世界に光をもたらす鍵の担い手 作:鍵の担い手
ニアと再開した次の日。
いつもより早く起きた俺は、出掛ける準備を済ませてリビングに向かう。
リビングでは既に史郎さんと桃子さんが起きていて仲良く話をしていた。
そんな二人のいつも通りに声を掛ける。
「おはようございます」
「おはようライト君」
「今日は一段と早いわね」
「はい。ちょっとお話が」
お二人の向かいに座り、小さく深呼吸をしてから先日の話をする。
従妹と再会して両親は海鳴市に居る事。
今日会う予定があるから時間が欲しいことを伝えた。
「そう…ご両親見つかったのね。中々見つからなかったから安心したわ」
「はい。仕事の都合で中々動けなかったみたいで。それを理由にしてはいけませんけど」
「でも本当によかったよ。時間ならそうだね…ピークのお昼前とかどうかな?」
「大丈夫です。あとそれと…謝らないといけない事があって。その…記憶喪失の件ですけど…」
両親に会ってもらう前に記憶喪失の事で嘘をついていた事を謝ろうとすると、士郎さん達はなぜかニコニコしていて、俺は言葉を詰まらせてしまう。
そんな二人の顔を見てまさかと思っていると、士郎さんは口を開く。
「記憶喪失は嘘だろう?途中から気づいていたよ」
「私はお父さんや恭也に言われるまでは気づかなかったけど」
「……やっぱし気付かれてました?」
いつから気づいたのかは置いておき。
どうして何も言ってこなかったのか聞いてみると、士郎さんは昔世界各国を回っていて色んな人を警護していたとかで、中には訳アリの人もいて、そういった経験から俺も『分け合って記憶喪失を演じているのだろうなぁ』と思って聞かなかったらしい。
後はなのはと仲良くしてるし、害も全くないって分かっていたとか。
「だから君が言ってくれるまで待っていたんだ」
「それは…ごめんなさい。色々と訳アリ一家なので。ですので話せる範囲で話せればと」
「えぇ。会えるのを楽しみにしているわ」
「はい。では行ってきます。翠屋に向かう前に連絡しますね」
軽く会釈をしてから高町家を出てニアとの合流地点に向かうと、既にニアは待っていた。
声を掛けてから彼女の後を付いて行くと高層マンションにたどり着く。
「ここの20階。叔母様も叔父様も来てる」
「凄いところにまた…」
呆れながらも中に入って20階に。
玄関を開けて中に入るとまっすぐリビングまで案内された。
高層マンションなだけあってリビングは物凄く広く、大きな窓から海鳴市を一望できる。
「いい景色だろうライト」
「あ…父さんと母さんも」
となりの部屋から姿を現す父さんと母さん。
二人は俺を挟むように立ち、同じように外の景色を見ながら母さんは抱き寄せてくる。
「無事でよかったわライト。見つけるのが遅くなってごめんなさい」
「ん…素敵な友達のお陰で何ともなかった。後で紹介したいから来てくれる?」
「えぇ…お世話になった人達を紹介して頂戴」
「うん。父さんは…」
父さんの方を見ると、あの人は何も言わずに頭を撫でてきた。
それだけであの人の心情は分かるから俺も何も言わずに脇腹を軽く殴るだけにする。
「さてと…ここに来てからの事を話ながら今後の事を話そう。渡したい物もあるし。隣の部屋に来てくれる?」
「うん。楽しみだね」
父さんの後を追って隣の部屋に移動すると、その部屋は見慣れた研究室に改良されていて、その中央には俺が持っているお守りと同じ形をしたものが試験管の中に浮いていた。
というかその前に、部屋を改良している方が気になるんだけど…。
「どうして改良してるの?」
「あぁ。私達とニアはこの世界に移り住むことにしてね。まぁ私は色々と仕事があるから居ない日もあるけど」
「え…?」
移り住むと聞いて驚きを隠せなかった。
訳を聞くと、お爺様に結構色々と言われたらしく、中でも俺やニアに好きな事をもっとさせなさいときつめに言われたとか。
でも無条件ってわけでもなく、定期的にお爺様に顔を出すことと、一年後にあるマスター認証試験は必ず合格すること。
何でもいいから一つやりたいことを見つけることが条件らしい。
「お爺様が…。そっか…ジュエルシードの件が片付いたら挨拶に行かないと」
「必ず会いに行きなさい。やりたいことに関してはゆっくりでいいから」
「うん…」
やりたい事かぁ…帰る気満々だったから全然考えてなかった。
今はジュエルシードの事でいっぱいいっぱいだし、父さんの言っている通りゆっくり考えよう。
「さぁライト。このデバイスを君に。ホープとロストの人格を移すことで完成する」
「デバイスって…もしかしてインテリジェントデバイス?」
「よく知ってるね。でも管理局で使用されているものとは違ってジャケット特化型。ミッドチルダ式を参考にして我々の世界の技術と過去の遺産を存分に組み込んだもの。武器に変形も可能だし、ライトの光と闇の力を最大限に引き出しつつ、キーブレードの完全開放も負担を限りなく減らすことが出来る」
「それはまたすごい…ありがとう。じゃあ早速」
キーブレードを取り出してデバイスに向けると、淡い光が二つキーブレードから飛び出し、デバイスの周りを回ってから一つになってデバイスの中に入っていく。
少し待っているとデバイスから声が聞こえてきた。
『人格統合完了。システム起動問題なし。おはようございますマスター』
「お早う。えぇっと今は…声的にホープ?」
『いえ。ホープでありロストでもあります。二つの人格を統合して新たな形になりました。ですので新しい名を頂けないでしょうか?』
「人格の統合…まぁ二人はもともと俺の光と闇の心の現身だし可能か…。かなり驚いたけど任せて」
元々キーブレードの能力で生まれた二人。
心ではないのでいつかは俺の中に戻るか消える定めだったけど、こういう形で一つになって残ってくれるのはとても嬉しい。
デバイスに移動させたのも心を分け与える力の応用だし。
っと、その前に名前だね。
いい名前を付けたいなぁ…。
「うーん…出来れば俺の世界にゆかりある名前に…」
暫く考えていると、ある二つのワードが思い浮かぶ。
昔存在した特殊七人のお姫様と純粋な七つの心。
御伽噺でお爺様に何度も聞いた話。
それらを組み合わせた言葉を名前にしよう。
「セブンハート。意味は七つの心だね。どうかな?」
『…はい。素晴らしい名前かと。では登録します』
デバイスが淡く光ってから小さなピアスの様な形に変わり、右耳の耳朶に装着される。
ピアスかぁ…そういえば先生も付けてたっけ。
先生のお母さんからもらったって聞いたけど。
「これでライトもミッドチルダ式魔法デビューだね」
「バリアジャケットとかでしょ。なのはの場合はイメージで構築されてたけど俺は…」
『マスターの場合はモデルがあります。マスターシンシアから託されたコートを元に作成しようかと。光と闇…それぞれの力に適した形状で。武器に関しては今後考えていきましょう。今後敵を倒すのではなく、拘束する状況も出てきますし』
「了解。どこかで軽く合わせておきたいけど…」
そこは後でなのはにお願いしよう。
ニアでもいいけどお互い加減しなさそうだし、結構ガチの戦闘になりそうだし。
「あぁそれと、どこかで時間があればアースラに来てほしい。シンシアを復活させないと」
「了解…ん?アースラ?先生の復活?前者は父さん関係として後者は何言ってんの?」
「何って…あぁそこからか。実は…」
父さん曰く、先生は死んだのではなく、肉体を散らして心だけの存在になったらしい。
それなら昔の人がそれで悪さをしたというのを聞いたことがあったので理解が出来る。
しかも、肉体を失ったとしても他の肉体に自身の心を映すことで乗っ取れるとか。
まぁでもリスクもあるわけで。
心だけの存在になったり、肉体だけの存在になって心を求めたり(ちなみにこの場合は一応同一人物である)。
とまぁ色々とややこしい状態になる訳だが、父さんの話を聞くと一つ疑問が出てくる。
その疑問とは先生の心の在処。
一体どこにあるのやら。
「先生の心って何処?探さないといけないし、器だって用意しないと。というか器って誰になる訳?」
「そこは見てから大いに驚いて欲しい」
「…?まぁ分かったけど…っと準備してよね父さん。11時ぐらいにはお店行きたいから」
「了解だ。一通り纏めたら声を掛ける。話はその後だね」
「ん。ニアと待ってる」
部屋を出てリビングに戻ると、ソファに座って本を読んでいるニアが居たので向かいに座ると、彼女は本を閉じて紅茶を淹れてくれた。
手慣れた手付きに感心していると、先日一緒にいたなのはの事を聞いて来た。
「強い子だね。ライトより魔力多い気がするけど」
「実際多い。けど魔力で比べるのは早いぞ。ミッドチルダ式と俺達は違うし」
「基本魔法とキーブレードに付随している魔法は魔力消費しないからね」
「フレア系統とアルテマ系統は結構喰うけど」
「使うと疲れるよね。動けなくぐらい魔力消費するし」
それは確かにと頷く。
基本魔法とラ系ガ系魔法は対して魔力を消費しないけど、フレアとアルテマと付く魔法はかなり消費する。
俺達の実力不足ってのもあるけど。
「ニアも一緒に行く?多分なのはも居ると思うけど」
「うん。ライトのデバイスの調整も付き合いたいし、ライトのガールフレンドとお近づきになりたいし」
「えっと友達だけどガールフレンドってわけでは…まぁいいか」
「うん…?てっきりそうだと思ったけど…まぁいいや。色々教えてよ」
ニアがぐいぐい聞いてくるのでこの世界に来てからの事を一通り話している間に準備を済ませた両親が来たので翠屋に向かう。
予定よりも時間が早いから心配だったけど、お客様は比較的に少なく、バイトの人達でも十分回せる状態だった。
「いらっしゃいライト君。予定よりも早かったね」
「はい士郎さん。準備が早く終わったので。桃子さんは?」
「あぁ。今から声を掛けてくるから空いてる席に座って待っていてもらって欲しい」
「分かりました。えっと自分は…」
ちらっと両親を見ると、俺の顔を見てから微笑んだので、余計な事はしない方がよさそうだ。
士郎さんに言われたとおりに両親を空いてる席に案内して少し待っていると、士郎さんが桃子さんを連れてきたので両親を紹介し、お互いに自己紹介し合うのを見てからニアと一緒にお店を出ると、タイミングよくなのはと会った。
「あ。ライト君」
「あ…なのは。来てたの?」
「うん。お父さんから連絡あって」
「そっか。今お話ししてるから後で紹介するね。だから先に…」
ニアを紹介しようとすると、彼女はなのはの手を取って自己紹介を始めてしまう。
こういうのは手順が大切だと思うけど、ニアも初めての異世界だし、積極的にいきたいのかな。
「ライトの近くにいてくれて、助けてくれてありがとう高町さん。私の事は遠慮なくニアって呼んでね」
「あ、じゃあ私もなのはって呼んで欲しいかな。年も同い年だってライト君から聞いてるから」
「そっか。じゃあなのはって呼ぶね。仲良くしてくれると嬉しいな」
「うん。私も仲良くなりたい」
(…完全に蚊帳の外なんだけど)
めっちゃいい顔してなのはと話をしているニア。
まぁ年の近い女の子なんていないし、ガールズトーク…だっけ、そういうのもやった事無いだろうし。
「ライト。なのはに例の件お願いするんだよね?叔父さん達の話長くなりそうだったら今のうちにやっておかない?」
「そうだね。ちょっと念話で確認してみる」
両親に念話で来てみると、結構話が盛り上がっていると返答が来て暫く続きそうとのこと。
ので暫く適当に遊んできてほしいと伝えてくる。
となれば今のうちに済ませてしまおう。
「なのは。ちょっと俺と一緒に訓練しない?ニアも混ぜて」
「うん。えっとそれならユーノ君にも声を掛けた方がいいかな?」
「結界なら心配しないで。私が構築するから」
「ありがとう。じゃあいつもの所いこっか」
なのはといつも一緒に訓練している高台に移動し、ニアのキーブレードで隔離結界を展開してもらってからなのははバリアジャケットを纏ってRHを杖に変形させる。
「よーし。今度は俺達だね。セブンハート!」
『YESマスター。バリアジャケット起動!』
セブンハートが淡く光り、白と黒の星に分かたれて胸の中心に移動。
白い星は薄めの装甲に変化して上半身を覆い、黒い星は見慣れた黒いコートと変わって全身を覆った。
「おぉーこれがバリアジャケット。先生からもらった光闇の衣と世界を行き来するのに使用するアーマーか。成程…」
『今後のマスターの成長にあわせてバージョンアップしていこうかと』
「うんうん。いいんじゃない。それじゃあ始めようかなのは」
「……」
「ん…?なのは?」
こちらを指さして体を震わせているなのは。
えぇっと…この反応は驚いているのかな。
まぁ確かにいきなりデバイス出してなのはみたいにジャケット纏ったらそうなるか。
「え…えぇっとライト君?そ、そのいまいち状況が飲み込めないの。それってバリアジャケットだし、さっきの星ってもしかして…」
「うん。父さんがミッドチルダ式を参考にして俺の世界の過去の遺物とか組み込んだんだって。RHみたいに武器にも出来るみたいだけど、まぁ暫くはいいかな」
「な、成程…えっとそれじゃあ色々と加減しなくてもいい感じ?」
「そうだね。ジャケット貫通しない程度なら。さ、始めよう」
キーブレードを二本取り出し、ニアに審判をお願いして訓練を始めるのであった。