って、そういうものです。一度失ったら、正しいことをするたびに利子をつけて払い続けるしかない」

 

蓮見は、何も茶化さず、ただ頷いた。それは、彼が黒沢に言えなかった言葉と、根っこの部分で同じものだった。

 

「両方、出しましょう」蓮見は言った。「偽の証拠のことも、黒沢さんのことも」

 

「両方潰れるかもしれませんよ、それで」

 

「両方隠したまま治っても、僕はもう、それを"勝った"とは思えない気がします」

 

+++

 

桐山が記事を出したのは、その二週間後だった。掲載したのは、彼女の勤める新聞社ではなかった。寺尾に握りつぶされることを見越して、彼女は独立系のニュースサイトに、実名で寄稿した。会社には、辞表を先に出した。

 

記事は二つの事実を並べていた。一つ、感染拡大の直接の原因は、NIPIの隠蔽ではなく、無断侵入による隔離プロトコルの物理的な破壊だったこと。配信アーカイブの未公開部分――甲斐が非常用レバーを操作する瞬間の映像――を、遺族の同意を得た上で根拠として添えた。二つ、"隠蔽の証拠"として拡散していた内部文書には、日付とメタデータに明確な矛盾があり、出所を辿ると、NIPIの入札で敗れた競合企業の周辺に行き着くこと。

 

同時に、蓮見はNIPI内部の倫理委員会に、黒沢のデータ隠蔽を報告した。黒沢は治験責任者を解任され、副作用の症例は速やかに公表された。血清の承認は一時的に足踏みしたが、隠されていた事実は、後から暴かれるよりずっと傷が浅く済むということを、NIPIは身をもって示すことになった。

 

記事の反響は、桐山が予想していたよりも大きく、そして予想していたよりも歪だった。

 

賛同の声と同じだけ、「今更信じられるか」「どうせ第二の隠蔽の始まりだろう」という声も上がった。寺尾の新聞社は、記事の真偽を検証する特集を急遽組んだが、それは半分、自社の沈黙を正当化するための記事だった。

 

それでも、政治的な圧力による研究所解体の議論は、静かに立ち消えていった。輸送車両を取り囲んでいた抗議の一部も、少しずつ引いていった。

 

血清が最初の患者に投与されたのは、隕石落下から百十二日目の朝だった。

 

+++

 

半年後、感染の終息が公式に宣言された。犠牲者は、最終的に四千人を超えていた。

 

蓮見は、鴉ヶ森臨時拠点の閉鎖作業に立ち会っていた。黒沢はすでにNIPIを去り、今どこで何をしているのか、蓮見は知らない。ただ、去り際に黒沢が振り返らずに残した「お前は、正しかったよ」という一言だけが、今も耳の奥に貼りついている。それが慰めだったのか、皮肉だったのか、蓮見にはまだ判断がつかない。

 

桐山は、あの記事の後、元の新聞社には戻らなかった。今は数人だけの小さな媒体で、検証報道を専門に書いている。かつての"やらかし"を知る人間からは、今でも時々、皮肉交じりの言葉を向けられる。それでも、以前のように仕事そのものを取り上げられることはなくなった。

 

ある晩、二人は例の喫茶店で、半年ぶりに顔を合わせた。

 

「あの記事のコメント欄、まだ見てます?」桐山が聞いた。

 

「たまに」

 

「三割くらい、いまだに"研究所は最初から怪しかった"って書いてますよ」

 

蓮見は、コーヒーカップの湯気を見つめたまま言った。

 

「病原体には、血清が効きました」

 

「でも」

 

「ええ。あっちの感染には、まだ効く薬がないみたいです」

 

桐山は小さく笑った。それは諦めの笑いではなく、それでも今日という一日を、明日の記事のために生きていく人間の笑い方だった。

 

「治らないなら、治らないなりに、付き合っていくしかないんでしょうね」

 

「気の長い話です」

 

「ええ、本当に」

 

窓の外では、何も知らない人々が、いつも通りの速さで歩いていた。事実は、物語に、辛勝した。だがそれだけだった。圧勝ではなかった。そして恐らく、これから先も、そういうものであり続けるのだろうと、二人はどちらからともなく、同じことを考えていた。

 

コーヒーはとうに冷めていたが、二人とも、しばらく席を立たなかった。




少し古いですがアンドロメダ病原体おすすめです。オチはともかくSFとはなんたるか
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