ここは何もないで行きます。
……
「ということは、日本で死んだ人は天国か、異世界転生かを選べるって事?」
顔が微妙に赤くなった七星静香をやっと冷静にさせてから、異世界転生の話を一から説明した。
「でも、私には神様にも会っていないし、転生特典にも選べなかったけど?」
しかし、やっぱり美少女と会話するのは難易度が高い。こやつめ、魔王より手強いかもしれない。
「だから、俺にも分からないよね、神と言っても適当のやつばっかりだし(エリス様除く)、今回俺の転生も訳分からないままに魔法陣に放り込まれたんだよ(心当たりがないとは言ってない)。」
「ふ〜、それで、佐藤さんの転生特典というのはその魔法ですか?」
「あ、カズマでいいよ、折角の異世界仲間だから。あと魔法は街の冒険者協会に冒険者カードさえ貰えれば、誰でも使えるはずだよ。戦士職選んだら無理だけど。」
「そうなんだ。佐藤さん詳しいですね。因みに好奇心ですが、魔王討伐したのは本当?佐藤さんもしかして強い?」
警戒心高い。
流石女子高生。
しかしこの佐藤和真は挫けない。
いよいよ、異世界に鍛錬されたトーク技を披露する時だぜ。
「ああ、本当だよ、確かに仲間の力を借りたけど、最終的に俺はタイマン勝負で魔王に勝ったんだぞ。ほら、これが俺の冒険者カード、レベル高いでしょう?」
どれどれ、ナナホシが顔を寄せてきた。うわ、大事なものが正統派女主人公に見つめられると、流石に緊張するな。
「えー全然読めないですけど、なんですか?これは象形文字?」
あ、そっか、魔法陣使ってないから、言語翻訳がインストールされてないか。
「ああ、ナナホシは正規の手続きではないから、言語翻訳がインストールされてないかな、多分。」
にしても。
サキュバスの店に通っただけなのに、どうしてこうなったのやら。
「そんなことより、ナナホシ、この辺はなぜか草一片すら生えてない荒野だから、早速街へ向かった方がいいじゃないか?」
今回の転生地点はなぜか、周囲に民家はおろか、木や、草すら何もない荒野だった。
アクセルの街と比べれば大分寂しいな。
でも現代人にとっては悪くないかもしれない。
どう見てもナナホシは都会のJKだから(偏見)、偶に大自然と触れ合うのも大事だからな。
「それは私も同意だけど、道とか分かるの?ここ、何もないんだけれど。」
不安そうに見つめてくる美少女。
カズマさん的にポイント高いよ!
「ゴホン、そこは俺の運を信じるしかないけど、大丈夫だ、俺の幸運値は魔王より高いんから。」
それに万が一魔物に遭遇したとしても、テレポートで逃げればいいだけだし。
最強冒険者カズマ様は無敵なのだ。
「そう?ちょっと不安だけど、宜しくね、カズマ!」
生まれて初めて同級生(ではないが)から微笑まれた、これは…恋の気配、かもしれない。
「佐藤さん?変な顔やめていいですか?」
「……はい、何でもないです。」
しょぼん〜
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
それから、
俺達は俺の運を信じて、南の方向へと向かった。
元々、ナナホシのシャーペン占いの結果では、北に向かうべきだけど、『千里眼』技能から、北に山が乱立しているから、その反対方向の南に向かうしかない。
それにしても、道が長い、体感的に1時間くらい歩いていたけど、『千里眼』からはまだ何も見えない。
最初はまだナナホシと会話して楽しかったけど、いまは二人ともリタイア直前になった。
そろそろアクセルに一度帰るべきか?
そうだよね、屈強な冒険者のカズマは兎も角、まだ女子高生のナナホシにとって長旅なんで無理だからね。
ここは一旦アクセルに戻って、馬車を準備したほうがいいよね、どの道金は有り余っているから。
「ああ、もう無理。カズマさん、ちょっと休憩しませんか?喉も乾いたし。」
ふんふん、やっぱり平和育ちのお嬢様には冒険は無理か。
「ああ、いいよ。確かに、ナナホシにとって、いきなり異世界徒歩は難易度高いんだよね」
「いえいえ、カズマさんこそ、もう死にそうな顔していたよ。」
うるさい。
こちとら魔王討伐が終わって、サードライフを始めたカズマさんだぞ、もっと労って!
というわけで。
「ナナホシ、ここは休憩もできないんだから、テレポート使って、先にアクセルに一度戻って旅の準備を整えてから、もう一度出発しないか?」
今のテレポート地点にはエリス様、アクセル、王都が登録されていた。
王都か、アクセルか、どっちを削除しないと、新たに登録できないよね。
王都とアクセルは伝送屋を利用すればいいんだから、ここはやっぱり王都一択だな。
折角の正統派美少女との二人旅、あのバカ達と鉢合わせするわけにはいかない。
アイリスちゃんを誘うのも有りだな、正直、同級生(ではないが)との二人旅は緊張するし、心の自宅警備員は既に断末魔の声を上げて、死んでいた気がする。
女子高生は怖いから。
「佐藤さん?変な事考えてないよね?」
「考えてない、考えてない。『テレポート』は3つしか登録できないから、どれを削除したらいいか考えただけだよ。」
この子、怖いんだけど。
「それなら良かった。悪いね、折角同伴してくれたのに、色々迷惑を掛けて…」
なんていい子だ、絶対主人公だよ。ナナホシ。
「いいよいいよ、俺達は異世界仲間だからな。こんなところで、一人じゃ心細いからな。」
「最初から女神を仲間にしたカズマさんにそんなこと言われたくないよ。」
大丈夫だ、ナナホシ。
きっとなんとかなるさ。地球に戻れるかは分からないけど、アキと黒木とやらは必ずどっかにいるから。
こうして、俺とナナホシは手を結んで、仲良く『テレポート』を発動した。
――あ、不味い。
王都に登録したテレポート地点はアイリスの部屋だ……
カズマさんの変態成分は不足しているね。
どうやら現役日本人に対して心の障壁はまだまだある模様。
オルステッド:こんな事一度もなかった。(茫然)