DISSIDIA FINAL FANTASY Brave Soul   作:蒼牙王

40 / 41
OP:セクシー・アドベンチャー


第39話 さよなら、大切な人

 ジョーの発言を聞いた零夜たちは、彼らの一家が犠牲になるというあまりの現実に、言葉を失って息を呑んだ。リサを救うためにそれぞれが覚悟を決めたとはいえ、命を賭してここまでしなければならない理由などあるはずがない。

 

「待って! なんで貴方たちが犠牲になるの!? いくら何でも異常過ぎるわよ!」

「そうよ! スリキンが仕掛けた呪いなら、彼を倒せばオールオーケーじゃない!」

 

 エイリーンとトワが声を荒らげて慌てふためく中、ジョーは静かに、しかし確固たる意志を宿した目で首を横に振った。自分が身をもって味わった、掛けられた呪いの重さを誰よりも深く実感しているからこその拒絶だった。

 

「私たちが掛けられた呪いは、発動者を倒さなければ解かれない。だが、リサはそれを解く為、自らカオス軍に入っていた。これ以上彼女を苦しむ姿は見たくない。だからこそ、そうするしか無い。妻や子供たちも覚悟を決めている」

「そんな……!」

 

 絞り出すようなジョーの言葉を聞いたティファたちは、こらえきれず真っ赤に潤んだ瞳に涙を溜めた。

 ハヤカワ一家の決意はすでに揺るぎないものとなっていた。これ以上の説得が無意味であると悟り、リサをこれ以上苦しませないための唯一の選択肢として、自らが散る道を選んだのだ。

 

「待ってください! 貴方方が犠牲になるのは止めてください! あなたたちが死んだら私は何の為に……!」

 

 たまらずリサは両手を伸ばし、ハヤカワ一家を必死に制止しようと駆け寄る。だが、ジョーは穏やかに、しかし頑なに首を横に振った。家族を想うその意志は、もはや誰にも止められない。

 

「もう良いですよ。私たちはあなたに生きて欲しい。そして、零夜さんたちと共に新たな道を歩んで欲しい。これは私たちの願いなのです」

 

 ハヤカワ一家は互いにしっかりと手を握り合い、温かく抱き合った。その身体の中心から、眩い光が溢れ出す。それは命の灯火を燃え上がらせる最後の輝きであり、そのまま彼らは光に包まれながら、儚く散ろうとしていた。

 

「皆さん……リサさんをお願いします」

「あなたたちが勝つ事を信じています」

「皆、バイバイ」

「僕らは信じているから。頑張れ、ブレイブエイト!」

 

 四人が遺した最期の言葉が、静まり返った闘技場に優しく響き渡る。

 直後、眩い閃光がすべてを呑み込み、彼らの姿は跡形もなく消え去った。後に残されたのは、その場にぽつんと落ちた、ほんのわずかな遺品だけだった。

 

「どうして……どうしてさよならなのよ……うああああああ!!」

 

 あまりの喪失感に耐えかね、リサはその場へ崩れ落ちるように座り込み、声を上げて激しく泣き崩れた。大切な人たちを奪われた悲しみが、彼女の心を容赦なく引き裂いていく。

 

「どうしてこんな事に……認めたくないわよ……」

「うぇーん!!」

 

 ティファたちもまた互いに肩を寄せ合い、こぼれる大粒の涙を拭うことすら忘れ、子供のように声を上げて泣き濡れていた。かけがえのない仲間を失った痛切な現実が、胸を締め付ける。

 

「あーあ。呪いを解かずに自ら死ぬとは。これは傑作だ! ヒャハハハ!!」

 

 引き裂かれた家族の悲劇の真っただ中で、スリキンは下卑た笑みを浮かべながら両手を打ち鳴らした。あまりにも命を軽視し、嘲笑うその態度は、正真正銘の悪魔そのものだった。

 

「人の死を、そこまで嘲笑うか……!」

 

 零夜の低く、しかし底冷えするような怒りの声が、悲しみに沈む闘技場に重く響き渡った。

 先ほどまでの温和な面影は完全に消え失せ、その全身からは周囲の空気をも歪ませるほどの凄まじい殺気と闘気が激しく迸る。

 

「ひっ……! な、なんだその目は……!」

 

 零夜の圧倒的な気迫に気圧され、スリキンの下卑た笑みはピタリと凍りついた。ただならぬ殺意の重圧から逃れるように、彼は一歩、また一歩と無様に後ずさる。

 

「家族を救うために自らの命を投げ出した人たちの想いを踏みにじり、あまつさえそれを笑いものにするなんて……お前のような外道は絶対に許さない!!」

 

 張り裂けんばかりの怒号を叩きつける零夜。その気迫にスリキンは一瞬怖気づいたものの、すぐに歪んだ笑みを浮かべて強がりを見せた。どうせ戦うしかない以上、ここで受けて立つほかない。

 

「良いぜ。リサと交代で俺が出る!」

 

 スリキンは観客席から闘技場へと足を踏み入れ、禍々しい戦闘態勢へと移行する。それと入れ替わるように、リサは力なく足を引きずりながら観客席へと戻り、ティファたちの隣に座って戦況を見守る位置についた。

 

「うう……ひっく……」

 

 止まらない涙を袖で拭いながら、リサは震える体を小さく丸めてティファに寄り添う。ティファもまた自らの頬を伝う涙を拭う手を止め、寄り添ってくるリサの頭を優しく、慈しむように何度も撫で続けた。

 

『じゃあ、交代だね。では、始め!』

 

 無機質なモニター越しに響くミハエルの合図を皮切りに、スリキンが猛然と動き出す。その背中からどす黒い闇のオーラが噴き出し、空間を歪めながら禍々しい武人のような巨大な影として具現化した。

 

「ふん、泣き濡れたところで終わった命が戻るわけじゃねぇよ! 行くぜ、俺の真の力――『武神顕現(ぶしんけんげん)』の恐ろしさを骨の髄まで味わいな!」

 

 スリキンが狂気的な笑みを深めた瞬間、背後にそびえ立つ武人のオーラがまばゆい閃光を放ち、闘技場の一帯が圧倒的な殺気と禍々しい闘気で満たされた。

 その巨大なオーラが手元で実体化し、スリキンの両手に禍々しい輝きを放つ漆黒の魔導大剣が瞬時に現れる。

 

「受けてみろ、『修羅・一刀両断(しゅら・いっとうりょうだん)』!」

 

 地を抉るような踏み込みとともに、スリキンは自身の身長をも優に超える巨大な大剣を頭上から容赦なく叩き下ろした。

 あまりの重圧とすべてを切り裂くような破壊力に、周囲の空間そのものが悲鳴を上げる。だが、零夜は一歩も退かず、二振りの刀――村雨とエクスカリバーを十字に交差させ、その重撃を真っ向から受け止めた。

 ――ガァァンッ!! と耳をつんざくような凄まじい金属音が鳴り響き、零夜の足元にあったコンクリートの床が、激突の衝撃でクモの巣状に激しく砕け散る。

 

「ぐっ……!」

「へぇ、受け止めたか! だが、これで終わりじゃねぇよ!」

 

 不敵に歪むスリキンのオーラパワーがさらに跳ね上がり、手元の魔導大剣が一瞬にして形を変えて鋭い長槍へと変貌を遂げる。そのまま間髪入れず怒濤の突き技へと移行し、無数の槍先がまるで暴風雨の弾丸のように零夜へと襲い掛かった。

 ザシュッ、キィィンッ! と、火花を散らす凄まじい手数の攻防が展開される。

 零夜は忍者格闘術に裏打ちされた神速の体捌きと紙一重の回避で致命傷を避けていくが、スリキンの変幻自在な武器捌きと武人のオーラによる強化は、想像を絶する精度と脅威を誇っていた。

 

「す、すごい激戦……! スリキンの攻撃が、一瞬たりとも止まらないわ……!」

 

 観戦席で見守るティファが、自らの頬を伝う涙を拭いながら、息を呑むような思いで声を漏らす。その隣で、リサは泣き腫らした赤い目を必死に見開き、零夜の背中を祈るような眼差しで見つめていた。

 ハヤカワ一家が遺した悲劇と想いを胸に刻み、絶対に負けられない戦い。その耐え難い重圧を背負いながらも、零夜の足取りに迷いは微塵もない。

 

「武器がどれだけ変わろうと、アンタのその浅ましいやり口じゃ……俺たちの想いを断ち切ことはできない!」

 

 零夜の瞳に燃え盛る闘志の炎が、一段と眩く輝きを増していく。

 怒涛の長槍の突きを紙一重でかわしたその瞬間、零夜は一気にスリキンの懐へと飛び込み、プロレスラーとしての爆発的な剛腕を炸裂させるべく、全身の力をため込んで力強く踏み込んだ。

 

「ナッ……速い!? だが、俺のオーラ防御は破れねぇよ!」

 

 焦りを滲ませたスリキンが両腕を十字に交差させ、分厚いオーラの障壁を展開して迎え撃つ。しかし、零夜の放った重厚なタックルは、その絶対防御を真正面から強引に押し返していく。

 ガシリと肉体が激突する重い鈍い音と、飛び散る無数の闘気の火花。どちらが一歩でも引けば命取りとなる、息を呑む間もない激しい攻防が、闘技場の中心で容赦なく繰り広げられていた。




ED:君の中の英雄(ティファバージョン)

今回の豆知識
武神顕現はオーラパワーで武術関連の武器を召喚する。かなり手強い能力だ。

感想等宜しくお願いします!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。