世界に光をもたらす鍵の担い手 作:鍵の担い手
今日は朝早くから車に乗って、高町家の皆となのはの親友二人に加え、恭也君の彼女さんとメイドさん達と一緒に温泉へと向かっています。
というのも今日から全国的に連休に入るとかで、士郎さん達のお店は年中無休だけど、連休の時はお店を若い人達に任せて小旅行に行くことがあるとか。
その話を聞いた時に、自分は関係ないし色々と探し物出来るなぁ…と思っていた時もありました。
当日の朝、普通に起きて散歩に行こうとすると、士郎さんと桃子さんに笑顔で車に連行され、状況把握する間もなく車は発進。
少し走り出してから自分も連れて行くことを聞かされることに。
言ってくれなかった事を尋ねると、お二人は先に話すとボクが絶対に断ると分かっていたらしく、なら当日連行しようという事になったらしい。
短い付き合いだけどボクの事をよく理解しているようで(特に士郎さんはよく見ている)。
そんなわけで、せっかくだからちょっとだけ体を休めることに。
丁度ジュエルシードも現われていないし、ゆっくりしようと思っています。
「ゆっくり休んでねなのは。ジュエルシードや黒い魔法使いの件もあるけど」
「うん。ライト君もゆっくり休んでね。こっそり稽古してるみたいだし」
「まぁ今日ぐらいは年相応に遊ぼうかな。魔法の重ね掛けのパターン増やしたいし」
「それって遊びじゃなくて練習な気が…」
なのはに突っ込まれる間にも目的地である海鳴温泉に到着。
それぞれ部屋に「荷物を置いてからいざ温泉に。
恭也君と一緒に男湯に向かって服を脱いでいる時にふとユーノが居ない事に気が付く。
部屋を出る時まで一緒だったはずなんだけど…。
(まぁいいか。もしかすると部屋にいるかもしれないし)
なんて思いながらも心配なので念話で呼びかけるけど、ユーノから返事はない。
という事は部屋で寝ているのかね。
なのはとの特訓も大変そうだし(まぁボクもきついけど)休めるうちに休まないとね。
「しっかし温泉かぁ…先生と修行していた森にも似たようなのがあったけど…どう違うのかな?」
楽しみにしていると、頭に震えたようなユーノの声が聞こえてくる。
けど恐怖ではなく、どちらかと言えば照れているというか、恥ずかしがっているというか。
えぇっと…応えるかな。
『大丈夫ユーノ?』
『あ…あぁ…助けてライト。僕は今―――』
『ユーノ君?ライト君と念話で話してるの?』
『ん―――?』
ユーノとの念話に割って入ってくるなのは。
ちょっと待てよ、どこか恥ずかしそうな声に加えてなのはが割って入れる距離ってことは…。
『ライト君とお話?』
『う、うん。なのはの特訓メニュー考えてて』
『ダメだよユーノ君。折角の温泉なんだから、そういうのは』
『そ、それはそうだけど』
あー…成程、ユーノは女湯か。
アリサさんか美由希さん辺りに連れていかれたかな?
まぁユーノが男って事を知らない以上はそうなるか。
助け舟を出したいけど、自業自得だし乗り切ってもらおう。
『ね、ねぇなのは。僕はやっぱりライト達と…』
『えーダメだよユーノ君。一緒に入ろうよー』
『はぎゃぁぁぁぁ!』
(……がんばれユーノ)
心の中で応援していざ温泉へ。
体を洗ってから湯船に浸かって体を伸ばす。
あの森で入ったのと負けずにいい湯加減だ。
これは疲れた体にはかなり効きそうだ。
(それにしてもなのはの成長速度は凄いな。魔力量もボクの倍近くあるし。特訓すればするほど増えていく。それに対してボクは…)
枷がかかっている以上は現状以上の力も出せないし魔力量も増えない。
ミッドチルダ式魔法をRHに教わって組み込んだりとかはしているけど、そろそろ限界が来そう。
今の所は経験値と自力で何とかしてるけど、純粋に強い奴が来ると押し負けそう。
(そろそろ丁度一年かぁ。ボクは答えを見つけられただろうか?大切な人とかは良く分からないけど、この世界で紡いだ絆は大切にしたいし守りたい。そしてその人達が守りたい物をボクも出来る範囲で守りたいとは思っている…けど)
それが答えなのかは正直分からない。
あれから一人で頑張ってきたけど、そろそろ限界なのかな。
まぁ…たかが人間一人が出来ることなどしれてるってことを分かっているだけ十分か。
「ライト。そろそろ上がらないとのぼせるぞ」
「あ…はい。じゃあ上がりますね」
温泉から上がって私服ではなく浴衣を着て部屋に戻るけど、部屋にはまだ誰も居なかったので寝室に移動。
周囲を警戒しながらキーブレードを取り出して手入れする(といってもタオルで軽く拭く程度だけど)。
『マスター。この世界はいかがですか?』
「ん?楽しいよ。見たことないもの沢山あるし。なのはと一緒にいて楽しいし」
『ふむ…なのは嬢もマスターと一緒にいると楽しそうにしているな』
「はは。特訓の時だろ。本当に楽しそうで何度も挑んできてさ。昔のボクみたいだよね」
先生に打ちのめされては何度も立ち上がって挑んでいた日々。
ぎゃふんと言わせるために戦術とか魔法の改良とかしたけど、一切通用せず力で叩き潰されて。
けど…楽しかったから苦痛じゃなかったな(とはいえ一発ぐらいは当たってほしい所だけど)。
「あ、ライト君。そろそろ晩御飯だよ」
「うん。直ぐ行くよなのは……」
呼びに来たなのはの温泉浴衣姿がとても可愛くて思わず見惚れてしまう。
普段来てない服ってのもあるけど、なのはって何着ても似合うんだろうな。
「どうしたのライト君?」
「浴衣姿のなのはが可愛いから驚いた」
「可愛いかな?ライト君も似合ってるよ」
「それは嬉しい。後で写真撮ろうよ」
「うん!」
カバンにしまってあった携帯電話を持って広間に移動し、テーブルに並べられた沢山の料理を皆で一緒に食べる。
その時にあまり話さない人とかも話をして、中々聞けないような事を聞くことになったり、アリサさん達にはなのはと出会ったころの話を聞いたりとかなり盛り上がった。
まぁボクの方はあまり話せることはなかったけど。
と、晩御飯は結構盛り上がったけど、時間が9時を回りそうになったのでボク達小学生組は就寝することに。
部屋に戻って布団に潜り込み、周囲の魔力探知を解いてから瞼を閉じる。
(ひとまず何もなくてよかった。なのはに気づかれないように探知するのも疲れるし)
こういう日に限って面倒ごとが起きることが多い。
なのはには休むように伝えていたけど、ちょっとは警戒しておかないともしもに対応できないし。
何も無いのが一番だけど。
(よし寝よう。疲れを癒さないと)
このまま眠りにつき、スヤスヤと熟睡…と行くわけもなく、ユーノから念話が届いて目が覚める。
何事かと思って起き上がると、大きな魔力を4つ感じ取った。
なのはとユーノ…後は誰だろうか?
『寝ている所ごめんライト。ジュエルシードが現れてなのはが例の子と一騎打ちしているんだ』
『りょーかい。すぐ行きます』
隣で寝ている恭也君に気づかれないように着替えてなのはの元に向かうとユーノの結界が見えてくる。
どうやら中で争っているみたいなので、気づかれないように結界内に入ると、上空でなのはが金髪の女の子と戦闘を繰り広げていた。
その近くではユーノが赤茶の狼と争っていて、ユーノがかなり苦戦している様子だった。
ボクは直ぐにユーノの方に向かって右手で持ち上げる。
「大丈夫ユーノ?」
「ライト!来てくれたんだね!」
「勿論。そんで…」
ユーノをフードの中に入れて、赤茶の狼と向かい合う。
どう見ても普通の狼には見えないし、かなりの魔力を保有している。
上空の方も気になるけど、まずはこっちからだな。
「何者だお前は?そいつらの仲間か?」
「友達。そういう君は?人に尋ねる前にまずは自分から名乗ったらどう?(喋れるってことは使い魔の類か?)
さてどう出てくるだろうか?
個人的には手荒な事をせずお話で済ませたいのだけど…。
そう簡単にいく空気ではないよね。
動物好きとしてはあの子を傷付けたくないのだけど。
「上はなのはに任せて大丈夫そう?」
「と信じたいけど…」
上空を見上げて二人の戦いを見るけど、なのははかなり抑えている。
金髪の女の子の雷魔法だろうか、かなりの練度だし戦闘も手慣れてる様に見えた。
初見でなのはが瞬殺されたのも分かる。
「邪魔をするなら誰が相手でも容赦しないよ!」
「っ―――フードに隠れててユーノ!」
襲い掛かってくる赤茶の狼の一撃を回避、反撃はせず距離を取ろうとすると、赤茶の狼は炎弾の様なものを放って来たのでリフレクで吸収する。
「あたしの魔法を吸収した!?」
「…結構な威力だな。金髪の女の子といいちょっと苦戦しそう」
このまま逃げ続けるのもアリだけど場所が悪い。
こうも森に囲まれていると追い詰められる可能性が上がる。
しかも相手が狼ってのも気が引ける。
でも今後はこういう場面は増えてくるし、襲い掛かってくる以上は相手をしないといけないか。
「ちょっと痛いけど我慢してね」
右手を開き、淡い黒い光と共にキーブレードを取り出す。
それを見た赤茶の狼は一瞬身構えるけど、視線がすぐにキーブレードに向いた。
「鍵の…剣?まさか!フェイト!」
「どうしたのアルフ―――っ!?」
上空でなのはと戦っていた金髪の女の子、フェイトと呼ばれた子は手を止めて、ボクの顔を見た後すぐにキーブレードを見た。
そのまま暫く動きはなく、その様子に戸惑いを隠せないボク達だが、止まっていたなのはをフェイトはいきなり一撃叩き込んで撃ち落とし、こちらに向かって来た。
「ちょ、ちょっと何で!?なのは大丈夫!?」
なのはの心配をしながらもフェイトの大振りを避けるけど、同時に雷弾が飛んできたのでそれも回避。
しかし回避先に赤茶の狼、アルフが先回りしていて鋭利な爪を振るって来た。
「よっとと」
爪をギリギリで避けつつ二人の足元に氷弾を放って足を止める。
そのまま一定の距離を保ちながら二人の様子を伺っていると、撃ち落とされたなのはが後ろに来てくれた。
「大丈夫?」
「うん。来てくれてありがとう。それよりもどうしていきなりライト君を狙ったのかな?私とジュエルシードを賭けて戦っていたのに」
「……(ジュエルシードより目当てのものがある…?)」
一旦思考を巡らせると、アルフがキーブレードを見てフェイトに声を掛けたのが引っ掛かった。
杞憂だと願いつつも二人に聞いてみよう。
「このキーブレードを求めてるのか?」
「…そう。母さんがその剣を探している。だから渡してほしい」
「それは無理な話だね。この剣は古の時代から引き継がれた大切な物。欲しいからって渡せないし、資格だってないだろう?」
「資格…?資格がいる?」
成程…キーブレードの存在は知っているけど、使い手になる条件は知らないって所か。
にしても彼女の母親は一体どこでキーブレードの存在を知ったのかが気にあるけど…。
「ならそいつを連れて行こうフェイト。その方が早い」
「うん。貴方に恨みはないけど」
手に持っている黒斧槍に力が入るフェイト。
理由は何であれ簡単に連れて行かれるわけにはいかない。
というか力が必要ならきちんと事情を説明してくれた方が嬉しいんだけど。
「巻き込んでごめんねなのは。本当に申し訳ない」
「ううん。でもどうしてライト君の剣が必要なのかな?」
「…さぁ?本来の力が使えないから大したことは出来ないけど」
ジュエルシードを集めつつキーブレードが必要…。
一体何をしたいのかが分からないけど、警戒するに越したことはないか。
「なのは。背中は任せるよ」
「うん。何とか乗り越えよう」
それぞれ得物を持つ手に力を入れ、迎え撃とうとした時だった。
RHからジュエルシードが一つ現れて、フェイトが持っている黒斧槍の方に向かっていく。
「あ…そうか勝負に負けたから…」
「勝負ってジュエルシードを賭けて?」
「うん。でも…」
どういう内容での勝負かは分からないけど、RHが負けを認めたって所か。
あるいはなのはの事を思っての可能性もありそうだけど。
「とりあえずそれで退散してくれないかな?ボクの力が欲しいなら個人的に相手をするから。色々と事情がありそうだし」
「……分かった。帰ろうアルフ」
どこかに飛んでいくフェイト、その後をアルフが追いかけて行った。
それにしてもかなりの使い手だね。
次に会うまでに対策考えておかないと。
「ボク達も帰ろうなのは。それと…ちょっとお願いあって」
「お願い?特訓のメニュー変えるの?」
「いや…家族を探す」
「でもライト君の家族って別の世界に居るんじゃ…」
「…現役退いた父さんはともかくニアなら見つけてると思う。何より…」
パーカーのポケットに入れてある星型のお守りを取り出す。
ボクの故郷に伝わるキーブレード使い間でのお守り。
その繋がりを辿ればきっと…。
「ジュエルシードは一旦任せていい?ボクは繋がりを辿って探してみるから」
「うん。でもあまり無茶しないでね。別行動中にあの子達と会うかもしれないし」
「それはなのはも同じ。さぁ戻ろう。士郎さん達に気づかれる」
「だね。気づかれないようにこっそり戻らないと」
ユーノに結界を解除してもらい、気づかれないように旅館に戻るのであった。