世界に光をもたらす鍵の担い手 作:鍵の担い手
海鳴温泉でもう一人の魔法使い達と会ってから数日経ちました。
あれ以降ジュエルシードは再び出現せず、あの子達とも会っていない。
反応を頼りに探しているけど不発続きで、ボクの方も両親達を探しているけど見つからない状況。
幸いにもお守り間の繋がりは感じるからニアは居るはずなんだけど…。
「うーん…ニアとの繋がりは感じる。場所まで特定は難しいかぁ…」
橙色の星型のお守り。
ボクの故郷に昔から存在するお守りで、昔の使い手たちが『どれだけ離れていても繋がりを感じれるように』と渡したらしい。
それがボクの時代にも引き継がれて、キーブレードを扱えるようになった時にニアと交換している。
「上手くいかないって事は未熟な証…先生のようにはいかないか」
お守りをポケットにしまってカーテンを開ける。
外は既に暗く、時計の針は7時を過ぎようとしていた。
なのはがまだ帰ってきていないのが気になるけど、今日もジュエルシードは現れそうにないね。
「…しかしあのフェイトって子はどうしてキーブレードを」
もう一度会って話をしたい。
何故キーブレードを求めるのか、ジュエルシードを集めるのか。
本当に必要なら力を貸したいし。
「けどジュエルシードが現れない限りは…おや?雷?」
住宅街にピンポイントで雷が発生している。
というか結界も発動しているような…。
「これはもしかして…かな」
椅子に掛けてあったパーカーを着て桃子さんに一言伝えてから雷と結界の発生ポイントに向かうと、内部ではジュエルシードを挟んで激戦を繰り広げているなのはとフェイトの姿があった。
「大分くらいついてるけど…」
どこかフェイトが焦っているように見える。
ジュエルシードを目の前にしているからか?
あるいはなのはの腕が思ったよりも上達しているからそう見えているのか?
「このまま続けば…」
なのはの方に流れが向くかもしれない。
そう思っていると、二人の一撃がジュエルシードを挟んで衝突し、その一撃で生み出された魔力がジュエルシードに影響を及ぼしたのか、凄まじい衝撃波が発生し、二人は思いっきり吹き飛ばされてしまう。
「なのはッ!」
吹き飛ばされたなのはを優しく受け止める。
フェイトはアルフが受け止めていたから問題なそうだが、問題はジュエルシードだろう。
さっきの一撃が原因なのかジュエルシードから凄まじい魔力を感じ取る。
あれをあのまま放置しておくととんでもない被害になるぞ。
「ライト君。ジュエルシードからとんでもない魔力が」
「あぁ…あのまま放置すると辺り一帯吹き飛ぶぞ」
それを止めるには吹き飛ばすか抑え込むかの二択になってくる。
前者に関しては何とかなるが、暫く動けなくなってしまう。
そうなるとあの子に拉致されるかもしれないし。
「っ―――!」
「フェイト!?」
等と考えていると、フェイトがジュエルシードの元に駆け寄り、両手で包み込んで抑え込もうとする。
だけどジュエルシードからの魔力放出は凄まじく、フェイトは弾き飛ばされてしまった。
その光景を見たボクは、なのはを降ろしてキーブレードを顕現させる。
「抑えてくるからなのはは待ってて」
「ラ、ライト君!?」
キーブレードから無数のチェーンを放出してジュエルシードを拘束。
力を込めて魔力の放出を抑え込もうと試みる。
「う…ぐっ…このっ…」
思ったよりも力強くて拘束しているチェーンが切れていく。
その度に補填しつつ数を増やすけど追い付かない。
それだけあの二人の魔力がとんでもないって事になるけど。
「やっぱり吹き飛ばす方が良かったかも?」
それはそれで周りの被害もあるし、選択を間違えるなんてよくある事。
後悔しても遅いし、間違えたならそれはそれで修正すればいいだけの事。
今は一人じゃないし、なのはやユーノが居るからやりようはある。
「っ…吸い寄せられて…」
「ライト君!」
ジュエルシードに吸い寄せられそうになったところでなのはがボクの両手を掴んで支えてくれる。
お陰で吸い寄せられなくなり、拘束も強くなった。
「ありがとうなのは。そのまま吹っ飛ばせる?」
「そ、それはちょっと難しいかも。支えるのとライト君に魔力回すので精一杯」
「で、ですよね…(あと一手あれば…)」
フェイト達の方を見るけど助けてくれる様子はない。
見ているだけなら助けてくれるととっても嬉しい。
というか手伝ってください、割とやばいです。
「こうなったらゼタフレアで強引に―――」
強引に突破しようとした時だった。
上空から何かジュエルシードの向こう側に落ちてきて、衝撃で土煙が上がる。
何が降ってきたかと思っていると、土煙の中からボクと同じチェーンが現れてジュエルシードを抑え込んだ。
「あ…」
「この気配は―――ニア!?」
名前を呼ぶと、土煙の中から黒いコートを纏った黒髪の女の子が姿を現す。
彼女の手にはノーネームと呼ばれるキーブレードが握られており、その先端からボクと同じチェーンが放たれていた。
「そのまま抑えてライト!」
「了解!」
拘束が二重になり、ジュエルシードからの魔力放出を一気の抑え込む。
光は収まり魔力が落ち着いていって、ゆっくりと終息していく。
「…よし。もう大丈夫ニア。ありがと」
「うん。よろしく」
ニアはキーブレードをしまって、ボクこのままジュエルシードを封印してからRHに渡す。
それからフェイト達の元へと向かうけど、彼女は言葉発することなくアルフと一緒に去っていった。
「あ…行っちゃった…。お話出来なかった」
「そっか…っと…こっちはきちんと話さないと」
ゆっくりと近づいてくるニア。
ボクの顔を見るとにこっと微笑んでから小さく頷いた。
会うのはこの世界に転移する前か。
そこまで時間は空いてないけど久しぶりに会った気がする。
「思ったよりも元気そうで何より。そっちの子は?」
「えっと、話したいけどいるのはニアだけ?」
「アイラ叔母さんは別行動中。合流出来たことは伝えてるけど…一緒の方がいい?」
「うん。お世話になっている人にも話をしたいし。明日とかどう?」
予定を聞くと、ニアは一瞬だけなのはの方を見てから小さく頷き、連絡先を交換してから手を振って去っていく。
「えっとライト君。今の女の子が以前言ってた従妹?」
「うん。同い年の従妹。同じ先生の所で修行してた。母さんも来てるみたい」
「そっか……」
となると、ボクが高町家に居られるのも後僅か…というかこの世界に居られるのもあと少しってことか。
父さんもこの世界に来ると問答無用で連れて帰られるだろうし…。
(時間は後僅かか…今のうちに色々話しておかないといけないのかな)
なのはには話したいことがまだ残っている。
先生の事、昔の自分の事とか他にも色々と。
悩んでいることもあるし。
「なのは。ちょっと遠回りして帰らない?色々とお喋りしたいから」
「いいよライト君。でもあまり遠回りはしないでね。遅くなるわけにはいかないし」
「うん。ユーノは付き合ってくれる?」
「僕は帰るよ。後でなのはから聞くから」
ユーノはそう言ってフードから出て先に帰っていく。
アイツなりに気を効かせてくれたのかな。
「じゃあちょっと付き合ってなのは。空飛びながらでいい?」
「うん。あ、お姫様抱っこはナシだよ。自分で飛ぶから」
「あの…その節は…えっと…ごめんなさい」
「別に怒ってないの。ちょっと恥ずかしかっただけだから。いこっ!」
なのはが右手を出してくれたので、その手を左手で握ってゆっくりと上空へ。
空から見える街並みを見ながら、少し昔の事を話すことに。
「昔のボクはさ、色々あって一人でいることが多かったんだ。口調とかも今とはちょっと違って」
「この間も『俺』って言ってたよね。ちょっと驚いちゃった」
「あはは…なのはが相手だから素が出ちゃったね」
それだけなのはに気を許しているってことかな。
自分ではそう思っていなくても、心はそう思っているのだろう。
「4歳ぐらいの頃に、お遊び半分で継承の儀ってのを父さんとしてね。その時に父さんの手からボクの手に≪約束のお守り≫が移ったんだ」
「4歳って…物心つく頃だよね。その時にライト君のお父さんから引き継いだの?」
「うん。父さんがお酒に酔った勢いでね。もう大騒ぎだったんだよ。キーブレードがボクの手に渡ったのもそうだけど、何より…この件が切っ掛けで父さんは守護者の座から降りる事になったから」
ボクの手にキーブレードが渡るより、当時守護者だった父さんがその座から降りる事の方が大変だった。
当時の守護者は10代から20代が占める中、父さんは一番最年長でリーダーポジションで、他の皆に慕われていたし、頼りにもされていた。
そんな人が座をキーブレードを継承して座を降りる事になって、お爺様や守護者はボク…俺の事を祝福してくれたけど、一部の人はそうではなかった。
これからどうするんだ、誰が穴を埋めるんだと大騒ぎ。
そこはお爺様が色々と手を尽くしてくれたけど、俺は罪悪感でいっぱいだった。
「父さんの仕事を奪ってしまった。皆の希望を消してしまった。色んな人に色々言われて。俺はそんな人達も見返したくて必死に頑張ってさ。最初は父さんから託されたキーブレードは上手く使えず、その代わり自分のキーブレードで頑張ってた。魔法とか魔物との戦闘とか」
「一人で頑張ってたの?」
「うん。その頃は一人だった。守護者から降りた父さんはもともとやっていた仕事…時空の調査とか生態調査とかに専念してあまり相手をしてくれなかったし、母さんも闇の世界で色々仕事があったから」
「……(ちょっとだけ幼稚園に入る前の私と似てる。あの頃の私も…)」
今でもよく覚えている。
一人でキーブレードを振って、魔法は母さんが使っていたのと本を見て自力取得して。
怪我も沢山したし、魔法が暴発したこともあったかな。
「そんなときに出会ったのは父さんの後を継いだシンシア先生。俺とニアの先生だね」
「えっと戦い方とか魔法とか教えてくれた人だよね」
「うん。あの人のおかげで父さんから託されたキーブレードと闇の世界で出会ったキーブレードを扱えるようになったんだ。色々教えてくれた大切な先生」
「どんなことを教えてもらったの?」
「んー。色々。魔法と戦い方以外の事と言えば、心構えとか、考え方とか」
俺の場合はそっちの方が多かったと思う。
魔法に関しては当たって覚えろだったし、戦い方も見て覚えろだったし。
ニアは結構みっちり教わっていたみたいだけど。
「先生によく言われてたんだ。もっと自分を大事にしろって。いつか大事やらかすぞって」
「自分を大事に…」
「結構バカやって無茶してたから。一時期修行断ち切られてたし。焦ってたのが丸分かりだったし」
「うーん…今のライト君からは想像できないけど…無茶とかしないように見えるよ」
嬉しいことを言ってくれるなのは。
第三者からそう見えるならちょっとは成長しているのか。
「けどその後のちょっとした事件があって…その時に先生と大切な友達を失ってしまうんだ。俺が自分よりも他人を優先して」
「……」
一年前に起きた事件、闇の世界で封印されていた昔の人が蘇って、再び世界を闇に染めようとして。
その結果、大量の歪が発生して大量の魔物が光の世界に攻め込んできた。
王様二人は事態の収拾に向かい、守護者やマスターの皆は歪と魔物の対応に駆られて。
「ライト君は…どこにいたの?」
「その時は修行場所の森にいたんだ。そこは友達が治めてる森で、先生の孤児院がある場所。そこにも大量の歪と魔物に溢れかえって。俺は…皆と一緒に逃げればよかったのに戦う選択肢を取ってしまった」
「でも皆を守るためだよね?ある程度の所で引き上げれば…あ。もしかして…」
「…うん。俺もあの時はそう思ってた」
逃げるどころか生きて帰れるか怪しいぐらいの数。
だから先生やニアが来るまで耐えようとしたけど、数の暴力で押されて力尽きてしまった。
「その時に友達が守ってくれた。10メートルぐらいの白狼なんだけど、俺に被さって魔物の猛攻から守ってそのまま…」
「その子は…」
その先を言葉にしない代わりに悲しい顔をするなのは。
彼女なりの優しさだと思って俺もその先は言わない事にする。
「倒れた友達を見て後悔した。最初の時点で皆と逃げればよかったって。他にも何とか隙を作って逃げれる場面はあったし、先生たちに直ぐ通信送れば状況はマシになったのかもしれないし。でもそれ以上に俺がどれだけ無力なのかって思い知らされて、次第に自分が許せなくなったんだ」
「……」
「そして目の前が真っ暗になって。気づいた時には火の海で、腕の中には致命傷を負った先生の姿があった」
「そ、それって…」
その時の事をニアから少しだけ聞いた。
連絡を受けて駆け付けた時、俺は闇の力に飲み込まれて手が付けられない状態だったのを、先生が命懸けで止めてくれたと。
「その時に先生に力を封じられたんだ。゛その時が来るまでこの子達の力はお預け゛って」
「じゃあライト君の先生は…」
「……まぁそういう事だね」
言葉にはしない。
話の内容と今のおれの顔を見れば伝わると思うから。
「あれからそろそろ一年経つんだ。あの時に先生に言われたある事を探して色々と試しているんだけど中々見つからなくてね。先生の口調真似たりとかお爺様と行った事のない場所に行ったりとかしたんだけど」
「何か言われたの?」
「うん……」
ーライト。自分の事を好きになって大切にして。そして…自分と同じぐらい大切な人や守りたい事を見つかるんだ。
「って最後に言われたんだ」
「成程…」
なのはは瞼を閉じて考え始める。
彼女なりに何かいい考えがあるのかと俺は思って待っていると、なのはは瞼を開けて俺と視線を合わせながら言った。
「ライト君は大切にしたい事ってあるの?」
「うん。絆は大切にしたい。これまでとこれから出会う人達と紡がれた絆は大切にしたいし、その人たちが大切にしている事を俺も出来る範囲で守りたいよ」
そうなのはに応えると、彼女は笑顔で何度も頷いた。
そんなに嬉しい回答なのだろうか?
個人的にはそう思わないけど…。
「それでいいと思うよ。ライト君はちょっと考えすぎって思うの。もっと感じたままに言葉にして行動したらいいと思う。ライト君の力の源って人を思いやれる心だと思うから」
「そうかな?」
「うん。ライト君って困ってる人放っておけないし、相手の目線に立って考えてくれる。私も助けられてるし。だから…ありのままでいいと思うの」
「ありのままか…下手に見繕うのは良くない…か」
なのはの言葉を聞いて、心を覆っていた靄の様なものが消えて楽になった様な気がする。
俺達キーブレードの担い手の源は心…先生に嫌という程教わったのにいつの間にか忘れていたのかな。
「…ありがとうなのは。うん…色々と軽くなった気がする」
「うん。いい顔してるよライト君。私も今のライト君の方が好きかな。先生の真似をしてるライト君ちょっと無理してる感じだったし」
「そっか…うん。本当にありがとう。あといい不意打ちもね」
「ふぇ?いい不意打ちって?何か言った?」
「んー…秘密。さぁ帰ろう。家も見えてきたし」
なのはの手を強く握って、飛ぶ速度を上げるのであった。