DISSIDIA FINAL FANTASY Brave Soul 作:蒼牙王
OP:Falco-ファルコ-(うえきの法則OP)
転移の光が収まると、零夜たち参加者は全く見知らぬ空間へと立っていた。見渡す限り続く青々とした草原と、どこまでも高く澄み切った空。身を隠すような障害物は、ほとんど存在していない。
「ここって、本戦一回戦の会場……しかも参加者たちとパートナーが全員いる……」
「この試合、どうやら乱戦となるかもな……」
周囲をキョロキョロと見回すティファの隣で、零夜は険しい表情を浮かべながら周囲の地形を観察した。遮蔽物がないこの広大なフィールドに全プレイヤーが密集しているとなれば、逃げ場のない大乱戦になるのは火を見るよりも明らかだった。
そこへ、無機質な羽音を響かせながらスピーカー付きのドローンが上空へと飛来する。
『本戦一回戦、キャラ争奪乱戦のルールだ。相手からFINAL FANTASYのキャラを二人奪い取り、四人一組で逃げ切ってゴールへと進む。見事クリアした者は本戦最終トーナメントへと進出する事になる』
「要するに私たちFINAL FANTASYのキャラの奪い合いか。狙われるから気をつけないと」
上空から響くルール説明に、ティファは両拳をきゅっと握りしめて気を引き締めた。彼女たちキャラクター自身が“獲物”として扱われる――やはり、ただのゲーム大会ではない。何が何でも生き残らなければならないという覚悟が、その横顔に滲んでいる。
『但し、先着は八組であり、時間は無制限。ここから脱落したFINAL FANTASYのキャラは元の世界に強制送還される。参加者たちについては強制転移されるが……どうなるのかは決勝終了後に明らかになります』
(やはりか……タダのゲームではない事は明らかだな……)
零夜は内心で推測を確信へと変え、鋭い眼光で周囲のプレイヤーたちを素早く値踏みした。自分以外の参加者は一般人が大半を占めており、熟練のゲーマーが混ざっているとはいえ、プロレスラーであり勇者でもある零夜の敵ではない。問題は、いかに隙を見せず、手早くこの乱戦を終わらせるかだ。
「俺の狙いはリノア、ユウナの二人を狙う。女性だらけかも知れないが、バランスよいパーティーにするにはこの方がピッタリだからな」
「確かに言えてるわね。この一回戦、必ず勝ちましょう」
「ああ。速攻で終わらせる!」
零夜の力強い宣言に、ティファも深く頷く。
零夜は腰から愛刀である『村雨』と『エクスカリバー』を同時に引き抜き、流麗な動作で二刀流の構えをとった。ティファも重心を落とし、戦う準備を整える。
その直後、戦いの幕開けを告げるカウントダウンがゼロになった。
『それでは――本戦一回戦、開始!』
ドローンの無機質な声が響き渡った瞬間、静寂に包まれていた草原は一気に怒号と足音の渦に飲み込まれた。
「うおおおっ! クラウドを奪うぞ――っ!」
「俺はリノアさんを……っ!」
遮蔽物のないフィールドでは、狙うべきキャラクターの姿が一目瞭然だ。欲望を剥き出しにした何十人もの参加者たちが、我先にとお目当ての標的へ向かって猛ダッシュを仕掛ける。
瞬く間に、クラウドやリノア、ユウナの周囲は、ハイエナのように群がるプレイヤーたちの波に包囲された。
「ふん、相変わらず気が早い連中だな」
クラウドは冷ややかに鼻を鳴らすと、背に負った巨大なバスターソードを軽々と振りかざした。襲い掛かる参加者たちを、暴風のような剣圧だけで次々と吹き飛ばしていく。流石は元ソルジャー、一般の参加者では足元にも及ばない。
しかし、戦場はあちこちで混迷を極めている。次々と押し寄せる大人の波に囲まれたリノアとユウナの傍らでは、幼い子供たちが必死に立ち塞がっていた。
「リノアさん、下がってて! オレが守るから!」
「私もユウナさんを狙わせないもん!」
リノアブロックを勝ち抜いた小学六年生の少年と、ユウナブロックの小学一年生の少女。小柄な身体を盾にして健気にパートナーを守ろうとするものの、大人の参加者たちの暴力的な圧力に押され、その小さな足は徐々に後退を余儀なくされている。
「子供たちを狙う奴らが群がってるぞ。行くぞ、ティファ!」
「うん!」
危機的な状況を見定めた零夜の号令に、ティファが短く応える。
次の瞬間、二人は爆発的な脚力で草原を蹴り飛ばした。予選ブロックの時すら上回る凄まじい速度。一筋の黒い閃光と化した零夜は、リノアたちの元へ殺到する参加者の群れへと、真っ向から飛び込んでいった。
「なっ、なんだあいつは……っ!?」
「邪魔だ!」
驚愕の声を上げる男たちに対し、零夜は村雨の峰を返して突撃をいなすと同時に、プロレスラー譲りの強烈なタックルを叩き込んだ。重戦車のような常人離れした突進力に吹き飛ばされ、参加者たちは宙を舞い、地面を転がって次々と戦闘不能に陥っていく。
その背後では、ティファも華麗なステップで敵の懐へと滑り込んでいた。しなやかな動きから繰り出される正確無比なラッシュの打撃が、残りの参加者たちを瞬く間に無力化していく。
「す、すごい……! あの人たち、めちゃくちゃ強い……!」
リノアを背後で庇いながら戦っていた少年が、目の前で繰り広げられる圧倒的な制圧劇に目を丸くして感嘆の声を漏らす。
零夜たちは瞬く間に分厚い包囲網を切り崩し、リノアとユウナが立つ中心部へとたどり着いた。だが、そこで空気を読まないドローンの声が響く。
『おっと、キャラを奪うには参加者を容赦なく倒すのがきまりだ! そうでなければ奪う事は不可能だ!』
非情なルールの念押しに、守られているはずの子供たちの顔色が一瞬で青ざめる。どれほど外道なやり方であっても、このデスゲームにおいてルールを変えることは不可能なのだ。
「なっ……! じゃあ、オレも戦わなきゃいけないってことかよ……!」
「負けないもん! 私だってユウナさんと一緒にゴールするんだから!」
少年と少女は恐怖に肩を震わせながらも、それぞれのパートナーを守るために小さな拳を構えて立ち塞がった。子供も大人も関係ない。戦場において生き残るためには、誰が相手であろうと容赦しないのが鉄則だ。
「だと思ったぜ。生き残るためにはここで引くわけにはいかないからな!」
零夜は冷徹な眼差しを崩すことなく、村雨とエクスカリバーを両手に構えたまま静かに一歩を踏み出した。
子供たちが勇気を振り絞り、決死の覚悟で突撃してくる。しかし、ハルヴァスの勇者でありプロレスラーでもある零夜という壁は、彼らにとってあまりにも高く、そして厚かった。
零夜は二人の必死の攻撃を巧みにいなすと、一瞬の隙を突いて極めて手加減した手刀と軽い体術を打ち込んだ。
「うわっ……!」
「動けない……すごすぎる……」
その場にへたり込んだ少年と少女は、悔し涙をぽろぽろと零しながら戦闘不能の判定を受け、転移の光に包まれてフィールドから退場していく。これで、リノアとユウナの周囲から障害は完全になくなった。
「ふふ、手加減してくれたのは優しさかしら? それとも余裕?」
「私たちを勝たせてくれますよね、零夜さん?」
解放されたリノアとユウナが、安堵の微笑みを浮かべながら零夜のもとへと歩み寄る。それぞれの意思で彼らに合流したことで、『零夜、ティファ、リノア、ユウナ』の四人一組のパーティーが完璧に成立した。
「これで条件は満たされたな。一気にゴールへ駆け抜けるのみだ!」
零夜の力強い号令を合図に、四人は青空の下の草原を蹴り、先着八組の座を勝ち取るべくゴールエリアを目指して一直線に駆け出した。
周囲ではまだ、気絶した参加者からキャラクターを奪い取ろうとする者や、泥沼の乱戦を繰り広げている者たちの怒号が飛び交っている。
「奴らが奪い合いに集中している今、そのままゴールへ突き進む!」
他者の妨害を受けることなく、四人は風のようにフィールドを駆け抜け、光り輝くゴールエリアへと見事に飛び込んだ。
直後、空中のスピーカーから高らかな祝福のファンファーレが鳴り響き、四人の身体は温かな転移の光に包まれる。目を開けると、そこはすでに元の安全な会場だった。
「――第一組、ゴールイン! お見事、東零夜チームが先着一番乗りだ!」
司会者の弾んだ声が会場に響き渡る。零夜は軽く両手を叩き、無事に任務を完遂できたことを確認した。まずは一回戦突破だ。
「ふう、まずは一回戦突破ね。結構慌ただしかったけど、何とかなってよかったわ」
ティファが緊張をほぐすように小さく息をつき、肩を回す。その横では、リノアとユウナも心底ホッとしたように笑顔を浮かべていた。三人とも理不尽な乱戦を無傷で生き抜くことができた喜びに、心の底から嬉しさを感じている。
「ありがとう、零夜さん。あっという間に私たちを連れ出してくれたから、少しも怖くなかったよ」
「はい、とっても心強かったです!」
二人のヒロインからまっすぐな感謝の言葉を向けられ、零夜は余裕の笑みを浮かべて静かに頷いた。一回戦は無事に突破したが、これから続くトーナメントも油断せずに突き進むのみだ。
しかし、頭上の巨大モニターに映る草原のステージでは、まだ他の組による激しいキャラクターの奪い合いが続いている。果たして、この地獄のサバイバルを生き残るのは、どのチームなのだろうか――。
ED:こころの惑星〜Little planets〜(うえきの法則ED)
今回の豆知識。
戦場では強い者が生き残る。大人も子供も関係ない。
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