世界に光をもたらす鍵の担い手 作:鍵の担い手
空が黒く染まった夜。
人一人居ない街をユーノと一緒に駆けている。
その理由はただ一つ―――夜明け前に姿を現したジュエルシード。
ジュエルシードは虫であるカマキリを取り込んで街を走り回っていた。
「夜遅くにごめんねライト。朝から予定があるのに」
「お店の手伝いだから大丈夫だよ。とはいえ…」
人並みに大きな大きくなったカマキリを見てボクの世界の魔物を思い出していた。
あれより一回り大きい魔物、切り裂かれたら一溜りもない。
初めて戦った時は苦労したよ。
「ストライクレイドッ!」
ロストをカマキリに向けて投げ飛ばし背中に命中して足を止める。
そのままロストはカマキリの真上に弾かれたのでその位置にショートワープ。
タイミングよくロストをキャッチしてカマキリを一刀両断しジュエルシードをはじき出す。
「よーし回収っと」
ジュエルシードをホープに回収し、元のサイズに戻ったカマキリを草むらに話してから帰路に就く。
これでジュエルシードは四つ目…なのはは二つ回収しているのでこれで六つとなった。
「流石に慣れてるねライト。普通は睡魔とかの影響ありそうなのに」
「野宿で真夜中に原生生物に襲われるから慣れてる。流石に修行中の一環で呼び寄せるのは頭に来るけど」
真夜中に奇襲された時の備えで先生が呼び出したときは軽く殺意が沸いたけど、要は体は休めておいて脳は起こしておけってことだし、ボクの世界の事を考えるとマジで必須なスキルだし。
「っと到着だね。じゃあこそっと部屋に……」
音を立てないように窓を開けて中に入り、ユーノがなのはの部屋に戻ったのを見送ってから寝巻に着替えてベットにダイブ。
そのまま瞼を閉じて体を休めている間に携帯のアラームが鳴ったのでゆっくりと起き上がる。
時刻は6時30分、今日は予定が入っているので早めに起きないと。
「んー…今日はお店の手伝い。頑張らないと」
ベットから降りて軽くストレッチしてから服を着替えてから相棒達を持ってから一階に降りると、既に士郎さんと桃子さんは起きていたので挨拶をする。
「おはようございます。準備手伝いますね」
「おはようライト君。じゃあお願いしようかしら」
「随分張り切っているねライト君」
「そうですか?もしかすると頼られるのは嬉しいのかもしれませんね」
士郎さんにそう答えてから両手を洗って朝食の準備を手伝う。
今日は朝から士郎さんはコーチを務めているサッカーチームの試合があるので、午前中はお店のお手伝いをすることになっています。
恭也君や彼女さんが居るのでキッチンは大丈夫だけど、フロアは結構大変だったりする。
というのも桃子さんの作るお菓子は超が付くほど美味しくて(シュークリームを食べたときはあまりの美味しさに固まってしまった)それを目当てに訪れる人が多い。
なんでも海外で修行していたらしく、地元では超一流のパティシエと噂にもなっているほど。
「桃子さんは…海外で修行していらしたんですよね?」
「あら。どうしたのいきなり?」
「えっと…少し気になるというか…。単身一人で見知らぬ土地に行くのはどういう感じなのかと」
「うーん…そうねぇ……」
自分なら不安と恐怖で一杯になりそう。
事実としてこの世界に来た時もこれからどうしようか不安でいっぱいだった。
幸いにも言葉が通じたからよかったけど、桃子さんの場合は言葉も通じないからうまくいかない事も多いだろうし。
「色々と大変だったけど楽しかったわ。色んな人と出会ってお話をして世界が広がっていって。辛い事もあったけど、お菓子作りが大好きだから頑張れたわ」
「大好きだから頑張れる…」
その言葉を聞いた時、修行時代に師匠に言われたことを思い出す。
何かと悩んで無理をしていた修行開始当初に師匠に言われてたっけ。
ーもっと自分を大事にしてよ。自分の事大嫌いなの?
ーと言われても…それって大事な事ですか?
ーもちろん。じゃないとアンタ早死にするわ。先ずは自分の事を理解して好きになりなさい。ボクが色々と教える最初の条件だから。
ーはぁ…俺が俺自身を…。
当初は本気で相手にせず流してしまった結果、のちにこの言葉の意味を嫌という程思い知らされ、ボクの生き方を大きく変えるきっかけになる訳だけど。
「どうしたのライト君?何か思い出した?」
「…もしかしたらあの砂浜に流される前後の事を思い出せると思って伺ってみたんですけど、何も思い出せませんね。でも…大好きだから頑張れるのはよく分かります」
ボクも父さんや爺様の喜んでいる顔を見るのが大好きだから、どれだけ辛いことがあっても頑張れる。
それはこの世界でも同じ。
なのはや皆が笑っているのを見ると嬉しくなってくる。
だからこそ…嘘をついているのがとても苦しい。
「ライト君は何が大好きなの?」
「大切な人が喜んでいる所です。記憶はなくても朧げに誰かが嬉しそうに笑っている顔は覚えています。今はなのはかな。あの子が笑っているとボクの心もとても喜んでいるのを感じます」
「そっか…確かにライト君の前だと良く笑ってるわね」
「元気が出て助かってます」
なのはの笑顔には本当に助かっている。
徹夜でジュエルシードを回収に行って寝不足の日とか、なのはの元気な声と笑顔見れば疲れとか吹き飛ぶし。
「ライト君。そろそろひっくり返さないと焦げるわよ」
「あ…やべ。集中集中と」
いけないけない、口だけではなく手も動かさないと。
せっかく上手く卵焼きが出来ているのに焦がしてしまっては元も子もない。
ので朝食づくりに専念していると、恭也君達も起きてきたので挨拶をしてから一緒に朝ご飯を食べて。
士郎さんは一足先に出かけたので見送り、桃子さんも遅れて朝食を食べてから恭也君と美由希さんと一緒にお店に出社。
なのははユーノを連れて応援に行ったので見送ってから洗い物を片付け、きちんと戸締りをしてから桃子さん達のお店である喫茶店に移動。
開店して間もないのにも関わらず既に満席状態。
ボクは直ぐにエプロンを着て接客のお手伝いを始める。
(さってと気合入れて頑張りますか)
手伝うのは接客だけだけど、これがまぁ大変で最初は中々上手くいかなかった。
けどそこはホープとロストの手をこっそり借りて乗り切ることに。
実際に今も各テーブルの状況とか色んな情報を纏めて優先的に教えてくれるし。
お陰で忙しくてもお店は回ってくれる。
(けど普段はこういう手を使わずに回してるんだよなぁ…)
士郎さん達の慣れっぷりに尊敬しながらお店を駆け回っていると、お店の扉が開いて士郎さんとサッカーチームに所属している人たちが入ってきた。
時計を見ると既に12時前で、サッカーの試合は既に終わっている時間帯。
駆け回っていたせいか、時間がかなり早く経っていたことに気づかなかった。
「お疲れ様です士郎さん」
「ライト君もお疲れ様。お手伝いありがとう。もう大丈夫だから外でなのは達とゆっくりしておいで」
「分かりました」
エプロンを脱いでから外に出ると、テラス席になのはとアリサさんとすずかさんが紅茶とケーキを楽しんでいた。
そんな所に入るのは気が引けるので隣の席に座ろうとしたけど、なのはにばっちり見つかってしまったので相席することに。
アリサさんとすずかさんとは初対面なので自己紹介することに。
「こんにちは。ライト・オラシオンと言います。お二人の事はなのはから聞いてますよ」
「こんにちは。私達もなのはちゃんから聞いてるよ」
「記憶喪失らしいわね。色々大変だと思うけど、困ったことがあれば助けてあげるわ」
「助かるよ」
自己紹介を済ませた後はケーキと紅茶を楽しんでからアリサさんとすずかさんはお迎えが来たので帰宅。
ボクとなのはは士郎さんと少し話をしてから家に帰ることに。
「ねぇライト君。来週末って予定入ってる?」
「入っていないけど何かあった?」
「うん。ちょっとお出かけに付き合って欲しくて」
「お出かけかぁ…」
いわゆるデートって奴かぁ。
個人的には問題ないし嬉しいけど…ただお出かけに行くなら美由希さんとかアリサさん達でも言い訳だし。
ただのお出かけってわけではなさそう。
「うん大丈夫。予定もないし―――なのは?」
隣を歩いていたなのはの姿が無く、足を止めて後ろを見ると、なのはは少しだけ目を見開いていて、何かを感じ取っている様子だった。
ボクも気づかれないように周囲を探知するけど、特に目立った気配は感じ取れない。
となるとほんの一瞬の事だったから気付かなかったのか?
「大丈夫なのは?」
「あ…うん大丈夫だよかえろっ!」
「……分かった」
心配を他所に、いつもの笑顔になったなのはと一緒に話をしながら帰るのであった。