世界に光をもたらす鍵の担い手 作:鍵の担い手
なのはとお話してから数日経ちました。
父さん達からの接触を待ちつつジュエルシードを集めていたけど、最近は中々出現せず手詰まり状態…かと思いきや、先日なのはがすずかさんのお家にお呼ばれした時にちょっとした事があったみたいで。
その日以降ちょっと落ち込み気味というか悩み気味というか。
ユーノに聞いてみても答えてくれない…ので、ここは一つ強引に行ってみようと思い、なのはの学校が終わる頃に校門で待つことにした。
(それにしても…すずかさんの家で何があったんだろう?腕に怪我してたし、妙な魔力も感じたし…)
その日は美由希さんに付き合っていたので自分はすずかさんの家に行っていない(誘われたけどもしもの事に備えて断っている)。
一瞬妙な魔力を二つ感じたけど、ユーノの結界で感じ取れなくなってしまった。
その魔力の持ち主がなのはと争ったのか、他の要因なのは分からないけど、その日以降に様子がおかしくなったのは事実。
何か悩んでいるのなら力になりたいと思っている。
「あれ…ライト君?」
「珍しいわねアンタ…」
「あ…どうもお二人様」
学校から出てきたすずかさんとアリサさんに声を掛けられる。
今更気づいたけど、お二人のお迎えの車が校門前に止まっていた。
そういえば揃ってお金持ちだっけ…、詳しい事は知らないけど、街中でよくご両親の会社の看板とかを見かける。
「もしかしてなのはちゃん?あともう少ししたら来ると思うけど…大丈夫そう?かなり悩んでるみたいで、今日もアリサちゃんと喧嘩してたから」
「してないわよ!何も言わないなのはが悪いんだから!
「…これは重症っぽいな」
来て正解だったのかもしれない。
ボクも昔は一人で悩んで苦しんでいた時期があったから。
師匠と会わなかったらいまだにうだうだ悩んでいたんだろうなぁ。
「なのはちゃんの事お願いねライト君。何となくだけどライト君なら何とかできそうだから」
「期待に応えられるよう頑張りますよお嬢様」
「一応期待しておくわ。泣かせたら承知しないわよ」
「……分かってますよ」
結構きつめに言われたが、逆にそれだけ頼りにされていると思うことにする。
この後も少しだけ話をしてから二人は車に乗って帰っていき、ボクはもう少し待つことに。
(悩み苦しんだ時は誰かが傍にいて支えてあげないと。話を聞くだけで心は楽になるから)
師匠と会った時の事を思い出していると、なのはが学校から出てきて目が合った。
軽く手を振ると、なのはも笑顔で手を振って近づいてくるけど…その笑顔はいつもより元気がなく、無理をしているように見えた。
「お疲れ様なのは」
「ありがとうライト君。珍しいね迎えに来るなんて」
言われてみれば確かに珍しいかもしれない。
雨が降ってなのはが傘を忘れて時とか、買い物帰りとかにしかにしか迎えに行かなかったっけ。
今日みたいに明確な用事があって迎えに行くのはなかったような。
「ちょっと心配だったから。すずかんさんの家に行ってから様子おかしいし」
「あ……」
視線を落として悲しそうな顔をするなのは。
いつもニコニコしている彼女はそんな顔をするってことは、余程の事があったとみる。
「無理をして話せれても困るけど、ボクが力になれることがあるなら言ってほしい。友達…なんだからさ。アリサさん達に言えない事なら特に」
「……そうだね。もしかしたらライト君も会うかもしれないし」
「会う…?」
首を傾げると、なのははボクの右手を握って歩き始める。
どこへ行くのかと聞くと、『ちょっと歩きたいだけ』と言った。
行く宛てのない散歩もたまにはいいかもと思っていると、なのはは話し始めた。
「すずかちゃんの家でね、ジュエルシードが現れたの。すずかちゃんの猫を取り込んでしまって」
「あぁ…だからあの日、ボクが見ていた猫の雑誌を見て青ざめていたんだ」
「にゃはは…そういえばそうだったね」
ー何見てるのライト?
ーあぁ猫の雑誌。
ー……。
軽いトラウマを植え付けられたような顔をしていたのを覚えている。
いつまでもフェレットモードでいるからそういうことになる…と言いたいけど、ユーノにも事情はあるだろうし、そこは言わないでおこう。
「その時に金髪の女の子が現れて。細い腕に不釣り合いなのに不思議に似合う黒い斧槍を持った目が綺麗な女の子。私と同じ魔法を使う子」
「成程…それでその子とひと悶着あったって所?」
「うん。一撃でノックダウンしちゃって。防御とか色々考えちゃって」
「まぁ対人戦闘やった事ないし仕方ないよね…」
にしても金髪の女の子か…確か父さんの知り合いの子供が金髪って言っていたような…。
とはいえなのはのガードを簡単に打ち砕くのは中々やる子だよね。
ボクも防御魔法には自信あるけど…守護者の皆には簡単に打ち砕かれるし。
「……その子の事が気になる?」
「うん。だからお話したいけど…」
話を聞く限りではその子となのはの力量は天と地ほど差がある。
それを埋めるのはかなり厳しいはず。
経験値もそうだけど、何より対人の戦闘経験が少ないのがかなりきつい。
RHのサポートがあるとはいえ、最後はなのはの力次第だし。
「なのは。魔法の使い方はユーノやRHに教わっているよね」
「うん。戦闘のサポートはRHにお願いしてる。あとはイメージトレーニングかな。学校の授業中とかに」
「授業とマルチタスクでか。なんか懐かしいかも」
シンシア先生とそういう訓練をしたことを思い出す。
父さんの仕事を手伝いながらのイメトレ。
日によって課題があって終わるまで繰り返し、対人訓練中にもするから結構大変なんだよね
「ライト君も誰かに教わったの?」
「師匠がいてね。キーブレードの近い方と魔法はその人に教わった。でも魔法に関してはなのはとは違うかな。構築とかじゃなくてイメージだし。後はキーブレードの力とか」
「そうなんだ。イメージかぁ…どんな魔法なんだろう?」
「……(今後の事を考えると、教えた方がいいのだろうか?でもなぁ…)」
あまり他の世界の事を教えるのは宜しくないと思いつつも、個人的にはなのはの力になりたいと思っている自分が居る。
こういう時はうだうだ悩むよりも自分の心に従った方がいいよね。
師匠や爺様達もそうだし。
「なのは。ボクと特訓しよっか。次その子と会ってちゃんと話せるように」
「ふぇ。ライト君…と?」
「うん。近くに開けた場所があるから。結界はユーノに頼もう」
というわけでユーノを念話で呼び出しから近くの高台に移動してユーノに結界を展開してもらう。
「いい結界。これなら暴れても問題ないかな」
体を軽く動かして準備運動しているなか、なのはは少し困った顔を浮べながらその光景を見ている。
これはあれか、ボクと訓練するのに戸惑いがあるのかな?
もしくはやりたくないのか。
ならば…なのはにやる気だしてもらおうかな。
「ロスト。行くよ」
≪過ぎ去り思い出≫を顕現させ、剣先に炎を集約させてなのはに向ける。
一瞬戸惑ったなのはだけど、こちらの本気度が伝わったのか、RHを杖に変えてバリアジャケットを展開する。
「遠慮なしだから。最初から本気でね」
「それはいいけど…そのバリアジャケットないけど大丈夫?」
「そんな心配してる暇は―――無いよ」
キーブレードを振り抜いて炎を射出。
なのはは直ぐに空を飛んで回避してから、光弾を複数放ってきた。
「ディバインシュート!」
自分から見て左右と斜めから挟み込むように迫ってくる。
ここは防御を選択せず、なのはと同様に空に回避して接近を試みるけど、さっきの光弾が後を追跡してきた。
「追跡弾…成程考えたね」
追跡弾を回避していると、先回りをしたなのはが再びディバインシュートを放ち、それらを回避するけど最初と同様に追跡してきた。
「追跡弾の対処は―――」
回避を続けて一か所に集まった所に斬撃をクロスに放って撃ち落とす。
大きな爆風が巻き起こり互いの姿が見えなくなるけど、爆風越しになのはは強烈な魔力砲を放ってきた。
「ディバインバスターッ!」
「っ―――リフレク!」
自分を覆うように光の結界を展開して防御。
そのまま拮抗状態が続くと思ったなのはが威力を上げようとしたけど、ある光景を見て目を大きく見開いた。
「吸収…されてる?」
そう、ボクのリフレク系統のちょっと特殊仕様で、魔法は吸収して物理は当たった瞬間に破裂して周囲に飛散する仕様になっている。
これも師匠にぎゃふんと言わせるために頑張って改良した。
「良い威力だねなのは。でもこの程度だと貫通出来ないよ」
「す、凄い…」
「褒めてくれてありがとう。でもただ吸収するだけでじゃない。こういうことも出来る」
左手をなのはに向けて魔法陣を展開し、なのはが放ったディバインバスターをそっくりそのままお返しする。
それを見たなのはは驚きながらも当たるギリギリで回避し事なきを得た。
「魔法を吸収してそのまま返してくるなんて…あぁいう魔法もあるんだ」
とても興味深そうにしているなのはに対し、フードに隠れていたユーノは顔を出して『ちょっとやりすぎじゃない?』と言いたそうにしている。
だけどあれぐらい見せて突破してもらわないと、自分の防御魔法の中では一番弱いから。
「さーて今度はこっちから!」
ゆっくりとキーブレードで弧を描き、その線に沿って小さな氷弾を設置。
なのはがRHを握る手を強めた所で射出。
氷弾はなのは囲むように向かっていき、なのはは速度と位置を確認してから回避するけど、当然ながら追尾性能付きなので後を追っていく。
「追尾してくる!?」
「しかも速度違うよー」
後を追う氷弾の速度は一定ではない。
早い奴もあれば遅い奴もあるので対処は難しい。
となるとなのはの対処方法は自然と一つになってくる。
「防御結界で!」
自身の前方に桃色の魔法陣の展開して防御するけど、氷弾が魔法陣に接触した瞬間、魔法陣は一瞬で氷ついてしまった。
「凍って―――」
「隙あり!」
凍った事に驚いて動きが止まった所を逃さず一撃叩き込み、魔法陣を粉砕したうえでなのはを叩き落とす。
そのまま地面と直撃…とはならず、ギリギリで態勢を立て直してゆっくりと着地。
ボクもその前にゆっくりと降りてキーブレードを肩に乗せる。
「大丈夫?」
「うん。ちょっと驚いただけ。凄いねライト君の魔法。炎に氷かぁ…絵本に出てくる魔法みたい」
確かに言われ見ればそうかもしれない。
なのはがたまにやっているゲームにも似たような魔法があるし。
構築型の魔法を使うなのは達とは全然違うものだし。
「他にも風とか雷とか水とか。後は…テレポートとか」
「……ふぇ?」
呆気に取られたような顔を浮かべるなのは。
もしかしてテレポートとかショートワープって馴染みないとか?
ボクの世界だと割と普通なんだけど…というか闇の世界の人とか普通に攻撃に加えてくるけど…。
「え…えっとテレポートってあのテレポート?魔法アニメで出てくるような?」
「どうだろ…って実際に見せた方が早いかな。ちょっと失礼」
一瞬だけ闇の力を使ってなのはの後ろに移動。
ボクの姿が消えて周りをキョロキョロ探すなのはに気づかれないようにお姫様抱っこする。
「捕まえた。ではお空の旅に」
「空って…(そ、その前にお姫様抱っこされてるの!?)」
何かを察した顔をなのはが浮かべると同時に、一瞬で雲と同じ高さにテレポートする。
「はい到着。いい景色だよなのは。水平線に太陽が沈んでいる」
「あ…本当だね…って。どうやったの!?」
景色に意識を逸らせればと思ったけど、そう簡単にはいかずなのはは聞いてくる。
さて…キーブレードを用いたショートワープはともかく、テレポートに関しては闇の力を用いた物だから教えていいものか。
「それは秘密。ボクの能力だし。それよりなのは。ここから見える景色は綺麗だよ」
「むー。教えてくれてもいいのに…でも…」
なのはは視線を下ろして街並みと夕焼けを見る。
丁度日が沈む時間帯だからとても綺麗。
沢山のビルとか家にも影が映って神秘的に見える。
「散歩のついでにこの高さまで飛んで、この景色を見たときは感動したんだ。ボクの世界は一面緑だから」
「町はないの?高いビルとか」
「残念ながら。大昔の戦争で世界のほとんどが消滅してしまってね。残っていた世界も
「世界が…消滅…」
信じられないような事のように思えて実際は起きていること。
他の世界でも文明が発達し過ぎて崩壊することもあるらしいし、ボクの世界だけの事ではない。
「だから人口も少ないよ。光の世界は1000人ほどだし、闇の世界は10万人ぐらいいるけどその代わりに大きな町が一つしかない」
「ほかに無いの?」
「無い。闇の魔物で溢れてるからね。爺様と守護者の皆は町を守るので必死。たまに光の世界にも現れるし」
「そう…なの。(初めて聞いたけど、想像よりもずっと過酷な世界なのかな?)」
「でもみんな出来る事を頑張って生きてる。俺も…」
言葉を続けようとしたけど、一年前の事が頭に過って言えなかった。
そろそろ丁度一年…俺が答えを見つけられただろうか?
あの時より成長して変われたのだろうか?
一番見て欲しい人に見てもらえないのはかなり辛い。
「…そろそろ帰ろうか。遅くなると皆に心配される」
「そうだね。でも何か言おうとしてなかった?」
「あー…まぁちょっと辛くて悲しい事。なのはは気にしなくていいから」
「…うん(ライト君、とても悲しい顔してる。こんな顔初めて見たかも)」
お姫様抱っこしていたなのはを下ろして視線を合わせると、彼女は何かを思い出したか頬を赤く染めて、視線を下に降ろす。
一体何がどうしたのか顔を覗こうとすると、なのはは慌てて背中を向けてしまう。
えぇっと何かしてしまったのでしょうか…?
「えっとなのは…?顔赤くして何か…」
「……先に帰るの」
「え?一緒に…」
「今はライト君の顔見れないから先に帰るの」
「えぇ…何でぇ…?」
どうやら自分の行動に問題があったようで、なのはは先に帰っていき、ユーノと二人この場に残されることになる。
「ユーノ。何かしたかなボク?」
「…自分の心に聞いてみなよ(というかライトも結構アレというか。無意識なのがタチ悪い)」
「ユーノまで…まぁとりあえず帰るか」
なのはの後を追うように遅れて帰路に付くのであった。