こちらダンジョンマスター。異世界にてソシャゲ式ダンジョン始めました 作:黒雛
ヤチヨをラビリンス大森林の外縁部に送り届けて数日。
オレはシロちゃんを膝の上に置いて一緒にゲームをしていた。
「マスター。なぜ青コウラが効かないのですか?」
「コウラの腹が見えた瞬間キノコで加速すれば避けられるんだよ」
「むう。そのような記載は説明書に書かれていなかったはずですが」
「こういう小技を見つけるのもゲームのおもろいところなんよ」
一位でゴール。
オレはスッとシロちゃんのちっぱいに手を伸ばすフリをした。
するとその手をシロちゃんはパシッとはたき落とす。
「??」
そして首を傾げた。
シロちゃんは、なぜ自分がこんな行動を取ったのか疑問符を浮かべているようだ。
うむうむ。順調に情緒が育まれているようで何よりである。
こうして膝の上に置いているのにも羞恥心を覚えるようになればクーデレとツンデレが超融合した究極体へ至るところだろう。
さすればオレも変態セクハラおじさんへと暗黒進化を果たすことができるはず。
オレは無知シチュより大人ぶったロリに悪戯がしたいんだ!
……いや、待て。
本当に暗黒進化なのか?
オレはダンジョンマスターとして人類に有利な仕組みを作り上げたのみならず、トランプやオセロすら存在しない娯楽の少ない世界に、ガチャという至高の娯楽を齎せようとしている男やぞ?
こんなの聖人以外の何者でもないだろ(キリッ)
オレの前世は、聖人或いは聖女として構成に語り継がれている偉人だったのかもしれん。
もしくはその集合体。
百年もすれば世界中にオレの銅像が立っている可能性も微レ存。
え? じゃあトランプやオセロから普及させれば良いのではって?
バカめ! そんな使い古されたネタなんざ誰が使うか!
面白いものを普及させるんだから、オレだって楽しんでいいだろ!
オレが一方的にすり抜ける怖さを教えてやるって言ってんだよっ!
「彼女は戻ってくるでしょうか?」
出し抜けにシロちゃんが言った。
「ヤチヨのことか?」
「はい。既に彼女を外に送って数日が経ちますが」
「そりゃあしゃあないだろ。移動には時間が掛かるからな。ようやく領都に着いたくらいなんじゃないか?」
この世界には馬以外に碌な移動手段がないからなぁ。
村を経由しつつ馬を乗り換えたとしても数日は掛かるだろう。
腰とお尻が死にそうな環境だ。
「ここにはリンスレットがいるから、戻ってこないって選択肢は無いだろうよ。それどころか大勢の人を連れてくるはずだ」
「大勢の人間が」
想像が付かないのか、シロちゃんは思わずといった様子でオウム返しをした。
「おう。そうなったらDPもガッポガッポよ。ようやくこのダンジョンも軌道に乗り始めるはずだ」
「それは……楽しみですね」
僅かに口角を釣り上げたシロちゃんの頭をよしよししてあげた。
ヤチヨからのメールが届いたのは、それから数日後のことだった。
「お、ようやく来たか」
彼女には予めダンジョンに潜ってもらい、メニュー画面を操作できるようにしていたのだ。
あれ? そういえば前にメニュー画面というか、ウィンドウを使ったシステムに名前を付けたような……。
あ、ホロキャストだ。
いかんいかん、完全に忘れとった。
メールの通信距離は今のところラビリンス大森林が限界だが、DPを稼ぎ、ダンジョンが成長すれば通信距離も引き延ばせるだろう。
「んじゃ、ちと迎えに行ってくるわ」
よっこいせと膝の上に乗せたシロちゃんを降ろして立ち上がる。
「お気を付けて」
「ういうい」
あ、そうだ。
一応念のためにリンスレットも連れて行っておくか。
オレだけだとヤチヨはともかく、それ以外からは怪しまれるだろうからな。
というわけでリンスレットの元を訪れ、無事承諾を得ることに成功。
リンスレットをお供にダンジョンの外に出たオレは、ちょちょいとラビリンス大森林の魔力を操作。
ぐりんと視界や空間が捻じ曲がり、次の瞬間にはラビリンス大森林の外縁部に立っていた。
「ヤチヨを送り出すときにも拝見しましたが、とんでもないチカラですね」
「実質ここはオレの庭みたいなもんだからな」
ちなみにアマゾンやサバンナより遥かに危険なモンスターが跳梁跋扈している庭である。
やだよこんな庭。
「クロ様はその言葉の重さを理解していますか?」
「おん?」
やや呆れたようなリンスレットの声。
「フィアレスを始めこの大陸の主要国家は、何れもラビリンス大森林と接しています。そして、どの国も幾度となく遠征隊を送り込み、敗走した歴史があります。ラビリンス大森林というのは、それほど戦略的価値の高い土地なんです」
「捕らぬ狸の何とやらだな」
ちなみにオレも大得意というのは、これまでを振り返れば一目瞭然だ。
もしも自分の座右の銘を考えるなら『後は野となれ山となれ』がピッタリだと思う。
じゃないとガチャの沼になんて嵌らねえんだわ!
「ですが、クロ様ならラビリンス大森林が抱えていた問題点も解消できます。貴方の存在が明るみになれば、争奪戦が起こっても不思議ではありません」
「ま、そりゃそうだろうな。でも問題ないよ。たとえこの身に何があってもシロちゃんがいる限りダンジョン内にリポップするからな」
そんでもってオレをどうこうしようとした国の連中は、うちのダンジョンはもちろん、ラビリンス大森林から締め出してしまえばいい。
そうすれば数年もしないうちに他国に水をあけられるだろう。
オレにとって一番の痛手はシロちゃんを攫われることだ。
が、シロちゃんに関しては表舞台に出すつもりは一切ないので無問題。
もしもシロちゃんが外に興味を抱いたならDPを使って分身なり何なりを作り出せばオーケーだしな。
「シロ様……というのは、ダンジョンのマザー、というものなんですよね?」
「そ。オレが支配人なら、シロちゃんは事業主っていったところかね」
「その方とお会いすることはできないんですか?」
「ん? 会いたいの?」
「ダンジョンのお世話になっている身としては是非ともお礼をと」
なるほどなー。
リンスレットの気持ちは伝わったが、オレの答えは決まっている。
「そりゃ殊勝な心掛けだと思うけど、お断りさせてもらうよ」
「そうですか」
しょぼんとなるリンスレット。
自分も力になろうと思ったか。
はたまた信頼されてないとでも思ったんかね。
でもなぁ。
「悪いな。あの子はオレとダンジョンにとっての生命線なんだ。別にお前のことを信頼してないってことじゃないのは分かってくれ」
「はい。こちらこそ無理を言って申し訳ありません」
オレにとってシロちゃんは最優先すべき存在だが、当然リンスレットは違う。
リンスレットの忠言通り、オレたちの価値が人類にとって計り知れない以上、それを手中に納めんとあらゆる策に打って出る可能性は充分にあり得る。
そうした時、現状、最もターゲットになりやすいのがリンスレットだ。
何やかんや結構仲良くなったかんね。
身内を人質に取られたり等、弱みを握られて脅迫というパターンもあり得る以上、迂闊な行動は控えるべきだ。
じゃあシロちゃんの存在すら匂わせるべきじゃなかったって?
フッ、その通りだが???
舐めるなよ、小僧。
さっきも言ったが、オレの座右の銘は『後は野となれ山となれ』なんだ。
詰めの甘さでオレより優秀な奴は見たことないね。
「お、いたいた」
丁度会話の区切りがついた頃、前方にヤチヨを見つけた。
その背後には大体百人くらいの人数が隊列を為している。
良かった。
どうやら上手くやってくれたようだ。
「あ、お嬢様! クロさーん!」
向こうもこちらに気付き、ブンブンと手を振ってくる。
後ろの面々は半信半疑といった様子だったが、オレたちの――主にリンスレットの姿を認めると俄かに騒ぎ始めた。
「よ。無事、連れて来てくれたみたいだな」
「はい。騎士六十名、冒険者四十名の大所帯となりますが、大丈夫ですか?」
「寧ろ大歓迎だ。こんだけの人数が集まればダンジョンを次のステップに進められるだろうしな」
「それは重畳。お嬢様も数日振りです」
ヤチヨはリンスレットに水を向ける。
「ええ、ヤチヨも無事で良かったわ。野盗に襲われたりしないか心配だったのよ」
「あはは、幾ら拙が弱くなったといっても野盗なんかに遅れを取ったりはしませんよ」
そんなふうに仲良く話す二人を眺めていると、
「少し良いだろうか?」
隊の先頭にいた女性が話し掛けてきた。
歳は二十代半ばくらいか。
青色の長髪を三つ編みにまとめており、ややつり気味の瞳からは強い意志が感じられる。
隙を感じさせない凛とした佇まいは、まさしく女騎士のソレであった。
「どうかし、たか?」
思わず敬語を使いそうになったが、すんでのところで切り替える。
危ない危ない。
今のオレは人間ではなくダンジョンマスターなんだ。
人間の道理に従う必要はない。
例え相手が王族だったとしても下手に出るわけにはいかないのである。
皇帝にすら『焼きそばパン買って来いよ』のマインドで行かんと。
「私はアイビス・ベネディクト。
へえ、副団長。
意外。
副団長ってことは結構強いんだろ。
そんな人がリセットを受け入れるとは思わなかった。
こういうのって現地人には無い発想ってのが定番だからな。
まあ生死に関わる以上、そんな博打に打って出るわけにもいかんから当たり前だが。
オレらがゲーム脳過ぎるんよな。
「オレはクロ。ヤチヨから聞いたと思うかもだが、ダンジョンマスターっつー――まあ要するにダンジョンの支配人のようなもんだ」
「そうか。そちらについてはまだ知識が浅いため、良ければご教授を願いたい。この度はリンスレット様を保護して頂いたこと、誠に感謝する」
「全然良いよ。ほとんどなりゆきだったしな。それでも礼がしたいってんのなら是非ともうちのダンジョンに挑戦しておくれ」
そう言うと、なぜかアイビスの表情に陰りが差した。
彷徨った視線がこちらを向いたとき、その瞳には縋るような色があった。
「その……不躾で申し訳ないのだが、貴殿のダンジョンに入れば強くなれるというのは、本当だろうか?」
ああ、他のダンジョンでハズレを引いてきたパターンね。
オレは不敵な笑みを作り、自信満々に頷いた。
「もちろん。強くなるのに、うちのダンジョンほど適した場所はないよ」
・百年後に銅像が立ってる姿を妄想しているまっくろくろすけ
なお百年後には邪神扱いをされている模様
・幼女なマザー
情操すくすく成長中。
えっちなのはメだと思います
・公爵令嬢さん
(´・ω・`)
・クノイチちゃん
とりあえず大浴場に入りたいです。
・副団長さん
剣の才能はあったが、ダンジョンに見放されていた被害者その1
くっころ!!