DISSIDIA FINAL FANTASY Brave Soul 作:蒼牙王
OP:Falco-ファルコ-(うえきの法則OP)
薄暗く冷たい通路を抜け、零夜たちはマツリの案内で神川が潜む地下室へと足を進めていた。大会の敗者たちを無残にも合体モンスターの素材として取り込むなどという卑劣な悪行、一刻も早く叩き潰さなければならない。
「奴がモンスターを作っているとなれば、止めるしか方法はないみたいだな」
「その通りです、坊ちゃま。奴はこの大会を使ってとんでもない事をしています!」
通路の壁に響く足音に紛れ、前を睨み据えたまま低く呟いた零夜の言葉に、メイルが強く同意して補足した。しかし、その瞬間、隣を歩いていたティファがふと歩みを緩め、不思議そうな表情で零夜とメイルを交互に見つめた。
「ねえ、零夜。坊ちゃまって?」
首を傾げるティファに、零夜は少しだけ照れくさそうに頬を掻きながら答える。
「ああ。メイルは俺が小学生の頃にこの世界に不時着していたから、俺が面倒を見る事になった。その時から俺を坊ちゃまと呼ぶ様になっていたから」
「ええ。詳しい事については後ほど説明しますので」
メイルも優しく微笑みながら後に続いた。
ティファが小さく頷いて納得した直後、一行はついに目的の地下室へとたどり着いた。重厚な扉を開け放ち、警戒しながら中へと踏み込む。
途端、圧倒的な威圧感が肌を刺した。広大な空間の中央に、見上げるほど巨大な一つ目の怪物――サイクロプスが立ちはだかっていたのだ。その岩のような身体は不気味な青色に染まり、全身からドス黒い闇のオーラが絶え間なく溢れ出している。迂闊に近づけば命はないと、本能が警鐘を鳴らす。
「こいつがサイクロプスか。地下迷宮の時よりは強そうだな」
柄に手をかけながら零夜が鋭く呟く。その言葉にリノアも小さく頷いたが、彼女はすぐに訝しげに眉をひそめた。
「戦った事があるみたいだけど、神川は何処に?」
彼女の言う通り、黒幕であるはずの神川の姿が見当たらない。間違いなく、この薄暗い部屋のどこかに身を潜めているはずだ。
「姿をくらましているつもりか……。だが、これだけの気配を隠し通せるわけがない」
零夜は村雨とエクスカリバーの柄をしっかりと握りしめ、冷ややかな視線を周囲の暗がりへと走らせた。忍者の卓越した視力を持つ彼にとって、闇に隠れる敵を見つけ出すことなど容易い。
視線を奥へ向けたその時、巨大なコントロールパネルの背後から、乾いた不気味な拍手の音がパチ……パチ……と響き渡った。
「さすがは噂の零夜君だね。まさか、ここまでたどり着くとは感心したよ」
重く湿った闇の奥からゆっくりと姿を現したのは、純白の白衣を纏った神川だった。彼は片眼鏡の奥に冷酷な光を宿し、こちらを見下すような薄気味悪い笑みを浮かべている。
「神川……っ! 大会の敗者たちを弄び、あんな化け物に変えるなんて、あなたは一体何を考えているの!」
恵が悔しさに顔を歪め、小さな拳をわななかせながら怒鳴りつけた。しかし、神川は微塵も悪びれることなく、せせら笑うように肩をすくめる。
「何を考えている、か。愚問だね。我々『カオス』にとって、この世界を絶望と混沌に染め上げるのは至って自然な使命なのさ。この大会そのものが、強力な戦士たちの肉体と戦闘データを効率よく回収するための餌場にすぎなかったのさ」
神川の口から飛び出した耳を疑うような言葉と、「カオス」という衝撃的な組織の名。その重みに、ティファたちは思わず息を呑んだ。神川は白衣のポケットから小さな端末を取り出し、まるで自慢の作品を披露するように笑みを深める。
「敗者たちから吸い上げた絶望のデータと肉体を融合させたこの合体キメラ『サイクロプス』こそ、我が『カオス』の新たな尖兵となる最高傑作だ。君たちも、その素晴らしい実験台にしてあげよう」
神川が指をパチンと鳴らした。その乾いた音を合図に、禍々しい闇のオーラを纏った青いサイクロプスが、耳をつんざく咆哮とともに地響きを立てて一歩前へ踏み出す。その圧倒的な威圧感に気圧され、リノアやユウナは思わず後ずさった。
「カオス……だと?」
零夜の瞳に、静かで激しい怒りの炎が煌々と灯る。世界を影から脅かすその忌まわしい名を聞いた瞬間、彼の背後に控えるFINAL FANTASYの戦士たちやブレイブエイトの面々も、一斉に武器を構え、張り詰めた殺気を最高潮まで高め上げた。
「何処かで聞いた事はあるが、これ以上の好きはさせない。やるからには徹底的に倒すのみ! 行くぞ!」
「「「おう!」」」
零夜が気合の入った野太い声を響かせ、抜刀した村雨とエクスカリバーを眼前にクロスさせる。ティファたちも力強い声で一斉に応じ、眼前の巨大なサイクロプスへと決死の覚悟で立ち向かった。
「サイクロプスは目が弱点だけど、敗者たちを取り込んで強化しているわ。あの機械を破壊すれば、サイクロプスから敗者たちを吐き出す事が可能よ」
戦列の端で状況を分析していたトワが、神川の背後にある禍々しい機械をビシッと指差した。あの装置こそが敗者たちを怪物に縛り付けている元凶。あれを破壊して機能を停止させれば、囚われた人々を確実に救い出せるはずだ。
「よし! ここは俺、ティファ、リノア、ユウナで機械を破壊しに向かう! 倫子さんたちはサイクロプスを!」
零夜が迅速に役割分担を叫ぶ。だが、その指示を聞いた倫子、エヴァ、恵が即座に反発した。
「や! ウチも行く!」
「私も!」
「私も零夜が心配だから!」
彼女たちは武器を構えたまま、零夜にぴったりと張り付いて離れようとしない。強大な敵を前にして、どうしても彼をそばで守りたいという彼女たちなりの頑なな愛情表現だった。
「ちょ、ちょっと待ってください! 気持ちは分かりますが……って、人の話を聞けーっ!」
零夜が慌てて制止しようとするが、倫子は腕を組んでプイと顔を背けてしまい、エヴァに至っては零夜の腕にぴたりと抱きついて離れない。さらに恵も戦闘態勢のまま、譲らないとばかりに彼を鋭く睨みつけてくる。危機的状況にもかかわらず発揮される彼女たちのすさまじい圧に、零夜は思わず盛大に頭を抱えた。
「分かりました……強いのは確実ですし……もしかすると恵とティファなら良いタッグになりそうかも知れないな」
嘆息まじりに零夜が妥協案をこぼすと、恵がパッと顔を輝かせた。
「確かティファは格闘タイプね。じゃあ、私とティファで神川を倒しに行くわ。相手は手強いけど、私たちなら大丈夫だからね」
恵が自信満々に胸を張るが、ティファは不安げに眉をひそめた。
「大丈夫って……恵は強いの?」
いくら零夜の仲間とはいえ、あのような底知れない黒幕をたった二人で討つのはあまりにも無謀に思えたのだ。
「大丈夫。ブレイブエイトは零夜以外にも強い仲間が多くいるの。私もその一人だからね」
恵がティファの目を見据え、真っ直ぐで力強い言葉を返す。その揺るぎない覚悟に触れ、ティファは迷いを振り払うようにフッと微笑んだ。
「そうね……分かったわ。じゃあ、あの胡散臭い白衣の男は私たちで叩き伏せましょう!」
ファイターとしての鋭い闘志を瞳に宿すティファ。その頼もしい姿に、恵も嬉しそうに頷いて拳を強く握りしめた。
「これなら大丈夫だな。さて……」
仲間の連携が固まったことを確認した零夜は、再び表情を険しく引き締め、立ち塞がるサイクロプスを真っ直ぐに睨み据えた。
彼の視線の先で、青い巨体を蠢かせるサイクロプスがドス黒い闇のオーラを爆発的に噴き上がらせる。
「ガアアァァァ――ッ!!」
地下室のコンクリートを震わせるほどの怒号が轟いた。
「よし、布陣は決まった! 神川はティファと恵に任せる! 俺たちはあの機械を破壊して敗者たちを解放しつつ、サイクロプスの注意を引き付けるぞ!」
「了解です! 結界とサポートは私たちに任せてください!」
零夜が空間を切り裂くような鋭い声で最終指示を飛ばす。ユウナが杖を高く掲げて神聖な光の魔法を展開し、すぐさま後方から力強く応じた。リノアも魔導銃を構えて射撃態勢に入り、零夜の背中にはエヴァがぴたりと寄り添いながら鋭い眼光で敵を威嚇する。
「ふん、小賢しいネズミどもが……。このサイクロプスの絶望的な力の前に、まとめて塵と化すがいい!」
パネルの陰で白衣を翻した神川が、冷酷な嘲笑を浮かべながらキメラへ攻撃の合図を送った。
重苦しい空気が支配する地下室を舞台に、捕らわれた者たちの命と、世界の未来を懸けた激しい決戦の幕が、ついに切って落とされた。
ED:こころの惑星〜Little planets〜(うえきの法則ED)
今回の豆知識
恵は武道全般が得意なので、ティファとのタッグは相性抜群。二人のこれからに注目だ。
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