さとりさとれず   作:らんらん

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久々に東方にハマったので書きました。
原作は書籍しか読んでないエアプなのでご了承ください。


東方地霊殿
Stage4 誰からも好かれない地獄の目


 

 

「人間が地霊殿に来るかもしれない?あなたの見間違いとかじゃないの?」

 

そう考えている、私の……いや、地霊殿のペットの獣のうちのひとりの心を見透かし、口からそう言葉をこぼす。

 

地霊殿。地底深くの、旧地獄と呼ばれているところにそれは存在している。その名の通り、元々は閻魔様が管理する本当の地獄だったらしい。昔からいるわけじゃないし、当時は話をまじめに聞いていなかったから本当かどうかは知らないけど。

でもまあ、血の池とか、まさに灼熱地獄って感じのところはあるから、たぶん本当のことなんじゃないかしら?怨霊もたっぷりいるし。

 

そんなところに住んでいる私は、もちろんその怨霊のうちのひとり……なわけがない。そんな有象無象等ではなく、なんとも()()()()()、心を読む能力を持つ妖怪、覚妖怪のうちのひとり。相手がどれほど格上だろうと通用する(前例は昔会った八百万の神と今もたまに会う元四天王(らしい)を含む鬼たち。前者は名前を知らないけど)能力。妖怪の頂点とも言える鬼の心すら読めるのだから、素晴らしいという他ないわ。

 

この能力があるからこそ、旧地獄の中で(多分)一番豪華な館の管理者となっている。心が読めるということは、地底に蔓延る有害な怨霊の心も読め、そいつらの管理ができるから……らしい。最近は怨霊と会話ができる珍しいペットに任せっきりだけど。

そもそもなんで怨霊が残ってるんだろう。新地獄の獄卒の怠慢なのかしら?

 

「だってさあ。人間ってあなたは見たことないと思うけど、実は地上の生き物なのよー?」

 

新地獄のことはさておき、現在の地底は妖怪の中でも嫌われている者達の楽園となっている。鬼はいわずもがな、入口の時点で病を撒き散らす土蜘蛛が、その他にも余りにも嫉妬深い橋姫や(旧都の近くではないけど)問答無用で船を沈めにかかる船幽霊などが勢揃い。要するに、人間なんているわけがないってこと。

そもそも、昔に地底と地上の間に不可侵協定が結ばれてたとか。なければ私も地上に出て人間を襲いつづけられてたのにね。

 

「そもそもどうやって判断したのかしら。……そうなの?あの鬼がねぇー。彼女の目が節穴じゃなければ本当なのかしらね」

 

つまり、本当だということ。鬼が嘘を吐くことは無いし、目が腐っているはずもない。そもそもこの子たちは遠巻きに見てただけなんだから、誰かに騙されているということはない。

それにしても、そんなに遠くまで声が聞こえるなんて、鬼の声量はすごいわー。幽谷響って実は鬼だったりする?

 

「うーん、不可侵協定って何だったんだろ?……どうするのって、決まってるじゃない。久々の人間よ?妖怪の本分を果たしに行くのよ」

 

うまくいけばそいつを地霊殿のエントランスの飾りにでもできるかも。

といっても、死体とくれば火車のお燐が黙ってないだろうし、そもそも、少し前にスペルカードルールとやらが施行されている(数年前に紙だけ机の上に置いてあった)。

あれを地底に広めたのは残念ながら私なので、やっぱり無理かもしれない。

妖怪の賢者が定めたらしいルールなのだ。さすがにそれを破る気までは無い。

 

「はあ。心配してくれるのはいいんだけど。え?あの鬼が本気で戦ってるわけ無いわ」

 

初めての相手だから不安になってるみたい。他の妖怪たちとは違って、裏表のない動物たちはやっぱり素直で良い子達だわ。

その相手がただの人間っていうのがちょっと情けないけれど。

たまに私が怪我をして帰ってきても、「ああ、また喧嘩したんですね」って心配してくれないくせに。

 

ちょうど今やってた仕事に飽きてきた所だったし(仕事をしたいときなんて無いけど)、ちょうどいい。身体を動かすほうが好きだし、滅多にない(どころか地底に来てから初の)イベントなんだから、関わらないと損よね。

 

「それじゃあ早速行ってくるわねー」

 

ペットたちの頭とか顎とかを撫で、ついでに今やってた仕事を押し付ける。まだ妖獣ですらない子たちだから、なんにもできなさそうではあるけど。

 

 

()()()()()()()()を被り、今朝起きたら()()()()()()()()()()()()右手の包帯の具合を確認する。私ももちろん妖怪だから、もう昨日の怪我は治っているけど。

 

 

あ、もう一つやることを忘れていたわ。

 

何枚か白紙を引っ張り出し、書き置きを作る。今いる私の部屋以外にも、何箇所かの部屋に置いておかないとね。

……読んでくれるといいけど。残念ながら、確認はできない。

 

「それじゃあ、行ってきまーす」

 

今度はペットに向けてではなく、誰もいない空間に向けて喋る。

 

 

行ってらっしゃい、という返事の声は聞こえなかった。

 

 


 

 

「あー!ようやく見つけたわー!」

 

書き置きまでして意気揚々と出発しようとしたというのに、結局私はまだ地霊殿にいた。

玄関まで来たところで、何匹か打ちのめされた妖獣たちを発見した。

どうやら、紅白の目出度い格好をした不審者がもう地霊殿に入り込んでいたらしかった。そいつが行った方向を聞いてみる(見てみる)と、それはちょうど私が来た方向と真逆。こっちに来てくれれば早かったのに。

 

地霊殿は、住民の数(ペットは除く)に対して、あまりにも大きい。

そのせいで、侵入者の人間に追いつくまでそこそこ時間がかかってしまった。人間のくせに無駄に速すぎるわ。

 

 

「あなたがペット達が言っていた人間ね?生きてるのを見るのは久々だわー」

 

何よあんた、と当たり前の事を思っているのが見える。

 

「ようやくお出まし?あんたのペットならちゃんと躾けなさいよ」

「あら、妖怪のペットが人間を襲うのは当然じゃないかしら?」

 

猫の事…つまりお燐の事を特に意識しているみたい。お燐には先に会ってたようね。

 

「こういうときにお燐は褒めておいたほうがいいのかしら?それとも主人にすぐ知らせなかったことを叱るべきかしら?」

「私の邪魔をしたことを叱っときなさい。そんなことより、訊きたいことがあるんだけど」

「へー、あなたが本当に訊きたいと思ってるようには見えないけどね」

 

心の中を見るに、この人間…霊夢とやらは地上の妖怪に唆されてここまでやってきたらしい。今の地上では、人間と妖怪が仲良く暮らしているのかしら?

 

「そもそもなんでここまで来させられたのかもわかってないんでしょ?」

「まあそうなんだけど……」

 

なんかもう面倒くさいやつねって思い始めているわね。割と好戦的みたい。

 

「……って待ちなさい。なんで上にいるやつに行かされてるって分かるのよ?」

「そんなの簡単でしょ。顔に『私は妖怪の使い魔です』って書いてあるんだもの」

「そんなわけ…無いとも言い切れないわね」

 

そんなわけないのにね。……って、この人間は妖怪の賢者に命じられて来たんだ。なんで地底に人間を通じて干渉しようとしているんだろう?

 

『霊夢。恐らくそいつは覚妖怪。心が読める妖怪よ。長話は無用よ』

 

あら?人間近くの珠から声が聞こえてきたわ。この声が妖怪の賢者……八雲紫みたいね。もう少しおちょくろうと思っていたんだけど、もうネタばらしされちゃった。

 

「心を読む?それって……」

「『どういう事?』ね。簡単よ。あなたの考えていることはすべてお見通しってこと」

「へえ、会話いらずなのね。便利ねぇ」

 

長話は無用ってそういう意味だったのかしら…って。そんなわけないのに。この人間、ここまで来れる実力はあるのに、頭の中はお花畑みたい。

 

「だからって、すぐ私が答えてあげるわけないじゃない。……地上の妖怪の心は遠すぎて読めないわね。でも、あなたも同じ意見でしょ?」

『全く。これだから頭の中だけもう春になってるって言われるのよ』

 

賢者も呆れるほどだとは。この人間、そういう意味でも意外とすごいのかもしれない。

 

『それで、貴方かしら?地上の間欠泉を止めることができるのは』

「間欠泉?特に知らないけど……」

 

ちらりと第三の目で人間の心を覗く。どうやら、この人間の住んでる神社の近くで怨霊とともに間欠泉が湧き上がっているらしい。温泉自体はありがたいって。怨霊もいるというのに、図太いわね。

間欠泉だけならともかく、怨霊もいるなら確かに関係ありそうね。

 

『そんなわけ無いでしょう?貴方は地霊殿の主なのでしょう』

 

そういえば直接賢者と会ったことってあったかしら?私のことを知ってるかどうか微妙。賢者といえども心を読まれたくないのか、基本的に紙を介してやり取りをしているから、地底の現状については詳しくないのかもしれない。

 

「……そうよー。私は古明地()()()。この地霊殿の主よ」

 

 

『おいおい、嘘は良くないぞー』

 

あれ?珠からまた別の声が聞こえる。なんか聞いたことがある声のような気がする。

 

「ちょっと。私抜きで話を進めないでよ。とりあえず、こいつはなんなのよ?」

『紫は会ったことなかったか。今霊夢の前にいるのは、古明地()()()。主の妹の方だよ』

 

私のことも知ってる?地底から地上に行った妖怪なんて、ほぼゼロと言っていいくらいなんだけど。……例外といえば。

 

「ひょっとして、いつの間にか居なくなってた鬼かしら?」

『御名答。さっき紫も少し言ってたけど、地上がちょっと厄介なことになってるんだ』

 

地上に行った鬼、伊吹萃香であれば、確かに私たちのことは知ってるか。とはいえ、居なくなったのもだいぶ昔だったから、それ以降のことは殆ど知らないはず。

 

「ふーん。でも間欠泉とやらについて知らないってのは本当よ」

「それなら知ってる奴を教えなさいよ」

「『そんであんたもろともボコボコにしてあげる』、ねぇ。こんな血の気の多い人間は初めてだわ。胃もたれしそう」

 

やっぱり人間をおちょくるのも楽しいわね。恐怖は全く感じていないのが少し残念だけど。

……あら、もう我慢出来なくなったみたい。ちょっと話しただけでもう手が出そうになってるなんて。

 

 

「……紫、萃香?こいつ話にならないわ。なんか話したいんなら、一回ボコボコにするからその後にしなさいよ」

『そうね……萃香の言う通り、地底一の嫌われ者っていうのを甘く見てたわ。もう倒しちゃいなさい』

『だろ?姉の方だったらもう少し話が通じたんだけどなあ。心を覗かれながら戦うのは辛いだろうが頑張れよー』

「言われるまでもないわよ」

「『手負いの妖怪風情が巫女に勝てるわけないでしょうが』って思っているみたいだけど、残念ながら完治してるわよー」

 

今朝右手に巻かれていた包帯。ちょっと身体の何処かを怪我したぐらいでも、気づいたら包帯が巻かれていることが多い。外しても、時間があまり経ってないとまたいつの間にか巻かれているから、私はあまり解くことはない。

それはともかく、もうすぐ勝負が始まりそう。でも、それはそれで楽しいわね。

 

 

「ふん。性格悪い上にファッションセンスもないなんて、程が知れるわね。その性根を叩き直してあげるわ!」

「あら、お喋りはもう終わりでいいのね?まあいいわ。私はお姉ちゃんと違って、身体を動かすのも好きなの。心も身体も、完膚なきまで砕いてあげるわ」

 

人間が札や変な棒と珠を構える。それに応じて、私もスペルカードを宣言する。

 

「ふふ。私に会えて良かったわね。あなたの恐怖の記憶(トラウマ)、もう一度体験させてあげる!──想起『テリブルスーヴニール』」

 

レーザーとともに、薔薇をモチーフにした弾幕を解き放つ。まずは様子見、というより準備段階。この程度で倒れるなんてもちろん思ってないけど、このスペルにはそれ以上の意味がある。

 

……どうやら、賢者と鬼の弾幕を思い出しているみたいね。元が元だから再現できるかはわかんないけど、それを使うとする。

 

「うふふ。もう、あなたの現在だけでなく、過去までが見えるの。あとは未来だけだけど、そんなことは私の3つの目で見るまでもないわ!──想起『二重黒死蝶』」

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「ここまでだなんて……!!──想起『濛々迷霧』」

 

弾幕の再現は頑張って続けた(さすがに自分が大きくなるのとかは無理)けど、それらのスペルは全部突破されちゃった。

人間のくせに、時々瞬間移動とかしてないかしら?本人も気づいていないみたいだけど、そういう無意識な行動をされると困る。

 

無意識というのは、私のような覚妖怪とは相性が極端に悪い。

 

新たなスペルに移るたびに、悪感情を3つの目で感じられたのは良かったけどね。

でも、私も結構疲れてきた。あともう一枚ぐらいが限界……とはまでは言わないけど、これ以上はやりたくない。巫女の方は疲れてはいるものの、まだまだ動けそう。あの鬼達に認められているだけある。

 

 

程なくしてこのスペルも破られる。最後の記憶は何を引き出そうかしら。

 

 

「おーーーーい!……ふう、やっと追いついたぜ」

 

あら?巫女の後ろから誰かがやってきた。見た感じ人間みたいだけど、特にペットから話は聞いていない。

……出発が遅れてなければ、とか鬼に足止めされてなければ、とか考えてる。どうでもいいわ。

 

そして巫女の方もすぐ気づいたみたい。あの白黒の人間は魔理沙というらしい。

……ちょうどいいわね。最後はこれにしよう。

 

「途中観戦しに来たところ悪いけど、これで終わりにするわ!──想起『マスタースパーク』!」

 

残りの妖力を胸の前に溜める。そして、巨大な光線として解き放った。

 

 

 


 

 

 

「強かったわー!でもやっぱり人間を襲うのっていいわねー」

 

結局、最後のスペルも破られた。何が何でも勝たなきゃいけないわけじゃないし、珍しいうえに強いやつと闘えたから私は満足。

 

「あ、あとから来た魔理沙とやらはもう少し待っててね。『あんたがいるとまたややこしくなるわ』ってこの巫女も思ってるわ」

「あんた最後の最後まで……まあ癪だけどそのとおりよ。魔理沙はちょっと待ってなさい」

「ちぇっ。ようやく追いついたというのに、また待ちぼうけかよ」

 

あら、意外と聞き分けがいい。魔理沙のほうは地上の魔法使いに指示されてここまで来たみたいね。

 

『いやぁ、私達の弾幕を再現したのか。なかなかやるねえ』

『それはともかく。貴女も霊夢と戦えて満足したでしょう。そして負けたのだし、貴女が知らないにしても、心当たりがありそうな人を教えてくださる?』

「だから間欠泉は知らないって言ってるじゃん」

 

間欠泉にこだわりすぎね。問題は怨霊の方でしょうに。

 

「はあ。ここまで来て無駄足だったわね」

『まだ無駄と決まったわけじゃないだろう?こいつには姉がいるんだ。こいし、姉の方に案内してくれ』

 

……その言葉を聞いて、一瞬表情が固まる。やっぱりそうきたか。

 

「残念ながらそれはもっとできないわね」

 

二つの意味で。

 

『……霊夢、もう少し痛めつけてやりなさい』

「『言われなくても』、じゃないわよ。貴女たち、私が覚で良かったわね。本当に解決したいのは怨霊の方なんでしょ?ならそっちの心当たりを聞くべきよ」

 

つくづく便利な能力だ。もしも私が心を読めなかったら、最悪賢者まで乗り出してきてたかもしれないわね。

 

「あー、そういえばそうなんだっけ」

『うーん、覚との会話なんて遠距離からでもしたくないわね……じゃあ、怨霊についての心当たりを教えてくださいな』

 

私たち覚と会話するなら、嘘と真実をコントロールできるのは覚のほうだけだ。嘘を言えるのも、真実を隠すのも全てが私の自由。

 

「そうねぇ。そっちなら心当たりがあるけど……もう貴女たちは会ってるわ」

「もう会ってる?じゃあ鬼の方だったのかしら」

『いやいや、勇儀が嘘つくわけないだろうが』

「そっちじゃなくて、猫の方よー」

『猫……なんで怨霊の心を読める貴女や姉じゃなくて、そっちなのかが気になるわね』

 

まあ私は最近怨霊の管理をあまりというより全然やってないからね。

 

「だって、彼女はただの猫じゃなくて、火車なんですもの。怨霊と会話できるらしいから、もう管理は任せっきりでいるわー」

「さっきの猫ねえ。……魔理沙、あんたここまでで猫に会わなかった?」

「なんだよ、待ってろとか言ってたくせに。まあそうだな、私が猫と認識できそうなやつには会ってないな」

 

巫女がこっちを見てくる。魔理沙はよく嘘をつくから、私に確認してほしいみたいね。

ちょっとからかってあげようかしら。

 

「いいえ、途中で見かけたけどただの猫だったから放っておいたらしいわね」

「魔理沙……異変解決ぐらい真面目にやれないのかしら」

「は?私は嘘ついてないぞ」

「そりゃあ、嘘ついたのは私だからね」

「はあ?あんた真面目に心読みなさいよ」

 

心を読めって言われる日が来るなんて思わなかったわね。まあいいや。

 

「嘘をつくのは覚妖怪の特権よ。それで、お燐だけどよく中庭の方に行ってるから今はそっちにいるんじゃないかしらね」

「それは本当なのよね?」

「本当本当。どうせ貴女には判断できないだろうけど、地上の鬼に誓ってもいいわよ」

『誓われた』

「なら居なかったらどうしてやろうかしら」

 

一応本当のことなんだけどなー。あの穴の奥で何やってるかまでは知らないけど。

 

「今いるかまでは知らないわ。とりあえず行ってみればいいじゃない」

「やっぱり姉の方にも訊いて見たほうが……」

「それは絶対ダメ」

 

というか無理ね。

 

『強情だなあ。まあ霊夢、中庭に行ってみるしかなさそうだぞ』

『火車は確かに霊を運ぶ猫の妖怪。さっきも出会ってるし、信憑性はありそうね。そちらに行ってみましょう』

「はいはい。じゃあそうするわ。魔理沙、待たせたわね。その嫌な奴と会話してていいわよ」

「おいおい、こんな嘘つきと二人っきりにするのかよ」

 

魔理沙がそういうのにも関わらず、巫女の方はさっさと行ってしまった。ちょっと薄情ね。

 

「まあいい、いつ()()()包帯を巻いたのかは知らんが戦いで傷ついている手負いの妖怪に負ける気はしないな」

 

……両腕?右手だけだったはずだけど……。まあいいか。

 

「うーん、貴女とまた遊ぶのもいいけど、ちょっと疲れたわ。別にこのまま巫女の方を追いかけてもいいわよ。地上のお友達も、目的はさっきの巫女と同じなんでしょ」

『私たち、まだ喋ってないわよね?霊夢から聞いたのかしら』

『……いや、さっきの様子で検討がついた。こいつは多分覚妖怪。人の心を見通すことができ、地底で最も嫌われてる妖怪だと聞いたわ』

 

さっきから嫌われてる嫌われてるって。失礼しちゃうわ。まあ事実なんだけど。残念ではない。

あと、こっちは魔理沙の周りの人形から声が聞こえる。遠くから会話するのが今のトレンドなのかしら?

 

「うへぇ、じゃあ一方的に嘘をつかれ放題じゃないか」

「別に貴女もついていいわよ。地上の二人には黙っておいてあげるわ」

「おお、それは良いな。私だけはお前のことを好きでいてやろうかな」

『何バカなことを言ってるの。そんなことよりも、早く怨霊のことを解決しないと』

『貴女も一応魔法使いなんだから。魔女としては巫女なんかには負けてほしくないわね』

 

なんで二人も来たんだろうって思ってたけど、そういうことか。協力すればいいのに、変な対抗心が確かにあるみたい。

 

「ああ、そうだな。それじゃあ中庭に向かうとするか」

 

早速嘘ついてる。怨霊のことは巫女に任せて、この地霊殿に珍しいものがないか探そうと思ってるわね。

冗談のようではあるけど、それは普通に困るな。何も言わなかったら本当に(ちょっとだけとはいえ)家捜しするつもりみたい。

 

『えーっと、名前も聞いてなかったけどとりあえず貴女に感謝しておくわ』

『覚妖怪に感謝する日が来るなんてね。さっさと解決しちゃいましょう』

「もっと感謝させてあげようかしら?魔理沙は中庭じゃなくてこの地霊殿を探索しようとしてるみたいよ」

『……パチュリー、さっきの言葉訂正したほうがいいわね。魔理沙は魔法使いじゃなくて盗賊(シーフ)だったわ』

「おいおい、さっきと話が違うじゃないか。やっぱりお前のことは嫌いだな」

『早く解決しなきゃいけないって何度言えば分かるの?本当に、温泉が湧いてよかったー、で済む話ではないのに』

「はいはい、行けばいいんだろ行けば」

 

ちぇーケチだなあ……じゃないわよ。そりゃあ物を盗まれそうになったら言うでしょ。

 

 

 

そして、魔法使い二人と盗賊の愉快な三人パーティも中庭へと飛んでいった(変な方に行ってないのも確認できた)。

 

それじゃあ、私は休みたいからちょっと一眠りでもしようかしら。でも人間たちが帰ってくる(実際に帰ってくるかは別)あたりにはまた確認しにこないと。

 

やられてたペット達は……そのままでいいか。基本的に放し飼いだし、妖獣なんだから大丈夫でしょ。慰めてほしかったら私の部屋に来てもいいよ。

 

 

それにしても、人間を襲っているとやっぱり昔のことを思い出しちゃうな。……まだ、()()()()()()()()()()()()()()()()頃。

 

「お姉ちゃんも一緒にやってくれたらよかったのに」

 

心を読めるなんて、こんなにも良いことなのに。

ぼそりとこぼしたこの言葉は、虚空へと消えていった。




とりあえず鈴奈庵から読み直そうと思います。
誤字とかあったら報告してくれると助かります。
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