無能力転生者はリリカルなのは世界で生き延びたい(令和版) 作:百男合
ジュエルシード集めが順調でホクホクのフェイトさん。
1度プレシアの元に帰ると聞いてさあ大変。
反対する両親を拘束して一緒に転移する主人公。勝算はあるのか?
はい、というわけでやってきました【時の庭】。
リリカルなのは無印の最終ステージにしてプレシア・テスタロッサの居城です。
先行するアルフとフェイトさんに導かれ、大きな扉を開けてお城のようなマイホームに入っていく。
「ただいま母さん。ジュエルシードを回収してきたよ」
明るいフェイトさんの声に玉座に座るプレシアが反応する。あ、負のオーラが可視化されてるような気が。
これは駄目かもしれんね(諦め)。
「この子は司郎っていってジュエルシードを回収するのを手伝ってくれた」
「知っているわフェイト。見ていたから」
フェイトさんの声を遮って立ち上がるプレシア。ああ、やっぱりこういう展開になったか。
俺は懐からGメモリを取り出し準備する。
「ずいぶん向こうでは幸せだったみたいね。アリシアと私には時間がないというのに」
声にイライラが混じってますよ。そういえばプレシアさんってこの時病魔に侵されてたんだっけ。
「それを、たった9個のジュエルシードを回収しただけで得意顔で……あなたって娘は!」
カッと目を見開くとフェイトさんをバインドで拘束するプレシア。
『グフ!』
ムラサメにGメモリを刺すとともに俺は駆け出し、プレシアが振り上げた左手を盾で受け止める。
それから右手のヒートソードで右手に持っていたムチを切断し、返す刀でフェイトさんを捕まえてるバインドを斬った。
「司郎⁉」
「ごめん、テスタロッサさん。我慢できなかった」
どんな理由があるにしろ大人が子供に暴力をふるっていい理由なんてないだろう!
特にそれが血を分けた母と娘ならなおさらだ。
俺がそう言うと「なにを分かったように」と鼻で笑うプレシアさん。
うん、頭に来るね。
いかんいかん。頭をクールに。今回は話し合いに来たんだから。
俺は努めて冷静にと自分に言い聞かせ、原作知識から得たプレシアが興味を引く話題を展開する。
「ところでテスタロッサ……ああ、プレシアさんと呼ばせていただきますね。 アルハザードへ行かなくてもあなたの求めるものが手に入る方法がある言ったら、どうします?」
俺の言葉に目を見開くプレシアさん。
うん、効果は抜群だね。
「あなた一体……ジュエルシードの場所を知っていたことや先ほどのゴーレム魔術といい、何者なの?」
ただのフェイトさん推しのモブです。通してください。
なんていっても通用しなさそうなので、俺は自分のデバイスを指差す。
「そんなことはどうでもいいんですよ。俺のデバイスとあなたの知識があれば、アリシア・テスタロッサは完全な状態で再び生まれ直すことができます。そのチャンスをみすみす捨てていいんですか?」
アリシアのことを話した瞬間さらに驚愕の顔をするプレシア。
話についていけてないフェイトさんはおろおろ。
うん、かわいい。ムラサメ、映像を保存しておいてくれ。
「いいわ。聞いてあげる。ただし、つまらない話だったらわかっているわね」
こちらをにらみつけるように言うプレシアに俺はにやりと不敵に笑ってみせた。
俺が提案したのはごく簡単な方法だった。
精神がない状態のアリシアに学習装置を使って人格を刷り込み、元のアリシアと寸分たがわぬ記憶を持つ生命体を作るというものだ。
成功する根拠はある。
というか、この後出てくるマテリアルズとかモロこの方法で作られるからね。
さらに言えばStrikerSのエリオなんかはその完成型で自分が死んだ記憶がなくて普通にクローンと知らず生活してたわけだし。
「なるほど。あなたの言う方法は確かに試す価値があるかもしれないわ」
とプレシアさん。
机の上にはフェイトさんが用意した翠屋のお菓子とコーヒー。娘がせっかく用意したんだから飲めやと思うのだが一口も口につけていない。
プチむかつく!
「でも私がアルハザードへ行く理由は違う。私がアルハザードへ行くのは」
「やり直すためでしょう」
俺の言葉にプレシアが目を見開いた。
「でもね、プレシアさん。どんなに頑張ったって時は戻らないし、やったことはなかったことにできない。こんなはずじゃなかった。あの時こうしていればと思うのは勝手だけど、後悔して足踏みするだけじゃいずれ底なし沼に首までつかりますよ」
世界はいつだってこんなはずじゃないことばっかりで~以下略。
クロノくんの名言は胸にしみるなぁ。
「あなた1人がそのまま自滅するのは勝手ですが、フェイトさんやまだ助かるアリシアさんを巻き込むのはやめてください」
はっきりと言うとプレシアはうつむいた。黒いコーヒーにプレシアの顔が映る。
「私が、間違っているというの?」
「はい」
「アリシアは……私の娘は助かると思う?」
「あなたの協力があれば」
とりあえずプレシアの記憶からアリシアの記憶を抽出し、俺のデバイスでシュミレーションしてアリシアの人格を形成。テストを繰り返してからアリシアの肉体に記憶を転写することになった。
アリシアの人格形成の補助としてジュエルシードの不思議パワーを使うことになって、フェイトさんには地球でジュエルシード集めを再開してもらうことにする。
これは原作通り物語をすすめるためで、実は今ある9個で充分間に合うのだが内緒だ。
帰り際、俺はしばらくここに残ることをフェイトさんに告げ、両親によろしく言っておいてくれと告げる。
「そっか。司郎と母さんが話している内容、私にはよくわからなかったから。母さんの力になってあげて」
どこか寂しそうに言うフェイトさん。いかん、推しを悲しませるわけにはいかない!
「テスタロッサさん。もし全部終わったら海鳴市にある温泉に連れて行ってあげましょう。親子3人で」
俺の意図することに気づいたのか、フェイトさんは笑顔で言う。
「うん、そうなったらいいね。じゃあ、行ってきます」
そうしてフェイトさんとアルフは再びジュエルシード集めのために地球へと帰っていったのだった。
さて、時の庭について丸5日経って、気づいたことがある。
「プレシアさん、フェイトさんが気になるのはわかりますが1日中水晶玉の前で座ってるのはやめてください」
俺がジト目で言うと、プレシアさんは目を泳がせながら、
「わ、私があんなアリシアのレプリカのことを気にかけるわけないじゃない!」
とか言いながらチラチラ水晶玉を見てる。
この人、実はフェイトさん大好きだな。
部屋も掃除された形跡がないし、もしかして俺たちが来る直前まで水晶玉の前にいたんじゃ……。
ひょっとして体調が悪いのも部屋に引きこもって1日中同じ姿勢でいるからなんじゃないか?
俺はアリシア・テスタロッサの人格パターンのシュミレーションをムラサメでしながら、プレシアさんを観察する。
朝、起きたらすぐに水晶玉の前まで行きフェイトさんの寝顔チェック。
それから昼まで動かず、食事時になったら携帯食(カロリー〇イトみたいなやつ)を食べながらフェイトさんの動向チェックしていた。
トイレで席を外すことはあっても基本位置は水晶の前。夕方を終えて晩になっても水晶玉の前。携帯食を食べながらお休みまで見守る。
うん、過保護な母親だね。
それなのに本人を目の前にするとなぜああなるのか。謎だ。
俺はこの動画を父さんのドゥー・ムラサメに「フェイトさんに見せて」とメッセージを付け送っておく。
これで家族間のすれ違いは直るだろう。直るといいなぁ。
で、翌日顔を真っ赤にしたプレシアさんが俺に文句を言ってきた。
いわく、フェイトに私の映像を見せるのは何事かと。
だって母親に実は愛されてるんだってわかったほうがフェイトさん喜ぶし。
俺が素直にそう言うとプレシアさんは顔を真っ赤にして手で覆い、悶えていた。
で、時の庭についてから2週間後。
ついにアリシア・テスタロッサ覚醒の準備が整った。
フェイトさんを四六時中見守っているプレシアさんだったけど手伝ってほしい時は手伝ってくれたし、俺には専門的すぎてわからない魔術や機械の操作などをしてくれた。
おかげで俺がやったことと言えばプレシアさんの記憶と照らし合わせてのアリシアの人格シュミレーションだけである。
あとはジュエルシードの不思議パワーで……とりあえず4つくらいでいいか。
機械が作動し、ジュエルシードが光り、魔法のエネルギー的なものが培養液っぽい液体に浮かぶアリシアに注がれていく。
それからプシューと蒸気が漏れ、ムラサメの画面に『全行程完了』と表示され培養液が抜かれる。
「けほっけほ」
「アリシア!」
器官に入った液体を吐き出すアリシアにプレシアが駆け寄る。
最初は焦点のあっていない目のアリシアだったが、プレシアを見ると口を開き、
「マ……マ?」
「ええ、ええそうよ! アリシア。あなたのママよ!」
涙を流して全裸のアリシアに抱き着くプレシア。
ふっ、いいシーンなのでここで俺はクールに去るぜ。
アリシア用に大きめのバスタオルを置いてっと。
これで無印の鬱展開は回避されたな。
あとはなのはさんがフェイトさんをバインドで拘束して全力全開のディバインバスターを撃つだけだ。
……いや、血も涙もない展開みたいだけど、原作通りなのよ。これ。
さて、プレシアが使っていた水晶玉は……これだったな。
ムラサメ、これ俺にも使える?
『はい。私が操作しましょうか主?』
頼む。と伝えて水晶玉に映るフェイトさんを見る。
ここ2週間でなのはさんとジュエルシードを奪い合い戦闘する姿が何回か見えたんだよなぁ。
で、そろそろ2人の戦いにクロノくんが乱入してなのはさんがアースラに連行される頃だと思うんだけど……。
「ん?」
あれ? 目にゴミが入ったのかなー。
アースラが蜂の巣をつついたように混乱してる?
エイミィさんや他のクルーが黒い画面に赤文字が流れ続けてるのに顔真っ青にしてるぞ。
リンディさんも珍しく冷や汗かいてるし。
しかもクロノくんと戦ってるの父さんじゃない? 見たことのない戦乙女のゴーレムを10体以上出してクロノくんにぶつけてる。
なんとかなのはさんの砲撃支援で懐に入ったクロノくんにクレイモア地雷型のゴーレムを爆発させたり、ブーメランみたいな金属を飛ばしたりして逆に追い詰めてる?
えぇ……こんなの僕の原作知識にないぞ。
どうしたものかと思ってフェイトさんを探してみるとアースラの中で拘束されてるところをうちの母親が救出していた。
ちょっと母さん、何してんの⁉
どうやらプレシアさんとアリシアがやってきたようだ。
「どうしたの? フェイトに何か問題でも」
いえ、フェイトさんは問題ないんですよ。
問題なのはうちの両親でして。
「すみません、とりあえず1度実家に帰らせてください」
頭を下げると2人は驚いたように顔を見合わせたのだった。
なのフェイまであと2話