無能力転生者はリリカルなのは世界で生き延びたい(令和版) 作:百男合
季節は春。桜が散る代わりに青々とした葉が目立ち始める頃。
その日、海鳴市にある私立聖祥大附属小学校に入学したばかりである俺は、休み時間の教室で目の前にいる白いカチューシャをしているロングヘアの女の子に向けて手を差し出し頭を垂れて言った。
「第一印象から決めてました! お友達からお願いします‼」
「ええー⁉」
唐突に告白じみたことを言われ少女――月村すずかが顔を真っ赤にしてオロオロしている。
突然の出来事にクラスメイトたちは沸き立つがそんな周囲を無視して俺は言葉を続けた。
「いえ、むしろ友達がいいです。友達にしてください」
さらに頭を深く下げピッタリ90度の構え。
「え、えっと。その」
「あっ、家来! 家来でもいいです! 最悪犬とお呼びください。わん! わんわん!」
四つん這いになって犬の真似をすると赤かった顔がどんどん青くなっていく。周囲も違う意味でざわざわしだした。
「あっ、犬派じゃなくて猫派でしたか? だったらこれを付けて……どうですかにゃ?」
あらかじめ用意しておいた猫耳カチューシャを装備して小首をかしげてみる。なぜか一歩足を引かれた。
おかしい。原作ではすずかの実家は猫屋敷というほどではないが猫を多く飼っていて猫好きなのは確かなのだが。
なぜこうも「ドン引き」という表現が似合いそうな表情と空気をまとっているのだろう。
「この通りですにゃ。おねがいしますにゃ」
流れるように土下座へと体勢を変えると真上から「ひっ」という声が聞こえる。
あれ? 完全に引かれてる? おかしいな~?
話し合いになったときはこうして相手に考える時間を与えないマシンガントークと土下座コンボで数多くの相手を打ち破ってきた俺の必勝パターンが通じないなんて。
僕のデータにはないぞ。(データキャラやめちまえ)
仕方ない。こうなったら最後の手段。
「――やだ。やだやだやだ~~‼ すずかちゃんと友達になりたいんだ~~‼
友達になるなら君しかありえないの‼ わかってよぉ~~‼」
駄々っ子モードオン! ダーダ! 駄々駄々! ダダ星人!
「ひぅ、こ、こまるよ~。誰か、誰か……」
子供のように(実際子供なんだが)駄々をこねる俺を見て周囲に助けを求めるすずか。だが悲しいかなこの日常からかけ離れた異常事態に対応して動ける一般人はいない。
そう、普通の人間なら。
「なにやってんのよあんたは⁉」
気の強い顔つきに生意気そうな釘宮ボイス。
長い金髪をなびかせ同じクラスのアリサ・バニングスが人混みをかき分けすずかを守るように立ちふさがった。
それから「大丈夫?」とすずかを案じる声。
思わずひざまずく王国民を幻視する声に目をやると茶色い髪を白いリボンで2つ結びにしている少女、高町なのはの姿があった。
「いい! あんたがやってるのは友達になろうっていう提案じゃない。きょーはくっていうのよ!」
「あはは、私も今のはやりすぎだと思うなー」
となのはさん。笑顔ではあるが有無を言わさぬ圧を感じる。
あ、これは高町の血ですわ。ここで下手なことしたらOHANASI開始のゴングが鳴りそう。
「すいませんでした」
思わず居住まいをただし、すずかに対し頭を下げる。
「え、あ。うん。ごめんなさい。わたしもちょっと驚いちゃって」
そうこうしている間にアリサが周囲のやじ馬たちに散れ散れと追い払い、なのはさんはさりげなく立つ位置を変えて俺からすずかを守るように立っている。
うーん。さすが後に世界を越えて親友やってるだけある。コンビネーションがキレッキレですねぇ。
「つい気がはやり月村さんのお気持ちを考えておりませんでした。このつぐないはいかようにも」
「つぐないって……そんなのいいよぉ」
「それにしたって、アレはないわー。あんたなに考えてるの?」
困惑するすずかと容赦なくダメ出しするアリサ・バニングス。心底あきれてるのが声からわかる。
「して、返答はいかに?」
「それはその……あははは」
乾いた笑いで明後日の方向を見るすずか。
これは遠回しなお断りですね。わかります。
「2人ともダメだよ。友達になるなら最初にしなきゃいけないことがあるでしょ」
と若干空気を読めないなのはさん。それに対し? マークを浮かべる俺とすずかとアリサの3人。
「まず自分の名前を名乗らなきゃ。私、高町なのは。あなたは?」
声と共に6つの視線が俺に向けられる。それに対し俺は、
「真木……
自分の名前を名乗った。
「シロウ……へぇ、私のお父さんも士郎っていうんだよ。同じだね」
「そうなんだ。偶然だね」
俺の名前になのはさんが驚き、すずかが興味深そうにしている。
「なんかお笑いがうまいマジシャンみたいな名前ね」
というアリサの言葉に「ぷっ」とすずかとなのはさんが噴き出す。
うるさいやい。自分でもちょっと思ってたけど人に言われるのはプチむかつく。
「月村すずかです。2人とも、さっきは助けてくれてありがとう」
「アリサ・バニングスよ。真木、どうしてもっていうなら私の取り巻きの1人にしてやってもいいわよ」
「いや、それはごめんこうむりたい」
「ぬぅあんでよ!」
顔を真っ赤にして腕をぶんぶん振って抗議の意思を示すアリサにまあまあとなのはさんとすずかがなだめる。
こうしてアリサがすずかのカチューシャを奪っていじめて、それにブチギレたなのはさんがアリサをビンタして友達になるという高町式交渉術を行うことなく、平和的に3人の少女は友達になったのだった。
さて、突然だが
初めて見るはずのこと、初めてやるはずのことをすでに見たりやったりした気がするアレである。
大抵は気のせいや脳の錯覚だとされるソレが俺には生まれた時から
あれ? これなんか見たことある。やったことあるぞと。
きっかけは両親が他の家とは違うと知った女子に強制参加させられたおままごとの時や4歳にして足し算引き算どころか掛け算割り算ができたことなど挙げればきりがないが、決定的だったのは5歳の誕生日。
「誕生日おめでとう」と祝う両親の笑顔を見ながら誕生日ケーキに刺さったろうそくの火を吹き消した瞬間、
圧倒的な質量をもった、記憶がだ。
ここではないどこか。俺ではない俺が生まれてから死ぬまでの記憶を無理やり圧縮して脳に焼き付けられたような強烈な体験。
思わず嘔吐して誕生日会を台無しにした挙句、それから3日間高熱を出して家族を心配させたがいろいろ得心した。
ああ、今まで感じていた既視感の原因はこれなのかと。
さらに海鳴市という地名とどこかで見たことのあるような風景。
決定的だったのが母親がよく使う部屋にあった複数のデバイス。
ここって魔法少女リリカルなのはの世界じゃねーか!
口には出さず脳内で大絶叫した俺はどうしたものかと頭を抱えたのだった。
魔法少女リリカルなのはとは愛と勇気が世界を救う系の魔法少女作品である。
無印から始まりA's、StrikerS、ViVid、ViVidStrike! と続いた名作魔法少女シリーズだ。
……いや、魔法少女? という異論は認めよう。ViVidとViVidStrike! は完全に
女の子の殴り合い……いや、殴り愛で歯が折れる描写には正直引いた。
だからファンの間にはなのははA'sまでというガチロリ……もとい魔法少女絶対主義派がいたりする。
俺はかわいい女の子がキャッキャウフフしてる姿が見られればいいので全部視聴した。
なのでなのはママとフェイトママの間にヴィヴィオがいる百合家族なんか大好きだ。
閑話休題。
で、この魔法少女リリカルなのはの世界。残念ながら主役にもモブに厳しい世界である。
下手すると魔力災害や事件事故に巻き込まれてひどい目にあう。
主役級キャラですら命の危険に陥る状態になるのは当然。むしろそれが物語の主軸になったりキャラの人格に強い影響を与えたりしている作品なのだ。
そんな世界で原作知識を持ってるモブが調子に乗って主人公に関わりに行ったらどうなるか?
結果は火を見るより明らかだ。主人公の心の傷になれて死ねれば本望という狂人でもなければそいつは馬鹿か主人公の引き立て役である量産型かませ転生者のテンプレだろう。
だから関わりたくないんだけどねー。
あるんだなーうちにデバイスが。
つまりうちの両親はミッドチルダ関連の人で何らかの理由で地球に渡界してきたんだということがわかる。
要するに存在自体が厄ネタかもしれないわけで。
まあ、闇の書関連ほどヤベーネタではないと思うんだが、万が一、万が一ね。
管理局のヤバイ事件の真実を知ってたり、関わってたり、生きてることがばれたらヤバイ系の人だったりしたら。
当然なのはさん、フェイトさんはもちろんクロノくん達管理局と敵対しちゃうよねー。
でもって絶対勝てないよねー。うん!
問題なのは立ち位置だ。早いうちに主役級のネームドキャラと関わっておけば生存率が上がる。
それは八神はやてで立証済みだ。彼女はなのは達と出会う前に月村すずかと図書館で出会っていた。
深読みしすぎかもしれないがもし彼女と出会っていなければ「助けられなかった魔法関連の被害者」としてなのフェイの傷になっていたかもしれないんだよね。鋼の錬金術師のニーナとアレキサンダーのように。
だから入学したら即月村すずかの友達ないし取り巻きの1人になりに行こうと思う。
それが1番生存率を上げる方法だから。
なあに、小学生と友達になるなんて楽勝よ! ガハハハッ!
後にこの時の自信は何だったんだっていう事態に陥るんだけどね。
とりあえず第一目標は高町なのはの交友関係にある人間と交友関係を結ぶこと。
第二に俺自身の強化。肉体はもちろん魔法のほうも強くないと生き残る確率がぐっと下がるからな。
俺専用のデバイスがないからランクはわからないけどまあ、転生者ならオーバーSランクがデフォルトだろう。多分。
第三目標はなのフェイになるべく深く関わらないこと。
百合の間に入る男は許されないからね。適当なところでフェードアウトして遠くから見守ろう。
ふぅ、こんな感じかな。とりあえずは。
あとは臨機応変に状況に対して柔軟な判断と対応をしていきたい。
え? 俺の前世?
特筆するようなスキルもないし大して話すようなことはないぞ。
三次元俳優演じるドロドロしたドラマよりもアニメを見てかわいい女の子同士のきゃっきゃうふふなイチャイチャをこよなく愛するどこにでもいる人間だった。
あとはプラモやガレキに手を出したり同人誌作って地方の小さいイベントで売ってたくらいかな。
他の人間よりDEX高めのステータスだった気がする。
今のところ転生特典は原作知識以外思い当たらない。オッドアイじゃないし見た目も普通で外見チートはないようだ。
とりあえずこの先生き残るために頑張っていこう。おー!
とある魔法使いたちの会話
「フリーレン様。リリカルなのはは最近の魔法少女作品ではありません。
リリカルなのは無印どころかStrikerS放送時は私、産まれてませんからね。
それに今年は魔法少女まどか☆マギカ16周年ですよ」
「もうそんなにか。人の時間は早いね」
「ちなみに今年は魔法少女にあこがれて放送から3周年になります」
「フェルン。それはさすがに嘘だよ。まほあことまちカドまぞく2期は去年だよ」
なんでそんな前の二次創作書いてるんですかねぇ……新作が出たからだよ!
なのフェイまであと11話