世界に光をもたらす鍵の担い手 作:鍵の担い手
高町家に住まわせて貰う事になってから数日経ちました。
未だ元の世界への帰還方法は分からない日々が過ぎています。
色々と調べてはいるけど、分からない事が多く悪戦苦闘中。
加えてボクの身は身元不明という扱いになっているので安易に動くことも出来ません。
士郎さんがと桃子さんが色々と手は打っていくれているみたいだけど、ボクの事なんて分かるわけもなくこちらも進展ありません。
とまぁ八方ふさがりの状況とはいえやれることは沢山あります。
高町家の家事を手伝ったり道場の掃除をしたりなど色々と。
『そこまで気を使わなくても』と言われたけど、住まわせてもらっている以上はきちんとしないいけないし、何でも甘えるわけにいきません。
と近況はこんな感じで、今日も朝から桃子さんと一緒に台所にて朝食の準備を手伝っている。
この世界の料理はとても奥深くておいしいものが多い。
俺の世界は山菜と果物と時々狩る獣肉ぐらい。
ゆえに調理と言えば高火力で焼くかスープか山菜と一緒に煮るかの三択程。
なのでこの世界の料理を食べたときはかなり感動した。
そんなわけで頑張って朝食の準備中です。
「桃子さん。みそ汁の味見お願いしてもいいですか?」
「任せて」
桃子さんに味見を頼んでいる間にお茶碗とお皿を準備していると、味見を終えた桃子さんが親指を立てて微笑む。
ふぅ…今回は失敗せずに済んだかな。
初めて作った時なんて味噌の分量間違えてとんでもない事になったし。
「今日は大丈夫よ。野菜にもちゃんと火が通ってるし」
「それは良かったです。初めて作った時なんて酷かったですから」
「料理は失敗を繰り返して美味しくなるのよ。それにライト君はお肉の火入れは完璧じゃない。記憶を失う前に誰かに教わったのかもね」
「それはそうかもしれませんね」
時々お話するときに記憶を思い出せるような発言をしてくれる。
桃子さんだけでなくこの家の人みんな。
特になのはは年が一緒だからよく話をする。
学校の友達のアリサさんとすずかさんの事。
恭也くんや美由希さんは道場の事が多いかな。
時間があるときに連れられてちょっとだけ剣道の事を教わった。
「そろそろ皆起きるからよそっていこうか」
「はーい」
朝食を人数分わけてテーブルに置いていく。
その間に士郎さんを筆頭に恭也君と美由希さんが降りてきて席に座っていく。
なのはは…まだ部屋かな、昨日は塾で遅かったみたいだし。
「今日も美味しそうな朝食だね」
「ほとんどライト君が作ってくれたわ」
「味噌の分量間違えていないよね」
「流石に同じことは二度ないわよ。そうよねライト君」
「勿論です。桃子さんのお墨付きです。味噌汁もだし巻き卵も完璧です」
自信満々に告げると、士郎さん達は『いただきます』と言って食べ始めると、最初に口を開いたのは士郎さんで『とても美味しいよ』と言ってくれた。
恭也君と美由希さんもとても美味しそうに食べているのでボクも満足です。
「本当においしいね。だし巻き卵もそこまで濃くないし」
「味噌汁も味噌だけではなく野菜の味もしっかりしている」
「うん。本当においしいよライト君」
「喜んで頂いてとても嬉しいです。よければお弁当もあるので」
包んだお弁当を恭也君達のカバンの近くに置いてから、朝食の準備で使ったお鍋などを洗い始めると、二階からなのはが眠そうな顔で降りてきて席に座る。
それに合わせるようにご飯をよそってなのはの前に置く。
「おはようなのは。ご飯の量これで大丈夫?」
「おはようライト君。大丈夫だよ」
「了解。お弁当カバンの傍に置いておくから忘れないで」
「うんありがとう」
なのはのお弁当を包んでカバンの傍に置いて洗い物を再開すると、食べ終わった士郎さん達が食器を持ってきたのでそれも洗っていき、それと同時進行でお店に行った士郎さんと学校に行った恭也君達を見送る。
「ライト君。後はやっておくから、なのはを途中まで送るついでに日課の散歩行っておいで」
「分かりました。玄関で待ってるねなのは」
まだ朝食を食べているなのはに伝えてから部屋に戻って、外出用の服に着替えて準備をする。
相棒達と念の為にお財布を持ってから玄関に向かうと、朝食を食べ終わったなのはが来た。
「お待たせライト君」
「ボクも今来た所。では行ってきます桃子さん」
「行ってきまーす」
「行ってらっしゃい」
桃子さんに見送られて出発する。
送るといっても友人二人との合流地点までで、その後は適当に散歩をして帰る。
どこを歩くは決めないようにしている。
その方が色々と情報が手に入るかもしれないから。
「生活には慣れたライト君?」
「うん。なのはや皆のお陰で。この調子で記憶が戻ればいいんだけど」
「ちょっとは戻ったんだよね?」
「うん。両親の顔は朧げに。後は故郷の料理かな」
生活を続けていくうちに少しずつ戻っているようには接している。
その話を士郎さん達にもするべきだけど、それが原因で負担を増やすわけにはいかないのでなのはだけに話している。
「まぁ焦ってもダメだし、少しずつ取り戻して行こうよ」
「そうだね……」
あの時の事を思い出せれば進展するんだろうけど、そう簡単にはいかない。
父さんと母さんの事も心配だから早く何とかしたいんだけど。
「ところで今日は何処まで行くの?」
「んー今日は砂浜かな。なのはが見つけてくれた所。その後は図書館かな」
「砂浜か。何か分かればいいね。私も塾が無い日は手伝うから」
「…ありがとう」
なのはの優しさには頭が上がらない。
日課の散歩だって付いて来てくれるし、文化とか文字で苦戦していると助けてくれる。
でもちょっと頑固というか、一度決めたらやりきらないと済まない子というか。
中々折れない子でもあるのかな。
こういうところもなのはの良いところだと思うけど。
「あ、なのは。バス来てるよ」
「え!本当だ!行ってくるねライト君!」
「行ってらっしゃい。気を付けてね」
笑顔で手を振りながら駆け足でバス停に向かうなのはをボクも手を振って見送り、バスが無事に発進したところまで見送る。
それから砂浜に向かってなのはがボクを見つけれくれた場所に移動する。
その場所は普通の砂浜と一面綺麗な海でそれ以外は何も見えない。
ボクの世界とほとんど同じだった。
「さてと…ホープ。ボクがなのはに助けられる以前の事は調べたんだよね?」
『はい。過去半日に遡りましたが、水難事故や上空からの飛翔物は確認されていません』
「という事は、海中に飛ばされて流された…ってことだね」
この広い海を手当たり次第調べるのかぁ……。
かなり骨が折れそうだけど、何かしら痕跡があるだろうし、気合と根性で何とかなるでしょ。
「よーし行きますか」
『今の状態での魔法の持続は30分が限界です。調査は20分ほどで切り上げてください』
「コート無いから仕方ないかな。時間が来たら連絡を」
軽く準備運動をしてから、周囲をステルス能力を組み込んだ結界で覆って海中に飛び込む。
周囲を見渡しながら妙な物とか無いかを捜索するけど、見当たるのは魚と珊瑚ばかり。
目立った物や残滓なども見当たらない。
「うーん。何もないね。出口はおろか魔力の残滓も」
となると調べる前提が間違っているのだろうか。
父さんの話では時空を開いたときに出口も設定するって言ってたから探してみたんだけど、もしかして出口はここにはないのかな?
でも当時の状況を考えるとこの海のどこかにあるだろうし……。
(というか時空ってどうやって開くんだろう?大きな力の衝突で開くのは過去の記録で分かっているけど。というか父さんって昔ミッドチルダって所で勉強していたっけ。どうやって行ったんだろう?)
この辺りの事をもう少し父さんに聞いておくべきだったかなぁ。
まさか自分が別世界に飛ばされるとは思ってなかったし。
「あの時の事をもう少し覚えてたら……ん?なんか流れ変わった?」
海水の流れが僅かに変わった様な気がした。
何かの大型魚でも来たのかと思って一旦停止して周囲を調べると、周りに魚一匹いない事に気づく。
こういうときは大型魚が現れる予兆なのだが、そんな感じはなく、どちらかというと得体の知れない何かが現れるような感じだ。
「嫌な予感がするなぁ……」
嫌な予感を感じながら周りを警戒していると、背後から何かが接近してくる気配を感じとる。
魚にしては大きいし魔力を感じる。
この世界には似つかないものだ。
「さてと何が……何…が……」
振り返った瞬間に視界に移ったのは、全長20メートルはあるであろう巨大鮪であった。
「……あの、どこのどちら様で?」
あまりに巨体に思考が追い付かず変な言葉が出てしまうが、巨大鮪はそんなことを気づく訳もなく横を通り過ぎていく。
しっかし大きいあの鮪、お寿司何人前ぐらいになるんだろう?
『マスター。異常な魔力を検知しました。対処を推奨します』
「え…?って本当だ。じゃあ手早く済ませよう」
白の鍵、ホープオブメモリーを呼び出して光弾を放ち巨大鮪に直撃させると、巨大鮪の眼が光り一気に加速。
そのまま速度を落とさずに旋回してこちらに突っ込んできたが、瞬時に回避して剣の先からチェーンを解き放って拘束する。
「よっしゃ捕まえ―――たぁ!?」
拘束した瞬間に思いっきり引っ張られてしまう。
そういえば鮪ってとんでもない速度で回遊するんだっけ!?
そんな魚が巨大化すればとんでもない速さになるよね!
「こういう時は数を増やす!」
チェーンの数を増やして拘束強化。
軽く1000本程まで増やした所でようやく停止し、すかさずロストオブメモリーを呼び出して剣先にエネルギーを集約させる。
「アルテマ―――ショットッ!」
殺めない程度の威力で放って直撃させる。
その際の衝撃で凄まじい水泡や、水圧に襲われるけど結界を強化して防御。
そのまま暫く待つと、見慣れたサイズの鮪が隣を通り過ぎて去っていった。
「一応撃破…でいいのかな?」
頬を掻きながら見送ると、あの鮪を拘束した場所に小さな鉱石の様なものがあったので回収する。
何かの数字の様なものが書かれている不思議な物。
どう見てもこの平和な世界にあってはいけない物だった。
「……とりあえず回収して解析かな。お願いホープ」
『了解しましたマスター。では帰りましょう』
『しっかりとお休みを』
「分かってまーす」
鉱石をホープに回収した後、ゆっくりと帰るのであった。