黒咲瑠璃に転生してしまった……   作:絶望神サガ

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天衣縫合

「我の先行!ドローッ!!」

 

巨大な腕を鋭く振り上げ、高らかに宣言しながらe・ラーがデュエルディスクからカードを疾風のごとく引き抜く。その動作と身に纏う凄まじい神威の迫力は、明らかに尋常では無いと目の前にしてはっきりと言い切ることができた。

 

「あ」

 

しかし、次の瞬間。そんなことは別で、私は口から思わず間の抜けた声が漏れていた。そうだよね、そうだよなぁ……

 

「あ? 何だ小娘。我の恐ろしさに今更恐れ慄いたか?」

 

不審そうに目を細める神に対し、私は若干の苦笑いを浮かべながらその時を待つ。

 

「いや、そうじゃなくって」

 

──ビーッ!

 

唐突に、無機質で甲高いエラー音が響き渡った。神の絶対的な威厳など全く関係の無い、システムからの警告音だ。

 

「な、なんだ? 我はドローしたのみぞ」

 

予期せぬ音声に、e・ラーは引き抜いたカードを手に持ったまま困惑の声を上げる。

 

「先行1ターン目のドローが、最近出来なくなったんだよね……」

 

幾ら神であろうと、先行ドローが無くなる以前のZEXAL出身なのだから分からなくて当然だったが、その、何というか。こう、堂々と間違われると拍子抜けというか逆に面白いというか。

 

「ム。そういうことであったか。ならばデッキに戻すとしよう」

 

e・ラーは失敬失敬、と言いながら今引いたであろうカードを大人しくデッキ口に戻すと、デュエルディスクの機能によりデッキが自動的にシャッフルされる音が聞こえた。

 

いや、そういうところは律儀なんかい。

 

相手は世界を滅ぼさんとする絶望の神であるはずなのに、ルールには素直に従うその姿に、私の心に張り詰めていた恐怖と緊張の糸が少しだけ緩むのを感じた。

 

 

 

 

#

 

 

 

「……」

「……」

 

とはいえ、今そこは重要では無い。今私は私自身の肉体の主導権を維持するための重要なデュエルの最中なのだ。それは、向こうも死活問題である以上同様のはず。

 

「……」

「……」

 

お互いにカードを見つめたまま、なんとも言えない奇妙でシュールな沈黙が流れる。だが、その気まずい空気を自ら破り、緩んだ緊張を再び締め上げるように、私と神の怒声が再び空間を切り裂くように轟いた。

 

「来い、e・ラー!!!」

「ほざけ、小娘ェ!!!」

 

お互いの闘志をぶつけ合う叫びとともに、ゲームが再開される。

 

「我のターン!!我は……な、なんだこの手札は!?」

 

自分の手札を確認した瞬間、e・ラーの顔色が変わり、明らかに狼狽した声を上げた。

 

なんだ?

 

彼女のデッキの内容は私は正直知らない。というのも、確かe・ラーは漫画版ZEXALの最終巻に突然現れては嵐のように遊馬にかっとビングされて消えていったため、()()1()()()()()()以外の彼女の使用カードを知らないのだ。

 

「貴様……我に何をしたッ!」

 

しかし、彼女の狼狽はそういう意味ではない様だ。おそらく、彼女が想定しない事態が、彼女の手札に起こっている。e・ラーは私に何か計ったのかと問いかけるが、当然何もしていないので正直に答えるしかない。

 

「私は何もしていないが」

「シラを切るつもりか……不遜なり、不快だ! 我はフィールドにモンスターが存在しないため、《LL-ターコイズ・ワーブラー》を特殊召喚!!」

 

彼女の周りを包む漆黒の空間に風が巻き起こり、神の巨大な威容とはあまりにも不釣り合いな、見慣れた可愛らしい小鳥のモンスターが可憐に舞い降りる。アニメでの私における使用テーマこと、「LL(リリカル・ルスキニア)」のカードたちだ。

 

「それはっ!」

 

そういう意味か!?

 

「なんだ? この如何にも突風にすら抗えない様な、有象無象の小鳥共を知っているとでも?」

「私のデッキのモンスターだ、それは!」

 

確かに、それは私だっておかしいと思うだろう。デュエルを始めて手札を見たら、見知ったはずのカード群で構成されていると信じて疑わない手札が、意味不明なカードで構成されているのだから。

 

「成程、そういうことか。ならば、生贄の性格を知っておくのも一興よな! さらに、《ターコイズ・ワーブラー》の手札から特殊召喚に成功した場合の効果発動!」

 

しかし、何故私のモンスターが目の前の敵のデッキに入っているんだ!?

 

「手札から「LL」モンスターを特殊召喚が可能……我は、《LL-コバルト・スパロー》を手札より特殊召喚!!《LL-コバルト・スパロー》の特殊召喚が成功した場合の効果発動!デッキから、同名カードを手札に加え……さらに!」

 

流石に神というのは偽りの無い所と言えるか。先ほどの動揺を忘れさせるほど、e・ラーは流れるように私の使用するまったく馴染みの無いはずのモンスターをあたかも手馴れているかのように連続で特殊召喚する。

 

「自分フィールド上に自身以外の「LL」モンスターが存在するため、《LL-サファイア・スワロー》の効果発動! 手札より、自身と《LL-コバルト・スパロー》を特殊召喚!!《コバルト・スパロー》の効果により、再び同名カードをデッキから手札に加える……さぁ、小娘よ。降伏するなら今が最後の機会だ」

 

場に隙間なく可愛らしく並んだ4体の「LL」モンスターたち。だが、それら愛らしい小鳥たちを見下ろすe・ラーの顔は自信に満ち溢れており、また同時に酷薄で残忍な笑みが浮かんでいた。……()()()()()が来るのか。

 

「我がこれより呼び出すのは、神のカード。絶対的な絶望の元で、貴様は塵殺される」

 

……二分の一だな。

 

「……いいや、負けるなら満足する負け方にしてもらおうか」

 

今サレンダーしても、後で負けても、肉体を乗っ取られるのには変わりない。それよりかは、()()()()()の効果が吉と出るか凶と出るか……これは賭けだな。

 

「そうか……そうよな!! 絶望を知らぬ哀れな小娘よ、この世には絶対的に抗いようのない存在があると知れ!!」

 

突如として、空間全体が落雷を受けたかのように激しく震動し始めた。e・ラーの全身から溢れ出す濃密なオーラが、目に見えるほどの物理的な重力となって私の身体全体に覆いかぶさる。あまりの圧迫感に、呼吸することすら苦しい。e・ラーは手札から一枚のカードを天高く掲げる。

 

「我はフィールド上に存在するレベル1の4体のモンスター……《LL-ターコイズ・ワーブラー》、《LL-サファイア・スワロー》、そして二体の《LL-コバルト・スパロー》を墓地に送り、特殊召喚!!」

 

捧げられた小鳥たちが光の粒子となって消え去ると同時に、漆黒の領域が大きく引き裂かれ、そこから底知れぬ混沌の渦が湧き出した。()()()()()が降臨する。

 

「神の降臨! 現れよ……全ての闇と混沌を統べる絶望の化身!!」

 

掲げられたカードが、デュエルディスクに激しい音を出して叩きつけられる。現れたのは、天地を揺るがす咆哮とともに、絶望の権化と呼ぶに相応しい、漆黒に染まった異形なる神のモンスターだった。

 

「《絶望神アンチホープ》!!!」

 

攻撃力5000、防御力5000。完璧かつ絶対的な強者、神のステータスに相応しい数値だった。

 

「……」

「我はこれで、ターンエンド……!」

 

e・ラーは満足げにして、純白の領域に立つ私を暗黒に支配された闇の領域から鋭い目で見据える。

 

「フフフ……これで貴様は、一切のエクシーズ召喚が封じられた……どうだ、この圧倒的絶望を体現した威容を前にして貴様はこれでも絶望を感じぬか?」

 

私に対し、彼女はもはや勝利を確信したように嘲笑を浴びせてくる。相手のエクシーズ召喚を完全に封じるという簡潔にして強力な効果。確かに、エクシーズ召喚を主軸として戦う私から見れば、完全に詰みと言える絶望的な盤面だった。

 

「……」

 

だけれど、残念。賭けは勝ちだ。

 

「……絶望を感じるか、と聞いているっ!!」

「……そうだね」

 

私は溜め込んだ息をゆっくりと吐き出し、乱れた前髪を払うと、まっすぐに顔を上げて神の巨大な目を睨みつけた。

 

「ならば、平伏し服従──」

「──絶望どころか、絶対的な希望が見えてきたって言ってんだよ!!」

 

私はe・ラーの言葉をキッパリと断るように、戦う意思を露にする。二分の一の賭けに勝った……いや、勝負は最初から決まっていたということか。

 

「何!?」

 

e・ラーが初めて余裕を崩した表情を私に見せた。私は内心で確信を得て、勢いよく指先でデッキのトップからカードを引き抜く。

 

「私のターン……ドローッ!!」

 

その軌跡が眩い光のラインを描いた。引き当てた手札を一瞥した瞬間、私の胸の中に確固たる勝利のビジョンが広がった。

 

「私は、手札からモンスター効果発動! 《LL-ターコイズ・ワーブラー》!!」

 

私は迷わずそのカードを手札から翻し、デュエルディスクへ叩きつける。

 

「このモンスターは、フィールド上にモンスターが存在しない場合特殊召喚できる! さらに効果で手札より、《LL-コバルト・スパロー》を特殊召喚!」

「この時、特殊召喚に成功した《LL-コバルト・スパロー》のモンスター効果発動!デッキから同名カードを加え、そしてそのまま召喚!」

 

鮮やかな疾風が空間を駆け抜け、私のフィールドにも瞬く間に3体の「LL」モンスターたちが羽ばたきながら舞い降りた。

 

「レベル1を並べたか。だが、その様子を見るに貴様はエクシーズ召喚しようとしているな?」

 

e・ラーは私の展開を一瞥し、愚か者を哀れむように鼻で嗤った。

 

「無意味だ、言ったはずだ! 《絶望神アンチホープ》は存在する限り、相手はエクシーズ召喚ができない!!」

「本当にそうかな?」

 

それが本当なのは、効果がそう書いてあれば、の話だ。

 

「ム?」

「召喚条件の変更は理解できているようだけれど、お手元のカードの効果を注意深く確認するんだね……私は、レベル1の3体のモンスターで、オーバーレイ・ネットワークを構築……」

 

自信に満ちた私の召喚宣言が止まらないのを見て、e・ラーの顔から余裕が消え、眉がピクリと跳ね上がる。

 

「まさか、貴様、その身で《ホープ・ゼアル》を呼び出すと言うのか!?不可能だ、貴様如き小娘が何故!」

 

違う!これは奇跡なんかじゃない、絆の力じゃない、希望を束ねた証でも無い!!

 

「いいや、違うねっ! そんなことは無いッ!! エクシーズ召喚!!」

 

三つの光の星が重なり合い、渦巻く銀河となって新たな力を紡ぎ出す。

 

「現れろ、《LL-アセンブリー・ナイチンゲール》!」

 

銀河が勢いよく爆ぜると同時に放たれた眩い光の柱から、凛とした美しさと気高さを纏った鳥が羽ばたき、私の頭上へと躍り出た。

 

《LL-アセンブリー・ナイチンゲール》ATK 0 → 300

 

「このモンスターは、エクシーズ素材の数だけ攻撃力が100アップする!」

 

麗しき鳥が、絶望を体現する神に相対するようにしてフィールドに飛翔する。

 

「馬鹿な……何故貴様が、エクシーズモンスターを呼び出せる!!? そして何故、《アンチホープ》の効果は発動しない!?」

 

目の前で起きたあり得ない現象に大混乱し、怒号を上げる絶望神に対し、私はニッと口角を上げて残酷な種明かしを始めた。

 

当たり前の話だが、カードのテキストに書かれていない効果はカードの効果として存在し得ない。ということはつまり、幾ら自分が確信していようとも、そのカードのテキストの内容が内心と違うならばそのカードの効果は確信とは違くなるということだ。当たり前の話だが。

 

だが、その当たり前は時に自分の想定を下回ることが多々としてある。実際、私も前世で《灰流うらら》で《デビル・フランケン》の効果を止めようとして失敗した経験がある。e・ラーの置かれている状況は、そういう場面に近い。

 

「簡単!」

 

今のエクシーズ召喚で確信した。やはり、ここは私の精神世界だ。奴の扱うデッキも、私の所持するカード群がベースとして生成されているのだと。

 

「確かに、あなたの使う《アンチホープ》は強力だ……だが、ここは私の脳内……そう、それすなわち、私の領域!必然的に私が知りえない存在はここには現れないし、そしてそれはカードも同様だ!!」

 

存在しない記憶は存在し得ない。当然だ。

 

「だが、我の《アンチホープ》は確かにここに存在している!!」

「確かに、そうだ。だけれど、その前提はあなたの記憶上の話。私の知識ではそのカードは……」

 

慌てるe・ラーに対し私は指を突きつけ、身も蓋もない真実を神の顔面に叩きつける。

 

「めちゃくちゃに弱体化されている!!」

 

そうだ、私は知っている。カード化された《絶望神アンチホープ》は原作の効果をことごとく無視し、もはや別物とまで言えるほどのモンスターとなってしまったことを。

 

「な、何っ!??」

 

それを聞いたe・ラーの表情が困惑に支配される。これほどに意味不明でありながらも論理的な説明をされて、彼女が動揺するはずがなかった。

 

「看板に偽りありってね。私の知識として存在するカードは、私の脳内ならその知識の範疇の効果をしたモンスターしか使えないということさ!」

 

原作の漫画版ZEXALでの凶悪な封殺能力は、あくまであちらの世界での話に過ぎない。現実にOCGとしてカード化された際、K〇NAMIの手によりその能力が見る影もなく削られてしまったことを私は知っているのだ。

 

「それこそおかしいでは無いか!! それが《絶望神アンチホープ》の効果を無視して良い理由にはならぬぞ!!」

「いいや、何もおかしくない!! もう一度言う、そのカードの効果を確認してみな!!」

「……」

 

e・ラーは信じられないといった様子で己の手元にあるカードに視線を落とし、そのまま固まった。

 

「な、何ッ!?! 『このカードがモンスターゾーンに存在する限り、他の自分のモンスターは攻撃できない』だと!?」

 

相手のエクシーズ召喚を封じる強烈なロック効果どころか、あろうことか自分の場の他のモンスターの攻撃まで縛ってしまうという完全にデメリットとしか言いようのないテキスト。それこそが、現実に刷られたOCG版《絶望神アンチホープ》の切ない姿だった。

 

「なんだ、このカードは!!ふざけているのか!?我の知る《アンチホープ》とはまるで異なるではないか!!こんなもので絶望を体現できる訳が無かろう!??」

 

私もそう思う。

 

「だけど、それが私の知識であり、今のそのカードの効果だ!!」

「グッ、不快だ……貴様如き小娘に絶望を名に冠する神の効果を上書きするとは……私の物語? 私の知識? そんなもの、我には何も関係の無い話であろうが!!」

 

絶望神としての尊厳を根本から打ち砕かれたe・ラーの激昂が、激しい黒い衝撃波となって領域全体を荒れ狂わせる。

 

「だけど、ここは私の脳内。本来ならそうかもしれないけれど、今こうしてカードを操り、現れているのは私の記憶から再現しているからだ!」

 

さっき私が言っていた賭け、というのはつまり、e・ラーという使用者本人がここに存在するため、そのまま《アンチホープ》の効果も原作通りに現れるか、それとも私というOCGでカード化され悲惨なまでに弱体化された記憶を持つ人がここに存在するため、そのままOCG版の効果で現れるかの二択のことだった。

 

「遺憾だ、小娘! 貴様の勝手で、我をここまで苛立たせるとは……貴様、絶望を体現する神を改変し、ここまでに苔に仕立て上げるとは、不躾なり、不遜なりっ!! 神へと平然と踏み込み寧ろ誇ろ

うとまでするその態度……まさに万死に値するッ!!」

 

もはや絶望神は絶望の体を成していない。相手の威圧に屈することなく、私は床を強く踏み込んで腕を鋭く突き出した。

 

タワーの中でそのままデュエルしていたら原作通りの効果だったのかもしれないが、ここは私の精神世界。どうにか、場所の有利でOCG版の効果を使わせることができた、というのが正解だろう。

 

「つまり、場所が悪かったな、e・ラー!!」

 

反撃開始だ。

 

「バトルだ、《LL-アセンブリー・ナイチンゲール》!」

 

私が飛翔する鳥に号令すると、待ってましたと言わんばかりにその姿が攻撃態勢へと瞬時に変わる。

 

「しかし! 己のペースに持ち込んだことに浸り勝利を焦ったな、小娘! 幾ら《絶望神アンチホープ》を狡猾なる手口で貴様が弱めようと、攻撃力は5000! 貴様の駆るモンスターは攻撃力300! 天地の差があると知れ!!」

 

e・ラーは《アンチホープ》の数少ない利点(強いとは言っていない)である攻撃力の高さを誇示するが、そんなことは知っている。バトルの戦術なんて基礎の基礎だ。

 

「いいや! 《LL-アセンブリー・ナイチンゲール》は効果により、直接攻撃が可能……さらに、エクシーズ素材の数だけ攻撃できる!!今、《アセンブリー・ナイチンゲール》の持つエクシーズ素材は3つ! よって、三回の直接攻撃が可能!」

「戯けが! 我のライフポイントは4000、攻撃力300の三回攻撃なぞ、ライフポイントを削る4分の1にも満たぬわ!! 所詮小鳥は神という偉大なる存在を目の前にして平服するしかない、矮小な存在よ! このターンが終われば我が圧倒的質量による絶望をくれてやるわ!!」

 

確かに、間違いではない。「LL」は攻撃力が低い代わりに団結して勝つテーマだ。それは前世でたまに対面した時からそんな印象だった。……いや、それよりかは《烈風の結界像》の怨嗟のほうが強いかもしれないが。

 

「《LL-アセンブリー・ナイチンゲール》の1回目の直接攻撃!」

 

兎に角、「LL」は単騎だと攻撃力が低い。謎にナーフされている《LL-アセンブリー・ナイチンゲール》は特にそうだ。だけど、それは「LL」に限った話。魔法カードでサポートすれば話は別だ。

 

「しかし……なぜ、絶対的な神を前にして貴様はそこまでにして……勝利を確信した顔で居られるのだ!!?」

 

旋風を巻き起こし、鳥が天空高く飛翔して巨神の頭上へと肉迫する。

 

「それは、私にはこのカードの存在を知っているからだぁぁぁ!!!」

 

私は手札からカードを手繰り寄せ、勝利への絶対的な確信とともに高く天へと掲げた。

 

「ダメージステップ時、私は速攻魔法発動! 《ライフハック》!!」

「速攻魔法だと!?」

 

このカードは前世で割と最近に出たカードだが、かなり印象的な効果だったから覚えておいたのが功を奏したか。ここが私の精神世界ならば、まだARC-V時点で生まれていないカードも出せるのではないか、という一種の挑戦のようなものだった。

 

「このカードは、相手プレイヤーのライフポイント分の数値を、フィールド上のモンスターの攻撃力とすることができる!!」

 

不確定だったが、こうして手札に来たので使わないは無い。

 

「あなたのライフポイントは当然、4000……よって、攻撃力は4000となる!」

 

発動したカードから解き放たれた莫大なエネルギーがナイチンゲールに注ぎ込まれ、その体を眩い極彩色の光で包み込んでいく。元はわずか300だった可憐な小鳥が、瞬く間に神の巨躯にも匹敵する恐ろしい威圧感を放ち始めた。

 

《LL-アセンブリー・ナイチンゲール》ATK 300 → 4000

 

「な、直接攻撃で攻撃力4000だと!?」

「攻撃!」

 

閃光が空間を鋭く疾走する。ナイチンゲールの一撃目が、もはや図体が大きいだけのモンスターを華麗に躱して絶望神を深く、そして容赦なく切り裂いた。

 

e・ラー LP 4000 → 2000

 

「グァハアァア──ーッ!!!」

 

あまりの衝撃に巨体が揺らぎ、神の口から大量の闇が吐き出される。

 

「ハァ、ハァ……! 予想外だ、小娘……我に膝をつかせるとは……!!」

 

突如として食らった大ダメージに、思わず体勢が崩れる。

 

「ただし、このターン相手のダメージは半分になる……」

 

《ライフハック》は流石に直接攻撃を一撃通せば勝つだけになるほどに最強カードでは無い、私が冷ややかに告げた代償。それを聞いたe・ラーは、膝をつきながらも執念深い醜い笑みを顔に貼り付けた。

 

「だが、我のライフはまだ残っている! このターンが終われば……」

 

どんな皮肉だろうか。絶望神が、今や希望を抱こうと必死だ。だけれど、残念。

 

「何言っているんだ?」

 

あなたの希望はもう無い。

 

「ッ!!」

「次のターンなど無い!言ったはず、《アセンブリー・ナイチンゲール》は、エクシーズ素材の数だけ攻撃可能だと……二回目の攻撃!! さぁ、行け!」

 

攻撃を受けて体勢を立て直そうとした神に対し、上空で鮮やかに反転したナイチンゲールが再び光の旋風と化し、必殺の軌道を描いて突撃を開始する。

 

「《LL-アセンブリー・ナイチンゲール》で直接攻撃!!!」

 

e・ラー LP 2000 → 0

 

「なんだ、と……!?」

 

直撃した光の刃が、絶望神の精神世界そのものを完膚なきまでに両断する。一瞬、訳が分からないという表情をした後。

 

「貴様アァァァァ──ーッ!!!」

 

やられた、とようやく自覚したe・ラーの壮絶な断末魔が轟音となって響き渡り、やがてその肉体を模した精神体は砕け散る黒い粒子となって、純白の空間へと霧散していった。

 

「私の勝ちだ、絶望神!!!」

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