こちらダンジョンマスター。異世界にてソシャゲ式ダンジョン始めました 作:黒雛
ガイアス・フォン・エーデルワイスは激怒した(コピペ)
必ず、彼の邪知暴虐なシャバ憎を除かねばならぬと決意した。
ガイアスには『イエーイ』が分からぬ。
ガイアスは王国の盾と名高い公爵家の当主である。
貴族としてはかなり寛大な男であり、領民からも慕われている良き領主であった。
けれども『イエーイ』に関しては、人一倍に敏感になった。
『イエーイ』と『見てる~?』のコンボ。
これはダメだ。
おそらくは男の脳を破壊する呪詛の類に違いない。
もしくは新しい世界へと誘う禁忌の扉。
この言葉だけは絶対に広めてはならぬ。
ガイアスは『イエーイ』という言葉を禁句として発令することにした。
それはさておき。
「ヤチヨ、キミはこのダンジョンマスターなる男の言葉をどう思う?」
何とか正気を取り戻したガイアスは、ヤチヨに尋ねた。
あのビデオメッセージとやらでダンジョンマスターを名乗る青年が語ったダンジョンの秘密。
それはガイアスにとって――否。
世界中の人々にとって青天の霹靂と言えよう。
ダンジョンにはコアという精神生命体が存在する、というのは、まあ良い。
研究者からすれば特ダネだろうが、ガイアスの興味はそれほどそそられなかった。
ガイアスにとってダンジョンというのは、利用価値のある資源でしかない。
公爵領には鉱石をドロップするダンジョンがある。
モンスターとの激戦により武器の損耗が激しい公爵領にとって、このダンジョンは一種のライフラインだ。
確かにダンジョンの秘密を解き明かせば、より多くの資源を獲得できるかもしれない。
上質な鉱石が増えれば装備は潤沢になり、兵の生存率は上がるだろう。
だが、逆の可能性も充分あり得る以上、迂闊な行動は控えるべきだ。
もしもダンジョンが消滅――なんてことになったら目も当てられない。
だからガイアスはダンジョンについて、必要以上に踏み込もうとしなかった。
それはコアという存在を知った今も変わらない。
知ったからと、どうするというのか。
他のダンジョンにはダンジョンマスターなる仲介人は存在しない。
だからダンジョンはずっと未知であったのだ。
コアに話しかけたとて、交渉が通じるかも分からない。
ダンジョンマスターの言葉が正しければ、人の心というものが分からないらしい。
ならば通用しないと判断するのが妥当だろう。
契約という概念すら首を傾げられたらどうしようもない。
良かれと思って災厄を招く可能性もあるわけだ。
だからガイアスは既存のダンジョンに対してのアプローチは変えない方針を取った。
もしもダンジョンマスターと手を取り合えたなら話は変わるかもだが。
少なくともグーパンを10回はしないと気が済みそうになかった。
イエーイだと? ふざけやがって……!! 殺してやるぞ、王太子!!
ガイアスの興味を引いたのは、ダンジョンに潜り、モンスターを倒した人間が強くなる仕組みだった。
ダンジョンに挑んだ者が強くなれるというのは、共通認識だ。
本来なら筋力で劣っているはずの者が純粋な力勝負で勝って見せた。
そんな珍現象が何度も続き、人類は未知の力に『魔力』という名を付けた。
しかし、この魔力というのは、非常に気まぐれかつ残酷だった。
同じ才能、同じ鍛錬、同じ死地を潜り抜けた仲間たちですら成長に格差が生じるのだ。
その謎がようやく分かった。
なるほど。
ランダムと。
純粋な戦闘力に直結する可能性もあれば、それ以外の可能性も充分にあり得る。
寧ろ後者の方が高いらしい。
何だ、歌が上手くなるって。
何だ、巻き爪になり辛くなるって。
何だ、羽虫を叩き潰しやすくなるって。
なるほど。
道理で格差が生まれるわけだ。
その煽りを受けた者からすれば、ブチ切れ案件待ったなしだろう。
たとえ才能に恵まれた者ですら、魔力にそっぽを向かれれば落ちこぼれの烙印を押されるのが、この世界の宿命なのだ。
しかし、件のダンジョンマスターが運営するダンジョンは、その魔力に指向性を与え、望む力に特化させるという。
その恩恵をフルに受けるなら今まで蓄積した魔力を全ロスする必要があるが、それを差し引いたとしても圧倒的な収益になると、ダンジョンマスターは太鼓判を押した。
『――オレのダンジョンなら、亀よりも遅い成長を隼のように駆け抜け、やがては龍へ至ることも可能だよ』
そう自信満々に言い切り、不敵に笑って見せたのだ。
ガイアスは今、自分が人生の分水嶺に立っていることを自覚している。
故に、唯一ダンジョンマスターと出会ったヤチヨからの意見を求めた。
普段は飄々としている娘だが、こういうところはちゃんと信頼できる逸材なのだ。
「信頼して良いと思います。実際、拙はクロさんの手引きによって一瞬でラビリンス大森林を抜け出すことができました」
それも問題だよなぁ……とガイアスは内心溜め息をついた。
ラビリンス大森林は、先祖代々から連なる因縁の地だ。
自分たちも含め、この領地に住まう人々が一体どれだけ頭を悩ませてきたことか。
そんな曰く付きの場所を、自由かつ安全に行き来できる存在がこちらと繋がりを持とうとしている。
犠牲になった者たちを思えば、複雑というのが正直な気持ちだ。
しかし未来に生きる者たちを思えば、胸中にある感情を飲み込むのがガイアスの仕事だ。
「そしてダンジョンに関してですが、こちらはお嬢様が実践して下さいました。クロさんの言葉に嘘偽りはないと思います」
どうやらリンスレットは魔力をリセットしたらしい。
その上で一から強くなることを選んだようだ。
「もちろん拙が知っているお嬢様の動きには及びませんでしたが」
「おや、そうなのかい?」
少しガッカリしたガイアスだが、リンスレットのダンジョン歴を鑑みれば当たり前のことだった。
彼女が初めてダンジョンに潜ったのは十にも満たない頃だった。
およそ七年から八年という歴史の積み重ねがたった数日で覆されるというのは幾ら何でもあり得ないだろう。
「ですが、たった数日の伸び幅ではないのは間違いありません。他のダンジョンであの身体能力に達するには、最低でも二、三か月は必要でしょう」
「そんなにか」
「他にもレベルやら身体能力の可視化やら色々ありますが、拙が特に着目したのは戦技です」
「戦技?」
「これは実際に見てもらった方が分かりやすいでしょう。拙も短時間ながらダンジョンに潜ったので一つだけ戦技を習得できました」
ヤチヨは周りから少し距離を取った。
両手を組み合わせ、人差し指だけをピンと伸ばすと、
「えっと、確か……忍っ」
次の瞬間、ポンと煙を上げながらヤチヨの隣にもう一人のヤチヨが出現した。
一同はギョッと目を見開く。
「ヤ、ヤチヨがもう一人!?」
「はい。これは〝分身の術〟と言って、自分と全く同じ姿形をした別人を作り出す技です。まあ軽い外傷を受けるだけですぐ消えてしまいますが」
そうヤチヨは苦笑するが、ガイアスたちの衝撃は未だ色濃く残っていた。
そんな中、ヤチヨの父である隠密衆の頭領――望月ナオトが分身のヤチヨへと泣きついた。
「ヤチコ! ヤチコ! 生きて、生きていたんだな!?」
「父上……何を仰っているので?」
心の底から訳が分からないといった顔をするヤチヨ。
ちなみに彼女は一人っ子である。
死別した姉妹等もいないことを追記しておくが……
「何を言うかヤチヨ! この子はお前の双子の妹のヤチコではないか! 幼き頃、一緒に野原を駆け回った懐かしき日々を忘れてしまったのか!?」
「そんな記憶カケラもないですけど???」
ヤチヨの瞳がだんだん冷めていった。
しかしナオトはヤチヨの分身に夢中だった。
「懐かしいなぁ、ヤチコ。お前はよく『パパ上のお嫁さんになる』と抱き着いてくれたものだ。奥ゆかしい女の子に育ってパパ上は嬉しいぞぉ」
そういえばとガイアスは思い出す。
リンスレットが『お父様と結婚します!』と笑顔を抱き着いてきた時、ナオトが羨ましそうに見ていたことを。
「…………」
ヤチヨは無言で分身を消した。
「ヤチコォーーっ!!」
「お転婆で悪かったですねえ!」
「ぐえええっ」
容赦のない手刀がドゴシャア! とナオトの首筋に叩き付けられる。
ナオトは気絶した。ヤチヨの瞳はゴミを見るような目だった。
「うちのバカ上が申し訳ありません」
「構わないよ」
親子だなぁ、とガイアスは思った。
この親子、表面上の性格は異なるのだが、内心は冷静沈着。
されど感情のラインが一定を超えると、突拍子もない行動に移りがちなのだ。
「話を戻そうか。先ほどのが戦技というものかい?」
「正しくはその一つです。クロさん曰く、戦技は現実離れした動きや現象を引き起こす術技とのことですが」
「ということは、他にもあるんだね」
「はい。お嬢様はカクンと鋭角的な動きをしたり、突きの風圧だけで木の幹に穴を開けていました」
「……何というか、とんでもないダンジョンのようだ」
うちの娘凄くない?
この場合、ダンジョンが凄まじいと評するべきか。
というかヤチヨの言葉が正しければ、数か月で私より強くなるのでは?
ガイアスは父の威厳に危機感を覚えた。
「ですね。ぶっちゃけクロさんのダンジョンを利用すれば、並みの騎士でもベルンハルトさんと同等の実力を身に付けるのはそう難しくないんじゃないかと。王都がきな臭い以上、今のうちに力を付けるのは悪くないと具申致します」
そんなガイアスに追い打ちを掛けるヤチヨ。
ベルンハルトとは、エーデルワイスが抱える騎士団――。
王国最強と名高い
剣にもダンジョンにも愛されたフィアレス最強の酒カs――騎士。
そんな怪力無双な酒カs――騎士団長にも比肩し得るとは、ヤチヨはすっかり件のダンジョンの虜になっているようだ。
「――――――」
結局、ガイアスは件のダンジョンに兵や冒険者を派遣することにした。
一からやり直すには丁度良い新米を中心に希望者を募り、その総数、百名余り。
ちなみにリンスレットに羽虫が付かないよう――そしてあのダンジョンマスターなる憎しシャバ僧からリンスレットを引き剝がすため、半数以上が女性の編成だ。
「頼んだよ。どうかリンスレットを」
ヤチヨを筆頭にラビリンス大森林へ赴く若人たちをガイアスは見送った。
しかし、その一か月後、ガイアスは驚愕することになる。
まさか――信じて送り出した若人たちがダンジョンにドハマりして、あのシャバ憎の味方をするだなんて。
・脳破壊系(被害者)公爵
先んじて自身の領土に禁止令を発令したことでNTR概念を阻止。
後の公爵は『純愛の使徒』として世に語り継がれたとか継がれなかったとか
・クノイチのパパ上
突如パパ上の脳内に溢れ出した存在しない記憶。
娘が物心ついた瞬間から父離れをしていたため、パパ上のお嫁さんになります宣言をされなかった哀しきモンスターが空想上の娘を生み出した。実の娘の好感度が30下がった!!
・手刀の音が『ドゴシャア!』なクノイチ
実はダンジョンにちょっとだけ潜って戦技を習得していたり、異世界の本を読んだりしていた。当人は隠しているが恋愛物が好みな模様。
でもそれを布教してる奴、君が仕えてる公爵にNTR概念を叩き付けているぞ。
・酒カス
王国最強の騎士。
普段は碌に仕事もせず、浴びるように酒を飲んでいるカス。
肝心なときにしか役に立たない男。
ヤチヨはまっくろくろすけのダンジョンを利用すれば酒カスに比肩し得る実力を得ることも可能と断じたが、実は全然そんなことはない。どうやら偏見が入ってる模様。
ブルアカの最強格みたいなポジ。
作者的に最強格というのは特別な能力に依存せず、技量と経験で常識を覆す規格外であってほしい。
・まっくろくろすけ
なんかカッコいいことを言ってるが、内心は『お願いしますお願いしますお願いしますお願いします!!』と祈り続けている。
じゃあ何でNTR風味にした?
だってよシャンクス……感想欄がっ!!(責任転嫁)