DISSIDIA FINAL FANTASY Brave Soul 作:蒼牙王
「続いては第三試合。間宮美桜、クラウド・ストライフ、スコール・レオンハート、ティーダ組と如月冬美、クライブ・ロズフィールド、ノクティス・ルシス・チェラム、プロンプト・アージェンタム組。転移しますので、その場に動かないでください」
上空のドローンから響く司会者のアナウンスと共に、美桜たちのチームが眩い光に包まれバトル空間へと転移していく。残されたメイン会場では、巨大モニターに映し出される新たな戦場を見守る中、ティファがふと懐からある物を取り出した。
それは、禍々しくもどこか温かみを感じさせる、赤い鬼のお面だった。
「あれ? このお面は何?」
「怖そうな鬼のお面ですね……」
リノアが目を丸くして身を乗り出す。ユウナも初めて見るその異国情緒あふれる造形に、興味深そうに視線を注いだ。
「うん。このお面は炎鬼という人が助けてくれたの。私がまだⅦの世界にいた頃、ピンチになった時に必ず助けてくれた。コルネオに攫われた時に救ってくれたり、店を失って悲しみに暮れた時に慰めてくれた。あと、エアリスを助けたり、ライフストリームでクラウドを助けてくれた事もあったの」
「そうなんだ。で、その人の正体は?」
「分からずじまい。去る時にこのお面を置いて帰ったの。名前については刻まれているけど、何処に書いてあるのかな……」
ティファは小首を傾げながら、大切そうに手元のお面をくるくると回して確認し始める。その横顔を、零夜はどこか気恥ずかしそうな眼差しでじっと見つめていた。
「確かお面の裏側に名前が刻まれているんじゃないか?」
「裏側? どれどれ……」
零夜の何気ないアドバイスを受け、ティファがお面を裏返して内側を覗き込む。するとそこには、小さくローマ字の名前が刻み込まれていた。その文字を読み取った瞬間、彼女はハッとして目を見開いた。
「Reiya.A……この名前、まさか零夜なの!?」
「ええっ!? 炎鬼の正体が零夜さん!?」
「意外です……!」
ティファの驚愕の声に重なるように、リノアとユウナも信じられないといった様子で零夜へ視線を突き刺す。まさか彼が、伝説の恩人『炎鬼』の正体だったとは。
三人の驚く顔を前に、零夜は隠し通すのを諦めたように観念の息を吐き、ポツリと語り始めた。
「ああ。元はと言えば真・悪鬼との戦いに向けて強くなる為、ワープゲートを利用してFINAL FANTASY Ⅶの世界に修行をしに来ていた。その時にティファを見かけたんだ。彼女が攫われているのを見て黙ってなかったけど、今のままではまずいと感じていた。そこでこのお面を使っていた。あの時は俺の力を知らなかったし、あまり自分の正体をペラペラと明かすわけにもいかなかった。ただ、目の前で困っている奴や、泣いている奴を放っておけなかったからな……」
少し気まずそうに目を伏せ、しかしどこか優しげな笑みを浮かべて零夜は肩をすくめる。
その言葉を聞いた瞬間、ティファの胸の奥で、かつてⅦの世界で過ごした苦しくも温かい日々の記憶が鮮やかに蘇ってきた。絶望の淵に立たされていた自分に差し伸べられた、力強い手。あの時、正体も分からないまま自分たちを何度も救ってくれた『炎鬼』が、まさか今、こうして隣で背中を預け合っている零夜だったなんて――。
「……そうだったんだ。私、ずっとあの時の恩人に、ちゃんとお礼を言いたいってずっと思ってた……。ありがとう、零夜。あの時助けてくれて、本当に嬉しかったよ」
ティファは潤んだ瞳をまっすぐに零夜へ向け、心の底からの感謝を込めて微笑む。そのまま彼の胸へとゆっくりと抱き締め、よしよしと背中を優しく撫でた。
「いや、大したことじゃない。こうして巡り巡って、またお前、ティファと一緒に戦えている……縁ってやつは面白いものだからな……」
零夜が照れくさそうに笑い返すと、ティファも弾けるような笑顔で応え、いつの間にか二人の間には甘酸っぱくも温かい空気が漂い始める。
そのやり取りを間近で見ていたリノアとユウナは、顔を見合わせてフッと柔らかい笑みをこぼした。
「すごいドラマみたいだね。零夜って、本当に色んなところで誰かを助けてるんだなあ」
「はい。なんだか、とても零夜さんらしいエピソードですね」
和やかな空気がふわりと周囲を包み込んだ、その時だった。メイン会場の静寂を破るように、試合終了を告げる甲高いゴングが鳴り響く。あまりにも早すぎる決着だ。
「試合終了! クラウドの速攻で如月がやられる結末に! 間宮チームが準決勝進出!」
徳田の興奮したアナウンスが響き渡る。第三試合は、相手に何もさせないクラウドの電光石火の一撃により、瞬く間に間宮チームの勝利で幕を閉じたのだ。
「チーム連携がバッチリ整っている……彼らが決勝に向かう確率は高いと思います」
「だが、その前に決勝に到達できるかだな……」
ユウナの的確な推測に零夜が真剣な表情を引き締めたのとほぼ同時に、空間が歪み、美桜たち四人が元の会場へと戻ってきた。敗退した如月は指定の場所へ転移させられ、クライブたちは元の世界へと強制送還されたらしい。
光の粒子がスッと収まると、美桜は両手で胸を押さえながら、その場にぺたりとへたり込みそうになっていた。
「ふう……、なんとか……勝てましたぁ……!」
恐怖と極度の緊張からようやく解放され、大きな息を吐き出す美桜。それを傍らで支えながら、ティーダが爽やかな笑みを浮かべて声をかける。
「お疲れさん、美桜ちゃん! いやぁ、クラウドの速攻がマジで凄かったよな。相手が何もできないうちに終わっちまったもんな!」
「ああ……。無駄な時間をかける必要はない。それだけの話だ」
クラウドは相変わらずクールな表情を崩さず、巨大な大剣を背に担ぎ直しながら淡々と返す。スコールもまた腕を組んだまま静かにうなずき、手短に勝利の余韻を受け止めていた。
そんな勝者たちの賑やかな帰還を、零夜たちは温かい出迎えの視線で見守る。
「お疲れ様、美桜。危なげない勝利だったな」
「あ、零夜さん……! 見てました? クラウドさんたちが凄すぎて、私、ほとんど後ろで怯えてるだけでしたけど……!」
美桜がほっとした笑顔を浮かべて立ち上がり、パタパタと服のホコリを払いながらペコリと頭を下げる。その様子に、ティファも柔らかく微笑みながら声をかけた。
「本当にお疲れ様。みんな息ぴったりのチームワークだったよ」
「ありがとうございます、ティファさん!」
勝者たちを称える明るい雰囲気が広がる中――クラウドだけはふと足を止め、鋭い視線をティファの手元へと向けた。
彼女が大切そうに抱えている、あの赤い鬼のお面。その特徴的な形状と色合いを目にした瞬間、クラウドの脳裏にかつての記憶が鮮烈にフラッシュバックする。
「おい……そのお面はなんだ」
クラウドのただならぬ低い声に、周囲の空気が少しだけピリッと引き締まる。美桜がビクリと肩を揺らし、ティファも目をパチクリとさせて自分の手元を見下ろした。
「これ? 実はさっき、このお面の裏に刻まれた名前を見たら……零夜の名前だったのよ。零夜が昔、私を助けてくれた『炎鬼』の正体だったんだって」
「……なに?」
クラウドの瞳がさらに鋭く細められ、彼はその場に佇む零夜へとゆっくりと視線を移す。
脳裏に浮かぶのは、クラウド自身の精神の深淵――ライフストリームの底で絶望に呑まれかけていたあの時、突如として現れ、彼を現実へと引き戻してくれたあの不気味で、しかし圧倒的な温もりを放つ仮面の男の姿だった。
「そうか……。ライフストリームの底で俺を助け、自分の意志を取り戻させてくれたあの仮面の男……。お前だったのか、東零夜」
「ああ、そうだ。あの時はお前も自分のことで手一杯だったからな。名前を名乗る余裕もなかったが……まあ、そういうことだ」
零夜が隠すことなくあっさりと認めると、クラウドはふっと僅かに口元を緩め、フンと鼻を鳴らした。
「……恩を返す機会がずいぶん先延ばしになったな。だが、これで納得がいった。お前がただ者ではない理由が、ようやく分かったというわけだ」
「ふっ、恩返しならいつでも受けて立つさ。だが、そのためにはまず、この大会を勝ち抜いてみせないとな」
二人の戦士の間で、静かな、しかし熱を帯びた信頼と闘志の視線が交差する。
そんな男たちのやり取りを、リノアやユウナ、そして美桜たちが少し圧倒されたような、しかしどこか感心したような表情で見守っていた。
「すごいよ、零夜さん……。クラウドさんまで助けてたなんて、本当に英雄みたいですね!」
「本当にね。まさかこんなところで、全員の運命が零夜に繋がっていたなんて驚きだわ」
ティファは嬉しそうに微笑みながら、大切なお面をそっと懐にしまい込む。恩人であり、今を共に戦うパートナーでもある零夜と再び出会えた奇跡に、心からの感謝を抱きながら。
ED:こころの惑星〜Little planets〜(うえきの法則ED)
今回の豆知識
零夜たちブレイブエイトは強くなる為、様々な世界に赴いて修行に向かいます。零夜はFINAL FANTASY Ⅶでしたが、他はどんなのか?
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