DISSIDIA FINAL FANTASY Brave Soul 作:蒼牙王
OP:Falco-ファルコ-(うえきの法則OP)
会場の大型スピーカーから予選の開始宣言が高らかに響き渡ると、アリーナを覆っていた張り詰めた空気が一気に弾けた。参加者たちは皆、息を呑んでステージを見上げている。誰のパートナー枠から発表されるのか――誰もが真剣な面持ちで、期待と緊張に胸を鳴らしていた。
「まずは最初のキャラの予選試合。クラウドからだ! 勝てばこの人のパートナーだ!」
司会の声が轟くと同時に、会場中から地鳴りのような歓声が沸き起こった。トップバッターに選ばれたのは、絶大な人気を誇るクラウド。彼の予選ブロックには、熱狂的な女性ファンはもちろん、その強さに憧れる多くの男性ファンもこぞって名乗りを上げている。
だが、当の本人は大剣を背負ったまま熱狂する観衆を冷ややかに一瞥し、短く言い放った。
「興味ないね」
「おいおいクラウド、ファンの為なんだから我慢しろよ。では、転移させてもらいます!」
司会進行を務める山村が苦笑いで慌ててフォローを入れ、転移システムを起動させる。クラウドを指名した参加者たちは光に包まれ、瞬く間に戦闘用の別空間へと転送されていった。その激戦の模様は、会場上部の巨大モニターへ鮮明に映し出される。
「なるほど。クラウドは確かに人気が高いキャラで、女性ファンからも人気が高いのか……」
熱狂の渦から少し離れた場所で、巨大モニターを見上げていた零夜が、深く感心したように呟く。
その静かな声が直接届いたわけではないはずだ。しかし、ステージの上に立つクラウドが、不意に顔を上げながらこちらへ視線を向けた。無数の観衆の中からピンポイントで零夜の姿を捉え、何かを嗅ぎ取ったような鋭い眼光を放つ。
「どうしたの、クラウド?」
隣に控えていたティファが、彼の突然の反応を不審に思って小首を傾げる。だが、クラウドは零夜を真剣な表情で見据えたまま、低い声で彼女へ忠告した。
「いや、あの後方にいる男だが、お前のパートナーになる予感がする。奴は恐らく只者ではないだろう」
いずれ行われるティファの予選ブロック。そこで、あの男はただ勝ち上がるだけでなく、内に秘めた本当の姿を見せるはずだ――クラウドは確かな戦士の予感を抱き、静かに目を細めるのだった。
※
熱戦が続くいくつかの予選が終わり、いよいよティファのブロックへと番が回ってきた。
このブロックにエントリーしていた零夜は、小さく息を吐いて気を引き締める。静かに、しかし確実に闘志を燃やしながら、彼はゆっくりと前へ歩み出た。
「では、本当の姿を見せるか!」
零夜が気合いと共に叫ぶと、空間が揺らぎ、彼の姿が瞬時に戦闘衣装へと切り替わった。
新たに纏ったのは、青を基調とした本格的で機能的な忍者衣装。両手には、神々しい輝きを放つ聖剣『エクスカリバー』と、冷たく妖しい光を宿す妖刀『村雨』が握り込まれている。どちらも零夜の体術に合わせて取り回しの良い、忍者刀の長さに調整された特注の二刀流だ。
その只ならぬ風貌と滲み出る覇気に、他の参加者たちは思わず息を呑み、ジリッと後ずさった。
「お、おい……あれは東零夜! ハルヴァスの勇者で八犬士の一人、そしてプロレスラーの……!」
「こ、これ、俺たちが負けるんじゃないか!?」
畏怖と焦燥の声がさざ波のように広がる。だが、彼らの動揺を待つことなく、無情にも戦いの開始を告げるゴングが鳴り響いた。
速攻で終わらせる。短期決戦を狙う零夜は、低く重心を落とすと同時に、爆発的な力で地を蹴った。
「行くぞ!」
踏み込んだ瞬間、足元から土砂を跳ね上げるほどの衝撃波が巻き起こった。一流のプロレスラーとして極限まで鍛え抜かれた常人離れした足腰が、凄まじい推進力を生み出している。
宙を裂いて進む彼の姿は、まるで一筋の黒い閃光。参加者たちが瞬きをする間すら与えず、零夜はあっという間に彼らの懐へと深く入り込んだ。
「なっ……速すぎるっ……!」
その神速に、かろうじて反応できた者はごくわずか。だが、反応できたところで防ぐ術など皆無だった。
零夜は右手に握る村雨の峰で迫り来る攻撃を流麗に受け流し、ガラ空きになった胴体へ、左手のエクスカリバーの柄を容赦なく叩き込む。プロレスの重い打撃技を応用した、正確に鳩尾を打ち抜く強烈な一撃。まともに喰らった参加者たちは、くぐもった呻きを上げて次々と昏倒していく。
「うわぁっ……!」
「こ、これがプロレスラーの……いや、ハルヴァスの勇者の力なのか……!」
バタバタと倒れ伏すライバルたちを尻目に、零夜の猛攻は決して止まらない。
圧倒的なスピードに、忍者としての卓越した体術と華麗な身のこなしが完全に融合していた。一瞬で死角である背後へ回り込み、村雨の背討ちであっさりと相手を無力化していく。その戦いぶりは冷徹そのものだが、流れるように無駄のない動きには、観衆の目を釘付けにするプロレス特有のエンターテインメント性すら宿っていた。
気づけば、リング上に残された参加者たちの顔には明らかな恐怖が浮かんでいた。武器を握る手は震え、一歩、また一歩と無意識に後退していく。彼らはもはや、零夜の纏う圧倒的な気迫に呑まれ、完全に戦意を喪失していた。
「これ以上、無駄な抵抗はしない方がいい。アンタらも怪我をしたくはないだろう?」
二振りの刀を静かに下段へ構えたまま、零夜が冷たい声で降伏を促す。その言葉に込められた威圧感に耐えきれず、残りの参加者たちは次々と膝をつき、力なく武器を床へ落とした。これで勝負アリだ。
「そこまで! 勝者、東零夜!」
審判の張りのある宣言と共に、ブロック終了を告げるゴングが会場に鳴り響く。
一瞬の静寂。直後、アリーナは割れんばかりのどよめきと熱狂の渦に包み込まれた。モニター越しに観戦していた者たちは皆、零夜が魅せた規格外の強さと鮮やかな手並みに、ただただ言葉を失っていた。
「……すごすぎるよ、あの人。本当に、一瞬でブロックを制圧しちゃった……」
ティファは大きく目を見張り、ぽかんと口を開けたままモニターから目を離せずにいた。その傍らで、クラウドは腕を組んだまま、どこか満足げに、そして自分の直感に対する確信に満ちた表情で深く頷く。
「言っただろ。あいつは只者じゃない。……どうやら、お前のパートナーはあの男で決まりのようだな」
クラウドの静かな言葉に、ティファはハッとして自分の胸元に両手を当てる。手のひら越しに伝わる、トクトクと脈打つ不思議な高鳴り。彼女はその胸の熱さを感じながら、モニターの中で涼しい顔をして佇む零夜の姿をじっと見つめ続けた。
やがて敗者たちが肩を落とし、強制転移によって次々と会場外へ退出させられていく中、戦いを終えた零夜は忍者姿のまま、光に包まれて元のメイン会場へと帰還を果たした。
「今から各ブロックの勝者はパートナーと交流を深めてください。では、ステージにいる皆さんはそれぞれのパートナーへ」
山村の弾むようなアナウンスを合図に、待機していたFINAL FANTASYのキャラクターたちは、決まったばかりのパートナーの元へと一斉に歩みを進める。クラウドがため息をつきながら女子高生の元へ向かうのを横目に、ティファは真っ直ぐに零夜の元へと小走りで向かった。
「……あ、あの!」
少し緊張の混じった弾む声を上げながら、ティファは忍者衣装のまま凛と佇む零夜の前にピタリと止まる。
視界の隅では、パートナーとなった女子高生からキャーキャーと黄色い歓声を浴びたクラウドが、「興味ないね」とそっけなく返しつつも、どこか面倒臭そうに対応しているのが見えた。
ティファは改めて、目の前に立つ零夜の顔を真っ直ぐに見上げた。
腰に佩いた忍者刀サイズのエクスカリバーと村雨の二刀流。間近で見る本格的な忍者衣装はさらに迫力を増しており、彼の全身から立ち上る只者ではないオーラに、思わず圧倒されそうになる。それでも、彼女は背筋を伸ばし、花が綻ぶような微笑みを浮かべて頭を下げた。
「その……さっきの戦い、本当にすごかったよ。あんなに素早くて強いなんて思ってなかったから……。私、ティファ・ロックハート。これからよろしくね、零夜」
彼女の偽りない真っ直ぐな言葉を受け、零夜の顔から戦士の険しさが消え、フッと気さくな笑みがこぼれた。彼は抜身のままだった二振りの忍者刀を、目にも留まらぬ鮮やかな手並みでカチャリと鞘に納めてみせる。
「俺は東零夜、ハルヴァスの勇者であり、プロレスラーでもあるからな。これからどんな強敵が待ち受けているか分からないが、俺たちなら絶対に勝ち進める。やるからには精一杯立ち向かおうぜ!」
プロレスラーらしい、底抜けに明るく自信に満ちた声色。その力強い響きに触れた瞬間、ティファの胸の奥で燻っていた緊張や不安は、春風に吹かれたようにスッと霧散していった。代わりに込み上げてきたのは、これから始まる彼との共闘に対する、ワクワクとした熱い高鳴りだった。
「うん! 私も精一杯サポートするから、一緒に勝ち抜こうね、零夜!」
二人が互いの目を見つめ、力強く握手を交わしたその時。会場の大型スピーカーから、次のステージの案内を告げるアナウンスが再び響き渡った。
大会はまだ幕を開けたばかり。果たして彼らの前にどんな激戦が待っているのか、アリーナの熱気は次なるステージに向けて静かに高まり続けていた。
ED:こころの惑星 〜Little planets〜(うえきの法則ED)
今回の豆知識。
零夜の実力は異世界で魔王を倒せる最大の希望レベル。一般人など余裕で倒してしまう。
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