明日仕事日。(T_T)
『潜伏』
俺はナナホシの手を握って、すぐさま『潜伏』スキルを発動した。
柔らかい、じゃなくて。
クレアのやついないよね。
一般メイドは兎も角、こんなタイミングで、アイリスの部屋にクレアと鉢合わせすると、大変なことになるからな。
「あの、クズマさん?ここはどう見ても、女の子の部屋なんだけど」
「しー!静かに!」
隣にナナホシが変態をみる視線を向けてくる。
だめだ、言い訳を考えないと。
「ここは妹の部屋だぞ!君は知らないかもしれないが、妹の近衛の一人はとんでもない変態で、毎日妹のシーツをくんかくんかしているから、これはあくまで防衛策として、仕方なく設定しただけだからな!」
「はぁ、そんなことより、そろそろ手を離してくれない?気持ち悪いだけど。」
うわん…
同級生(ではないが)に気持ち悪いと言った!
クレアめ、許せない!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
それから、俺達はアイリスの部屋から出て。王城のメイドからアイリスの居場所を聞き出した。
また小言を言われたが、気にしない。
ナナホシはどうやら確かに異世界言語が分からないようで、キョロキョロしていた。
「どうだ、ナナホシ、ここは王城だぜ。それにメイド達にも歓迎された。俺は魔王討伐した勇者だと信じてるんだよね。」
ナナホシはメイドから貰った水を飲んでいた。
「わかったよ。カズマさん、魔王討伐はもう5回くらい聞いたわよ。そんなことより、これからどうするの?」
「そうだな、アイリスを探してから、馬車を借りて、もう一度元の場所に戻るか、それともここに一晩休んでから考えるか、ナナホシはどうしたい?」
「うん。やっぱり友達を心配しているから、悪いんだけど、そっちを優先したい、いい?」
このカズマ様に全部任せて。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
それからアイリスを探して、新たな勇者、ナナホシを紹介したいということで、時間を空けてくれた。
「お兄様!」
メイドが扉を開けてから、アイリスちゃんはすぐさま抱きついてくれた。
おお!俺のアイリスちゃんだ!
くんかくんか。もう2日くらいアイリスちゃんの成分を摂取していないから、この機会に補充しないと。
「はは、お兄様、くすぐったいよ」
クレアから射殺さんばかりの視線とナナホシから呆れた視線を感じるが、気にしない。
くんかくんか
「ええ!貴様はいつまでアイリス様に抱きつくんだ、この不届き者!!」
クレアは強引に俺とアイリスを引き離そうとする。
「クレア、そんなこと言っていいか?そもそも抱きつきに来たのはアイリスだし、君が毎日アイリスの部屋にやったことをここに暴露してもいいんだぜ。」
「あああああ――貴様は!!!殺す!!!」
『――ドレインタッチ』
…
…
…
「お見苦しい姿をお見せいたしました。ナナホシ様」
撃退されたクレアに代わり、レインから謝罪の言葉を貰った。
「全てはクレアが悪い、と言ってました。」
異世界言語が聞き取れないナナホシに代わり、俺は翻訳を徹底していた。
なぜかナナホシとレインから微妙な視線を感じるが、まぁいいでしょう。
「それで、お兄様、こちらのナナホシさんは新たの勇者ですか?魔王討伐したから初めての勇者ではないですか?」
「そうだよね、魔王討伐したから、日本から新たの勇者を送る必要はないはず。それにナナホシは言語翻訳と転生チートを持ってない非正規勇者だから。正直俺にもよく分からないな」
「ちょっと、非正規はやめてくれる?私から見れば転生特典と言語翻訳の方が怪しいんだけど。」
あら、俺から話した言葉は全部聞き取れるのか。
「それに、転生させた場所もよく分からないからな、草と木、人工建築は全くない荒野だぜ、俺の頃はアクセルの街中なのに。」
「もしかして機動要塞デストロイヤーに滅ぼされた跡地だったりする?」
両目をキラキラさせたアイリスは可愛いな。
ちょっとクレアがいない間、手でアイリスを招いて秘密話をする。
「あのさ、アイリス。このあと俺とナナホシは冒険者ギルドに冒険者カード作ってからもう一度あの場所に戻る予定だけど、良かったら一緒に来ない?」
「いいですか!行きます、是非行かせてください!ナナホシさんもよろしくお願いします!」
「ちょっと、カズマさん、アイリス様は王女ですよね、そんな簡単に連れて行っていいの!!!」
俺とアイリスの会話を聞いたナナホシから小声の確認が飛んできた。
「いいのよ、アイリスも時々外で遊ぶ必要はあるから。そういうことで、アイリス、またあとから迎えに来るから、準備だけしといて」
アイリスとナナホシのお互いのバイバイの中で、俺は冒険者ギルドへと足を運んだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ということで、馬車は今から借りるが、先に冒険者カードを作ったほうがいいかな。職業によって、選べるスキルが違うからな。一応魔法職はおすすめする、うちのパーティーはちゃんとした魔法職いないんだからさ」
王都の冒険者協会で、俺が手数料を支払って、ナナホシに冒険者カードの仕組みを説明していた。
隣からコソコソ「クズマの新しい女」「可哀想」「クズマそろそろ刺されそう」とか聞こえるが、気にしない。
どうせナナホシは分からないんだから。
ナナホシから見ればこの野郎達は絶対俺様の勇姿を語っているのだろう。
…筈だ。
「よし、ナナホシ、この水晶に手をかざしていればいい。」
心なしか、ナナホシも何かワクワクしている。
やっぱり誰しも異世界に憧れを持つものだね。
水晶から青色の光が集まって、冒険者カードに数値を記録し始めた。
どれどれ。
「おお、これは知力が平均より高く、筋力と敏捷は少し少ないけど、ウィザードに適した数値ですね!」
受付嬢が人懐っこい笑顔をして、解説し始めた。
「良かったね、ナナホシ、ウィザードになれるらしいよ。筋力と敏捷は少し少ないけど。」
「ウィザード?私も魔法を使えるってこと?」
「そうだな、早速試してみる?この世界はスキルを教えられたあと、スキルポイントを使って覚えるもので、多分今初級水魔法を覚えるはずだ。」
俺はナナホシの冒険者カードを見て、指さした先に初級水魔法のスキルが鎮座している。
「おお、すごい――!文字が全然読めないけど、とにかくこれで私も水魔法を使えるよね!」
何だかんだ楽しいんだよね、初めてのスキル使用。
「よし!それではこっちのカップに『クリエイト・ウォーター』を唱えてみて!」
『クリエイト・ウォーター!』
ナナホシの手から水が生み出され、カップを満たしていた。
「おお、すごいよカズマさん、こんなこともできるんだ、信じられない!」
羨ましいな、俺もこんな華やかな冒険スタートを切りたいな。
「まぁまぁ、一旦冒険者ギルドはこのくらいにしといて、そのうちレベルアップしたら新しい魔法も覚えられるから、早速馬車を確保して行きましょう!」
「おお!行きましょう!イェーイ!」
「イェーイ!」
ハイタッチしてくれたナナホシはその後可愛く頬を赤く染めた。
こういうのはいいんだよ、こういうの!!!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
…
…
…
その後、フル装備のアイリスは見事にクレアに怪しまれ、ナナホシ連れて王宮兵士を撃退しながら、やっと王女様を迎えに行けた。
ちぇ。
結局クレアとレインも来たかよ。
祝!
ナナホシ、魔力(?)獲得。
オルステッド:何だ、土地の魔力が根こそぎ奪われた、見た事のない神級召喚魔術だ