世界に光をもたらす鍵の担い手 作:鍵の担い手
(う、うぅ……ここ…何処?)
意識が覚醒して最初に目に入ったのは見たことの無い白い天井。
ボクは確か時空の歪みに飲み込まれて……あぁ駄目だ思い出せない。
少し記憶があやふやだ。
あの前後の事が思い出せない。
「命に別状はありませんね。外傷も殆どありませんし1週間程で退院出来ますよ」
(……?声?)
誰かの声が聞こえ、視線だけそちらを向けると、その先には白衣を来た中年の男性と若い男性がいた。
何か話をしているみたいだけど、何の話しかな?
というか体がとても痛い、命に別状は無いと言ってるけど、魔力が空っぽで回復会方が使えないから凄くつらい。
「そうですか…良かった」
「娘さんが直ぐに連絡してくれたお陰ですよ」
「良くやったぞなのは」
「そんなことないよ。たまたま通りかかっただけだから」
「それでもだ」
若い男性が、ボクの側にいた小さな女の子の頭を優しく撫でる中、その光景が歪みに巻き込まれる前に父さんに同じことしてもらったことを思い出す。
きっとこの子も父親から目一杯の愛情を注がれているんだろうね。
「それでこの少年の事ですけど、警察に連絡したところ、あの時間帯で水難事故などは起きていないそうで。ましてや船から落ちたなどの連絡も」
「そうですか。ではどこから……」
「砂浜に行く前に何か見なかったかいなのは?」
「ううん。何も見てないよ。本当に偶然…あ」
(……気づかれた)
なのはと呼ばれた女の子と目が合ってしまう。
少しだけ視線を交わしていると、なのはは直ぐに父親の袖を引っ張って伝える。
「お父さん。目を覚ましたよ」
「本当かいなのは!」
彼女の父親もボクの傍に来て顔を見てくる。
白衣を着た男性も傍に来て、優しく声を掛けてきた。
「大丈夫ですか?あなたは砂浜で倒れていたんですよ。それをこの女の子が見つけたんです」
「……倒れて?君が…?」
「うん。砂浜で倒れているのを見つけて…その…大丈夫?怪我は大したこと無いみたいだけど」
「……(言葉は通じる…のか?あるいは)」
周りを見渡すと、見たのない機械が何台かあって、そのうちの一台はボクの左腕に繋がっている。
液体の入った袋と繋がっているのを見ると、点滴か何かかな?
どうやらここは、ボクのいた世界の常識は全く通じそうになさそうだ。
「君、名前は言える?僕は高町士郎と言ってね。この子は娘の…」
「高町なのはって言います」
「……ライト。僕はライト…オラシオン」
名前を伝えると、士郎さんは小さな紙に記していく。
今の状態で聞けることを聞くつもりなのかな。
それならボクの方からもいくつか質問しよう。
体は痛いけど、会話する分には問題ないし。
「あの…ここは?」
「ここは日本の海鳴市にある病院だよ」
「ニホン…ウミナリ……」
成程、それがこの場所の地名になるのかな。
確か父さんが別の世界には大きな国と小さな町が合ってそれぞれ地名があるって言ってたかな。
「君は何処から来たの?名前からすると外国の人なの?」
「ガイ…コク?]
聞きなれない言葉に首を傾げると、なのはと士郎さんは顔を見合わせる。
その様子を見て気づいたのは、このニホンという場所以外にも色んな土地がある可能性があるという事。
それらは名前で分別が可能って事。
だからなのはは僕がガイコクの人だと思ったのだろう。
「えぇっと…外国の人じゃないの?」
「…ごめんなさい。ちょっと分からないかな」
「分からないってことは…もしかしてライト君。君は記憶が無いのかな?」
「少し靄がかかってはいます。分かるのは自分の名前ぐらいで」
「成程。じゃあどこから来たとか、家族の事とかは思い出せないかい?」
士郎さんの質問の答えを少し考える。
記憶があやふやな部分はあの歪みに飲み込まれる前後。
何かが直撃したような記憶はあるけど、そこを説明しても分からないだろうし。
取り敢えず名前しか分からない事にしておこう。
「ごめんなさい。ちょっと分からなくて……本当にごめんなさい」
「いや良いんだライト君。今はまだ思い出せなくても今後思い出せるかもしれないから。今はゆっくりと治療に専念して。一週間ぐらいで退院できるから」
「…はい。色々とすみません」
色々と迷惑をかけてしまった様子。
どこかでこの恩を返さないといけないけど、今の状態で動くのはかなり厳しい。
暫くは回復に専念しないと。
「じゃあ僕たちは帰ろうなのは。色々持ってこないといけないからね」
「うん。また来るねライト君」
「あ…うん。その…色々とありがとうございます」
「気にしなくていいよ。では先生。また明日来ます」
士郎さん達は白衣の人にお辞儀をして退出していく。
白衣の人もボクと少し会話をしてから退出していき、部屋には誰も居なくなった。
「…ふぅ。どうしようかな…これから……」
これからの事を考えないといけない。
まずはどうやって元の世界に帰るか、きっと父さんの事だから手は打ってくれていると思うけど。
それと魔力回復、これに関しては直ぐに終わると思う。
ちゃんと寝て食事をすれば問題ない。
後は……。
「ちゃんとお礼しないとね」
助けてくれたあの人たちにはきちんとお礼しないと。
出来ることは限られているけど、当分お世話になるのは確定だろうし。
断っても無駄なんだろうなぁ……。
『マスター。お目覚めになりましたか』
『体は問題ありませんか』
「ホープにロスト。大丈夫だよ」
近くの机に置かれていた大切な相棒達が心配してくれる。
ボクは手に取っていつも通り首からぶら下げる。
「よかった。君たちも来てくれて。問題はないかなロスト?」
『マスターの魔力が枯渇している以外は問題ありません』
『マスターは体の回復に専念を。元の世界への帰還とシグルド様への連絡は我々で対応します』
「程々にね。それとこの世界の情報収集も同時進行に」
『『YESマスター』』
さて…これからどうしていこうかな。
何事もなく元の世界に帰還…というわけにはいかないだろうし、ボクがこの世界に来たわけもありそう。
でも…今はゆっくりと休まないとね。
「じゃあボクは休むね。何かあったら連絡を」
相棒達に声を掛けてから体を休めるのであった。
―――――――――――
そんなわけで日が経つの早く、なのは達に助けられて一週間経ちました。
なのはは毎日お見舞いに来てくれて色々と話をしてくれた。
家の事とか学校の事とかをとても楽しそうに。
きっと記憶があやふやなボクの事を気遣ってだろう。
記憶に関しては少しなのは達を騙しているので心が痛むけど、話をしている内に『なのはなら問題なく話せるのでは』と思ってしまうけど、そこはロストとホープに止められてしまう。
ともあれ、一週間経って病院を退院することになったボクは、暫く高町家にお世話になることに。
流石にそこまでお世話になるのは失礼だと断ったけど、お見舞いに来てくれたなのはの母親である桃子さんにすっかり気に入られたのと、記憶が無いこと止めとなったので、両親が見つかるか、記憶が戻るまでの間お世話になることになってしまった。
というわけなので、士郎さんに迎えに来てもらい高町家に移動すると、早速桃子さんに出迎えられた。
「ようこそライト君。高町家に」
「暫くお世話になりますね桃子さん」
軽くお辞儀をすると、家の中からなのはの兄である恭也君と美由希さんが姿を現す。
この二人もなのはと一緒にお見舞い何度か来てくれて、話している内に親しくなった。
「お二人もよろしくお願いします」
「えぇ宜しくね」
「あぁ宜しくな」
二人にもお辞儀して後に中に入れてもらい、用意してもらった部屋に案内される。
ちょうど空き部屋があったとかで、その部屋を使ってほしいとか。
部屋に入ると、中には机とベッドなど生活に必要なものをある程度揃えてあった。
「ありがとうございます桃子さん」
「いいのよ。遠慮なく使って頼って頂戴」
「はい。ところでなのはは?」
「今日は塾があるから遅くなるわよ」
「塾…」
そういえば何かを学びに行ってるって言ってたかな。
俺とは縁が無い事だから聞き流していたけど、学校に行った上で別の所で勉強とはやるなぁあの子。
一応俺の世界にも学び舎って場所はあったけど、それとは別で学ぶ所なんてなかったし。
「さ、荷物を置いておいで。なのはが帰ってきたら晩御飯にしましょう」
「はい。ではまた後で」
部屋に入って荷物を置いてからベッドに座る。
一週間ゆっくり休んだおかげで魔力は全快。
この世界の事もロスト達に調べてもらったのである程度は理解できた。
そのうえでどう行動するか考えないといけない。
「あまり士郎さん達に迷惑を掛けたくないし…そうだロストにホープ。力が必要な時以外はボクの心に戻る?」
『その必要はありません。私もロストも直ぐに動ける状態でいる必要があります』
『ホープの言う通りですマスター』
「了解。じゃあ今後の方針を決めよう」
今更だけどこの鍵はキーブレードとボク達の世界では呼ばれていて、心が形作った物って言われている。
この鍵が現れるのは人それぞれで、扱える人がいれば扱えない人もいる。
ボクの世界でも扱える人は片手しかいない。
これは大昔の戦争で殆ど失われてしまったのが原因だ。
そんな中で俺の二つの鍵は代々継承されてきたちょっと特殊な鍵で、他の鍵にはない能力がいくつかある。
そのうちの一つが会話能力で、この鍵にはボクの心を映した人格が宿っている。
昔の担い手がかなりのやんちゃしたらしく、その結果として得た能力らしい。
「まずはこの世界に飛ばされた原因の捜索。元の世界のは連絡出来ないから父さんからの連絡待ち。他には……」
『歪みの発生原因です。あれ程の力が発生したのであれば、こちらにも影響があるかと』
「となると……なのはがボクを見つけた場所に向かう必要が―――」
「ただいまー」
「あ…帰ってきた。じゃあ行かないと」
玄関が開く音と元気ななのはの声が聞こえてきたので、ボクはロスト達との会話を切り上げてなのはを出迎えに行くのであった。