勇者アニス伝説   作:びく太

7 / 8
勇者・戦士・盗賊・魔法使い

「みんな、紹介するよ。彼女はアニス。まぁ……詳しい説明は後で本人から聞いとくれ」

 翌日、朝の忙しさも落ち着きはじめた頃、アニスはルイーダの酒場に居た。

 昨日申請しておいた冒険者3人との顔合わせと目的説明、そして旅立ちの準備などの打ち合わせをする為だ。

 

「アニス・ディアルティスです。これからよろしくお願いします」

 そう言ってアニスは一番近くに居た戦士ライドウに手を差し伸べる。

「ライドウ・コードウェルだ」

 差し出された手を握り、ライドウとアニスは握手を交わす。

 しかしルイーダの言うとおり、ぶっきらぼうで気難しそうで……そして無口なようだ。

 

「アニス・ディアルティスです。これからよろしくお願いします」

 アニスは次に、盗賊トウヤに手を差し出した。

「ども、トウヤ・タカトリっす。自分、将来は大盗賊になって金を稼いで、それを貯金してその利息で老後を満喫する計画なんでヨロシク」

「は、はあ……そうなんですか」

 凄いような凄くないような何だか良く分からない人生設計に、アニスは苦笑いで返すしかなかった。

 彼もまた、ルイーダの言うとおり、良く分からない掴み所の無い人物なようだ。

 

「私はアニス・ディアルティス。これからよろしくね」

 最後にアニスは最年少登録者である魔法使いエヒルンに手を差し出した。

「…………」

 しかしエヒルンはアニスの手をじっと見つめるだけで、一向に握手をしようとする気配が無い。

 アニスが首をかしげると、彼女はようやく口を開く。

「私だけ子供扱いはしないで下さい。冒険者として登録されている以上、私も皆さんと平等に扱ってください」

「え……?」

 言われた意味がわからず、アニスはルイーダに目を向けた。

 

 ルイーダは『ほらね』と言わんばかりに、肩をすくめて鼻で小さく息をついた。

 この3人は、実力はあろうとも『難あり』と注意しておいた3人。ルイーダにしてみれば『ほら、さっそくひと悶着かい?』と言ったところ。

「お気遣いはありがたいのですが、私も冒険者として登録された者。他の冒険者の方たちと同じように扱ってもらって結構です」

 その言葉に、アニスはようやく「ああ」と合点がいった。

 

「ごめんなさい。それじゃ改めて……アニス・ディアルティスです。これからよろしくお願いします」

 エヒルンの言わんとする事を理解したアニスは、改めて他の2人と同じように挨拶をし、手を差し出す。

「魔法使いのエヒルン・クロモードです。至らない部分もあるかと思いますが、精一杯頑張らせていただきます」

 出された手を握り、ようやくエヒルンと握手を交わす。

 

 

 

「それじゃあ挨拶もしたところで旅の目的説明を……」

「大丈夫です。言わなくても判っておりますので。魔王バラモスを倒しに行くのですよね?」

 アニスは旅の目的を説明しようとしたが、エヒルンによって先に言われてしまう。

「え?」

 

「あんた、あの勇者オルテガの娘っしょ? それを知ってれば旅の目的は大体想像できるでしょ。情報収集は盗賊の基本っすからねぇ」

 と、これは盗賊トウヤ。

「え?」

 

「俺も知っている。俺は特に旅の目的に問題は無い」

 そして戦士ライドウ。

「え?」

 

 それぞれすでに事情を知っており説明の必要は全く無く、同時にアニスが言うべきことも全く無かった。

「旅の準備は出来ている。早速出発しようか」

「こっちも出来てるんで、俺も今すぐで問題ないっす」

「同じくです。私も異論ありません。早速行きましょう」

 それぞれ旅立ち用の荷物をまとめた袋を持ち出して準備万端な三人を見てうなる。

 もっと団結とか、仲間同士の交流とか、心の準備とか……そう言ったものは無いのかと言いたいところであったが、彼らには言うだけ無駄な気がしてやめた。

 

「は…ははは……」

 3人は言うだけ言うと、乾いた笑いを浮かべるアニスを置いてサッサと酒場から出て行ってしまった。

 団体行動などどこ吹く風。それぞれ個人個人で自分の事を自分で勝手にやっている。

 酒場にひとり取り残されながら、アニスは『あまり優秀過ぎるのも問題かなぁ』と心の中でつぶやいた。

 

「ほれ、行かないのかい?」

 酒場にひとり残されたアニス。

 ルイーダに背を小突かれ、ようやく自分の状況に気が付く。

「あっ。は、はいっ! それでは行ってきます」

 取り残されていた自分に気付いたアニスは、弾かれるように皆の後を追いかける。

「ま、頑張るんだね。実力だけは私が保証するよ。あとはアンタ次第だよー!」

「はーい!」

 走るアニスの背にルイーダの声がかけられる。アニスは軽く返事をし、小走りに酒場を出て行った。

 

 

 

「遅い」

 酒場から出てきたアニスを待っていたのは、戦士ライドウのひとこと。

「すみません。では、行きましょう!」

 アニスは『やっぱりちょっと人選失敗したかな~』と思いつつも、なんとか旅立ちの第一歩を踏み出す。




<キャラデータ>
●女勇者アニス(アニス・ディアルティス)
年齢:16歳
性格:せけんしらず
装備:銅の剣、旅人の服、皮の盾
呪文:おもいだす、メラ、ホイミ
<備考>
ヒステリックで多感な、お年頃の少女。潜在能力は高いが経験は全然足りない。

●男戦士ライドウ(ライドウ・コードウェル)
年齢:21歳
性格:ごうけつ
装備:銅の剣、皮の鎧、皮の盾
呪文:なし
<備考>
年齢は若いが戦士としてのキャリアは長い。寡黙で孤高な戦士。戦闘センスは抜群。

●男盗賊トウヤ(トウヤ・タカトリ)
年齢:19歳
性格:でんこうせっか
装備:とげの鞭、旅人の服
呪文:なし
<備考>
性格の軽い男だがセンスはピカいち。何を考えてるのか分からないのがタマにキズ。

●女魔法使いエヒルン(エヒルン・クロモード)
年齢:14歳
性格:ずのうめいせき
装備:ブロンズナイフ、旅人の服、皮の帽子
呪文:メラ、スカラ、ヒャド
<備考>
魔法の才能あふれる少女。超努力家だけに生真面目過ぎるのがタマにキズ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。