DISSIDIA FINAL FANTASY Brave Soul 作:蒼牙王
OP:Falco-ファルコ-(うえきの法則OP)
東京国際展示場のメイン会場。そこでは『FINAL FANTASY』の熱戦が繰り広げられていた。
その煌びやかな熱狂の陰で、正面入口から影のように忍び込む一群があった。総勢十六名の女性たち。人間の枠に収まらず、耳を澄ます猫や狼の獣人、精霊の気配を纏うエルフ、小柄なドワーフまでもが勢揃いしている。
「ここに零夜君がいるのは確かみたいね」
「うん。FINAL FANTASYのキャラたちが出演すると聞いたけど、まさかガチで出るなんて……」
デニムのオーバーオールを無造作に着こなしたオールラウンダー、藍原倫子が鋭い視線を会場へと向ける。その隣で、しなやかな毛並みを持つシルバーウルフの獣人、エヴァが険しい表情を浮かべた。
彼女たちこそ、零夜と同じく超人的な戦闘能力を誇る最強軍団『ブレイブエイト』の面々だ。
憧れのモデルレスラーである倫子を筆頭に、元アイドルレスラーの有原日和、ツンとした仕草を見せる猫獣人の格闘家アイリン、腕自慢のエヴァ、拳を握りしめる竜人の姉御肌マツリ、ドワーフの小柄なメカニック・エイリーン、そして知識豊富なエルフの医師トワ。
この選ばれし八犬士の七人に加え、心強いサポート陣――フセヒメの血を引くミノタウロスのベル、彼女に仕えるオートマタの双子アズサとカルア、零夜専属のメイドロボ・メイル、魔界の亡国より来た魔族の姫カミラと従者のタヌキ獣人ペルシャ、元宿敵の良心セツナ、幼馴染の武道家・桑原恵、そして元歌姫のハルカまでが名を連ねる。まさに百花繚乱だが、一歩立ち向かえば誰であれ叩き伏せられる実力派揃いだ。
そのとき、アイリンの三角耳がぴくりと跳ねた。ピンと張り詰めた緊張感が彼女の瞳を鋭く染め上げる。
「地下の方で何か動きがあるみたい。皆、私についてきて」
即座に頷いた十五人が、足音を消して一斉に地下階段へと滑り込む。熱狂する大会の裏側で、蠢く悪意を察知してのことだった。
*
ひんやりとした冷気が漂う地下通路。突き当たりに立ち塞がったのは、重厚な鉄の扉だった。重々しく施錠され、到底力任せには開きそうにない。
「鍵が掛かっているわね。よっと」
ベルがそっと繊細な指先をドアノブへ滑らせ、微かな魔術の光を灯す。カチリ、と硬質な音が響き、強固なロックがあっけなく解除された。
「はい。これで楽に入れるわ」
「「流石です、ベル様!」」
余裕の笑みを浮かべてウインクしてみせるベルに、アズサとカルアが目を輝かせて歓声をあげる。
「さっ、今の内に!」
セツナの短い合図に従い、滑り込むように室内へ入る。そこには無数の怪しげな機械群が整然と並び、不気味な動作音を立てていた。異様な実験室の光景だ。
「凄い……こんなにも機械があるなんて……何か利用しているのかな?」
メカニックのエイリーンが目を丸くして機械群を見上げる。
「分からないわ。けど、この様子からすれば何か裏があるのは確実ね……」
カミラが真剣な眼差しでそう呟いた直後、通路の奥から切迫した悲鳴が響き渡った。
「向こうの方から聞こえている……悲鳴からすれば、とんでもない事をしているのは確実だ」
マツリが不穏な空気を感じ取って低く唸る。メイルの無機質な瞳が光を明滅させた。
「可能性があるとすれば……脱落者を合体させてモンスターを作っている可能性があり得ますね……」
あまりに狂気的な推測に、全員の背筋に冷たいものが走る。そのとき、ハルカが何かに気づき、顔色を失って身を乗り出した。
「お姉ちゃんたち、あれを見て!」
「どうしたの、ハルカ……って、これは……!」
「まさかこんな事をしていたなんて……」
ハルカの指差す檻の奥を凝視したカルアとアズサが息をのむ。倫子たちも激しい衝撃に言葉を失った。
そこにいたのは、本戦で敗れたはずの出場者たち――バーのマスター・神川の手によって異形へと変貌させられた、単眼のサイクロプスを思わせる巨大な合体モンスターだった。脱落者たちが悪夢のような実験台にされていたのだ。
「ヤバい奴じゃない! すぐにここから離れないと!」
「ペルシャの言う通りね。皆さん、急ぎましょう!」
尻尾を逆立てたペルシャが悲鳴交じりに声を上げる。恵が素早く状況を判断し、退出を促した。全員が深く頷き、一刻も早くこの不気味な地下室を後にする。危険な真実を、メイン会場で戦う零夜に知らせるために。
その脱出劇に気づくこともなく、神川は暗闇の中で檻を見上げていた。うごめく醜悪な肉塊に目を細め、歪んだ悦楽の笑みを浮かべる。
「フフフ……素晴らしい。これぞ敗者たちの怨念とデータを融合させた、究極のキメラモンスターだ。これほどの最高傑作が完成すれば、計画の最終段階も完璧に遂行できる……。決勝の舞台がどうなるか、今から楽しみでならないよ」
低い掠れ声でそう呟き、己の野望に心酔する神川。だが、その愚かな計画が零夜たちの手によって打ち砕かれる瞬間は、確実に近づいていた。
*
地下を抜けたブレイブエイトの面々は、メイン会場へと続く通路を風のように駆け抜けていた。
「急がないと! あの様子じゃ、零夜君たちがいるメイン会場にも、いつ何が起きてもおかしくないわ!」
「はい、あんな気味の悪いモンスターを作ってるなんて……主催者連中は完全に頭がおかしいです!」
先頭を切る倫子が鋭い眼光で前方を見据え、激しく足音を響かせる。その横で日和が肩を揺らし、荒い息を吐き出しながら同意した。
「まったく、バトル大会の裏でそんな陰謀を企むなんて許せないぜ。アタイも黙っちゃいられないな!」
「地下の空気は最悪だったけど、ここからならメイン会場はすぐそこよ。零夜に早く知らせないとね」
マツリが不敵に鼻を鳴らし、バキバキと拳を鳴らす。アイリンがぴくぴくと耳を動かし、警戒を怠らずに畳みかける。
「はい、私のセンサーでも、会場から強力なエネルギー反応が複数確認されています。急ぎましょう」
メイルの静観な忠告を受け、全員の表情が一段と引き締まる。迫り来る危機から仲間を守るため、十六人はスピードをさらに上げた。
*
一方、熱狂渦巻くメイン会場のステージ上。
第一試合を圧勝で飾った零夜たちの余韻が残る中、山村の司会アナウンスが会場全体に響き渡った。
『お待たせいたしました! 続いては準決勝第二試合、間宮美桜チーム対八重樫碧チームの対決を開始します! 両チーム、指定のエリアへ転移してください!』
瞬時に美桜たちの身体が眩い光に包まれる。美桜はぎゅっと拳を握りしめ、頼もしい仲間たち――クラウド、スコール、ティーダを順に見上げた。
「いよいよですね……! みんな、よろしくお願いします!」
「ああ、手短に終わらせるさ」
「足を引っ張るなよ」
「オレたちなら絶対に勝てるって! 行こうぜ!」
頼もしい言葉に背中を押され、美桜たちは光の粒子となって転移していく。
観客席からその背中を見送る零夜だったが、胸の奥で渦巻く不快な胸騒ぎを拭いきれずにいた。皮膚を刺す空気が重く、冷ややかに澄んでいる。
(先程から嫌な予感がする……これはどうやら只事ではないだろうな……)
立ち込める暗雲の気配を肌で感じながら、零夜は静かに拳を握りしめていた。
ED:こころの惑星〜Little planets〜(うえきの法則ED)
今回の豆知識
地下室では危険なところがいっぱいあるので、むやみに近づくのはアウト!
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