DISSIDIA FINAL FANTASY Brave Soul 作:蒼牙王
OP:セクシー・アドベンチャー(ルパン三世OP)
シエルの毒の霧によって、保育士の姿に変えられた倫子たちだったが、それでも戦う意志は止まる事はない。どんな状況でも戦う覚悟があるのはよく分かるが、その前に服を元に戻す必要があるだろう。
「ここはリカバリーを使えば元に戻れるわ。それっ!」
アイリンが指を鳴らすと、彼女たちの服は元の姿に戻っていく。状態回復の魔術をすれば、服も一瞬で元通りだ。
「良かった。一時はどうなる事かと……」
「これで問題なく戦えるわね……」
ティファたちは服が元に戻った事に安堵し、盛大にため息をついてしまう。元の姿に戻らなければ、これからどうすれば良いのか分からなかっただろう。
すると、ゾルドはニヤリと笑いながら、地面に手を置いて魔術を唱え始める。恐らく何か策略を仕掛けるに違いない。
「マグマ発動! フィールドチェンジ!」
ゾルドが魔術を唱えた途端、辺り一面が草原から石だらけの地面へと変化する。それだけでなく、地面が揺れ始め、マグマが噴出。次第に地面に流れ始めた。
「このマグマに触れたら火傷だけでなく大ダメージだ。下手したら死ぬかもな」
「マグマを仕掛けるとはな……だが、緊迫感があって燃え上がるぜ!」
ゾルドの説明を聞いたマツリは不敵な笑みを浮かべながら、拳を強く握り締める。この方が緊迫感があるだけでなく、面白そうでウズウズするのも無理はないだろう。
誰もが真剣な表情をしたーーその時だった。
「助けてくれー!」
「?」
突然の声に零夜たちが声のした方を見ると、ガロとバルガがマグマに囲まれた状態で慌てていた。恐らく目が覚めた時には逃げ遅れたに違いない。
「大変だ! 脱落した二人が巻き込まれている! すぐに助けなければ!」
「ええっ!? 助けに向かうの!?」
零夜はガロとバルガを助けに向かう事を決意するが、ティファたちは驚愕。敵である彼らを助けに行くのは異常過ぎで、いくら何でもどうかしていると感じているだろう。
「ああ。奴らはこの様子を見れば、改心する価値はまだあるからな! 今の様子を見て放って置く理由にはいかないんだ!」
零夜はすかさずガロとバルガの元に向かい、彼らを助け出そうと動き出す。あまりにも無謀過ぎるかも知れないが、心の底から助けたい思いが強く感じているのだ。
「おいおい。敵で役立たずな奴らを助けようとしているぜ。いくら何でも馬鹿としか言えないよな」
「ええ。絶対に助ける事はないと思います。私はどうしても信じられませんから……」
ゾルドの意見にシエルは同意する中、彼女の脳裏にある過去が浮かび上がる。忘れもしないミハエルとのあの出会いの事を……。
※
当時、シエルは大企業のお金持ちの女性として暮らしていた。その周りには友達も沢山いたが、金目当ての奴らばかりで碌でもない奴らばかりだった。
そんなある日、友達の一人がシエルに声をかけてきた。それはある宝石を見つめていた事だ。
「ねえ、この宝石値段高いって。シエルなら買えるんじゃない?」
「けど、あまりお金は無駄遣いしたくないかな」
「何言ってんの。シエルはお金持ちだから、こんな宝石も買えるに決まっているでしょ?」
「そうだぜ。買ってくれよ」
友達が大勢でシエルに買って欲しいとせがんだその時、ミハエルが歩きながらその場に姿を現す。今のを見て黙ってはいられなかっただろう。
「……ねえ、君たち。そんなに彼女から金をせびって、本当に友人だと言い張るつもりかい?」
ミハエルの冷徹で澄んだ声が、ショップの一角に静かに響き渡った。
友達の女たちは顔をしかめ、不愉快そうに眉をひそめる。
「なんだお前は! 余計な口出ししないでよ、私たちがどうしようと勝手でしょ!」
「そうだぜ、シエルだって別に嫌がって……」
しかし、ミハエルは彼女たちの言い訳を意に介さず、ただ静かに、底冷えのするような笑みを浮かべたまま首を横に振った。
その瞳には、彼女たちの心の奥底にある「金持ちのお嬢様からいかにうまくたかり、都合よく利用してやろうか」という醜い打算の思惑が、すべてお見通しかのように映っていた。
「人間の欲とは本当に醜いものだね。……ねえ、シエル。君はいつまで、そんな偽りの関係にすがり続けるつもりだい?」
ミハエルのその言葉は、シエルの胸に鋭く突き刺さった。
薄々感づいていた。周囲の人間は自分自身ではなく、自分の「家柄」や「財力」に群がっているだけなのだと。それでも孤独を恐れるあまり、彼女はその現実から目を背け、無理に笑顔を作って友人関係を保ってきたのだ。
「っ……! あなたに何が分かるのよ!」
図星を突かれた友達の一人が逆上し、キーキーと声を荒げながらミハエルに詰め寄ろうとする。だが、ミハエルがほんの一瞬、冷ややかな視線を向けただけで、彼女たちはまるで金縛りにあったかのようにピタリと動きを止めた。その背筋には、言い知れない恐怖が這い上がっていた。
「何も分からないからこそ、客観的に真実が見えるのさ。……どうだい、シエル。そんな虚しい温もりにしがみつくのはやめて、すべてをねじ伏せる『力』を手に入えないか?」
それが、シエルとミハエルの出会いだった。
偽りの友人たちに背を向け、自らの意思ですべてを切り捨てた彼女に、ミハエルは幻術と毒の力を与えた。弱肉強食の世界で己の強さだけを信じて生きる――それがシエルの選んだ道であり、彼女にとっての絶対的な真理だったのだ。
※
「――あんな甘い綺麗事が、この世界で通用するわけないわ。絶対に……」
シエルは現実の林道へと意識を戻し、マグマの囲む中で懸命にガロとバルガを救い出そうと走る零夜の背中を、冷ややかな瞳で見据えた。
敵同士でありながら、敗者をも見捨てないその姿勢は、シエルにとっては理解不能であり、同時に反吐が出るほど甘ったるいものに映っていた。
「あいつ、頭がどうかしてやがるぜ! まっ、倒しやすくなるのは丁度良いけどな!」
ゾルドも呆れたように鼻で笑い、マグマの熱気を操りながら、助けに向かう零夜たちの進路をさらに阻もうと大きく腕を振り上げる。
「行かせるわけにはいきません。……ゾルド、あのバカな連中の動きをここで完全に焼き尽くしますよ」
「おう、任せな! 灼熱のマグマでまとめて灰にしてやるよ!」
シエルが冷酷な微笑みを浮かべながら杖を構え、ゾルドと共に新たな魔術の詠唱を始める。
命懸けで仲間を救おうとする零夜たちの前に、容赦ない炎とマグマの壁が再び立ちはだかろうとしていた。果たしてどうなるのか……。
ED:君の中の英雄(機動戦士ガンダムAGE ED)
今回の豆知識
偽りの友達は付き合わない方が良い。破滅へと繋がる。
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