DISSIDIA FINAL FANTASY Brave Soul 作:蒼牙王
ガロとの戦いは激しさを増しているが、彼は零夜たちの連携の前に防戦一方となっていた。人数が多いのも原因であるが、何よりも力の差は歴然としている。こうなると勝負がつくのも時間の問題だ。
「ちっ! こうなったら禁忌薬だ!」
ガロは懐から怪しげな薬を取り出し、それを飲み込む。すると、彼の姿は人間から狼男となってしまった。戦闘不能になれば元に戻る仕組みとなっているので、後遺症は無いのだ。
「ふははっ、そうこなくっちゃな! 見た目が化け物になろうが、叩き潰し甲斐があるってもんだ! アタイはこういうのを待ってたんだよ!」
マツリは口元を三日月に歪め、歓喜に満ちた瞳をギラギラと輝かせながら猛然と突進する。そのあまりの戦闘狂っぷりに、後ろで見守っていたティファやリノアたちは思わず苦笑いを浮かべるしかなかった。
狼男へと変貌を遂げたガロは、全身の筋肉を膨らませ、凄まじい暴風と破壊的な衝撃波を伴う咆哮を放つ。
「グアアアァァッ! 竜人風情が生意気な……! その肉体を微塵切りにしてくれるわ!」
ガロが放った獣の超音波を含んだ一撃が地表を抉り、まともに直撃すればただでは済まない威圧感をもってマツリへと襲い掛かる。しかし、マツリは一歩も引くことなく、手にした重厚な盾をガッチリと構えて正面から受け止めた。
ガキィィン! と凄まじい金属音と衝撃が林道に木霊し、周辺の樹木がバキバキと吹き飛ばされる。だが、マツリの踏み込んだ足元は微動だにしない。
「効かねえよ、そんなんじゃ!」
盾で衝撃を完璧に弾き飛ばしたマツリは、一瞬の隙も作らずにそのまま懐へと飛び込み、手にした刀でガロの硬い毛皮を鋭く薙ぎ払った。
ザシュッ! と鮮烈な軌跡が描かれ、ガロの強靭な身体から鮮血が盛大に散る。
「ぐああっ……!? 馬鹿な、この強化状態の俺の防御を……!」
「甘いな。アタイらのチームワークと、この戦い足りない飢えをナメてもらっちゃ困るぜ!」
マツリの圧倒的な勢いに完全に気おされたガロの隙を見逃さず、零夜もまた神速の踏み込みで間合いを詰める。
「これで終わりだ、ガロ! クロスブレイド!」
「あがっ!」
零夜の村雨とエクスカリバーが鮮やかな二色の軌跡を描き、狼男へと変貌していたガロの急所へと強烈な一閃を叩き込んだ。
凄まじい衝撃波と共にガロは地面へと激しく叩きつけられ、巻き起こる爆煙のなかでついに力尽きる。眩い光の収束と共に、彼の姿は元の人間の姿へと戻り、そのままぐったりと意識を失って戦闘不能に陥った。
「ふう、これではっきり片付いたな。弱点さえ分かればこっちの物だ」
零夜が静かに二振りの刀を鞘へと収めると、背後から駆け寄ってきたユウナとリノアがホッと息を漏らす。無事に勝利して良かったと思っているのだろう。
「流石はマツリさん、頼もしいですね!」
「あはは、一瞬で決まっちゃったね」
ユウナたちの称賛に、マツリは得意げに胸を張ってふんと鼻を鳴らす。このぐらいは余裕と感じているのだ。
「これくらい当然だからな! さて、これで『闇の七人衆』の一人目は撃破したけど、残りはまだ六人いる。気を引き締めて先へ進むぞ!」
マツリの力強い言葉に全員がしっかりと頷き、軽井沢の奥深くへと続くアジトへ向けて、再び足並みを揃えて歩き出す。これで終わりではない。次に進むべきだと。
※
「ガロについては脱落ということで確定しましたね。まさか、彼の音の魔術であそこまで一方的にやられるとは驚きましたね……」
薄暗いアジトの作戦室。テーブルの中央に投影された立体映像のモニターを見つめながら、幻術と毒の煙を操る紅一点・シエルが、冷ややかな声音でぽつりと呟いた。
その言葉に、宮原が苛立たしげに舌打ちをする。
「ふざけやがって、あの間抜けが……。相手がどれだけ大人数でかかってきやがったって、幹部の一人があんなにあっさり沈むなんて面汚しだぜ」
「まあ、そう怒るなよ宮原。相手もただの烏合の衆ってわけじゃない。特にあのリーダー格の男……零夜の動き、そして妙に噛み合った連携力は侮れないということだ」
不敵な笑みを浮かべながら空間を歪める剣士・レイドが、指先で愛用の刃を弄びながら冷静に分析する。その傍らで、巨大な炎の竜を従えるゾルドが腕を組み、不気味に低く唸った。
「小細工ばかり弄するから足元をすくわれるのだ。次は俺の炎で奴らごと焼き尽くしてやろうか?」
室内にピリリとした緊張感が走る中、ひときわ重厚な気配を纏う男がどっしりと椅子に腰を下ろしていた。すべての統括者であり、最強の懐刀と呼ばれる『ゼノン』だ。
ゼノンは静かに目を閉じ、低い声で場を制するように告げた。
「そこまでにしろ。ガロが負けたのは事実だが、我々の優位が揺らいだわけではない。相手は数を頼みにこちらへ進撃してきている。各々が持つ特性を最大限に活かし、確実に息の根を止める。それが我々の任務だ」
統括者の重みのある一言に、宮原やゾルドも不承不承といった様子で口を噤む。
すると、部屋の隅でひときわ大きな巨体を揺らし、分厚い鉄板のような機械甲殻をガチャガチャと鳴らしながら、怪力男『バルガ』が立ち上がった。その顔には、獰猛で残忍な笑みが浮かんでいる。
「チッ、小難しい作戦会議なんて俺には似合わねえな。音だの幻術だの、そんな回りくどい真似をするからやられるんだよ」
バルガは全身を覆う重々しい機械甲殻を誇示するようにガシャリと拳を握り締め、一歩前へ歩み出た。今の話を聞いた以上は黙っていられず、自身が行かなくてはならないと判断しているのだ。
「ゼノン、次の迎撃は俺に行かせてくれ。俺のこの鉄壁の防御と、すべてを粉砕する怪力の前には、あんな大所帯の連携なんてただの紙屑と同じだ。一匹残らず叩き潰して、あのガロの無様な借りを返してきてやるよ!」
バルガの自信満々な申し出に、ゼノンはわずかに目を細め、静かに頷いた。
「いいだろう、バルガ。お前のその圧倒的な耐久力とパワーなら、奴らの前衛を粉砕するには最適だ。決して油断はするなよ」
「へっ、任しとけって!」
バルガは野太い笑い声を上げると、重い足音を響かせながら作戦室を後にする。
圧倒的な防御と破壊力を誇る二人目の刺客――バルガが、軽井沢の林道を突き進む零夜たちの前へと、ついに動き出し始めたのだった。
ED:君の中の英雄(機動戦士ガンダムAGE ED)
今回の豆知識
零夜たちに小細工は通じない。甘く見ると痛い目に!
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